大人の発達障害、アスペルガー症候群かどうか診断、判断するポイント

大人の発達障害、アスペルガー症候群かどうか診断、判断するポイント

発達障害

 近年、注目されてきている発達障害、アスペルガー障害は奥が深く、正しく理解しようとするにはなかなか難しいテーマです。当センターでは、医師の監修のもと公認心理師が、その診断、判断のご紹介してまいります。よろしければご覧ください。

 

<作成日2019.9.21/更新日2024.5.24>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

 

もくじ

大人の発達障害かどうかを判断する具体的なポイント
発達障害ではないケース~ニセの”発達障害”

不適切な環境が生む余裕のなさが発達障害様状態を生む

 

 →大人の発達障害、アスペルガー症候群のとは何か?その特徴については、下記をご覧ください。

 ▶「大人の発達障害、アスペルガー症候群とは何か?公認心理師が本質を解説

 ▶「大人の発達障害、アスペルガー症候群の症状、特徴~公認心理師が具体的に解説

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 愛着障害、発達性トラウマによっても、発達障害と類似する症状が生じることがわかっています。人間が自分らしく生きていくためにはさまざまな要件が必要であり、トラウマや愛着障害はそうした要件を削いでしまうものと考えられます。実際に、トラウマケアを行っても、発達障害の方はとても効果がありますし、問題の根っこは実は共通しているのではないか、と感じます。ただし、発達障害の方とトラウマを負った方とでは雰囲気が異なり、現場で接した際にある程度肌感覚で区別することができます(グレーゾーンや、ADHDの方などは判断が難しいばあいはあります)。最近はグレーゾーンということも注目されていますが、発達障害か否かというよりも、自分の特徴とは何か?という観点で把握する、ということが大切です。その上で特徴にあった環境を選択する、必要があればトラウマケアなどによって発達過程で負ったストレス障害やハラスメントの影響を除いていくと、生きづらさはかなり改善されていきます。

 

 

 

大人の発達障害かどうかを判断する具体的なポイント

 発達障害はかなり広範な特徴があります。人によってもさまざまです。そのため、上記で挙げたすべての特徴が当てはまるとは限りません。また程度もさまざまです。より具体的に区別するためのポイントをまとめてみました。(青木省三、村上伸治「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)等による)

 

・子どものころから、発達障害と思われる症状が見られたか?

 大人の発達障害というのは、成長する中で見逃されてきた特徴が現在の環境で不調として現れていると考えられます。そのため、子どものころからそうした特徴(3つ組と感覚過敏)があったかどうかがまず一番のポイントです。周囲と合わずにいじめられた経験が多いといったことも参考になります。

 

 もし、子どもの頃は普通に遊んでいたし、目立った症状はなかったといった場合は、ストレスや環境からくる適応障害、あるいはトラウマによる発達障害様の症状である(大人の発達障害ではない)と考えられます。

 

 ▶「大人の発達障害、アスペルガー症候群の症状、特徴~公認心理師が具体的に解説

 
Point

 私たちの気質、体質は幼い頃から発現していると考えられます。そのため、幼い頃にいじめられていた、とか、あまり周囲と遊ばなかった、といった発達障害の特徴を示すエピソードがなかった?を確認することが大切です。とくに、いじめられた経験が多いと言った場合は発達障害を疑うポイントとなります。

 

 

・自分で意識しないと人のことを察したり、直感的に理解できない

 定型発達の場合は、本人が意識しなくても他者をあたかも写し取るように理解します。まさに「直感的に」理解します。発達障害の場合は、学習して人を理解するようになります。ここが大きな違いです。

 

 ですから、「空気が読めないし変わっているから発達障害かも」と思っても、単に過剰適応すぎたり、緊張しすぎて考えすぎて、場にうまく対応できていないだけかもしれません(発達障害ではない)。空気が読めない、と言われて悩んでいる人には発達障害ではなく、人が気になりすぎて逆にうまく動けない人は多いです。

 

 

・相手の立場に立つことが苦手

 発達障害でも学習して相手の気持ちを推測できますが、直感的に相手の立場に立つことができない場合は発達障害が疑われます。

 

 

・ノンバ―バルな態度が平板、あるいは大げさで不自然

 表情が硬い、声のトーンが平板、しぐさが乏しい、あるいは、しぐさが大げさといった場合は疑われます。大げさな場合は、単に頭で「こうしたほうがいい」と学習しておこなっているので不自然な感じになっています。男性はわかりやすいですが、女性の場合は自然にふるまえるケースも多く、見分けることが難しいとされます。

 

 

・(対等な)仲のいい友達や、ボーイフレンド、ガールフレンドがいるか?

 成人でいないと答えて、子どものころからもいない場合は疑われます。また、「いる」と答える場合でも、例えば、男性で相手が母親のように保護してくれていて対等の関係ではない、といった場合は発達障害が疑われます。

 

 

・社会生活能力の乏しさ

 年齢や知的能力に比して、社会生活能力がいじる敷く乏しい場合も発達障害が疑われます。ゴミ出しや洗濯の仕方がわからない。上司・先輩、後輩への言葉遣いの区別がうまくできない。著しく常識を欠いた、場をわきまえない行動。空気が読めない。段取りやスケジュールが組めない、など 本人に自覚がない場合も多いです。

 

 

・感覚過敏がある

 上記で書いたような光や音、接触に敏感であることや、特定の銘柄しか食べないといったような偏食があるといった場合も疑われます。

 

 

・極端にものが片づけられない、といった問題がある

 片づけが極端に苦手で、部屋がゴミ屋敷になっているような場合は、ADHDなどが疑われます。

 

 

・親族に発達障害と思われる人がいる

 発達障害は遺伝性が強い症状です(遺伝がすべてではありません)。そのため、親族に、発達障害と思われる場合は、可能性が高くなります。

 

 

 

発達障害ではないケース~ニセの”発達障害”

・トラウマからくる症状

 「私は発達障害かも?」と本人は不安になっていますが実はそうではないケースも多いです。特に、人に気をつかいすぎる、緊張しすぎるために対人関係でうまくいかない。ミスが多いです。仕事で成果が上がらない、段取りが組めない、といったケースは、俗に考えられる発達障害の症状がみられるためにもしかしたらと考えてしまいますが、実はこれらは発達障害というよりは、ストレスやトラウマからくる症状と考えられます。

 

・過剰適応

 特に、周りから「あなたは、気をつかえない」と言われているケースでは、本当に気をつかえていないためではなく、気をつかいすぎて空回りしていたり、モラハラなどで相手が意図的に悪く評価していたり、といったケースが考えられます。

 

・人とうまく行かない、仕事ができない、だけではわからない

 単に、人とうまくいかない、仕事ができない、といったことでは「発達障害」とは言えません。子どもでも、人間関係がうまくいかない、勉強できない、多動が見られる、ということでは判断できず、家庭の状況などもくわしく見ないといけません。

 

 こうしたケースは多く見られ、(人に関心がない)発達障害のむしろ対極にある症状(過剰適応、過緊張、心理的支配、など)と考えられます。こうした場合はカウンセリングやトラウマケアを行う必要があります。

 トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因と症状

 

 

 

不適切な環境が生む余裕のなさが発達障害様状態を生む

・発達性トラウマ障害

 虐待を受けると発達障害様状態が生じることが知られています。杉山登志郎教授は精神発達遅滞、自閉症スペクトラム、ADHD・学習障害に次ぐ「第四の発達障害」と呼んでいます(出典:杉山登志郎「子ども虐待という第四の発達障害」(学研))。最近は、「発達性トラウマ障害」と呼ばれることもあります。

 

 

・愛着障害

 精神科医の岡田尊司氏も、愛着障害になると発達障害用状態を生むことから、発達障害が増えている要因を愛着障害によるものではないかとしています(出典:岡田尊司「発達障害と呼ばないで」(幻冬舎新書))。

 →関連する記事はこちら

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」

 

 完全には明らかになっていませんが、不適切な環境が、もともとある発達障害的な要素を浮かび上がらせて、さらに不適切な反応を呼びこむ、ということもありますし、もともと発達障害的な要素を持つ人は愛着の形成が遅れるため、周囲から不適切な扱いをされる要因にもなる、といったことが考えられています。

 

 

・睡眠不足、栄養不足、過度なストレス

 私たちも、睡眠不足や栄養不足の状態に置かれたり、過剰なストレス下に置かれるとイライラしたり、ピリピリしたりして、普通の自分で入られなくなる経験をしたことがあると思います。

 その時、冷静に段取りが組めなくなったり、人にあたったり。目の前の仕事に精一杯で一度に複数の仕事をこなせなくなったり。まさに発達障害の特徴とされるような状態になります。余裕のなさが、もともとある私たちの凸凹を浮かび上がらせることになるのです。

 

図にすると下記のようなイメージです。

発達凸凹

 余裕のある時は凸凹が目立たないが、余裕のない時は凸凹が浮かび上がる。

 

 

 

 →大人の発達障害、アスペルガー症候群のとは何か?その特徴については、下記をご覧ください。

 ▶「大人の発達障害、アスペルガー症候群とは何か?公認心理師が本質を解説

 ▶「大人の発達障害、アスペルガー症候群の症状、特徴~公認心理師が具体的に解説

 

 

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(参考・出典)

 青木省三、村上伸治「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)
 杉山登志郎「発達障害の子どもたち」(講談社)
 杉山登志郎「発達障害のいま」(講談社)
 備瀬哲弘「大人の発達障害」(マキノ出版)
 本田秀夫「自閉症スペクトラム障害が分かる本」(講談社)
 平岩幹男「自閉症スペクトラム障害」(岩波書店)
 神田橋條治ほか「発達障害は治りますか?」(花風社)

 神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」(創元社)
 杉山登志郎「子ども虐待という第四の発達障害」(学研)
 ドナ・ウィリアムズ「ドナ・ウィリアムズの自閉症の豊かな世界」(明石書店)

 広沢正孝「「こころの構造」からみた精神病理 広汎性発達障害と統合失調症をめぐって」(岩崎学術出版社)

 ローナ・ウィング「自閉症スペクトル」(東京書籍)

 テンプル・グランディン「自閉症の脳を読み解く」(NHK出版)

 田中千穂子ほか「発達障害の心理臨床」(有斐閣)

 杉山登志郎「発達障害の豊かな世界」(日本評論社)

 ニキリンコ「俺ルール!」(花風社)

 ニキリンコ「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)

 千住淳「自閉症スペクトラムとは何か?」(筑摩書房)

 宮岡等、内山登起夫「大人の発達障害ってそういうことだったのか」(医学書院)

 内海健「自閉症スペクトラムの精神病理」(医学書院)

 高橋和巳「消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ」(筑摩書房)

 黒田洋一郎 木村- 黒田純子「発達障害の原因と発症メカニズム」(河出書房新社)

 杉山登志郎「子ども虐待という第四の発達障害」(学研)

 岡田尊司「発達障害と呼ばないで」(幻冬舎新書)

 など