愛着スタイル(愛着障害)の種類と特徴~その診断とチェック

愛着スタイル(愛着障害)の種類と特徴~その診断とチェック

家族の問題(機能不全家族)愛着障害

 

 医師の監修のもと公認心理師が、愛着スタイルの種類と特徴、その診断、チェック方法をまとめています。よろしければご覧ください。

 

 

<作成日2019.9.8/更新日2024.4.11>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

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この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

 ・あなたはどのスタイル?~愛着スタイルの診断方法

 ・回避型(「愛着軽視(Dismissing)型」)

 ・不安型[抵抗/両価型](「とらわれ(Preoccupied)型」)

 ・混乱型(「未解決型」)

 ・安定型(「自律型」)

 

 →関連する記事はこちら

  ▶「「愛着障害」とは何か?その特徴と症状

  ▶「子どもの愛着障害の特徴と治し方~愛着を育む4つのポイント

  ▶「大人(青年期以降)の愛着障害の治し方~必要な5つのポイント

 

専門家(公認心理師)の解説

 愛着(アタッチメント)というのは、現在の臨床心理において欠かすことのできない最重要な概念の一つです(教育や経営など幅広く活用されています)。当事者にとっても、自分の生きづらさや悩みがなぜ生じているのか?どのようにすれば解決につなげていくことができるのか?について一面的ではない示唆を与えてくれます。愛着の研究の中で、愛着スタイル(愛着パターン)と呼ばれる大きく4つの分類が知られています。その分類(要素)が自分の現状にどの程度当てはまるのか?を知ることは自己理解に役に立ちます。ただし、愛着スタイルの知見を活用する場合は、占いのように分類の”診断結果”ばかりをとらえないことです。要素の割合や特徴の詳細といった具体的な情報を参考にしてください。そして、愛着スタイルは日常での取り組みや年齢とともに変化するものでもあります。

 

 

愛着スタイルの診断方法

 愛着パターン、愛着スタイルは大きく4つに分類されます。各パターンについてご紹介させていただきます。各パターンに明確に分けられるわけではなく、一人の人が複数の要素を持ちあわせていることが多いです。

 

 乳児に関しては、「ストレンジ・シチュエーション法(SSP法)」という観察法が取られます。大人に関しては、「成人愛着面接(Adult Attachment Interview)」という面接方法が取られ、そのスタイルを確認します。※18歳未満は、「愛着パターン」と呼ばれ、18歳以降は「愛着スタイル」と呼ばれます。

 

 愛着スタイルを知りたい方は以下のページで簡易に診断できます。

(参考)「愛着スタイル診断テスト」

 

 

 さらに、テスト以外にも、下記にまとめた各スタイルの特徴をお読みになり、自身に当てはまるかどうかについて検討いただくことでも、概ね自分のタイプを知ることが出来ます。その際は、4つのスタイルのうちどれか?ではなく、「回避型6割くらい、安定型3割くらい、不安型1割くらい」というように割合で捉えるようにしてください。

 

 

回避型(「愛着軽視(Dismissing)型」)

 「回避型」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「愛着軽視型」とは、大人の愛着スタイルの名称です。

・回避型(愛着軽視型)の特徴

 回避型の名前の通り、養育者とのかかわりが乏しく、探索行動の際も養育者を安全基地としません。養育者が離れた時も不安や抵抗を示さず、養育者と再会しても無関心あるいは回避的な行動をとります。子どもに対する拒否的、回避的、統制的な親の関わり方が原因とされます。成人してからも、親密さを回避し、距離をおいた対人関係を好みます。親しい関係や情緒的な共有は心地よいと感じません。

 回避型にとって最も重要視するのは、「縛られないこと」。自立自存を最良として、人に迷惑をかけることを避けて、自己責任を重んじます。クールでドライな印象で、何に対しても本気で熱くなることが少ないです。面倒くさがり屋の傾向があります。感情に対して鈍感で、鈍感にすることで自分を守っていると言えます。基本的には安全基地がなく、自分に自信がないことが回避を生んでいます。

 

 症状が重い場合、記憶が飛ぶ解離症状や反社会性パーソナリティ障害などにつながることがあります。 うつや不安障害にもなりやすいとされます。自殺のリスクも安定型に比べると5倍位高いとされます。

 

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、養育者の養育スタイルが情愛に欠け、支配が過剰な場合に起きやすい。さらに、父親の関与が少ないとさらに強まるとされます。子ども時代に「褒められたことがない」ということが多いです。児童施設などで育てられると回避型になる傾向にあるようです。身体的な虐待がある場合も、回避型を示すようになるとされます。

 

 成人の場合、愛着軽視型の人は子ども時代のことは想起しにくく、想起しても具体性がなかったり、矛盾した回答をする傾向があります。過去の否定的な記憶を否定するように記憶や感情が排除されていたり、愛着そのものに価値を置いていないことが特徴です。

 親や家族についても過度に理想化したり、肯定的に答えます。ただ、具体的なエピソードは覚えていないことが多く、家族のことはそれほど重要ではないと言った反応が見られます。詳細に話を聞いていくと、親からあまりかまわれていなかった事実が明らかになります。

 

 

<対人関係の特徴>

 仲間といっしょにいる時間に意味を見出せず、仲間といることを好みませんしません。人との対立などが苦手で、葛藤を回避しようとします。自己開示が苦手で、自己表現が不得手です。隠せい願望がある場合があります。ストレスがかかると、攻撃的な言動で反応したりすることもあります。冷静そうに見えて、切れると暴発する傾向にあります。

 子どもであれば親と離れても無反応です(普通は泣いたり、寂しがったりするものです)。親が戻ってきても愛着行動を示そうとしません。

 相手の痛みを共感的に理解しづらい傾向があります。パートナーや身内に悲しい出来事があってもあまり共感や理解を示してくれません。パートナーに助けを求められると怒りを感じてしまう傾向があります。相手を傷つけていることに気がつかなかいことも多いです。幼少期にはいじめる側に回ったりもします。

 ストレスを感じても愛着行動を起こさない傾向があります。その結果、成長した後、反抗や攻撃性を見せることがあります。大人であれば、過度に人との関わりを避けるようになります。

 

 

<仕事での特徴>

 感情に流されにくいため、冷静な判断が得意です。仕事や趣味などでは高い集中を発揮したり、自己主張できたりもします。

 

 

 

 

不安型[抵抗/両価型](「とらわれ(Preoccupied)型」)

「不安型[抵抗/両価型]」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「とらわれ型」とは、大人の愛着スタイルの名称です。

・不安型(とらわれ型)の特徴

 「不安型」という名称からわかるように、不安が強いことが特徴です。特に「見捨てられる不安」がとても強いです。すべての場面を通じて不安が強く、養育者といても情緒が安定しません。そのため養育者がいても探索行動をあまり行いません。養育者との接触でも、接触を求めながら激しく抵抗するという特徴があります。

 

 常に周囲に気を使い、機嫌をうかがったりバカ丁寧に対応したり、迎合したり、不当な要求にも従ってしまうことが多いです。少しでも相手が拒絶的な反応を示すと、激しい不安に襲われ、それを容易にふっしょくできません。自己価値が低く、他者は自分を傷つけたり非難する存在として捉えてしまいます。子どもの頃はいじめられやすい傾向があります。

 身近な人に依存し、その人に自分の存在を保証してもらうことで何とか、自分のアイデンティティを保っています。自分が気を使っている努力の分だけ相手も自分を重視していると思い込んでいます(もちろん、そんなことはないので、空回りしてしまう)。

 

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、親の接し方に一貫性がなく子どもの態度への感度の低さが原因とされます。例えば、ある時は手厚くかまったり、ある時は無関心になったりと落差が激しい場合や、神経質で過干渉の場合などです。親の不安が強く不安定だったり、神経質だったり、病弱で不安な環境にあったりということも影響します。

 そのために愛情を求めながらも、いつ厳しい仕打ちが待っているかもしれない、という気持ちを抱いています。愛情は無条件なものではないと感じています。愛情を求める気持ちと拒絶する気持ちとが両方が併存しています。

 

 成人の場合は、過去の愛着関係に過度にとらわれており、子ども時代や親との関係を客観的に振り返ることが困難です。親への依存に葛藤を抱えたままで、記憶の中にある親へのネガティブな感情を統合できずに内容に一貫性を欠きます。曖昧な答えしか返せないか、過去のことを思い出すことを促す質問自体に怒りを感じたり、今まさに過去のことが起きているかのように否定的な感情に飲み込まれやすいことがあります。

 不安障害や、うつなどを発症しやすい。女性の場合、産後うつになりやすいとされます。

 

 

<対人関係の特徴>

 愛着を求める動きと、拒絶する動きとが極端に現れます。人に依存したり人とべったりした関係になりやすい。すぐに恋愛関係になりやすい傾向があります。普通であれば、仕事などフォーマルな関係にすぎないのに、勘違いしてすぐに恋愛に発展してしまいます。

 

 愛着関係を客観的に捉えることができないことから生じると考えられます。相手の感情を読み取るスピードは早いですが、不正確であることが多いです。例えば、無愛想なだけなのに怒っていると勘違いしたりといったことがあります。

 不安型の人は、距離が保たれている場合はとても優しく気遣いもできて心地よいのですが、親密になると距離が近くなりすぎて依存してしまい、全てを独占しようとしてもたれかかってしまいがちです。子ども頃に愛着が不安定だったことの反動から、愛着対象への期待が過大に大きい。そのために不満がより強くなります。

 パートナーに対して肯定と否定と両方の態度が併存しています。パートナーから愛されているかどうかがとても大きなウェイトを占めている。そのため、愛情の確認としてセックスなどをとても重要なものとして捉えたりします。嫉妬やさい疑心が強く、愛されているかについての過剰確認行動を繰り返してしまいます。

 

 こうしたことが普通の人からすると重く感じられてしまいます。パートナーに厳しくストレスや不満をぶつけがちです。パートナーは何もしてくれていないという思いを抱きやすい。パートナーも理不尽な怒りをぶつけられることで疎遠になって、という悪循環に陥ってしまいます。否定的な感情を引きずりやすいため、パートナーの浮気や失敗を何年もネチネチと繰り返し責めることがあります。

 ネガティブなことを口走る傾向があります。相手が自分をおろそかにしているという被害者意識が強いために、相手に対して否定的な言葉をわざと投げかけてしまいます。相手のプライドを傷つけるような言葉をぶつけてしまう傾向があります。相手を攻撃する一方で、自分自身も攻撃する傾向があり、自己嫌悪に陥りやすく、鬱などにつながってしまいます。

 

<仕事での特徴>

 不安が強いため期待や称賛をかけられるとプレッシャーに感じて逆にパフォーマンスが下がってしまいがちです。
 自分を否定した相手を否定的に評価することが多いです。

 

 

 

混乱型(「未解決型」)

 「混乱型」とは、子どもの頃の愛着パターンの名称で、「未解決型」とは、成人後の愛着スタイルの名称です。

 

・混乱型(未解決型)の特徴

 混乱型は、回避型と不安型が錯綜してとても不安定なものになりがちです。虐待や著しく不安定な親の場合に生じやすいとされます。まさに親の対応が混乱しているために子どものコミュニケーションも混乱をみせてしまうのです。

 一人は不安で人と仲良くしたいが親密になるとストレスに感じて傷ついてしまう。自己開示できないが、人に頼りたい気持ちも強い傾向があります。

 親との関係で傷ついた心の傷が癒えていない。傷が開いた状態でいるため、ちょっとした事で混乱型に戻ってしまいます。成長する中で一定の安定を見せても、別離や孤立状態に陥ると混乱状態に陥ってしまいます。境界性パーソナリティ障害や解離性障害になる可能性が高いとされます。

 

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境としては、虐待や不適切な養育による外傷経験、未解決型の親によって非常に理不尽な環境で育てられたり、逆にきっちりしていて支配的な親に育てられた場合に生じやすいとされます。

 

 成人の場合は、親からの拒否・分離・虐待・不適切な養育経験・喪失など愛着に関する外傷経験を心理的に解決できず、恐怖感情を意識下に持ち続けていることがあります。

 子ども時代や親との関係については、言葉にまとまりや論理性に欠け、訳の分からない回答をしたりします。答えても長文になりがちで妙に詳しかったり、内容がまとまりに欠けたりします。

 

 

<対人関係の特徴>

 不安型と違って甘えることが苦手です。回避型の人のように人と距離をとることができません。相手を求めて親密になるとうまく行かなくなります。相手のささいな行動も自分をないがしろにしていると受け取って信じられなくなってしまいます。

安定型(大人の場合は「自律型」と呼ばれます。)

 

 

 

 

安定型(「自律型」)

 養育者との分離前には養育者を「安全基地」にして探索行動を行い、養育者が分離すると抵抗や不安を示します。
 しかし、養育者と再会すると、養育者との接触によって分離のストレスを解消し、気持ちを安定させることができます。

 

 

<背景>

 背景(原因)となる養育環境では、愛着の形成期の生後半年から2,3歳までの間に愛着対象との関係が良好であったこと。育児に際しては十分なケアがされているが、過保護すぎたり、支配的すぎたりもしません。養育環境が少々不安定でも、体質的に否定的なことに巻き込まれにくい場合も安定型を示しやすいです。

 

 成人の場合、過去の出来事や親に対する肯定的・否定的な記憶や感情が、統合されており、内容も一貫性があります。安全基地である愛着が安定しているため自分の考えを持ち、率直に前向きに、安心して社会と関わることができます。
 

 

<対人関係の特徴>

 絆が安定しており、自分を愛してくれる人がいつまでも愛してくれると当然のように信頼しています。気軽に助けを求めたり、相談できます。人の反応を肯定的に捉え、うがった見方をしたり誤解することがありません。また相手がどう反応するかにあまり左右されません。

 自分が拒否しても相手が傷つくと恐れることがなく、相手に合わせ過ぎたりもしません。考えを率直に交換したりすると誠実であることが互いの理解につながると考えています。本音で話すことができ、相手への経緯や配慮を忘れません。相手のスタンスによって自分が脅かされるように感じることがないので客観的です。

 別離に際しても、一時期に悲しい気持ちになっても否定的な感情に巻き込まれたり必要以上に不安定になったりすることがありません。

 

<仕事での特徴>

 仕事と対人関係のバランスが良いことが特徴で、楽しみながら仕事に取り組みます。ストレスをためにくいです。

 

 

 

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参考

庄司順一、奥山眞紀子、久保田まり「アタッチメント」(明石書房)
久保田まり「アタッチメントの研究」(川島書店)
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメント~生涯にわたる絆」(ミネルヴァ書房)
数井みゆき、遠藤利彦「アタッチメントと臨床領域」(ミネルヴァ書房)
岡田尊司「愛着崩壊」(角川選書)
岡田尊司「愛着障害」(光文社)

岡田尊司「愛着障害の克服」(光文社)
滝川一廣、小林隆児、杉山登志郎、青木省三「そだちの科学 愛着ときずな」
「子育て支援と心理臨床 vol.9 2014 9月 愛着理論と心理臨床」

高橋惠子「人間関係の心理学 愛情ネットワークの生涯発達」(東京大学出版会)

高橋惠子「絆の構造」(講談社現代新書)

愛甲修子「愛着障害は治りますか?」(花風社)

神田橋條治「治療のための精神分析ノート」(創元社)

など