悩みの原因や解決方法

「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと

[「家族(家庭)/母親、父親(毒親)など」「愛着(障害)」とは何か?悩みの原因や解決方法]


 

 皆様の中には、対人関係がうまく行かずに悩んでいる人は多いと思います。
 なぜ、私たちは、人と接するときに、おかしな行動をとってしまうのでしょうか?頭で考えている理想的な振る舞いとは反対のことをしてしまうこともしばしばです。別にそんな行動を取らなくても、と思うことをしてしまう。本人も気がついていることも多いです。でも、やってしまう。
 問題行動だけではなくネガティブな感情にとらわれたり、ということもあります。なぜそのようなことが起きるのでしょうか?実は、“愛着”という観点に注目するとその謎が見えてきます。“愛着”の形成がうまくいかない背景にはトラウマも影響します。
 今回、多くの人に知っていただきたいと思い、愛着(愛着障害)についてまとめてみました。

 よろしければご覧ください。

 

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愛着障害

 

 

 

愛着(アタッチメント)とは何か?

 愛着(Attachment)とは、特定の他者との間に形成される情緒的な絆 のことを指します。
 愛着自体は、さまざまな人(もの、こと、動物など)へも形成されますが、愛着障害における「愛着」とは、生存、安全を確保するために特定の養育者に対して子どもが一方的に形成する絆です。

 現実に、あるいは潜在的に危機や不安を感じた時に、特定の人との近接を求めて不安を緩和し、「安全感」を得ようという生まれながらの性質のことです。
 心理的な性質ではなく人間以外の動物でも見られるものであり、生物にとっては進化の過程で得られた本能というべきものです。

 「愛着」というと余分な意味も含まれてしまうために、研究書では「アタッチメント」とカタカナ書きされます。

 

 

 

愛着のメカニズム


・人類発祥以前から続く生物学的なメカニズム

 愛着というのは心理的なメカニズムというだけではなく、生物学的な現象であり、ネズミなど人間以外の動物でも見られるメカニズムです。
 愛着を形成することが生物の生存にとって有利なためだと考えられます。

 


・人間の場合、生後半年~1歳半の間に形成のピークを迎え、その後の社会へのかかわりに影響を及ぼす

 愛着は、人間の場合、生後半年~1歳半の間に形成のピークを迎えます(個人差があり、2,3歳まで続く場合もあります)。
 愛着理論を確立したボウルビィは、「望まれない子どもは、“自分は両親によって望まれていない”と感じるだけではなく、本質的に望まれるに値しない、つまり、“自分は誰からも望まれない”と信じるようになるし、逆に両親から愛されている子どもは、両親の愛情に対する確信だけでなく、他のすべての人からも愛されると確信して成長する」
 「大人のパーソナリティは、未成熟な時期を通じての重要な人物たちとの相互作用、なかでも愛着人物たちとの相互作用の所産とみなされる」
 と述べているように、その後のパーソナリティや社会へのかかわりの基礎となると考えられています。

 


・特定の愛着対象を中心に階層化される

 特定の人物を中心に愛着は形成されます。特定の人物を選んで愛着を形成することを「モノトロピー」と言います。モノトロピーとは単一の人だけに愛着を持つということではありません。愛着は母親以外の家族や保育士などに対しても形成していくことが分かっています。その中でも、特定の人を選ぶというのは、愛着対象が優先順位づけされるように階層をなしているということを示しています。  
 大切なのは、特定の愛着対象からの「かかわりの一貫性や継続性、個別性」であるとされます。そのため、イスラエルの集団農場キブツの試みで知られるような一貫性や個別性のない集団保育は、愛着を不安定にすることがわかっています。

 愛着対象は、恋人、配偶者、などと生涯にわたって変化していきます。中でも最初に形成される特定の養育者との愛着が重要とされるのは、愛着が変化、更新していく際、最初に形成された愛着がモデルとなるからです。

 

(参考)コンボイ(護送船団)による愛着形成~母親との愛着が唯一絶対ではない

 近年は、集団保育においても、保育士などに対して愛着が形成されることがわかっています。1対1の養育よりも、護送船団(コンボイ)のように複数の大人たちが安全を見守るスタイルのほうが、その後の発達にプラスになる、とも言われています(柏木恵子「子どもが育つ条件」など)。これは、近代以前はコミュニティ全体で養育を行っていたということや、昨今の母親との関係を絶対視するあまりの過大な育児ストレスの問題、女性の社会進出、等を踏まえるとうなずける見解です。特に、母親は父親も育児に参加した場合のほうが、さらに専業主婦よりも仕事を持っているほうが育児に対して肯定的な感情を持つことがわかっています。専業主婦でずっと子どもと一対一というストレスフルな環境は健全な愛着形成を損なう恐れもあります(愛着理論を盾に母親に子育ての責任を過度に押し付けることが逆に愛着を損なうという逆説が考えられます)。

※愛着障害については、ボウルビィ自身が家父長制的な背景を指摘されているように、その作者や研究者の立場によって、母子関係や1対1の養育が強調されすぎるなどのバイアスもあるようです。※また、集団保育のリスクの例として挙げられるイスラエルのキブツとは社会主義的な共同社会のことです。かつてのキブツでは子どもは親と離れて「子どもたちの家」という施設で集団で生活していました。夜も家に帰らずに親元を離れて暮らす極端なスタイルで、いわゆる現代日本の保育園、幼稚園とは全く異なります。キブツを例に挙げることが適切かどうかは疑問もあります。

 


・愛着に関連する3つの行動システム

 ボウルビィによると、人間の行動は、さまざまな行動システムによってとらえられますが、とくに愛着に関連するものとして3つをモデルとして取り上げています。

 

 「愛着行動システム」:養育者の保護の下で生存を維持する。生後1歳半くらいまでに特定人物を対象に形成されていく。
 「怖れ/警戒システム」:怖れの対象の除去、回避を行う。
 「探索行動モデル」:自ら環境について学習し、対応能力を高め、自立へのスキルを身に着ける。

 これらの3つが相互に関係しあいながら、子どもの行動は制御されていきます。

 

 例えば、幼い子どもは、親の存在を心理的な安心材料としながら(「愛着行動システム」)、初めて会う大人や子どもと関わる(「探索行動モデル」)
 自分にとって、慣れない反応が返ってきたり、難しい相手の場合は、怖くなって泣き出して(「怖れ/警戒システム」)、お母さんの基へと帰って安心を取り戻す(「愛着行動システム」)。
 といったようなことです。

 まさに「愛着行動システム」は“安全基地”として、「怖れ/警戒システム」は“センサー、アラーム”として、「探索行動モデル」は、“自立への行動、学習”であり、3つが程よくバランスされることで、「安定した愛着」が形成されていきます。
 しかし、不適切な、不安定な養育環境にあると3つがアンバランスとなり、機能不全に陥ってしまいます。 
 

 

・心の中に形成される愛着~「内的ワーキングモデル」

 乳児は、愛着対象の存在自体が、愛着の安定に必要ですが、3,4歳以降になると、愛着対象の存在を内面化するようになります。つまり、養育者がその場にいなくても心の中でその存在や再会後について想像することができます。
 愛着対象との関係を心の中で確信し、予測できることを「内的ワーキングモデル」と呼びます。
 内的ワーキングモデルとは、様々な物事に関係する心の中の模型のようなもので、養育者との関係のみならず、自分自身についても自己イメージとして内的にモデルを形成します。
 愛着対象からいかに受け入れられているか、自分が愛されるに足る人物として内面化されているかが愛着の安定につながるポイントとなります。

 さらに、内的ワーキングモデルは、成長するにつれて様々な状態に対応できるように「多様化」していきますが、過去の外傷体験、不適切な養育へのわだかまりが強いと、多様化が柔軟に行われずに、社会に適応しづらくなります。

 

愛着のイメージ2

 

 

 

愛着の形成

 愛着理論を打ち立てたボウルビィは愛着は4つの段階で形成されるとしています。

 

・愛着形成の4つの段階

<第一段階> 誕生から12週目ごろまで

 人の識別はなく、特定対象への愛着は見られない段階です。人に対しては、微笑んだり、泣いたりという信号を発信して相手の応答引き出しています。
 ※最近の研究では、愛着の形成はすでにこのころから始まっているとされます。信号行動と応答という相互作用の体験が愛着形成の基盤となっているようです。

 

<第二段階>生後12週から6カ月ごろまで

 愛着形成の直前の段階です。人を識別し、人に対する親密な反応が増大していく時期です。
 特定の人物を選択して、愛着行動が見られます。母親のみならず、家族など特定の数人にも向けられるようになります。乳児に対して親が情動行動を鏡のように映し返してもらうことで、自分の情動を確認し、体験の連続性が与えられます。自分が何者かという、自己同一性の感覚の土台となります。

 

<第三段階>生後6カ月から2~3歳まで 愛着形成のピーク

 愛着形成、愛着行動が最も活発な時期です。特に、1歳半くらいまでがそのピークとされます。這い這いなどで移動しやすくなることも愛着行動を後押しします。
 愛着対象に接近し、接触を求めるようになります。養育者との分離を嫌がり、不安になり、再会すると安心します。
 養育者を安全基地(secure base)として探索行動を行うようになります。むやみに愛着を求めるのではなく、安心安全を得ることを設定目標として持ち、養育者の行動や対応に応じて、目標を修整するように行動することがわかっています。
 他者への共感を示したり、愛他的な行動を行うようにもなります。心の理論の基礎となるものです。愛着が組織化されるのと並行して、見知らぬ人には不安が高まる時期でもあります(新奇性不安)。
 愛着の対象となる養育者との長期の離別は、心身に大きな影響を及ぼす心的外傷となりえるとされます。この時期は、2,3歳まで続きます。


<第四段階> 生後3歳以降 愛着対象の実在から「内的ワーキングモデル」へ

 この時期になると自分以外の他者にもそれぞれに意図や目的があり、行動しているということが理解できるようになります。
 養育者が常にそばにいなくても、相手の行動を予測することで、心を安定することができるようになります。
 愛着対象が実在しなくても、自分の心に自分自身や養育者の存在についてのイメージを持ち、自分は愛されるに樽存在であり、母親からも愛される、という確信を持つことができるようになります。これを「内的ワーキングモデル」と呼ばれています。

 この時期以降、「内的ワーキングモデル」が介在することで、心の安定が守られながら自信をもって、社会とかかわり、自立をはたしていくことができます。

 養育者との関係が不安定な場合は、「内的ワーキングモデル」もいびつなもの、不安定なものとなり、その後の社会とのかかわりに大きな影響を及ぼすことになります。

 


・子どもの気質よりも養育の影響が大きい

 子どもの気質によっては、気難しいなど育てやすさに差はあることが分かっています。
 遺伝子に関する研究では、遺伝要因は25%程度ということが分かっています。養育などの環境要因は気質(遺伝)の3倍高いことが分かっています。

 

 


・愛着の形成に影響する養育者の関わり

 愛着の研究者であるエインスワースによると、愛着形成にとって重要なのは、特定の養育者の「応答性と有効性(安全基地としての機能)」であるとしています。


 
 1.応答性と感受性

  「応答性と感受性」については下記の4点の程度と、その一貫性が重要になります。

 ・感度の良さ-悪さ
   幼児の示す些細なサインへの感度や解釈の適切さ、適切に応答することを指します。
 ・受容-拒否
   幼児が示す肯定、否定の様々な反応や自分の生活が制約を受けることを受け入れることができることを指します。
 ・協調性-介入・干渉
   子どもを自立した存在として尊重できることを指します。直接、干渉しすぎるのではなく、望んでできるように間接的に気分づくりや誘導を行います。
 ・近づきやすさ-無視
   子どもにとって親が利用しやすい状態にあることで、子どもにすぐに関心を向けることができることを指します。

 

 

 2.養育者と過ごす時間の長さ

  特に生後半年から1年半は、特定の養育者は文字通りつきっきりでの世話が必要になります。この時期の離別、死別、養育の一貫性の配慮がないままに保育所に長時間預けられたりといったことは、愛着が不安定になる要因となります。

 (参考)養育者のストレスとバランス

 母親ばかりに育児の責任を押し付けられることへのストレスが問題になっています。研究では、母親は父親も育児に参加した場合のほうが、さらに専業主婦よりも仕事を持っているほうが育児に対して肯定的な感情を持つことがわかっています。専業主婦でずっと子どもと一対一というストレスフルな環境は健全な愛着形成を損なう恐れもあります(愛着理論を盾に母親に1対1の子育てを強いることが逆に愛着を損なうという逆説)。母親だけがずっと子どもと一緒にいるということは現実的ではありません。父親やその他の家族も分担する。まだまだ整備が不十分ですが、保育など社会の支援も活用するなかで、ストレスを軽減して、家族全体、社会全体で育児に取り組むことが結果としてバランスが取れた安定した愛着形成に役立つと考えられます。


  
 3.養育方法

  どのような濃度やスタイルで養育を行うのかは重要です。当然ですが、ネグレクトや虐待は悪影響を及ぼします。虐待というと暴力などを想起するかもしれませんが、転居などの幼少時の環境の変化、子どもの人格を否定するような態度、夫婦の不和などの環境も大きく影響することが分かっています。

 

 4.養育者の愛着スタイル

  愛着には世代間伝達がみられるように、養育者の愛着スタイルは、子どもの愛着形成に影響を及ぼします。
  

 

 

・愛着を支える2つのホルモン

 愛着の形成には、脳内の下垂体後葉から分泌されるオキシトシンとバソプレシンがかかわっていることがわかっています。ともに、ストレスレベルを下げ、基本的な信頼感や安心感を高めます。
 オキシトシンは特に女性ホルモンによって、パソプレシンは男性ホルモンによって強化されます。
 いずれも、養育環境に影響を受けることがわかっています。
 不安定型愛着の場合は、オキシトシン-バソプレシンシステムがうまく機能しなくなってしまいます。

 


・同調と反発のバランスの大切さ

 養育とは、同調と反発、言い換えると、愛着の形成と自立という矛盾する二つの動きが揺らぎながら進んでいきます。つまり、つながりながら離れていく。離れていくからつながりが求められ、適切につながるためには離れていくことが必要です。親子はへその緒が切り離された瞬間からずっと離れ続けていくものといえます。

 どれだけうまくいっている母子でも同調状態の割合は3割程度であり、大半は望んでいることと応答にはズレがあるとされます。それ以上の過度な同調や干渉はむしろ逆効果となることがわかっています。極端に言えば、母子でも3割程度しか同調できないことを考えると、他者との共感とは完全な同調によってではなく、相手の世界を尊重するという適度なわきまえによって成り立つものとも言えます。
 
 過干渉は養育者の感覚の押しつけとなり、適切な共感を育てることになりません。子どもは、自分の感覚を自覚したり、相手に適切に伝えることができなくなったり、相手の顔色を過度に伺うようになるなど、人間関係を支配-被支配の文脈でとらえるようになります。
 

 

愛着のイメージ

 

 

 

愛着形成の不全~不安定型愛着と愛着障害

 愛着を形成する時期に、愛着対象が定まらなかったり、不安定な愛情しか得られなかったり、虐待されたり、ということがあると、安定した愛着が形成されなくなります。安定な愛着しか得られないと、社会との関わり方も不自然とならざるを得なくなります。

 

 ボウルビィによると、養育者の拒否的な態度や無視が持続すると、愛着にかかわるすべての行動モデル(「愛着‐探索‐恐れ・警戒」行動システム)が不活性化する、としています。この状態になると、愛着にかかわるすべての情報を防衛的に排除するようになります。
 養育者と再会しても無視したり、無関心を示したり、といったことです。母を求めて拒絶され、再度混乱を引き起こすことを防止していると考えられます。

 

 愛着は、人間関係のモデルでもあると同時に、危機に瀕した時、疲弊した際に際に心理的な安心を得るためのものです。子どもが“学習”していくためには適切なモデルや探索行動の際には支えてくれるものが必要ですが、それらがない状態では、“学習”が適切になされなくなってしまいます。

 さながら、山登りの初心者が、ベースも作らないままに大きな冬山に登頂するようなものです。遭難してしまったり、仮に無事帰ってこれても大きな傷を負うことになりかねません。自分にとっての山(社会)が充実感を持って取り組める、自分を受け入れてくれる安心できる場所とはならず、恐ろしい魔の山となってしまうことになります。常におどおどとして、不安定な態度を示すようになります。
 安全基地が無いために容易に他人に騙され、支配されてしまうことも生じます。不安と混乱に陥り、さらにおかしな行動をとってしまいます。

 

 これが「不安定型愛着」で呼ばれるものであり、支障が出るほどの状態を「愛着障害」といいます。世の中の3分の1の人が程度の差があれ不安定型愛着とされます。 

 

 

・不安定型愛着を補うための適応戦略

 不安定な愛着状態に置かれると子どもは3,4歳ごろから、親や環境を統制、コントロールしようと試みます。代表的なものとして2つのものがあります。


 1つ目は、「懲罰型」と呼ばれるもので、親に罰を与えたり、拒否することで思い通りにしようとします。
 2つ目は、「懐柔型」と呼ばれるもので、親の相談相手となったり、支えることで、親の気分や行動をコントロールしようとします。

 

 ともに自然なかかわり方ではありません。懲罰型は共感的なかかわりではなく、相手を支配するようなかかわりによる適応戦略です。
 懐柔型は相手に合わせすぎたり、強迫的に世話をしたり、依存しすぎるようなパーソナリティを生みます。
 虚言や演技で相手の気を引くことを覚えたりするなど、いずれにしても率直なかかわりではなく、いびつなスタイルの原因となります。

 


・トラウマと愛着

 愛着とトラウマとは、もともとは別々に確立した概念になります。そのため相互の影響の詳細は研究が必要ですが、トラウマ(外傷体験)が愛着に大きな影響を及ぼしていることは間違いありません。

 トラウマは、適切な愛着形成を妨げる理不尽な記憶のことを指します。過活動や過剰適応、過緊張、解離、過覚醒といった問題を起こします。成人の場合、外傷経験の未解決さやとらわれが「内的ワーキングモデル」の更新を阻み、安定型愛着の形成を妨げること考えられます。
 トラウマは、虐待など明らかに大きな出来事ではなくても生じるとされます。(岡野憲一郎教授は、“関係性のストレス”と呼んでいます。)

 ⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 


・不適切な養育よりも、その後にわだかまりを解消できているかどうかが決め手となる

 愛着の研究者であるメインらは「過去において、実際に愛着に関する外傷的体験をしたとかしないとかが問題なのではなく、愛着にかかわる過去の経験を、その母親が現在、どのように意味づけて、どのように統合してとらえているかが、子どものアタッチメントパターンに深い影響を及ぼしている」としています。ここでは母親が主語とされていますが、子どもにとって過去に負った不適切な養育や心の傷の有無ではなく、その経験をどのように解消したかが不安定型愛着となるか安定型愛着となるかにとって重要とされます。

 実際に、安定型愛着の親でも、過去には外傷体験があったり、不適切な養育環境にあった人、現在の親との関係が温かいものではない場合も少なくありません。ただ、不安定型愛着になるかどうかの違いは、そのわだかまりを解消できているかどうかにあります。
  

 

・不安定型愛着の世代間伝達

 愛着のスタイルは世代間で影響することがわかっています。
 例えば親子2世代間では、6~7割で一致し、祖母-母親-子どもの3世代間でもかなりの予測性を持つという研究もあります。
 ただ、世代間伝達は必然ではなく、養育環境以外の社会経済的な環境要因、養育者が成長する中で得た経験や、その時代の社会背景なども影響することは踏まえておく必要があります。

 


・社会的背景も強く影響する

 愛着システムは社会で継承される習慣でもあります。そのため、社会の変化も愛着システムに影響を及ぼします。
 日本でも、かつてはともに子育てをしていた農村型の社会から、都市に移り住み、夫は給与所得者となり、女性は専業主婦として一人で子どもの面倒を見る、という社会へと移行しました。
 複数世帯で同居する形から核家族へと変化し、家庭内で愛着システムの継承はなされずに、母親は孤独な状態で育児を行わなければならず、母親にかかる負担は大きなものとなりました。
 そのため母親のコンディションがそのまま養育の不安定さにつながるようになりました。母子密着、過剰な支配も起きやすくなります。
 さらに、社会全体が共同体的なつながりよりも、個人の自由や欲望を尊重する形態(自己愛型社会)への移行は、つながりを作る仕組みである愛着とは逆のベクトルであり、安定した愛着形成にとってはマイナスと考えられています。
 

 

・不安定な愛着(愛着障害)が生む問題

 愛着が不安定になるとどうなるのでしょうか?社会で生きていく上で、様々な不具合が生じてきます。主要なものとして下記のようなことが挙げられています。

 

 ・社会に出た際に対人関係、コミュニケーションが不安定となる。
 ・アイデンティティや適応に問題が生じるため、生きづらさを感じやすくなる。
 ・ストレスへの耐性や対応力が低下する。
 ・発達障害や、ADHDに非常に似た症状が見られるようになる。
 ・知能が低下する(安定型と不安定型でIQで平均10以上の差が生まれる)。
 ・認知機能(聴覚的反応や空間統合能力、問題解決力など)が低下する。
 ・性的活動をうまく行えず、満足を得にくい。
 ・サドマゾ的な倒錯した対人での関わりの要因ともなる。
 ・成人してからうつ病や人格障害などになりやすくなる。

 など

 

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・不安定型愛着と愛着障害

 不安定型愛着とは個人の愛着スタイルを指しますが、生活において支障が生じる状態を「愛着障害(Attachment disorder)」と呼びます。
 
 DSM(米国精神医学会の診断マニュアル)では、虐待やネグレクトなどで愛着対象との関係が損なわれた状態を「反応性愛着障害」と呼んでいます。
 その中でも、誰にも懐かないタイプを「抑制型愛着障害」、見境なく懐くタイプを「脱抑制型愛着障害」と呼んでいます。

 通常、「反応性愛着障害」は虐待やネグレクトなどによって生じた相当重度のケースにしか診断がつきません。そのため、一般に「愛着障害」と呼ばれる状態よりも狭義の定義です。

 

 

(参考)「愛着」理論に対する懸念や疑問

 愛着理論は近年注目されている理論ですが、その背景には子育てを母親の役割とする「家父長制的価値観」の存在が指摘されたり、母子関係が重視されることへの疑問も呈されています(高橋惠子氏など)。実際に、愛着理論の確立したボウルビィは「私は母親が働くことには反対だ」と述べています。また、研究者や治療者自身も無意識に背負っている価値観によって、研究にも偏りがあるのではないか、という疑問もあります。社会科学の実験結果は(自然科学でさえも)、膨大な実験結果から解釈できる内容のものを研究者自身が取捨選択してまとめられるものです。あるいは調査方法にも制限がないものはありません。例えば世代間伝達や、成人になった際の愛着が与える影響などは研究によってばらつきがあり、関係があるとするものと、ないとするものとがあり確定していません。「科学的に明らかになった」と喧伝されるものでも人間が作った暫定的な仮説にすぎず、確定された真理など一つもありません。受け取る側もリテラシーを身に付け、常に「あくまで、解決に役に立つ範囲で利用する便宜的なものだ」という姿勢は忘れないようにする必要があります。

 

 

 

 

不安定型愛着と安定型愛着~4つの分類

 愛着パターン、愛着スタイルは大きく4つに分類されます。各パターンについてご紹介させていただきます。
 各パターンに明確に分けられるわけではなく、一人の人が複数の要素を持ちあわせていることが多いです。

 乳児に関しては、「ストレンジ・シチュエーション法(SSP法)」という観察法が取られます。
 大人に関しては、「成人愛着面接(Adult Attachment Interview)」という面接方法が取られ、そのスタイルを確認します。
 ※18歳未満は、「愛着パターン」と呼ばれ、18歳以降は「愛着スタイル」と呼ばれます。

不安定型愛着

 


回避型(「愛着軽視(Dismissing)型」)

 「回避型」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「愛着軽視型」とは、大人の愛着スタイルの名称です。


・回避型(愛着軽視型)の特徴

 回避型の名前の通り、養育者とのかかわりが乏しく、探索行動の際も養育者を安全基地としません。養育者が離れた時も不安や抵抗を示さず、養育者と再会しても無関心あるいは回避的な行動をとります。子どもに対する拒否的、回避的、統制的な親の関わり方が原因とされます。
 
 成人してからも、親密さを回避し、距離をおいた対人関係を好みます。親しい関係や情緒的な共有は心地よいと感じません。
 回避型にとって最も重要視するのは、「縛られないこと」。自立自存を最良として、人に迷惑をかけることを避けて、自己責任を重んじます。
 クールでドライな印象で、何に対しても本気で熱くなることが少ないです。面倒くさがり屋の傾向があります。感情に対して鈍感で、鈍感にすることで自分を守っていると言えます。基本的には安全基地がなく、自分に自信がないことが回避を生んでいます。

 

 症状が重い場合、記憶が飛ぶ解離症状や反社会性パーソナリティ障害などにつながることがあります。 うつや不安障害にもなりやすいとされます。自殺のリスクも安定型に比べると5倍位高いとされます。

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、養育者の養育スタイルが情愛に欠け、支配が過剰な場合に起きやすいです。さらに、父親の関与が少ないと更に強まるとされます。子ども時代に「褒められたことがない」ということが多いです。児童施設などで育てられると回避型になる傾向にあるようです。身体的な虐待がある場合も、回避型を示すようになるとされます。

 

 成人の場合、愛着軽視型の人は子ども時代のことは想起しにくく、想起しても具体性が無かったり、矛盾した回答をする傾向があります。過去の否定的な記憶を否定するように記憶や感情が排除されていたり、愛着そのものに価値を置いていないことが特徴です。
 親や家族についても過度に理想化したり、肯定的に答えます。ただ、具体的なエピソードは覚えていないことが多く、家族のことはそれほど重要ではないと言った反応が見られます。詳細に話を聞いていくと、親からあまりかまわれていなかった事実が明らかになります。

 

<対人関係の特徴>

 仲間といっしょにいる時間に意味を見出せず、仲間といることを好みませんしません。人との対立などが苦手で、葛藤を回避しようとします。自己開示が苦手で、自己表現が不得手です。隠棲願望がある場合があります。

 ストレスがかかると、攻撃的な言動で反応したりすることもあります。冷静そうに見えて、切れると暴発する傾向にあります。


 子どもであれば親と離れても無反応です(普通は泣いたり、寂しがったりするものです)。親が戻ってきても愛着行動を示そうとしません。


 相手の痛みを共感的に理解しづらい傾向があります。パートナーや身内に悲しい出来事があってもあまり共感や理解を示してくれません。パートナーに助けを求められると怒りを感じてしまう傾向があります。相手を傷つけていることに気がつかなかいことも多いです。幼少期にはいじめる側に回ったりもします。
 ストレスを感じても愛着行動を起こさない傾向があります。その結果、成長した後、反抗や攻撃性を見せることがあります。大人であれば、過度に人との関わりを避けるようになります。

 

<仕事での特徴>

 感情に流されにくいため、冷静な判断が得意です。仕事や趣味などでは高い集中を発揮したり、自己主張できたりもします。

 


不安型[抵抗/両価型](「とらわれ(Preoccupied)型」)

「不安型[抵抗/両価型]」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「とらわれ型」とは、大人の愛着スタイルの名称です。


・不安型(とらわれ型)の特徴

 「不安型」という名称からわかるように、不安が強いことが特徴です。特に「見捨てられる不安」がとても強いです。すべての場面を通じて不安が強く、養育者といても情緒が安定しません。そのため養育者がいても探索行動をあまり行いません。養育者との接触でも、接触を求めながら激しく抵抗するという特徴があります。

 常に周囲に気を使い、機嫌を伺ったり馬鹿丁寧に対応したり、迎合したり、不当な要求にも従ってしまうことが多いです。少しでも相手が拒絶的な反応を示すと、激しい不安に襲われ、それを容易に払拭できません。自己価値が低く、他者は自分を傷つけたり非難する存在として捉えてしまいます。子どもの頃はいじめられやすい傾向があります。


 身近な人に依存し、その人に自分の存在を保証してもらうことで何とか、自分のアイデンティティを保っています。自分が気を使っている努力の分だけ相手も自分を重視していると思い込んでいます(もちろん、そんなことはないので、空回りしてしまう)。

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、親の接し方に一貫性がなく子どもの態度への感度の低さが原因とされます。例えば、ある時は手厚くかまったり、ある時は無関心になったりと落差が激しい場合や、神経質で過干渉の場合などです。親の不安が強く不安定だったり、神経質だったり、病弱で不安な環境にあったりということも影響します。


 そのために愛情を求めながらも、いつ厳しい仕打ちが待っているかもしれない、という気持ちを抱いています。愛情は無条件なものではないと感じています。愛情を求める気持ちと拒絶する気持ちとが両方が併存しています。

 

 成人の場合は、過去の愛着関係に過度にとらわれており、子ども時代や親との関係を客観的に振り返ることが困難です。親への依存に葛藤を抱えたままで、記憶の中にある親へのネガティブな感情を統合できずに内容に一貫性を欠きます。曖昧な答えしか返せないか、過去のことを思い出すことを促す質問自体に怒りを感じたり、今まさに過去のことが起きているかのように否定的な感情に飲み込まれやすいことがあります。
 不安障害や、うつなどを発症しやすいです。女性の場合、産後うつになりやすいとされます。

 

<対人関係の特徴>

 愛着を求める動きと、拒絶する動きとが極端に現れます。人に依存したり人とべったりした関係になりやすいです。すぐに恋愛関係になりやすい傾向があります。普通であれば、仕事などフォーマルな関係にすぎないのに、勘違いしてすぐに恋愛に発展してしまいます。愛着関係を客観的に捉えることができないことから生じると考えられます。相手の感情を読み取るスピードは早いですが、不正確であることが多いです。例えば、無愛想なだけなのに怒っていると勘違いしたりといったことがあります。


 不安型の人は、距離が保たれている場合はとても優しく気遣いもできて心地よいのですが、親密になると距離が近くなりすぎて依存してしまい、全てを独占しようとしてもたれかかってしまいがちです。子ども頃に愛着が不安定だったことの反動から、愛着対象への期待が過大に大きいです。そのために不満がより強くなります。


 パートナーに対して肯定と否定と両方の態度が併存しています。パートナーから愛されているかどうかがとても大きなウェイトを占めている。そのため、愛情の確認としてセックスなどをとても重要なものとして捉えたりします。嫉妬や猜疑心が強く、愛されているかについての過剰確認行動を繰り返してしまいます。こうしたことが普通の人からすると重く感じられてしまいます。パートナーに厳しくストレスや不満をぶつけがちです。パートナーは何もしてくれていないという思いを抱きやすいです。パートナーも理不尽な怒りをぶつけられることで疎遠になって、という悪循環に陥ってしまいます。否定的な感情を引きずりやすいため、パートナーの浮気や失敗を何年もネチネチと繰り返し責めることがあります。


 ネガティブなことを口走る傾向があります。相手が自分を疎かにしているという被害者意識が強いために、相手に対して否定的な言葉をわざと投げかけてしまいます。相手のプライドを傷つけるような言葉をぶつけてしまう傾向があります。相手を攻撃する一方で、自分自身も攻撃する傾向があり、自己嫌悪に陥りやすく、鬱などにつながってしまいます。

 


<仕事での特徴>

 不安が強いため期待や賞賛をかけられるとプレッシャーに感じて逆にパフォーマンスが下がってしまいがちです。
 自分を否定した相手を否定的に評価することが多いです。

 


混乱型(「未解決型」)

 「混乱型」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「未解決型」とは、成人後の愛着スタイルの名称です。

 

・混乱型(未解決型)の特徴

 混乱型は、回避型と不安型が錯綜してとても不安定なものになりがちです。虐待や著しく不安定な親の場合に生じやすいとされます。まさに親の対応が混乱しているために子どものコミュニケーションも混乱をみせてしまうのです。


 一人は不安で人と仲良くしたいが親密になるとストレスに感じて傷ついてしまう。自己開示できないが、人に頼りたい気持ちも強い傾向があります。


 親との関係で傷ついた心の傷が癒えていない。傷が開いた状態でいるため、ちょっとした事で混乱型に戻ってしまいます。成長する中で一定の安定を見せても、別離や孤立状態に陥ると混乱状態に陥ってしまいます。境界性パーソナリティ障害や解離性障害になる可能性が高いとされます。

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、虐待や不適切な養育による外傷経験、未解決型の親によって非常に理不尽な環境で育てられたり、逆にきっちりしていて支配的な親に育てられた場合に生じやすいとされます。

 

 成人の場合は、親からの拒否・分離・虐待・不適切な養育経験・喪失など愛着に関する外傷経験を心理的に解決できず、恐怖感情を意識下に持ち続けていることがあります。
 子ども時代や親との関係については、言葉にまとまりや論理性に欠け、訳の分からない回答をしたりします。答えても長文になりがちで妙に詳しかったり、内容がまとまりに欠けたりします。

 

<対人関係の特徴>

 不安型と違って甘えることが苦手です。回避型の人のように人と距離をとることができません。相手を求めて親密になるとうまく行かなくなります。相手の些細な行動も自分をないがしろにしていると受け取って信じられなくなってしまいます。

安定型(大人の場合は「自律型」と呼ばれます。)

 

 

安定型(「自律型」)

 養育者との分離前には養育者を「安全基地」にして探索行動を行い、養育者が分離すると抵抗や不安を示します。
 しかし、養育者と再会すると、養育者との接触によって分離のストレスを解消し、気持ちを安定させることができます。

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境では、愛着の形成期の生後半年から2,3歳までの間に愛着対象との関係が良好であったこと。育児に際しては十分なケアがされているが、過保護すぎたり、支配的すぎたりもしません。養育環境が少々不安定でも、体質的に否定的なことに巻き込まれにくい場合も安定型を示しやすいです。

 

 成人の場合、過去の出来事や親に対する肯定的・否定的な記憶や感情が、統合されており、内容も一貫性があります。安全基地である愛着が安定しているため自分の考えを持ち、率直に前向きに、安心して社会と関わることができます。
 

 

<対人関係の特徴>

 絆が安定しており、自分を愛してくれる人がいつまでも愛してくれると当然のように信頼しています。気軽に助けを求めたり、相談したりすることができます。人の反応を肯定的に捉え、穿った見方をしたり誤解することがありません。また相手がどう反応するかにあまり左右されません。


 自分が拒否しても相手が傷つくと恐れることがなく、相手に合わせ過ぎたりもしません。考えを率直に交換したりすると誠実であることが互いの理解に繋がると考えています。本音で話すことができ、相手への経緯や配慮を忘れません。相手のスタンスによって自分が脅かされるように感じることがないので客観的です。


 別離に際しても、一時期悲しい気持ちになっても否定的な感情に巻き込まれたり必要以上に不安定になったりすることがありません。



<仕事での特徴>

 仕事と対人関係のバランスが良いことが特徴で、楽しみながら仕事に取り組みます。ストレスをためにくいです。

 

 

 

不安定型愛着、愛着障害を克服するためのポイント

 

<子どもの場合>

・養育者が、愛着のメカニズムを理解する

 養育者も環境に巻き込まれるプレーヤーであり、養育者自身も世代や社会からの影響から自由ではありません。そのため養育者に責任はありませんが、養育環境が愛着形成に重要であることは事実です。まず、できることは、養育者が愛着形成のメカニズムについて理解することす。たとえば生後半年から1年半までが愛着形成にピークである、との情報を理解しているのとしていないのとでは、養育環境づくりの方針は当然変わってきます。家族や地域でも愛着形成のメカニズムを知れば、子育てに対する助言や助け合いもより良いものになります。

 

 

・生後3歳まではできるかぎり十分な養育を与えられる環境を作る~母親だけに責任を押し付けず、家族全体、社会全体で養育する

 生後3歳までは十分な養育を与えられる環境を作ることが大切です。日本は、母親に過度に育児の負担がかかっていることが指摘されています。子育ては母親(女性)だけの責任ではありません。男性も同じように関わる必要がありますし、社会も支援する必要があります。母親も父親も働きながら十分な愛着形成を行える環境をつくる必要があります。養育者のストレスにも十分配慮した無理のない養育が求められます。

 女性が社会進出しようとしている現代社会で母親がずっとつきっきりの育児を理想とすることは現実的ではありません。1対1の育児は過度のストレスで養育者を不安定に子育てに否定的な感情を生むことがわかっています。否定的な感情は愛着形成にもマイナスに作用します。必要があれば、保育サービスなどの社会支援を適切に利用しましょう。

 

 

・養育者は、育児が上手くいかないと自らを責める必要はない

 大人だからと言って養育者は完成されているわけではなく、生涯発達し、親としての知識、スキルは身に付けていく必要があります。子どもとの距離は近すぎてもダメですし、遠すぎてもダメで適度であることが求められます。発達の段階に応じても養育者の意識も行動も変化させていかなければなりません。ただ最近は、養育が上手くいかなかったり、イライラしたりというのは、内的、外的な環境から影響されたものであることが多いことがわかってきました。産後うつなどはパーソナリティによるものではなく、ホルモンの影響による生物学的な現象であるとされます。人間の母子は、自立を果たすために、つながる動きと離れる動きと両方にさらされるためにうつや嫌悪感が生じるのだと考えられます。また、周囲のサポートが少なくストレスにさらされると余裕がなくなり、どんなにやさしい人でも育児をやめてしまいたくなる、ということも起きます(実際に調査でも裏付けられています)。子どもにうまく接することができない場合でも内的(身体的な)、あるいは外的な環境のせいだと理解できると行動を修整しやすくなります。養育者は自分を責めることはなく、ただ、客観的に自分の状況を知ることが大切です。※親がアスペルガー障害など発達障害傾向にある場合は子どもへの関わりは淡泊になったり、自他未分で強迫的に自分の価値観を押し付けたり、ということが起きる場合もあります。こうしたことについても養育者は自らの特徴を知ることが大切です。

 家庭や母親が子どもの教育やしつけ、食事などにこれほどまでにかかわるようになったのは人類史上初の事態です。親(特に母親)の責任が異常なくらい強調されすぎているのが実情です。それがむしろ愛着形成にマイナスに作用しているとも言えます。家庭にこれ以上の要求をすることは限界に達しています。逆説的ですが、愛着を安定させるためには「さらに手厚い養育を」ということではなく、適切な知識は得ながら「ポイントを押さえて賢く手を抜く」。社会の仕組みを整えて、子どもへの家族の関与、責任を低減する必要があります。

 関連する記事はこちら

 ⇒「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

・その後の養育で挽回する余地は十分にある

 1歳半までの養育環境が十分ではなく不安定型愛着を示しているケースでも、その後の養育環境次第では、安定型愛着となることが分かっています。
 実際、1歳半頃まで安定型を示していて、その後に養育環境が悪化したケースと、不安定型でその後、養育環境が改善した場合では、後者のほうが良い結果を示しています。
 養育環境の悪化には家庭内のストレスが原因であることが多いとされます。特に養育者を支える環境づくりが重要であることが分かります。

 

愛着のイメージ2

 

 


<成人の場合>

・養育者(母親)との関係を絶対のものとしない

 愛着障害というのは、幼少期に安心安全な環境を与えられなかった影響を引きずり、様々な問題を引き起こしているということを指します。解決のためには、原初的に抱えている不安感を解消することが必要になります。原因を考えるストーリーとして「養育者との関係」という視点は非常に有効ですが、解決する際に養育者との関係にこだわることは問題を長引かせることになります。養育者が自責の念に駆られたり、当人が養育者との和解や謝罪を引き出すことにこだわったりしてももちろんそれで上手くいくケースもあるかもしれませんが、逆に失望するケースのほうが多いです。なぜなら、相手は容易には変わらないからです。養育者自身が発達障害という特徴があり、そのために養育が淡泊なものであったケースも少なくありません。相手を説得して、自身の苦しみを理解してもらおうとすることは難しいことです。それよりも、解決に向かって進んでいくこと。原初的に抱えた愛着不安を癒し、安定型愛着の人たちが反抗期にそうするように、親へのこだわりや与えられた価値観を捨て、自らが自立、成長し、社会のさまざまな人たちとゆるやかにつながっていくことが大切です。

 

 

・過去へのとらわれを解消する~「内的ワーキングモデル」を更新する

 東洋英和女学院大学の久保田まり教授はメインらの研究をもとに「成人期以降の愛着の安定性とは、過去や現在の親子関係が情愛に満ちた温かいものであり続け、愛着に関連する外傷的経験がない、ということでは決してなく、肯定的なことも否定的なことも過去の事実として自由に想起でき、葛藤のない感情状態で率直に語ることができ、意味ある自分の歴史として客観的に吟味できること、人生における“愛着”の意義に深い価値をおけること、であるといえる。」
 としています。

 

 私たちは、タイムマシンに乗って過去に戻れるわけではありません。また、親子の関係の改善も相手あってのことで、セラピーの事例で感動的に語られる親子和解のシチュエーションが常に起きるわけでもありません。期待するような和解を示すことがどうしても難しい親がいることも事実です。
 
 それよりも、自分自身の中でわだかまりを解消し、意味づけを行うことが愛着の安定を取り戻す近道であることが分かります。
 上記にも書きましたが、成人は、愛着を内面化していて、愛着対象がいなくても心の中でシミュレーションすることで安心を得ています。それを「内的ワーキングモデル」といいます。愛着に関する内的ワーキングモデルとは、自分自身が愛されるに足る人物ととらえる自己イメージと、自分は愛着対象から愛される、助けてもらえるという信頼によって成り立っています。
 
 わだかまりを解消し、自己イメージと自分自身は愛されるという信頼を回復することができれば、親との和解や生き直しなど難しいことを行わなくても、愛着の安定を取り戻すことが期待できます。

 その際に大切なのは過去に負ったトラウマの解消です。「内的ワーキングモデル」は、その場の環境や経験によって時間とともに常に更新されています。しかし、トラウマが邪魔することにより、適切な更新が阻まれてしまいます。トラウマは処理されない過去の記憶のことです。大人になっても、過去のことが頭を離れない状態では、アップデートが行われなくなってしまいます。
 不安定型愛着とは、養育環境の悪さや外傷そのものではなく、柔軟な“学習”(「内的ワーキングモデル」の更新)が阻まれることに核心があるといえます。

 ⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

・現在の環境を整える~よりよい絆を育んでいく

 現在の環境がストレスが高いものであれば、愛着はどうしても不安定なものとなります。
 愛着とは根拠のない信頼や絆のことですから、実績を上げたり、期待に応えた場合にのみ愛される、という環境は愛着の安定にとってはプラスにはなりません。
 不安定型愛着の場合は、ついつい、自分に不利な環境に身を置きがちですが、ストレスレベルが高い環境や自分が認めてもらえない環境からは距離を置くことが大切です。より良い環境を選択し、ゆるやかに様々な人たちを信頼関係を築いていくことです。
 
 現在自分に関わるパートナーや家族とは、お互いに安全基地となることを意識し、支えあうことが大切です。その際には、「あなたは大丈夫」と心の中で思っていること。自分から見て相手に短所があったとしても「あなたは大丈夫」として相手を受け止めること。私たちが欲しているのは間違いを指摘されることではなく、無防備でもそのまま受け止めてくれる安全な環境です。

 家族であっても、相手は別の人間であり、それぞれのスタイルがあることを理解し、ほどほどであることが必要です。

 

 

・「愛着」は一つの視点にすぎず、人間は生涯発達し続ける

 「愛着」理論の問題点は、それが「第二の遺伝子」としてスティグマのように影響を及ぼし続けると誤解されているところです。愛着というのは、自らは生存を確保できない乳幼児が安心安全を特定の養育者に求めることを指し、たくさんある人間というシステムのごく限定された重要な部分を指しているにすぎません。運悪く、愛着が十分に確保できなくても、その後の環境によって十分に挽回されます。人間は社会的な動物で、人間の絆というのは、生物学的な親だけではなく、社会における友人、先輩、先生、上司、恋人、配偶者といった人たちによってももたらされます。それらは生涯を通じて変化して発達し続けます。愛着理論はあくまで仮説にすぎません。愛着という視点にこだわりすぎないことが大切です。

 

 

愛着のイメージ5

愛着のイメージ3

 

 

 

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参考

庄司順一、奥山眞紀子、久保田まり「アタッチメント」
久保田まり「アタッチメントの研究」
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメント~生涯にわたる絆」
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメントと臨床領域」
岡田尊司「愛着崩壊」
岡田尊司「愛着障害」

岡田尊司「愛着障害の克服」
滝川一廣、小林隆児、杉山登志郎、青木省三「そだちの科学 愛着ときずな」
「子育て支援と心理臨床 vol.9 2014 9月 愛着理論と心理臨床」

高橋惠子「人間関係の心理学 愛情ネットワークの生涯発達」

高橋惠子「絆の構造」

愛甲修子「愛着障害は治りますか?」

神田橋條治「治療のための精神分析ノート」

柏木恵子「子どもが育つ条件」
アミア・リブリッヒ「キブツ その素顔」
 
 

 

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