当センターでも療法の一つとして採用している「FAP療法」についてその歴史やメカニズムについて公認心理師がまとめてみました。前回につづき、よろしければご覧ください
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<作成日2015.11.27/最終更新日2023.2.6>
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この記事の執筆者みき いちたろう 心理カウンセラー(公認心理師) 大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら |
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管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。
可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・FAP療法のしくみ、メカニズム~なぜ高い治療効果が生み出されるのか?
・どのように行われるのか?~FAP療法を用いたセッションの様子
・どのような変化があるのか?~FAP療法の効果
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FAP療法のしくみ、メカニズム~なぜ高い治療効果が生み出されるのか?
FAP療法は、主に3つの方法があります。それぞれについてメカニズムを解説します。
1.トラウマケアのメカニズム~記憶処理やノイズキャンセリングのしくみを利用してトラウマを解消する
FAP療法の中核はトラウマケアです。
トラウマとは、冷凍保存された過去の記憶のことを指します。通常の記憶は、状況記憶に対して感情が結びつくことで処理されていきます。私たちは睡眠をとるごとに徐々に記憶は遠く薄れていきます。
しかし、トラウマとなるような理不尽な出来事は、あまりの衝撃に感情を結びつけることができません。そのためにフリーズ(冷凍)して、そのまま意識下に残ってしまうのです。
時間が止まった状態でどれだけ時間がたっても処理されずに、今まさにその出来事があるかのように感じられたり、本人が覚えていなくても心身にさまざまな不調をもたらします。
一人では消せない記憶であれば、友人や家族に「わかる、わかる」と共感してもらうと、2人の感情が状況記憶とつながり記憶は薄れます。愚痴を聞いてもらうことはとても良いことで、ある意味“トラウマケア”なのです。
また、災害などのあまりにも大きな出来事の場合は、慰霊祭やお葬式で何千人、何万人もの方と一緒に悲しむことも、多くの人の力を借りて記憶に感情をつなげようとする作業で、実はセレモニーも自然な形の“トラウマケア”なのです。
カウンセリングにおいては、そのようなことをいちいちしているわけにはいきませんので、体系化されたトラウマケアの手法を用います。
FAP療法では、クライアントさんにカウンセラーが言葉で唱える「感情」にまつわるキーワードを連続して聴いていただきます。
例えば、人間は、「怒り」という言葉を聞くと、怒りの感情が無意識に湧くことがわかっています。「恨み」と聞けば、恨みが、「不安」と聞けば、不安の気持ちがわきます。
これは現代催眠で知られるメカニズムで、落語や歌や朗読でも自然と起きている現象です。落語などでは、目の間に何もなくても、情景が浮かび、涙し笑い出します。あれはある種の催眠なのです。言葉には催眠を誘発する力があることがわかっています。
トラウマに関連する感情にまつわるキーワードを連続して聴くことで、トラウマ(記憶)を処理するのに必要な感情が意識下で次々と構成され、記憶とつながることでトラウマが処理されていくのです。
トラウマケアの最中、クライアントは、カウンセラーの発する言葉を聞き流すだけで結構です。受け身で受けていただきますが、気づけば悩みが緩和されています。
また、FAP療法ではトラウマケアを用いて、家族など周囲からの心理的支配の影響をカットすることも行っています。
(参考)エナジーサイコセラピーとしてのFAP療法~ノイズのキャンセリング
FAP療法のメカニズムについては、エナジーサイコセラピーの側面から説明されることがあります。私たちが抱えるトラウマ、思考、感情というのは、エネルギーの波(ノイズ)ともとらえられます。そのノイズに対してFAP療法を行い、いわば逆波形をかけてノイズをキャンセルすることで、トラウマが解消され、悩みが消失していくのです。
2.暗示の言葉(遺伝子の還元)のメカニズム~自己催眠(暗示)の効果を活用して体質、気質からくる問題を解消する
近年、開発された方法です。悩みの症状に関連する遺伝子を含む言葉(例:「~~の還元」)を日常生活で唱えていただくことで、悩みを解消するものです。トラウマケアだけでは難しいケースも暗示の言葉を唱えていただくことで解決できます。
実は、自己暗示は古くから用いられてきた方法です。「人間は言葉でできている」と言われるくらい、言葉の影響はとても大きなものです。宗教などでも聖書や真言の唱和がされていたように言葉の効果について人類は直感していました。
近代に入り、それらを「自己暗示法」としてまとめたのは、フランスの薬剤師で心理療法家のエミール・クーエでした。暗示の言葉を用いて、目覚ましい治療の効果を上げたとされます。
現代催眠では人間は常に催眠状態と隣り合わせであるとされますが、自己暗示はまさにそのメカニズムを用いているといえます。
FAP療法でも、自己暗示の方法を活用しています。ある時、大嶋先生がジョギングをしていて、「ドーパミンの分泌」などと唱えると、どんどん足が動いて、前のランナーを追い越していった、といったことがありました。そこで、ホルモンや遺伝子の作用を暗示の言葉によって変容させることができるのではないか?と思い至ります。
臨床でもホルモンや遺伝子にまつわる暗示の言葉を唱えると、症状が緩和していくことがわかりました。意識の抵抗を起こさないような適切な言葉を見出すための試行錯誤を重ねて、現在では「遺伝子+還元」と唱える方式に落ち着いています。これを「FAP療法ver.α」と呼んでいます。
下記の書籍にくわしくは記されています。
→「大嶋信頼「あなたを困らせる遺伝子をスイッチオフ! ―脳の電気発射を止める魔法の言葉」(青山ライフ出版)」
実際のセッションでも、カウンセラーがクライアントにいくつかの言葉を試していただき、その中で効果のあるものを日常生活でも唱えていただくようにお願いする方法がとられています。
3.「“心”に聞く」のメカニズム~無意識にアクセスして、本来の自分に戻ることを助ける
「心に聞く」とは自らの無意識に簡単にアクセスする方法です。
「心よ!」といって、自問自答するように心(無意識)に問いかけると、心(無意識)から答えが返ってくるというものです。
くわしくは下記にまとめています。
→「「”心”に聞く」を身につける手順とコツ~悩み解決への無意識の活用方法」
→「「”心”に聞く」を利用して悩みを解消し、本来の自分に戻る方法」
従来は、催眠療法などでカウンセラーが誘導しないと無意識にはアクセスできなかったものが、「心に聞く」という方法では簡単な言葉によって、意識の邪魔を排除して、無意識の答えを知ることができます。これもある種の催眠のメカニズムを用いています。
私たちは普段自分の本心を聞くことができず、ついつい自分では望んでいない言動をとってしまうことがあります。さらに、自分の感情ではないものを自分のものとしてしまい、悩みを抱えてしまうこともしばしばですが、“心”に聞いて本心を確認するだけで悩みが解消することがあります。
FAP療法のセッションでは、クライアントに「心に聞く」という方法を用いていただき、本音を確かめたり、マイナスの暗示から抜け出すことを行っています。
クライアントの中には、心に聞くことが苦手な場合もありますが、その場合は、その方法をお教えしたり、カウンセラーが代りに聞くなどします。「心に聞けるかな?」とご不安になられなくても大丈夫です。
※FAP療法のカウンセラーは問題の本質を見極めるために、常に心に聞きながらセッションを行っています。
どのように行われるのか?~FAP療法を用いたセッションの様子
FAP療法のセッションは以下のように行われます。※カウンセリングルームによって詳細は異なります。
・初回セッション
まず、初回はインテーク(問診)を行い、問題の全体像を確認します。
※カウンセリングルームによっては、そのまま、初回にFAP療法を行うこともあります。
・二回目以降のセッション
そして、二回目以降のセッションでは、
1.前回からの経過や変化などをうかがう
2.FAP療法を実施
(トラウマケア、暗示の言葉、心に聞く を都度組み合わせて行っていきます。)
3.質問など
という形で進められます。
上記にも書きましたが、クライアントは基本的に、過去のつらい記憶(トラウマ)を思い出したり、負担になる作業をしていただくことは必要ありません。ただ、カウンセラーの指示に従って、キーワードを唱えたり、カウンセラーの言葉を聞いているだけで結構です。どなたでも受けていただくことができます。
FAP療法の特徴にもあるように、FAP療法では、自分に原因があると責められている感覚を覚えることがありません。クライアントは理解されているという安心感を感じます。問題を全体の構造から把握されますから、クライアントは免責され、心の外にある問題についてカウンセラーと一緒に取り組むスタイルです。
(参考)Q&A:対面か電話かによって、効果に違いはありますか?
対面でも電話でもセッションは行われます。対面でも、電話でも効果に違いはありません。
(参考)Q&A:どの程度の期間が必要か?
解決にかかる期間は症状によってさまざまですが、1~2週間に1度のペースで受けて3~6カ月をまずは目安となります。お時間やお財布の都合などによって、無理のないペースで受けていただくことをおすすめいたします。
(参考)Q&A:どのくらいの頻度が適切か?
最短の間隔は中3日あれば大丈夫です。早く良くなりたいということで最短の間隔で受ける方もいらっしゃいます。中3日とはFAP療法の「定着期間」と呼ばれるもので、最低その程度は空けていただいたほうが効果も確認できて、次のセッションを効果的に行うことができます。
どのような変化があるのか?~FAP療法の効果
FAP療法は他の心理療法と比べても目覚ましい効果があります。
変化の現れ方は人さまざまで、初回でいきなり「長年苦しんでいた悩みが消えた」といったように初回のセッション後から効果を実感される人もいれば、少しずつ効果が出てくる人もいます。また、カウンセリングの進捗には試行錯誤もあり、明らかな効果が感じられない時もあります。
※FAP療法が高い効果があるといっても、1回で解決することは難しく、少なくとも3カ月~半年は腰を据えて取り組む必要はあります。
(参考)当センターでのクライアント様の感想
当センターでFAP療法を受けた方の感想を下記にまとめています。よろしければ、参考にしてください。
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⇒関連する記事はこちらをご覧ください。
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参考
吉本雄史/中野善行「無意識を活かす現代心理療法の実践と展開」(星和書店)
ジャコモ ・リゾラッティ「ミラーニューロン」(紀伊國屋書店)
マルコ イアコボーニ 「ミラーニューロンの発見」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
大嶋信頼「言葉でホルモンバランス整えて「なりたい自分」になる!」(青山ライフ出版)
大嶋信頼「ちいさなことにイライラしなくなる本」(マガジンハウス)
大嶋信頼「「すぐ不安になってしまう」が一瞬で消える方法」(すばる舎)
大嶋信頼「あなたを困らせる遺伝子をスイッチオフ! ―脳の電気発射を止める魔法の言葉」(青山ライフ出版)
大嶋信頼「「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法」(すばる舎)
大嶋信頼「それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?」(青山ライフ出版)
大嶋信頼「ミラーニューロンがあなたを救う」(青山ライフ出版)
大嶋信頼「「ずるい人」が周りからいなくなる本」(青春出版社)
大嶋信頼「小さなことで感情をゆさぶられるあなたへ」(PHP研究所)
大嶋信頼「その苦しみはあなたのものではない」(青山ライフ出版)
大嶋信頼「「自己肯定感」が低いあなたが、すぐ変わる方法」(PHP研究所)
大嶋信頼「誰もわかってくれない「孤独」がすぐ消える本」(PHP研究所)
大嶋信頼「消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法」(すばる舎)
大嶋信頼「【DVD】人間関係の悩みから解放! 他人に振り回されずにリミットレスに生きる!」(すばる舎)
大嶋信頼「【DVD】不安を一瞬で消し去る最強メソッド」(すばる舎)
大嶋信頼「【DVD】「孤独」を消す最強メソッド」(すばる舎)
大嶋信頼「【DVD】人間関係の悩みから解放!嫉妬・劣等感を一瞬で消して本当に自由になる!」(すばる舎)
大嶋信頼「「自分を苦しめる嫌なこと」から、うまく逃げる方法」(光文社)
大嶋信頼「「お金の不安」からいますぐ抜け出す方法」(総合法令出版)
大嶋信頼「「本当の友達がいなくてさびしい」と思ったとき読む本」(角川書店)
大嶋信頼「「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本」(あさ出版)
大嶋信頼「スルースキル - “あえて鈍感"になって人生をラクにする方法 -」(ワニブックス)
大嶋信頼「「やる気が出ない」が一瞬で消える方法 」(幻冬舎新書)
大嶋信頼「いつも「ダメなほうへいってしまう」クセを治す方法」(廣済堂出版)
大嶋信頼「リミットレス! あなたを縛るリミッターを外す簡単なワーク 」(飛鳥新社)
大嶋信頼「「断れなくて損している」を簡単になくせる本」(宝島社)
など