摂食障害(拒食、過食)の治療、治し方の7つのポイント

摂食障害(拒食、過食)の治療、治し方の7つのポイント

依存症身体に現れる不調家族の問題(機能不全家族)

 

 過度に体重を制限したり、過食がやめられなくなったり、など多彩な症状を見せる摂食障害。女性に顕著に見られる症状です。「ダイエットのし過ぎ」など誤解も多いです。医師の監修のもと公認心理師が、摂食障害の治療、治し方についてまとめてみました。

 

<作成日2016.4.13/最終更新日2024.6.2>

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飯島慶郎医師  

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

 

この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

 

もくじ

摂食障害(拒食症、過食症)の克服、治療のために必要な7つのこと
摂食障害(拒食症、過食症)の治療方法

 

 →摂食障害(拒食症、過食症)の原因と症状については、下記をご覧ください。

 ▶「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因~7つのポイント

 ▶「摂食障害(拒食、過食)の症状~5つの視点から理解する

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 拒食症は精神障害の中でも対処が難しい症状の一つです。拒食症をカウンセリングのみで対応することは危険です。また、病院もどこでも良いわけではありません。拒食症については必ず専門の医師、病院でのサポートを受ける必要があります。

 次に、トラウマ臨床の観点からは、過食でお困りのケースがとても多いです。それも、むちゃ食いや嘔吐を伴うようなケースがあります。摂食障害と診断されていなくても、お伺いすると不全感を解消するために食べ過ぎてしまうというという方はとても多いです。そうした過食はトラウマケアの対象となり、改善されていきます。

 

 

 

摂食障害(拒食症、過食症)の克服、治療のために必要な7つのこと

 摂食障害は身体や行動に症状が現れますが、“摂食の障害”ではなく「不安、自己不信」を特徴とする心の病です。根底にある、不安を解消していくことが必要です。
 
 そのポイントをまとめてみました。

 

1.摂食障害は「こころの病気」と捉える

 摂食障害とは、”摂食の障害”ではなく、不安や自信のなさを主とする「こころの病気」です。本人の人格や意志の問題ではありません。病気であるという認識を本人も家族も持つことが大切です。本人を責めたりする必要はありません。摂食障害を本人の個性として擁護する考え(プロアナ)もありますが、基本的に病として捉えることが必要です。

 

 その際、人格の問題など本人を異常だとはとらえないことです。自分は人格に問題があると周囲から思われて安心が得られるはずがありません。摂食障害は、本人が環境によって否応なくそうした状態に陥っていることを理解して関わることが大切です(問題が外にあると適切に理解することを”外部化”といいます)。

 

 

2.本人の自信のなさ、不安に寄り添い、安心を提供する

 摂食障害は、自信のなさや無価値観、人生をコントロールできないという不安や、対人関係のモヤモヤから生じています。克服のためには、根底にある不安を解消することが必要です。

 その不安というのは、単に気のせいや本人の思い込みといったような軽いものではありません。本人にとっては寄る辺なき不安に襲われています。本当は周囲に頼ったりして、自己愛を育てていくわけですが、それが困難になっているのです。

 そこへ、無理にしっせきしたり、説得したり、強引に食べさせようとすることは泳げない人から浮き輪を奪うようなものです。安心感をを与えつつ、早期に「摂食障害専門」の医療機関に相談することが大事です。摂食障害の治療は極めて専門性が高く、通常の精神科医・心療内科医では有効なかかわりができるケースはまれです。特に摂食障害の専門治療をうたっている病院につながる必要があります。県境を越えて病院にかかることも躊躇しないでください。それくらい専門性の高い病気です。

 

 

3.「痩せること」以外に安心できること、自信が持てるものを見つける

 摂食障害は、不安から「痩せていることにしか」価値を見いだせない、自信が持てないという症状です。そのため不安を解消すると同時に、痩せていること以外に価値を見いだせるようにすることが必要です。

 

 

4.過食や拒食症状を直接コントロールしようとしない

 拒食や過食についてコントロールしようとしたり、周囲が注意しても全く意味がありません。拒食や過食は、未熟な自己治療として生じているともいえます。それらがあるから、生きていることができている、とも言えるわけです。症状は、摂食障害の根本が解決していけば自然と回復していきます。症状には目を向けず、根底にある不安などの問題に寄り添うことが大切です。

 

 家族や治療者も症状について答えたり、患者と同じ土俵に乗らない様にすることが大切です。説得を試みたり、脅したり、不安にさせたりすることは避けなければなりません。
 ※実際の治療にはさまざまな方法があります。

 

 
5.病気についてしっかりと説明し、治療するかしないかは本人の判断に委ねる

 パンフレットや書籍などで摂食障害とは何かを伝えて、病識の醸成を促すことが大切です。
 その上で、このままの状態で良いこと、悪いことを書き出してもらい、良いことが多ければそのまま経過を見て、悪いことが多ければ治療を受けるかどうかを確認して、その上で治療に取り組むことが大切です。

 

 

6.治ること、治った後のことを過度に期待し過ぎない

 治す、ということに過度にこだわることは回復の妨げとなります。痩せていたとしても、その人なりに社会生活を送ることができる、幸せを見つけることができる状態が目標とすることが適切で、一方的な価値観を押し付けることは有益ではありません。拒食、過食を完全になくすことを目的にしてしまうとむしろ回復は遅れます。

 

 特に周囲が治ったあとに、難関大学への合格や有名企業への就職、結婚、など過度に期待がある場合も回復の妨げとなります。焦らず、粘り強く、治らなくても良い、といったくらいの感覚で取り組むことが大切です。

 

 

7.環境を調整する

 家族や、学校、職場でも正しい認識をもち、ストレスを除くことはとても大切です。もし、ストレスの多い職場や学校なのであれば、異動や転職、転校を考えることも必要です。

 

 

 

 

摂食障害(拒食症、過食症)の治療方法

・薬物療法

 摂食障害は心の病ですが、摂食障害そのものを治す薬というものはありません。過食などの結果で生じつ抑うつ状態や併存するうつ病などには抗うつ剤を投与します。過食などの衝動をおさえるためにSSRIが有効とされていますから、場合によっては薬物療法も補助的に用いられます。
 ただ、過食は、拒食の結果生じている身体の正常な反応ともいえます。そのため、過食を薬でおさえるということが有効かどうかは本人の状態などを見ながら慎重な判断が必要です。

 

参考)「SSRI 日経メディカル」

 

 

・精神療法

 摂食障害では、基本的に精神療法が主になります。行動療法、認知行動療法、対人関係療法、トラウマ療法(ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ、ハコミセラピー、トラウマ解放エクササイズ、ブレインジム、TFT、フラワーエッセンス、FAP療法、など)があります。

 

 行動療法とは、目標を達成したらそれに応じて行動制限を弱めたりといった学習を利用した方法です。認知行動療法は非常にポピュラーですが、認知を変えていくものです。対人関係療法は、重要な他者との関係を焦点に当てて取り組んでいきます。特に過食に対して効果があるというエビデンスが上がっています。

 

 治療者によって対応方針には差があります。いずれの方法を取るにしても、表面的な認知や行動の修正ではなく、本人の自信のなさ、寄る辺のない不安といったものを解消して、自己愛を育んでいく必要がある、ということは共通しています。

 

参考)入院が必要なケース

 著しく痩せていたり、栄養が低下している場合、低体温、脱水症状など身体に陥っている場合などは、入院を積極的に検討する必要があります。特に標準体重の75%以下になるとさまざまな不調が現れます。
 入院が必要な場合でも、最初は強制的ではなく、しっかりとした説明によって本人の理解を促すことが理想ですが、生命の危機が差し迫っている場合には本人の意思に反してでも、躊躇なく法に沿って強制入院をさせることが求められます。強制入院も含めた臨機応変な危機介入ができる状態を常に確保することが、この疾患の高い死亡リスクから本人を守るために必要なのです。

 

 

 

 →摂食障害(拒食症、過食症)の原因と症状については、下記をご覧ください。

 ▶「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因~7つのポイント

 ▶「摂食障害(拒食、過食)の症状~5つの視点から理解する

 

 

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(参考・出典)

日本摂食障害学会「摂食障害治療ガイドライン」(医学書院)
滝川一廣・小林隆児・杉山登志郎・青木省三=編「そだちの科学25号 摂食障害とそだち」(日本評論社)

富澤 治「裏切りの身体-「摂食障害」という出口」(エム・シー・ミューズ)
松木邦裕「摂食障害というこころ」(新曜社)
水島 広子「焦らなくてもいい!拒食症・過食症の正しい治し方と知識」(日東書院出版)

水島 広子「摂食障害の不安に向き合う」(創元社)

など