過度に体重を制限したり、過食がやめられなくなったり、など多彩な症状を見せる摂食障害。女性に顕著に見られる症状です。「ダイエットのし過ぎ」など誤解も多いです。医師の監修のもと公認心理師が、摂食障害の治療、治し方についてまとめてみました。
<作成日2016.4.13/最終更新日2026.10.4>
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・摂食障害(拒食症、過食症)の克服、治療のために必要な7つのこと
・摂食障害(拒食症、過食症)の治療方法
→摂食障害(拒食症、過食症)の原因と症状については、下記をご覧ください。
拒食症は精神障害の中でも対処が難しい症状の一つです。拒食症をカウンセリングのみで対応することは危険です。また、病院もどこでも良いわけではありません。拒食症については必ず専門の医師、病院でのサポートを受ける必要があります。 次に、トラウマ臨床の観点からは、過食でお困りのケースがとても多いです。それも、むちゃ食いや嘔吐を伴うようなケースがあります。摂食障害と診断されていなくても、お伺いすると不全感を解消するために食べ過ぎてしまうというという方はとても多いです。そうした過食はトラウマケアの対象となり、改善されていきます。
摂食障害(拒食症、過食症)の克服、治療のために必要な7つのこと
摂食障害の治療では、拒食や過食という行動だけを止めるのではなく、身体状態と栄養を安全に回復させながら、不安、自己評価、身体イメージ、対人関係など症状を支えている心理的な問題を扱っていきます(“摂食の障害”ではなく「不安、自己不信」を特徴とする心の病と捉えられます)。特に拒食症では医学的管理が重要で、心理療法だけで治療することはできません。
そのポイントをまとめてみました。
1.摂食障害は「こころの病気」と捉える
摂食障害とは、”摂食の障害”ではなく、不安や自信のなさを主とする「こころの病気」です。本人の人格や意志の問題ではありません。病気であるという認識を本人も家族も持つことが大切です。本人を責めたりする必要はありません。摂食障害を本人の個性として擁護する考え(プロアナ)もありますが、基本的に病として捉えることが必要です。
その際、人格の問題など本人を異常だとはとらえないことです。自分は人格に問題があると周囲から思われて安心が得られるはずがありません。摂食障害は、本人が環境によって否応なくそうした状態に陥っていることを理解して関わることが大切です(問題が外にあると適切に理解することを”外部化”といいます)。
2.本人の自信のなさ、不安に寄り添い、安心を提供する
摂食障害では、体型や体重への強いこだわりの背景に、自己評価の低さ、不安、対人関係の難しさ、自分の人生を思うようにコントロールできない感覚などがみられることがあります。当センターでは、特にこうした「安心できなさ」や「不全感」を、症状を理解するうえで重要な視点と考えています。
その「安心できなさ」や「不全感」というのは、単に気のせいや本人の思い込みといったような軽いものではありません。本人にとっては寄る辺なき不安に襲われています。本当は周囲に頼ったりして、自己愛を育てていくわけですが、それが困難になっているのです。
そこへ、無理にしっせきしたり、説得したり、強引に食べさせようとすることは泳げない人から浮き輪を奪うようなものです。安心感をを与えつつ、早期に「摂食障害専門」の医療機関に相談することが大事です。特に拒食症では、身体状態の管理、栄養療法、心理療法を連携して行う必要があるため、摂食障害の診療経験が豊富な医療機関につながることが望まれます。重症例では、入院や身体管理に対応できる体制も重要です。
3.「痩せること」以外に安心できること、自信が持てるものを見つける
特に拒食症や過食症では、体型・体重が自己評価の大きな部分を占め、「痩せていること」に強く価値を置くようになることがあります。そのため、体重以外にも安心や自己価値を感じられる領域を回復していくことが大切です。
4.過食や拒食症状を直接コントロールしようとしない
拒食や過食という症状だけを、叱責や説得によって力ずくで止めようとしてもうまくいきません。過食や拒食には、本人が耐えがたい不安や感情を何とか処理するための「自己治療」のような機能を持つことがあります。そのため症状をただ取り上げるのではなく、「この行動が何を支えているのか」を理解しながら、より安全な対処方法を増やしていくことが必要です。症状は、摂食障害の根本が解決していけば自然と回復していきます。症状だけに目を向けず、根底にある不安などの問題に寄り添うことが大切です。
家族や治療者も症状について答えたり、患者と同じ土俵に乗らない様にすることが大切です。説得を試みたり、脅したり、不安にさせたりすることは避けなければなりません。
一方で、摂食障害では食事・体重・栄養状態そのものへの治療的な介入も重要です。特に拒食では身体状態を安全に保ち、栄養状態を回復させながら、その背景にある不安、自己評価、対人関係、ストレスなどを並行して扱う必要があります。
5.病気についてしっかりと説明し、本人の意思を尊重しながら、治療への動機を育てる
摂食障害では、本人が症状を手放すことに強い不安を感じることがあります。そのため、頭ごなしに治療を押し付けるのではなく、病気について十分に説明し、本人が治療の必要性を理解できるよう支えることが大切です。ただし、著しい低体重や脱水、電解質異常など身体的な危険がある場合には、本人の希望だけに任せず、医療的な安全確保を優先する必要があります。
6.治ること、治った後のことを過度に期待し過ぎない
回復は重要ですが、「早く完全に治さなければならない」と本人や家族が焦りすぎると、それ自体が新たなプレッシャーになることがあります。症状の有無だけで回復を測るのではなく、安心して生活できること、対人関係や学校・仕事に戻れること、自分の価値を体重以外にも感じられることなどを含めて、長い目で回復を考えることが大切です。
特に周囲が治ったあとに、難関大学への合格や有名企業への就職、結婚、など過度に期待がある場合も回復の妨げとなります。焦らず、粘り強く、治らなくても良い、といったくらいの感覚で取り組むことが大切です。
7.環境を調整する
家族や、学校、職場でも正しい認識をもち、ストレスを除くことはとても大切です。もし、ストレスの多い職場や学校なのであれば、異動や転職、転校を考えることも必要です。
摂食障害(拒食症、過食症)の治療方法
・薬物療法
薬物療法の位置づけは摂食障害の種類によって異なります。拒食症では薬物だけで病気を治療することはできず、栄養回復と心理療法が中心になります。一方、過食症では心理療法に加えてSSRIなどが用いられることがあります。併存するうつ病や不安症などに対して薬物療法を行うこともあります。
ただ、過食は、拒食の結果生じている身体の正常な反応ともいえます。そのため、過食を薬でおさえるということが有効かどうかは本人の状態などを見ながら慎重な判断が必要です。
参考)→「SSRI 日経メディカル」
・精神療法
摂食障害の治療では心理療法が重要な柱になります。ただし、特に拒食症では、心理療法だけではなく、身体状態の管理と栄養回復を並行して行う必要があります。
認知行動療法(CBT-E/CBT-ED)、家族療法(特に若年者の拒食症)、対人関係療法など、一定のエビデンスがある心理療法があります。どの方法を選ぶかは、摂食障害の種類、年齢、身体状態、本人の状態によって異なります。当センターでは、摂食症状そのものの専門治療は医療機関と連携したうえで、背景にトラウマや強い不全感、対人関係上の問題などが認められる場合には、その部分への心理的支援を行うことがあります。
行動療法とは、目標を達成したらそれに応じて行動制限を弱めたりといった学習を利用した方法です。認知行動療法は非常にポピュラーですが、認知を変えていくものです。対人関係療法は、重要な他者との関係を焦点に当てて取り組んでいきます。特に過食に対して効果があるというエビデンスが上がっています。
治療者によって対応方針には差があります。食行動だけを機械的に修正するのでは不十分です。認知行動療法などの標準的な治療でも、食行動に加えて自己評価、身体イメージ、感情、対人関係などが扱われます。当センターでは、さらに背景にトラウマや強い不全感がある場合には、その部分への支援も重要と考えています。
参考)入院が必要なケース
著しく痩せていたり、栄養が低下している場合、低体温、脱水症状など身体に陥っている場合などは、入院を積極的に検討する必要があります。著しい低体重だけでなく、急速な体重減少、脱水、低血糖、電解質異常、徐脈、低血圧、低体温などがある場合には、緊急の身体評価や入院が必要になることがあります。入院の必要性は体重だけで決めず、身体状態を総合して判断します。
入院が必要な場合でも、最初は強制的ではなく、しっかりとした説明によって本人の理解を促すことが理想ですが、生命の危機が差し迫っている場合には本人の意思に反してでも、躊躇なく法に沿って強制入院をさせることが求められます。強制入院も含めた臨機応変な危機介入ができる状態を常に確保することが、この疾患の高い死亡リスクから本人を守るために必要なのです。
→摂食障害(拒食症、過食症)の原因と症状については、下記をご覧ください。
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(参考・出典)
日本摂食障害学会「摂食障害治療ガイドライン」(医学書院)
滝川一廣・小林隆児・杉山登志郎・青木省三=編「そだちの科学25号 摂食障害とそだち」(日本評論社)
富澤 治「裏切りの身体-「摂食障害」という出口」(エム・シー・ミューズ)
松木邦裕「摂食障害というこころ」(新曜社)
水島 広子「焦らなくてもいい!拒食症・過食症の正しい治し方と知識」(日東書院出版)
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