スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント

スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント

依存症

 医師の監修のもと公認心理師が、スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症(Internet addiction/Game addiction)の治し方についてまとめてみました。

 

<作成日2016.4.19/最終更新日2024.4.29>

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。

 

この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

・スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存を治すための8つのポイント

 1.家族間の絆が大切。承認と安心感を与える
 2.家族も変わる必要がある
 3.依存症とは、自己治療であるという視点を持ち、背景を理解する。本人の性格やいい加減さのせいにしない
 4.無理やり取り上げたり、制限することは逆効果
 5.安心感の鍵は、Being(存在)を承認すること
 6.安心感を持った上で、改善に向けての具体的な行動を一緒に検討する
 7.離脱症状や渇望を乗り越える
 8.精神科医やカウンセラーのサポートも適切が必要な場合

 

 →依存症全体の知識、スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の診断とチェックについては、下記をご覧ください。

 ▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の診断とチェック~3つの基準と4つの視点から

 ▶「依存症(アルコール依存等)とは何か?その種類、特徴、メカニズム」 

 

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 スマホ、ネット、ゲーム依存症の治療、ケアは、特に対象がお子さんの場合は、ご家族が対象となります。重いケースは必ずといってよいほど家族関係、家庭環境の問題による愛着障害、発達性トラウマが影響しています(学校、習い事での問題が影響することももちろんあります)。しかし、機能不全家庭の場合、しばしば、親御さん自身がそのことを認めたくない、子どもがおかしいことにしておきたい、という意識も見られます。依存症のケアには、家族の対応・環境の改善が不可欠です。「耳の痛い」話に感じるかもしれませんが、ぜひ、いろいろと理解を深めていただければ幸いです。

 

 

スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存を治すための8つのポイント

  スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存を治すためには何が必要なのですか?大切なポイントをまとめてみました。下記のポイントは予防にも役立ちます。

1.家族間の絆が大切。承認と安心感を与える

 依存症の大きな原因は、本来安全な場所である家庭が安全ではなかったり、居場所がないことにあります。依存症とはあくまで現象であって、依存症そのものは原因ではないということです。

 絆とは、双方のコミュニケーションで築かれるものです。関わりが欠けていたり(ネグレクト)、過剰(過干渉)でもバランスを欠いてしまいます。ほどほどに安定していることが大切です。親がケンカをしている、「躾」「教育」という建前のもと、子どもに心ない言葉をかける、といったことを繰り返していては絆は作られません。支配と絆とは異なります。

 

 健全な状態とは、たくさんの依存の糸が張り巡らされて心地よいネットのようになっているものです。健全な依存のネットワークが切れていくことである特定の物事に依存(依存症という状態)せざるを得なくなってしまうのです。繊細で、気遣いのできる人ほど、しわ寄せを受けやすいのです。

 

 依存症の解決には、まず家族間の絆を取り戻す必要があります。ちょっとした気付きで取り戻せる場合もあれば、大変な作業になる場合もあります。親自身が、さらにその親から承認されていなかったことが、家族を承認できていない原因となっているといったことも珍しくありません。家族の中で依存症が発生したということは、絆が切れている、という事に気づき、取り組みを始めることが大切です。

 

2.家族も変わる必要がある

 依存症は「家族の病」と呼ばれます。そのため、依存症の当事者だけを治せばよい、という考えではなかなくうまくいきません。家族も一緒に変わる必要があります。これは決して依存症が親の責任という意味ではなく、家庭という"環境”に原因があるということです。親自身も、環境の影響を受けて否応なく問題に巻き込まれているプレーヤーということです。

 依存症を生み出し維持させられてしまうことを「イネーブリング」といいます。家庭の環境は適切か、環境を形成する家族自身の関わり方は適切か、見直してみることが必要です。家族がカウンセリングを受けるだけで環境が変わり、依存症が解決した、というケースもまれではありません。

 ▶「機能不全家族とはなにか?家族の悩みの原因と特徴

 

 

3.依存症とは、自己治療であるという視点を持ち、背景を理解する。本人の性格やいい加減さのせいにしない

 依存症とは、つらい現実からの緊急避難であり、癒やすための自己治療という側面があります。
 頼るべき親が不安定であったり、自分の味方をしてくれないような環境に置かれることの絶望感は計り知れません。特に子どもにとっては逃げ場は限られます。スマホ、ゲーム、ネットという逃げ場がなければ、ひょっとしたら自殺していたかもしれません。依存症が命綱となって、その子を助けてくれている、ということもあるのです。

 そうした背景を理解しないまま、「ネットやゲームばかりして、あなたは!」と叱りつけたり、説得しても解決にはなりません。 

 

4.無理やり取り上げたり、制限することは逆効果

 ゲームを取り上げて隠したり、売ったり、壊したり、制限ツールを導入したり、さまざまな手段でインターネットやゲームの利用に制限をかけようとします。しかし、上記に書いたように、依存症に至るのはゲームそのものよりもそれ以前に原因があります。原因を理解した上で、親子でお互いに納得した上で制限を行う必要があります。
 子どもは確かに未熟ですが大人が思う以上にさまざまなことを感じて理解しています。大人の一方的な都合などは見抜かれてしまいます。
 
 「甘やかしてはいけない!」として無理に制限を課しても決してうまくいきません。一時的にうまくいったように見えても、問題を先送りしているだけだと捉えたほうが良いでしょう。

 

 

5.安心感の鍵は、Being(存在)を承認すること

 安心感を与える際に陥りやすい過ちは、「~をしたら、認めてあげる」「~しないから、怒られるのだ」といった考え方です。「自分は安心感を与えようとしているが、子どもは勉強しない」といったことはよく聞かれます。しかし、実は行動の見返りに承認を与える、というのは安心感を与えることにはならないことがわかっています。

 

・Being(存在)-Doing(行動)-Having(所有)の3つのモデル

 私たち人間を理解するわかりやすいモデルに、Being(存在)-Doing(行動)-Having(所有)というものがあります。Beingとは、存在そのものでOKと思えるような感覚を持つことができていること、存在を承認されているということ。Doingとは、仕事や勉強などで成果を上げること。Havingとは、何かを達成して報酬を得ること、です。

 社会生活を送る中で、これら3つがバランスよく満たさせることがとても大切とされます。

 

・Doing、Having偏重

 現代社会は競争社会です。そのため、Doing、Having偏重になりやすく、子どもに対しても、ついつい何かをしたら認めてあげる、といった態度をとりがちです。

 しかし、Doing、Havingとはどこまで言ってもキリがなく、今日成功しても、明日は失敗して見捨てられるかもしれないという恐れと隣り合わせなのです。

 

・Beingを育む

 そこで大切なのはBeingです。どんな失敗しようが、非難されようが、自分は自分でいることができる。認めてもらえている、という感覚がその人を支えます。

 結果的にDoing、Havingも向上させてくれます。Beingは、仕事や勉強で満たすことは難しく、基本的には家庭、家族との間で築かれるものです。家は、Beingの場です。ついつい、Doing、Having ばかりを要求していないでしょうか?

 

 「あなたは何もなくてもそのままで大丈夫」と心の中でも信じて、言葉でも伝えることが大切です。存在(Being)を承認する視点を持つと大きな安心感を与えることができ、子どもの行動はそれだけで改善していきます。

 

 

6.安心感を持った上で、改善に向けての具体的な行動を一緒に検討する

 上記までに記したような対処によって安心感と居場所を確保すると、依存症は徐々に収まってきます。

 しかし、"習慣としての依存”は残り続けることがあります。習慣としての依存の解決には、いくつかの方法があります。

 

・心理教育を行う。実害について互いに理解する

 インターネットやゲームが及ぼす悪影響について話し合い理解を深めます。身体はもちろんですが、そのまま続けた場合に生じる学業などへの影響について話し合います。紙に書き出してみることも整理するためには効果的でしょう。また、診断のためのチェックリストなどを本人に記載させて、自覚を促すことも大切です。

 ▶「スマホ、ネット、ゲーム依存症の診断とチェック~3つの基準と4つの視点から

・親子で時間の制限などルールを定める

 時間の制限などについてルールを定めていきます。これには本人のコミットメント(納得)が大切です。

 

・認知行動療法 

 考え方を修正したほうが良い場合には、認知行動療法も有効です。
  

 

・愛着障害やトラウマのケアをする

 依存症の場合は必ずその背景には愛着不安や発達性トラウマが存在します。

 愛着障害や発達性トラウマのケアをすることはとても有効です。

 

 関連する記事はこちら

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因と症状

 ▶「子どもの愛着障害の特徴と治し方~愛着(アタッチメント)を育む4つのポイント

 

 

 

7.離脱症状や渇望を乗り越える

 依存症で大きいのは、離脱症状(俗に禁断症状と呼ばれます)や依存への渇望を乗り越えることです。根本原因を緩和させても、習慣として染み付いた脳のメカニズムの失調はすぐには収まりません。離脱症状となって襲ってきます。

 ある一定期間を完全にアクセスできない環境に身をおいて打ち克つことが必要です。そのために入院する、プログラムに参加するということも手段としては必要になる場合もあります。※日本においては残念ながら専門の病院が少ないのが実状です。

 

スマホ、インターネット・ゲームへの依存を促進する仕組み 

 そもそもインターネットサービスやゲームは利用者を増やすことを目的としていますから、随所に“ハマる”工夫が凝らされています。依存症のメカニズムに沿うような形でゲームは作り込まれています。

 インターネット・ゲームにある要素としては下記のようなものがあります。

 ・非日常的な興奮
 ・仮想の世界でのもう一つの自分(アバター)や生活
 ・仲間とのつながり
 ・報酬
 ・成長感
 ・達成感
 ・自己効力感

 インターネットやゲームの中には、生活があり、成長があり、つながりがあり、達成があり、興奮があります。単純なパズルゲームでも、RPGの要素をもたせたものがあり、技能の向上やミッションの達成があります。「社会のパラレルワールド」に必要なすべてがそろっているといってもいいでしょう。

 

 

8.精神科医やカウンセラーのサポートも適切が必要な場合  

 精神科医やカウンセラーも、病識のない本人をたちまち説得する魔法があるわけではありません。病識がない人に無理に治療しても問題をこじらせるだけです。

 精神科医やカウンセラー本人への対応策についての家族の相談はもちろんですが、依存症は「家族の病」という側面があるため、家族への心理教育やカウンセリングも行います。

 

 本人が治療を受けない場合は、家族がまずカウンセリングなどをうけることは大変効果的です。アルコール依存症などでも、家族がカウンセリングや自助グループに参加することで問題が解決したという報告は多く寄せられています。

 医師やカウンセラーはプロとして問題の全体像を明らかにしながら、問題をサポートすることで、依存症の背景にある原因を解消させていきます。

 

 依存症そのものを治す薬というものはありません。薬物療法は、衝動性をおさえるなど補助として用いられることがあります。(未成年への薬物の使用は自殺念慮を高めるなどの危険性があるため慎重な判断が必要です)

 ゲーム・インターネット依存症の専門医は日本では非常に少なく、久里浜医療センターなど数えるほどしかありません。お近くに専門の機関がないかどうかはインターネット等で調べてみましょう。

 

 

対策が遅れている日本

 韓国では、国を挙げて対策に取り組んでいます。例えば、16歳未満のユーザーは、深夜12時以降はオンラインゲームができなくなる「シンデレラ法」。インターネット依存症治療する「レスキュープログラム」「レスキュースクール」 などさまざまな施策が行われています。

 日本では、まだインターネット・ゲーム依存症が病気であるという認識も一般的ではありません。総務省が規制のための組織を作ったり、業界団体による自主規制も行われていますが、十分ではありません。適切にインターネットやゲームを楽しむためにも対策が望まれます。

 

 

 

 →依存症全体の知識、スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の診断とチェックについては、下記をご覧ください。

 ▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の診断とチェック~3つの基準と4つの視点から

 ▶「依存症(アルコール依存等)とは何か?その種類、特徴、メカニズム」 

 

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。

(参考)

樋口進「ネット依存症」(PHP研究所)
樋口進「ネット依存症のことがよくわかる本」(講談社)
岡田尊司「インターネット・ゲーム依存症」(文春新書)
遠藤美季「脱ネット・スマホ中毒」(誠文堂新光社)
墨岡孝、遠藤美季「ネット依存から子どもを救え」(光文社)

清川輝基編著「ネットに奪われる子どもたち」(少年写真新聞社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)

DSM(米国精神医学会の診断マニュアル)第5版

など