悩みの原因や解決方法

愛着障害を治療、克服するために必要な5+4つのポイント

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 愛着の不安定さ(愛着障害)は、うつやパーソナリティ障害、依存症、トラウマなど実はさまざまな問題の原因と考えられています。

ただ、具体的にはどのように取り組めばよいのかについて情報を得ることは難しいのが現状です。

 本記事では、愛着障害を治療、克服するために必要なことについて、専門知識をもとにそのポイントをまとめてみました。よろしけばご覧ください。

 

 関連する記事はこちら

  →「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、4つの愛着スタイルについて

  →「「愛着障害」とは何か?~さらにくわしく知りたい方のために

 

<作成日2019.9.8>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたり心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

不安定な愛着(愛着障害)が生む問題

愛着障害を克服する5つのポイント ~青年期以降、大人の場合

愛着障害を克服する4つのポイント ~子どもの場合

 

 

 

 

 

不安定な愛着(愛着障害)が生む問題

 まず、愛着が不安定になるとどうなるのでしょうか?社会で生きていく上で、さまざまな不具合が生じてきます。主要なものとして下記のようなことが挙げられています。

 

・特徴的な症状

 ・成人してからうつ病や人格障害などになりやすくなる。

 ・社会に出た際に対人関係、コミュニケーションが不安定となる。
 ・アイデンティティや適応に問題が生じるため、生きづらさを感じやすくなる。
 ・ストレスへの耐性や対応力が低下する。
 ・発達障害や、ADHDに非常に似た症状が見られるようになる。

 ・生きづらさを解消するために依存症や自傷行為に陥りやすくなる。

 ・知能が低下する(安定型と不安定型でIQで平均10以上の差が生まれる)。
 ・認知機能(聴覚的反応や空間統合能力、問題解決力など)が低下する。
 ・性的活動をうまく行えず、満足を得にくい。
 ・サドマゾ的な倒錯した対人での関わりの要因ともなる。

 など

 

・愛着障害によって生じると考えられる主な精神障害

・うつ病

 愛着が不安定な方は、成人してからうつ病になるリスクが高いことが知られています。

 ⇒「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 

・依存症

 愛着の不安定さを癒やすために依存症に陥る方も少なくありません。

  ⇒「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと」

 

・パーソナリティ障害

  ⇒「パーソナリティ障害の正しい理解と克服のための7つのポイント

 

・社交不安障害(対人恐怖症)

  ⇒「対人恐怖症、社交不安障害とは何か?原因、克服、症状とチェック」

 

・強迫性障害

 ⇒「強迫性障害を克服するために知っておきたい9つのこと~原因、症状、チェック

 

・不安障害、パニック障害

  ⇒「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと」

 

・適応障害、トラウマ

  ⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」

  ⇒「適応障害とは何か?~本当の原因、症状と治療、接し方で大切なこと

 

・解離性障害

  ⇒「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

 

・過食症

  ⇒「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

・発達障害

 愛着の不安定さは発達障害の原因にはなりませんが、発達障害とほぼ同じような症状が見られることがわかっています。

  ⇒「大人の発達障害の本当の原因と特徴~さまざまな悩みの背景となるもの

 

 など、上記以外にも、愛着の不安定さが背景と考えられる症状は存在します。

 

 

 

 

 

 

愛着障害を克服する5つのポイント ~青年期以降、大人の場合


ポイント1.養育者(母親)との関係にこだわらない

 愛着障害というのは、幼少期に安心安全な環境を与えられなかった影響を引きずり、さまざまな問題を引き起こしているということを指します。解決のためには、原初的に抱えている不安感を解消することが必要です。

 

 原因を考えるストーリーとして「養育者との関係」という視点は非常に有効ですが、解決する際に養育者との関係にこだわることは問題を長引かせます。

 

 養育者が自責の念に駆られたり、当人が養育者との和解や謝罪を引き出すことにこだわったりしてももちろんそれでうまくいくケースもあるかもしれませんが、逆に失望するケースのほうが多い。なぜなら、相手は容易には変わらないからです。養育者自身が発達障害という特徴があり、そのために養育が淡泊なものであったケースも少なくありません。

 

 相手を説得して、自身の苦しみを理解してもらおうとすることは難しいことです。それよりも、解決に向かって進んでいくこと。原初的に抱えた愛着不安を癒し、安定型愛着の人たちが反抗期にそうするように、親へのこだわりや与えられた価値観を捨て、自らが自立、成長し、社会のさまざまな人たちとゆるやかにつながっていくことが大切です。

 

 

ポイント2.過去へのとらわれを解消する~「内的ワーキングモデル」を更新する

・内的ワーキングモデルとはなにか? ~心の中の”安全基地”

 上記にも書きましたが、成人は、愛着を内面化していて、愛着対象がいなくても心の中でシミュレーションすることで安心を得ています。それを「内的ワーキングモデル」といいます。愛着に関する内的ワーキングモデルとは、自分自身が愛されるに足る人物ととらえる自己イメージと、自分は愛着対象から愛される、助けてもらえるという信頼によって成り立っています。心の中の安全基地を「内的ワーキングモデル」といいます。

 

・過去を客観的に吟味し、意味づけしなおす

 東洋英和女学院大学の久保田まり教授はメインらの研究をもとに「成人期以降の愛着の安定性とは、過去や現在の親子関係が情愛に満ちた温かいものであり続け、愛着に関連する外傷的経験がない、ということでは決してなく、肯定的なことも否定的なことも過去の事実として自由に想起でき、葛藤のない感情状態で率直に語ることができ、意味ある自分の歴史として客観的に吟味できること、人生における“愛着”の意義に深い価値をおけること、であるといえる。」(久保田まり「アタッチメントの研究」(川島書店))としています。

 

・自分の中のわだかまりを解消する

 私たちは、タイムマシンに乗って過去に戻れるわけではありません。また、親子の関係の改善も相手あってのことで、セラピーの事例で感動的に語られる親子和解のシチュエーションが常に起きるわけでもありません。期待するような和解を示すことがどうしても難しい親がいることも事実です。それよりも、自分自身の中でわだかまりを解消し、意味づけを行うことが愛着の安定を取り戻す近道であることが分かります。

 

 わだかまりを解消し、自己イメージと自分自身は愛されるという信頼を回復できれば、親との和解や生き直しなど難しいことを行わなくても、愛着の安定を取り戻すことが期待できます。

 

 

ポイント3.トラウマを解消する

・トラウマが「内的ワーキングモデル」の更新を阻んでいる。

 「内的ワーキングモデル」は、その場の環境や経験によって時間とともに常に更新されています。しかし、トラウマが邪魔することにより、適切な更新が阻まれてしまいます。不安定型愛着とは、養育環境の悪さや外傷そのものではなく、柔軟な“学習”(「内的ワーキングモデル」の更新)が阻まれることに核心があるといえます。

 

・トラウマの解消に取り組む

 トラウマは処理されない過去の記憶のことです。大人になっても、過去のことが頭を離れない状態では、アップデートが行われなくなってしまいます。わだかまりを解消するために大切なのは過去に負ったトラウマの解消です。トラウマの解消にはトラウマケアの専門家の下で取り組む必要があります。

 関連する記事はこちら

  ⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

・不安定な愛着が生み出すさまざまな症状の解消に取り組む

 愛着障害によるさまざまな問題(うつ、不安障害、依存症など)については心療内科やカウンセリングルームなどで相談できます。

 

 

ポイント4.現在の環境を整える~よりよい絆を育んでいく

・ストレスフルな環境から離れる

 現在の環境がストレスが高いものであれば、愛着はどうしても不安定なものとなります。
 愛着とは根拠のない信頼や絆のことですから、実績を上げたり、期待にこたえた場合にのみ愛される、という環境は愛着の安定にとってはプラスにはなりません。

 不安定型愛着の場合は、ついつい、自分に不利な環境に身を置きがちですが、ストレスレベルが高い環境や自分が認めてもらえない環境からは距離を置くことが大切です。より良い環境を選択し、ゆるやかにさまざまな人たちと信頼関係を築いていくことです。
 

 

・パートナーや家族とはほどよい距離感で支え合う

 現在自分に関わるパートナーや家族とは、お互いに安全基地となることを意識し、支えあうことが大切です。

 その際には、「あなたは大丈夫」と心の中で思っていること。自分から見て相手に短所があったとしても「あなたは大丈夫」として相手を受け止めること。私たちが欲しているのは間違いを指摘されることではなく、無防備でもそのまま受け止めてくれる安全な環境です。家族であっても、相手は別の人間であり、それぞれのスタイルがあることを理解し、ほどほどであることが必要です。

 

 

 

ポイント5.「愛着」は回復できると知り、良い関係を育む

・「愛着」に関する誤解~スティグマではなく挽回可能なもの

 「愛着」理論の問題点は、それが「第二の遺伝子」としてスティグマのように影響を及ぼし続けると誤解されているところです。

 愛着というのは、自らは生存を確保できない乳幼児が安心安全を特定の養育者に求めることを指し、たくさんある人間というシステムのごく限定された重要な部分を指しているにすぎません。運悪く、愛着が十分に確保できなくても、その後の環境によって十分に挽回されます。

 

・周囲のゆるやかな人間関係から絆をはぐくむ

 人間は社会的な動物で、人間の絆というのは、生物学的な親だけではなく、社会における友人、先輩、先生、上司、恋人、配偶者といった人たちによってももたらされます。それらは生涯を通じて変化して発達し続けます。愛着理論はあくまで仮説にすぎません。愛着という視点にこだわりすぎないことが大切です。

 

 

愛着のイメージ5

 

 

 

愛着障害を克服する4つのポイント ~子どもの場合

1.養育者(親)が、愛着のメカニズムを理解する

 まず、できることは、養育者が愛着形成のメカニズムについて理解することす。

 たとえば生後半年から1年半までが愛着形成にピークである、との情報を理解しているのとしていないのとでは、養育環境づくりの方針は当然変わってきます。

 家族や地域でも愛着形成のメカニズムを知れば、子育てに対する助言や助け合いもより良くなります。

 

 

 

2.生後3歳までは、できるかぎり十分な養育環境を作る

・母親だけに責任を押し付けず、家族全体、社会全体で養育する

 生後3歳までは十分な養育を与えられる環境を作ることが大切です。日本は、母親に過度に育児の負担がかかっていることが指摘されています。子育ては母親(女性)だけの責任ではありません。男性も同じように関わる必要がありますし、社会も支援する必要があります。母親も父親も働きながら十分な愛着形成を行える環境をつくる必要があります。養育者のストレスにも十分配慮した無理のない養育が求められます。

 

・家族の支援や保育サービスを適切に利用する

 女性が社会進出しようとしている現代社会で母親がずっとつきっきりの育児を理想とすることは現実的ではありません。1対1の育児は過度のストレスで養育者を不安定に子育てに否定的な感情を生むことがわかっています。否定的な感情は愛着形成にもマイナスに作用します。必要があれば、保育サービスなどの社会支援を適切に利用しましょう。

 

参照)子どもについて不安があれば公的機関に相談所しましょう

  →「各地域の子育て相談窓口(例:東京 、大阪、など)」

  →「保健所一覧

  →「精神保健福祉センター 一覧

 

 

3.育児がうまくいかなくて当たり前。養育者は自らを責めない

・イライラするのは自然な反応

 近年の研究では。人間の母子は産後のホルモンの変化や、自立をはたすための機能として、愛情と同時にうつや嫌悪感、イライラが生じるのだということがわかってきています。また、周囲のサポートが少なくストレスにさらされると余裕がなくなると、どんな人でも育児をやめてしまいたくなる、ということも起きます。

 

 発達の特性もあり、育てにくい子がいることも事実です。育てやすさは子どもによってさまざまです。「他の家庭はうまくできている」とプレッシャーに感じる必要はありません。

 

・自分の状況を客観的に知る

 子どもにうまく接することができない場合でも内的(身体的な)、あるいは外的な環境のせいだと理解できると行動を修整しやすくなります。養育者は自分を責めることはなく、ただ、客観的に自分の状況を知ることが大切です。

 ※親がアスペルガー障害など発達障害傾向にある場合は子どもへの関わりは淡泊になったり、自他未分で強迫的に自分の価値観を押し付けたり、ということが起きる場合もあります。こうしたことについても養育者は自らの特徴を知ることが大切です。

 

ポイントを押さえて賢く手を抜く

 家庭や母親が子どもの教育やしつけ、食事などにこれほどまでにかかわるようになったのは人類史上初の事態です。親(特に母親)の責任が異常なくらい強調されすぎているのが実情です。それがむしろ愛着形成にマイナスに作用しているとも言えます。

 家庭にこれ以上の要求をすることは限界に達しています。逆説的ですが、愛着を安定させるためには「さらに手厚い養育を」ということではなく、適切な知識は得ながら「ポイントを押さえて賢く手を抜く」。社会の仕組みを整えて、子どもへの家族の関与、責任を低減する必要があります。

 

 関連する記事はこちら

 ⇒「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

4.これからの養育で、愛着は挽回できると知る

・環境によって改善する愛着

 1歳半までの養育環境が十分ではなく不安定型愛着を示しているケースでも、その後の養育環境次第では、安定型愛着となることが分かっています。
 実際、1歳半頃まで安定型を示していて、その後に養育環境が悪化したケースと、不安定型でその後、養育環境が改善した場合では、後者のほうが良い結果を示しています。

 

養育者を支える環境づくり

 養育環境の悪化には家庭内のストレスが原因であることが多いとされます。特に養育者を支える環境づくりが重要であることが分かります。

 

 

 

 関連する記事はこちら

  →「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、4つの愛着スタイルについて

  →「「愛着障害」とは何か?~さらにくわしく知りたい方のために

 

愛着のイメージ2

 

 

 

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参考

庄司順一、奥山眞紀子、久保田まり「アタッチメント」(明石書房)
久保田まり「アタッチメントの研究」(川島書店)
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメント~生涯にわたる絆」(ミネルヴァ書房)
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメントと臨床領域」(ミネルヴァ書房)
岡田尊司「愛着崩壊」(角川選書)
岡田尊司「愛着障害」(光文社)

岡田尊司「愛着障害の克服」(光文社)
滝川一廣、小林隆児、杉山登志郎、青木省三「そだちの科学 愛着ときずな」
「子育て支援と心理臨床 vol.9 2014 9月 愛着理論と心理臨床」

高橋惠子「人間関係の心理学 愛情ネットワークの生涯発達」(東京大学出版会)

高橋惠子「絆の構造」(講談社現代新書)

愛甲修子「愛着障害は治りますか?」(花風社)

神田橋條治「治療のための精神分析ノート」(創元社)

など

 

 

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