過度に体重を制限したり、過食がやめられなくなったり、など多彩な症状を見せる摂食障害。女性に顕著に見られる症状です。「ダイエットのし過ぎ」など誤解も多いです。症状を理解するためにはチェックリストのように情報を並べるだけではなく、複数の視点から確認する必要があります。医師の監修のもと公認心理師が、摂食障害の症状について5つの視点から専門知識や経験を交えてまとめてみました。
<作成日2016.4.13/最終更新日2026.9.19>
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
1.摂食障害(拒食症、過食症)の種類
2.摂食障害(拒食症、過食症)のチェック
3.摂食障害(拒食症、過食症)の症状の経過
4.摂食障害(拒食症、過食症)の症状
5.摂食障害に併存することのある精神疾患
→摂食障害(拒食症、過食症)の原因と治し方については、下記をご覧ください。
トラウマ臨床の観点からは、過食でお困りのケースがとても多いです。それも、むちゃ食いや嘔吐を伴うようなケースがあります。摂食障害と診断されていなくても、お伺いすると不全感を解消するために食べ過ぎてしまうというという方はとても多いです。摂食障害の背景は一様ではありませんが、当センターでは、とくに過食や嘔吐を伴うケースで、愛着不安やトラウマ、対人関係のストレス、不全感などが食行動と関係しているケースにも注目しています。
拒食症についても愛着やトラウマ、家族関係の問題が想定されます。ただ、拒食症は精神障害の中でも対処が難しい症状の一つです。拒食症をカウンセリングのみで対応することは危険です。また、病院もどこでも良いわけではありません。必ず専門の医師、病院でのサポートを受ける必要があります。
1.摂食障害(拒食症、過食症)の種類
摂食障害には、主に神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)、回避・制限性食物摂取症(ARFID)などがあります。種類によって現れる症状は異なります。
- 神経性やせ症:食事制限と著しい低体重、体重増加への強い恐怖など
- 神経性過食症:むちゃ食いと、嘔吐・絶食・過剰運動などの代償行動
- 過食性障害:むちゃ食いを繰り返すが、習慣的な代償行動は伴わない
- ARFID:体型へのこだわりとは別の理由で食事を十分にとれない
種類や原因について詳しくは「摂食障害とは?拒食・過食の種類と原因~7つのポイント」をご覧ください。
2.摂食障害(拒食症、過食症)のチェック
次に、種類から公式の診断基準(米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院))から摂食障害の症状を理解してみましょう。
以下はDSM-5-TRなどで用いられる主な特徴を、理解しやすい形に整理したものです。実際の診断は、医師が身体状態や症状の経過なども含めて行います。
・神経性やせ症(拒食症)のチェック
次のような特徴がみられる場合には、神経性やせ症の可能性を考えます。
- 食事の量を強く減らしている
- 明らかに体重が減っている、または年齢・身長に対して低体重になっている
- 太ることや体重が増えることに強い恐怖がある
- 体重を増やさないために、食事制限、過剰な運動、嘔吐、下剤の使用などを行っている
- 周囲からは「やせている」と言われても、自分では十分にやせていると思えない
- 自分の価値が、体重や体型によって大きく左右される
- 食事、カロリー、体重のことが頭から離れない
神経性やせ症では、著しい低体重に加えて、体重増加への強い恐怖や、体重・体型の捉え方の問題などがみられます。 食事を制限するタイプだけでなく、過食や嘔吐などを伴うタイプもあります。
・神経性過食症(過食症)のチェック
次のような特徴がみられる場合には、神経性過食症の可能性を考えます。
- 短い時間に大量の食べ物を食べてしまうことが繰り返される
- 食べ始めると、自分では止められないと感じる
- 過食した後に、体重が増えることへの強い不安や罪悪感がある
- 過食後に、自分で吐く、下剤などを使う、食事を抜く、極端に食事を制限する、激しく運動するなどの行動をする
- 体重や体型が、自分自身の評価に強く影響している
- 過食や嘔吐などを人に知られないよう隠している
神経性過食症の中心的な特徴は、「むちゃ食い」と、それによる体重増加を防ぐための代償行動を繰り返すことです。 体重は必ずしも高いとは限らず、標準的な範囲にある人もいます。
・過食性障害のチェック
次のような特徴がみられる場合には、過食性障害の可能性を考えます。
- 短い時間に、通常より明らかに多い量を食べてしまうことが繰り返される
- 食べ始めると、自分では止められないと感じる
- 普段よりかなり速く食べる
- 苦しいほど満腹になるまで食べる
- 空腹ではないのに大量に食べることがある
- 食べているところを見られたくなくて、一人で食べることがある
- 過食した後に、自己嫌悪、落ち込み、強い罪悪感を感じる
- 過食すること自体に強い苦痛を感じている
神経性過食症との大きな違いは、過食の後に、嘔吐、下剤、絶食、過剰な運動などの代償行動を習慣的には行わないことです。 DSM-5では、むちゃ食いが平均して週1回以上、3か月間続くことなども診断基準に含まれます。
・回避・制限性食物摂取症(ARFID)のチェック
次のような特徴がみられる場合には、回避・制限性食物摂取症(ARFID)の可能性を考えます。
- 食事そのものへの関心が乏しく、あまり食べたいと思わない
- 食べ物の味、におい、食感、温度などが強く気になり、食べられるものが限られている
- 「吐くのではないか」「のどに詰まるのではないか」など、食事に伴う不快な出来事を強く恐れている
- 食べられる食品の種類や量が極端に少ない
- 体重が減っている、または成長に必要な体重増加がみられない
- 栄養不足がみられる
- 栄養補助食品や経管栄養などが必要になることがある
- 食事の問題によって、学校、仕事、外食、人づきあいなどに支障が出ている
ARFIDでは、神経性やせ症のような「太りたくない」「やせたい」という体重・体型への強いこだわりが中心ではありません。 食への関心の乏しさ、感覚への過敏さ、嘔吐や窒息への恐怖などから食事を避けることが特徴です。
3.神経性やせ症でみられることのある症状の経過
摂食障害の経過は人によって大きく異なります。ここでは、主として神経性やせ症でみられることのある経過を、臨床上の一例として示したものです。すべての方がこの順序をたどるわけではありません。
・発症
まず、思春期に発症することが多く、思春期に特有の不安定な心性が発症の前提となります。それは、急激に人間関係が難しくなったり、価値観の多様化、アイデンティティの確立、親からの自立の時期と重なるからです。その時期には通常は、友人や先輩、先生、親などから適切なサポートを受けて荒波を乗り越えていくものですが、不安定な愛着、トラウマ、気質などいくつかの条件から乗り越えることが難しい場合に、絶対的な自信、安心を得ようと「痩せる」ということに価値を見出すようになるのです。
むちゃ食い症(過食性障害)の場合はもう少し年齢は高めであることも多く、むちゃ食いによってストレスを発散させようとします。経過の進展やきっかけも拒食症とは異なります。
・初期
食事制限や体重減少によって達成感や自己コントロール感を得て、一時的に気分が高揚したり活動性が高まったりする人もいます。不安な環境を乗り越える手段を自分で獲得したという感覚があるわけですし、実際に痩せることで達成感を得ることができます。痩せていることに不都合を感じないことも多く、病識は欠如していることが多いのです。 特に、自分が太っていると感じているため(ボディイメージの障害)、さらに拒食に取り組み続けます。
・体重増加への恐怖や食事へのこだわりが強くなる
しかし、徐々に「痩せ」への願望は恐怖症へと変わっていきます。痩せることによって、達成感を得るのではなく、義務感と恐怖を感じるようになります。
・反動としての過食
拒食が進みすぎて痩せていってしまうと、反動として過食が生じます。痩せ過ぎの状態に対して危機を回避するための自然な身体の衝動です。拒食の人は、回復期にも過食になることも多いとされます。
しかし、本人は不安から逃れて絶対の自信を得るために行っている拒食の「失敗」として感じられるため、過食している自分に罪悪感や絶望感、無力感、敗北感、惨めさを感じるようになります。
むちゃ食いでは、「食べ始めると止められない」「自分ではコントロールできない」という感覚を伴います。人によっては、我を忘れたような感覚や解離的な感覚を伴うこともあります。食欲以外の要因によって食べることが「過食」ですから、本人に喜びはありません。
・代償行為と問題行動
過食による敗北感をリセットしようと、代償行為を行います。嘔吐などは、その苦しみからすっきりした感覚を持つことができますが、長続きせず、特に痩せすぎると嘔吐も難しくなってきます。過食になると、食べ物を入手するために万引きなど問題行動が見られるようにもなります。
・医療機関の受診
拒食は自分が望んだ自己コントロールの結果ですが、過食は自己コントロールできないものです。ですから、過食の発症をきっかけに医療機関を訪れるケースは多いのですが、拒食のみの場合は、本人が治療の必要を訴えることはありません。体重の減少や問題行動などを見て家族などが医療機関への受診をすすめて来院するのが普通です。
・「自己治療」としての拒食
家族は、本人をしっせきしたり、説得したりしますが、効果はありません。本人は病気との認識がないこともあります。当センターの臨床では、強い不安や自己評価の不安定さを抱えている人にとって、食事や体重をコントロールすることが一時的な安心感や自己コントロール感を得る手段になっているようにみえるケースがあります。その意味で、拒食が本人なりの「自己治療」や“浮き輪”のように機能していると捉えることがあります。
その手段を奪われることに激しく抵抗する、否認することは当然といえます。そのため粘り強く、摂食障害の身体に及ぼす影響を伝えながら、本人の根底にある自信のなさや不安に寄り添うことが必要です。
・弊害
身体への影響としては栄養失調や代謝の不良もありますが、嘔吐によって歯を失ったり、不整脈による突然死や自殺なども起こります。
・摂食障害の回復
徐々に自己愛を育めるように環境を整えて、精神的な支えが生まれるようにサポートをしながら、健康な体を維持するために必要なケアを行っていき、回復していきます。
・変化する症状
あるときは拒食で、ある時は過食が見られというように、症状は変化していきます。症状の変化によって身体リスクや必要な治療も変わるため、その時点の状態を改めて評価することが重要です。
・回復の割合や治りやすさ
過食のみ、拒食のみなどの場合のほうが治りやすいとされます。多くのケースで思春期に発症し、7割は早期に回復していきます。早期に適切な治療につながることが重要です。経過は個人差が大きく、長期化するケースもあります。
4.摂食障害(拒食症、過食症)の症状
次は、主な症状から摂食障害を理解してみましょう。
<神経性やせ症・神経性過食症で主にみられる症状>
・痩せ願望・肥満恐怖
痩せることを強く求め、標準体重よりも低いにもかかわらず、少しでも体重が増えることに強い恐怖感をもっています。
・ボディイメージの障害
自身が痩せていることを認識していません。逆に太っていると認識し、自分の外見を否定的に捉えています。
・食行動の異常
多彩な行動があります。全く食べない場合もあれば、特定のものを食べない。食べるタイミングが決まっている、など。チューイングや、食べずに部屋に食べ物を溜め込む食物貯蔵なども見られます。
・過食
過食も多彩な症状がありです。家では食べないが、外ではいっぱい食べる。お菓子ばかり食べる。こっそり隠れて食べる。家族に買いに行かせる、など
・無月経
低栄養やエネルギー不足によって月経が止まることがあります。月経異常は身体が十分な栄養を得られていないサインの一つで、骨密度低下などにも関係します。まずは低栄養の改善が重要ですが、無月経が続く場合には医療機関で身体状態を評価してもらうことが大切です。
・パージ/代償行為
特に過食が見られる場合は自発性嘔吐、下剤や浣腸の使用、極端な運動・ダイエット、絶食が行われます。
・病識の欠如
自分が摂食障害であるという認識を持っていないことが多いです。特に拒食の場合は病識の欠如が多く見られます。これは、本人が不安に対処しようとして始めた行為であることと、症状が進むと低栄養によって判断がつかなくなるということも病識の欠如の原因です。過食が見られるようになると、自分の意志によらない症状であるため、病識をもち、医療機関に駆け込むことがあります。
・完璧主義
神経性やせ症などでは、完璧主義や柔軟な切り替えの難しさがみられる人もいます。ただし、すべての方に共通する特徴ではありません。
・対人関係の障害
摂食障害に伴って対人関係が狭くなったり、対人不安が強くなったりすることがあります。また、もともとの対人関係の難しさが背景にある場合もあります。
・他者の不在
本人にとっては自分の中だけで完結するような孤独の中で痩せることに取り組んでいるような感覚があります。実際、摂食障害に陥ることで人間関係も少なくなって、心から信頼できる人は限られるようになります。
・抑うつと不安
肥満への不安以外にも対人関係への不安や、抑うつ、自己嫌悪や無力感が生じることがあります。
・自尊心の低下
摂食障害の背後には自尊心の低下があるとされます。過食の場合は、過食行動や嘔吐など代償行為によって自尊心をさらに低下させています。
・症状による縛られ感
摂食障害の症状が進むことで、決まったものを食べないといけない、という義務感、強迫感が生じます。
・まきこみ
人に食べさせたがったり、人の食べ物を気にしたり、人が自分よりも食べないと不安になったりすることがあります。
・過活動
拒食で痩せ過ぎの場合に生じるもので、せかせかと動きまわったり。一日に何度も体重計に乗ったりします。
・問題行動
過食・排出症状が強いケースなどで、衝動的な行動や万引きなどの問題行動がみられることがあります。
・運動強迫
強迫的に運動を続ける。
・自傷行為
摂食障害では自傷行為や希死念慮が併存する場合があり、注意が必要です。
▶「自傷行為(リストカットなど)の心理と原因~なぜ行うのか?」
・日常生活での制限、対人関係での制限
他人と食事ができなくなることで交友範囲が狭まったりなどさまざまな制限を受けるようになり、背景にある対人関係の障害がさらに促進される事にもなります。
・骨粗しょう症
無月経によって、骨粗しょう症にもなりやすくなります。思春期であれば身長などの発育が遅れることになります。
・睡眠障害
低栄養や不安、抑うつなどに伴って睡眠が乱れることがあります。睡眠の問題が強い場合には、摂食障害そのものの治療とあわせて医療機関で評価します。
▶「不眠症・睡眠障害の原因と診断~6つの視点からチェックする」
・低代謝による「寒さ」
代謝が下がり低体温になるため普通以上に寒く感じることがあります。
・低栄養によるけん怠感
血糖値の低下や、肝機能障害、不眠などの影響でけん怠感を感じることがあります。
・高い死亡のリスク
特に神経性やせ症は、低栄養による身体合併症や自殺などによって生命に関わることのある精神疾患です。
・その他
貧血、肝機能障害。感染症のリスクの増大。便秘。脱毛。脳の萎縮。集中力の低下。吐きだこ。嘔吐の際の胃酸で歯が溶けて失われる。
<過食性障害でみられる症状>
むちゃ食い、コントロールできない感覚、過食後の苦痛・罪悪感など
<ARFIDでみられる症状>
食への関心の乏しさ、感覚過敏、嘔吐・窒息への恐怖、偏食・食事量低下など
5.摂食障害に併存することのある精神疾患
最後は、併発する病気から摂食障害を理解してみましょう。
うつ病や不安症、強迫症などが併存することがあります。摂食障害による低栄養や生活上の困難によって抑うつ・不安が強くなる場合もあり、どちらが先かはケースによって異なります。
・うつ病
うつ病を併発していると、抑うつ的、早朝覚醒、食欲がなくなったりします。
抑うつ状態とうつ病とは異なりますので、区別する必要があります。
▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」
・社交不安障害
対人関係の問題から生じるために、症状がとても類似しています。
▶「対人恐怖症、社交不安障害(社交不安症)とは何か?原因とメカニズム」
・強迫性障害
・身体醜形障害
・パニック障害
▶「パニック症(パニック障害)とは何か?その症状を詳しく解説」
など
→摂食障害(拒食症、過食症)の原因と治し方については、下記をご覧ください。
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(参考・出典)
日本摂食障害学会「摂食障害治療ガイドライン」(医学書院)
滝川一廣・小林隆児・杉山登志郎・青木省三=編「そだちの科学25号 摂食障害とそだち」(日本評論社)
富澤 治「裏切りの身体-「摂食障害」という出口」(エム・シー・ミューズ)
松木邦裕「摂食障害というこころ」(新曜社)
水島 広子「焦らなくてもいい!拒食症・過食症の正しい治し方と知識」(日東書院出版)
など

















