悩みの原因や解決方法

トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

[悩みの原因や解決方法「トラウマ、ストレス関連障害」とは何か?]


 

 さまざまな悩みの根本原因となる「トラウマ(Trauma)」。例えば、うつ、不安といったことでも、少なくないケースがトラウマに起因することがわかっています。トラウマについて理解することは、悩み解決にとって必須です。

 皆様にもわかりやすく、トラウマとは何か、についてまとめてみました。ご覧ください。

 

 →関連する記事はこちらをご覧ください。

 「あなたが悩む“緊張”(過緊張)はトラウマのせいかも?

 「あなたの人間関係の悩みの原因は、トラウマのせいかも?

 「あなたの仕事がうまくいかない原因は、トラウマのせいかも?

 「【保存版】災害(震災、水害、事故など)時の心のケアと大切なポイント

 「トラウマ、PTSDとは何か?~さらにくわしく知りたい方のために

 

<作成日2015.11.23/最終更新日2019.9.1>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

トラウマとは何か?
トラウマにより生じる主な症状
何がトラウマ経験(原因)となるのか?
トラウマを解消するための必要なポイントと主要な治療方法

 

トラウマ

 

 

 

トラウマとは何か?

ストレスによる機能障害~私たちにとって身近なものであり、軽度から重度までスペクトラム状をなすもの

 「トラウマ」というと、どこか劇的で自分からは縁遠いもの、という印象を与えてしまうかもしれません。しかし、トラウマというのは、簡単に言えば「ストレスによる機能障害」のことを指します。スペクトラムをなしていて、軽度であれば日常の私たちは誰でも経験しています。中程度以上になると、「適応障害(ストレス障害)」となり、重度のものを「急性ストレス障害」「心的外傷後ストレス障害」や「解離性障害」などと診断されます。あるクリニックでは、来所する9割はストレス障害であるとされます。それほど身近な症状です。

 

 →「適応障害とは何か?~本当の原因、症状と治療、接し方で大切なこと

 →「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

 

 人間も含む動物は、ストレス応答のいき値を超えるストレスを受けると、自律神経系、免疫系、内分泌系に失調をきたします。そして、情動、覚醒水準、認知、身体、記憶、などの領域に影響を及ぼし、さまざまな症状、生きづらさを引き起こします。

 

トラウマとは何か?

 

 下記にくわしく書きますが、災害、レイプなど一時に非常に強いストレスを受けるものを「単回性(トラウマ)」、長期にわたってじわじわとストレスを受け続けるものを「複雑性(トラウマ)」とよびます。

 

 人間のストレス応答系(自律神経系、免疫系、内分泌系)は、長期のストレスに対処するようには作られていないとされます。そのため、一見、緩やかに見えるストレスであっても長期にわたった場合はPTSDと変わらないような重度の機能障害を起こすことも珍しくありません。

 

 

記憶の失調という現象~時間を止める「冷凍保存された記憶」

 トラウマ(Trauma)について理解する際にもう一つの視点は、記憶の失調として理解することです。

 通常の記憶は、扁桃体で感情的な重み付けをされて、海馬で整理されて、格納されていきます。しかし、あまりにもストレスの程度が高い出来事は、扁桃体が過剰に反応しすぎてしまい、海馬で処理ができず、記憶が断片化して意識下に残ってしまいます。「冷凍保存された記憶」とたとえられます。

トラウマが生み出されるメカニズム

 

 この「処理されなかった(できなかった)記憶」が”トラウマ”という現象を引き起こすと考えられています。あたかもタイムマシンのように物理的な時間は経過していても、トラウマの記憶は常にフレッシュなままで本人は常に過去に生きているような状態です。

 

⇒さらにくわしく知りたい方は

さらにくわしくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

参考)→「トラウマ記憶の特徴」について

 

 

トラウマは ”自分らしくあること” を奪い、生きづらさを生む

トラウマは、自分らしくあることを奪い、例えば、下記のような生きづらさを生じさせます。

・時間の流れ、発達を止めてしまう

・連続性の欠如~いつも非常事態モードで、物事が積みあがらない。日常が楽しくない

・感情調節や行動の障害を引き起こす 

 

・自分らしく落ち着いてふるまうことができない

・自信のなさ、スティグマ感

・能力、パフォーマンスを低下させる

 

・対人関係がうまくいかなくなる。相手からバカにされたり、支配されてしまう

・自らトラウマを再演する

・依存症(し癖)を引き起こす

 

・理解してもらえない

 

 

⇒さらにくわしく知りたい方は

各項目の詳細をお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

参考)→「トラウマは ”自分らしくあること” を奪い、生きづらさを生む(詳細)」

 

 

 

トラウマには大きく2種類存在する

 トラウマには、

 1.単回性のトラウマ:事件、事故、レイプなど一度きりの大きなストレス


 2.慢性反復性トラウマ(複雑性トラウマ):いじめ、虐待、ネグレクトなど、繰り返し、長期に渡るストレス※ 

 

 という分類があります。

 ※家庭、学校、職場内の緊張などささいなことでも長期で継続されればトラウマとなりえます。

 

 単回性トラウマももちろん問題ですが、本人が自覚していないのですが複雑性にかかっているケースはとても多い。悩みを抱えている方のほとんどのケースで何らかのトラウマを負っているととらえても過言ではありません。

 

 アメリカの精神科医ジュディス・ハーマンが、従来のPTSD概念では説明できない、長期にわたって個人が受けるトラウマを「複雑性PTSD(DESNOS)」として捉えることを提唱しました。

 

  参考)J・L・ハーマン「心的外傷と回復」(みすず書房)

 

 

⇒さらにくわしく知りたい方は

さらにくわしくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

参考)→ 「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」とはなにか?

参考)→ 「トラウマへの取り組みの歴史」について

 

 

 

トラウマにより生じる主な症状

 トラウマの特徴を6つの主な症状にまとめてみました。特に1~4がPTSDにおいて「中核的な症状」とされます。

1.再体験(侵入)

 トラウマ的な出来事が繰り返しよみがえり、体験されることです。

 

2.回避・まひ

 「回避」とはトラウマの記憶を呼び起こすような環境を避けることです。トラウマ記憶によってもたらされる苦痛を感じることを避けるために、感情を切り離したり、無感覚となることを「まひ」と呼びます。

 

3.過覚醒(覚醒こう進)

 常に緊張したような状態で、非常に過敏な状態です。

 

4.否定的認知や気分

 自分や他者、社会に対してネガティブな認識や気分を持つようになることです。

 

5.解離

 解離というのは、自我の統合が薄れることです。

 

6.発達障害様の症状

 発達障害にきわめて似た症状を呈します。こうしたことを指して、「第4の発達障害」「発達性トラウマ症候群(発達性トラウマ障害)」と呼ばれることがあります。

 

 

⇒さらにくわしく知りたい方は

さらにくわしくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

参考)→ 「トラウマにより生じる主な症状(詳細)」について

参考)→ 「PTSD、ASDの診断、チェック」について

参考)→ 「複雑性PTSDに特徴的な症状」について

参考)→ 「子どものトラウマ反応」について

参考)→ 「トラウマによって生じるさまざまな障害」について

 

 

 

 

 

 

何がトラウマ経験(原因)となるのか?

・ストレス応答系のいき値を超える経験がトラウマ

 かつてはトラウマ経験とは鉄道事故や戦争など惨事を指しましたが、実際は虐待やネグレクト、いじめやモラルハラスメント、パワーハラスメント、何気ない日常の経験でもトラウマになりえます。

 

 米国精神医学会の診断マニュアル(DSM-IV-TR:Diagnosis of Statistics for Mental disorder)では、「危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を1度以上、自分または他人の身体の保全に迫る危険をその人が体験し、目撃し、または直面すること」とされているように、何気ない出来事であっても、本人のストレス応答系のいき値を超えるような場合、長期にわたる場合は、トラウマ経験となります。

 

 ストレス(出来事) + 当人の感受性(レジリエンス) = トラウマ

という図式で理解されています。

 

(参考)「米国精神医学会」「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院)

 

 

・トラウマ経験とは何か?~夫婦げんか、暴言など家庭内の日常的なストレスこそがトラウマとなる

 ある研究によると最も深刻なのは、「DVの目撃と暴言による虐待」の組み合わせだとされます。身体的虐待やネグレクトよりも強烈なインパクトがあるとされます。 
 特に、身体的なDVをよりも、言葉によるDVのほうがダメージは大きく、6倍近いとするデータがあります。(単語を理解する「舌状回」が減少します。)

 

 日本では、罵り合うような夫婦げんかや子どもへの暴言などは虐待には含まれないようにとらえられていますが、「面前虐待」と呼ばれ、いわゆる虐待とされる行為以上のダメージがあることがわかります。

 

 トラウマの原因を知る時に、いきなり「虐待」から入ってしまうと、どうしても、それ以外の問題をささいなことととらえてしまいます。本人も、周囲(場合によっては医師やカウンセラーも)も大したことない、よくあることだと考えてしまいます。しかし、日常的な夫婦げんかや暴言などはトラウマの大きな原因です。軽んじることはできません。

 

 人間のストレス応答のメカニズムについての研究からも長期のストレスは機能障害を生むことが分かっており、ささいなことでも長期にわたるストレスはトラウマとなりえます。

 

⇒さらにくわしく知りたい方は

さらにくわしくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

参考)→ 「トラウマを生む出来事の種類」について

参考)→ 「陽性外傷と陰性外傷」とはなにか

参考)→ 「愛着障害とトラウマ」について 

参考)→ 「トラウマになる人とならない人の違い」について 

参考)→ 「トラウマが身体に与える影響」について

 

 

 

 

 

 

トラウマを解消するための必要なポイントと主要な治療方法


・トラウマへの気づきを得る

1.トラウマのメカニズムを正しく理解する

 トラウマとは何か?どういった症状が起きるのかを理解することが大切です。
メカニズムを正しく知ることで、無用な自責感にさいなまれたりすることを避け、適切な対処を行うことにつながります。メカニズムを知るだけでも、症状や生きづらさが軽くなります。 

 


2.現在起きていることはすべてのことは“症状”である

 今感じている生きづらさや不全感、緊張しやすい、ミスが多い、人とうまく行かない、イライラなど人に対して否定的な感情が離れない、といったこともトラウマから持たされていると考えられます。
症状であるということは、本来の自分のものではなく、改善されるということです。現在抱えている問題がトラウマによって引き起こされた症状であることを知ることは改善への一歩です。

 

 


・安心、安全な環境を確保する

3.環境を変える

 トラウマを解消する、というと心理療法などアプローチ手法についつい目が行きがちですが、普段過ごす環境を変えることが何よりも大切です。

 特に複雑性トラウマを受けた方に多いのですが、まじめで、我慢強く、すべてを自分の責任としてうけとめていることもあり、環境に原因があるとも知らずに、厳しい職場や家庭などに居続けてしまいがちです。

 

 さらに、経済的な制約もあり自立ができない状況にある方。不適切な養育環境の中で、親との関係を断ち切ることができない方。パートナーと共依存のようなってしまっている方なども少なくありません。

 

 トラウマを解消するためには、治療を受けながら、苦しい環境から少しずつ逃れていく必要があります。

 

 

4.自分は大丈夫だと知る

 トラウマを負った方は、理不尽な環境の中で「おまえが悪い」「おまえがおかしい」と罪悪感、自己否定感を刷り込まれてきています。これは事実ではなく外部からもたらされたストレスによって形成されたものです。自己否定感は事実ではなく、あなた自身ではありません。刷り込まれた負の暗示から抜け出すために何よりも大切なのは、「自分には罪はない」「本来の自分は何も問題なく、大丈夫だ」と知ることがとても大切です。

 

 

・トラウマを処理する

5.安全な環境で、トラウマ経験を語る、思い出す

 安全な環境であることが大前提ですが、過去のつらい経験を思い出したり、語ったりということはトラウマ記憶の解消に役立ちます。思い出しても、語っても安全だ、ということを繰り返す中で徐々に記憶は感情と結びつき、処理されていきます。


 注意としては、無理やり過去のことを掘り起こそうとしないことです。周囲は批評したりすることなくただ受け止めることです。単回性トラウマ(惨事トラウマやレイプなど)のように、本人がトラウマ経験を覚えているような場合には有効です。

 

 一方、複雑性トラウマの場合は、本人もトラウマとなるイベントや影響を自覚していないといったことも多く、過去のことを語ったり、思い出そうとすることは時間がかかる割に効果が高いとは言えません。そのため、トラウマ記憶の解消には専門のトラウマケアを受ける必要があります。

 

6.トラウマケアを受ける

 トラウマケアにはさまざまな方法があります。暴露療法、EMDR、ボディワーク、ストレス応答系へのアプローチFAP療法など。簡単に言えば、感情の処理を促すものです。

 

 トラウマを専門にする医師やカウンセラーはたいへん少ない状況です。専門となる病院やカウンセリングルームをお調べいただいて、ご自身の状況にあったものを受けることをおすすめいたします。

 

 

<主要な治療方法>

 臨床の中でさまざまな取り組みがありますが、主要なものとして4つに分けてご紹介させていただきます。

1.認知行動療法(暴露療法)

 認知行動療法とは、トラウマ体験によって誤って条件づけられた認知の修正や、トラウマ記憶を呼び起こし、直面させることで恐怖の軽減と記憶の処理を促すものです。


2.EMDR

 眼球運動などを行うことで、トラウマ記憶と結びついた恐怖を脱感作させていく方法です。日本では提供できる機関が限られています。


3.薬物療法

 薬物療法は、中核症状や併発症状の軽減のために用いられます。SSRIなどがその中心です。ただ、PTSDそのものを解決する薬はまだ存在しません。風邪薬が風邪そのものではなく喉の痛みやだるさをおさえるのと同様です。)

 

 精神科医の神田橋條治氏は、フラッシュバックに対しては、四物湯と桂枝加芍薬湯が有効で、これを合わせて1日1回~2回、ひどい人は3回飲ませると、フラッシュバックは1~2カ月で随分軽くなるとしています。

 

4.その他(催眠療法、ストレス応答系へのアプローチ、FAP療法など)

 その他についてですが、催眠療法やボディワーク、など、さまざまなアプローチが存在します(ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ、ハコミセラピー、トラウマ解放エクササイズ、ブレインジム、TFT、フラワーエッセンス、ストレス応答系へのアプローチFAP療法、など)。

 

 →関連する記事はこちらをご覧ください。

 「あなたが悩む“緊張”(過緊張)はトラウマのせいかも?

 「あなたの人間関係の悩みの原因は、トラウマのせいかも?

 「あなたの仕事がうまくいかない原因は、トラウマのせいかも?

 「【保存版】災害(震災、水害、事故など)時の心のケアと大切なポイント

 「トラウマ、PTSDとは何か?~さらにくわしく知りたい方のために

 

 

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(参考)

J・L・ハーマン「心的外傷と回復」(みすず書房)

バベット ロスチャイルド「これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識」(創元社)

水島 広子「正しく知る心的外傷・PTSD」(技術評論社)

森茂起「トラウマの発見」(講談社)

宮地尚子「トラウマ」(岩波文庫)

飛鳥井 望「PTSDとトラウマのすべてがわかる本」(講談社)

岡野憲一郎「新外傷性障害」(岩崎学術出版社)

大嶋信頼「それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?」(青山ライフ出版)

「季刊 ビィ 2015年9月号」(アスク・ヒューマン・ケア)

白川美也子「赤ずきんとオオカミのトラウマケア」(アスク・ヒューマン・ケア)

友田明美「第23章 愛着と虐待」『脳の発達科学』(新曜社)

ベッセル・ヴァン・デア・コーク「身体はトラウマを記録する」(紀伊國屋書店)

福間詳「ストレスのはなし」(中公新書)

「ストレス学ハンドブック」(創元社)

ブルース・マキューアン&エリザベス・ノートン・ラズリー「ストレスに負けない脳」(早川書房)

田中正敏「ストレスの脳科学」(講談社)

ロバート・M・ サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」(シュプリンガー・フェアラーク東京 )

「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院)

ステファン・W・ポージェス 「ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」」(春秋社)

杉晴夫「ストレスとはなんだろう」(講談社)

ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)

など

 

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 ”トラウマ”とはストレスによる心身の失調のことを指します。私たちは誰もが影響を受けているといってよいくらいトラウマは身近なものです。※トラウマを負うと、うつ、不安、過緊張、対人関係、仕事でのパフォーマンス低下、身体の不調、依存症、パーソナリティ障害などさまざまな問題を引き起こすことが分かっています。

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