双極性障害(双極症)は、躁状態・軽躁状態とうつ状態を繰り返すことがあるため、症状が落ち着いた後も再発予防を意識した治療や生活の調整が重要です。薬物療法を基本としながら、心理教育、生活リズムの調整、ストレスへの対処などを組み合わせます。さらに臨床では、その人の資質や環境との相性を考え、無理の少ない生き方を整えていくことも大切です。今回は、医師の監修のもと公認心理師が専門知識や経験を交えてポイントを纏めてみました。
<作成日2016.4.30/最終更新日2026.9.5>
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・双極性障害(躁鬱病)を治療、克服するために大切な6つのポイント
→双極性障害(躁鬱病)とは何か?については、下記をご覧ください。
▶「双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解」
双極性障害は、躁状態または軽躁状態とうつ状態などの気分エピソードを繰り返す精神疾患です。治療では、まず症状を安定させ、再発を防ぐことが重要になります。
一方、精神科医の神田橋條治氏は、双極性障害の人の特徴を理解する臨床的な視点として「躁うつ体質」という捉え方を示しています。こうした見方では、症状だけではなく、その人の活動性や対人関係の特徴、環境との相性にも目を向けます。
そのため、薬物療法などで病状を安定させることに加えて、睡眠や生活リズム、仕事や人間関係、無理の少ない生き方を整えることも長期的な安定には重要です。
双極性障害(躁鬱病)を治療、克服するために大切な6つのポイント
1.双極性障害について正しい知識を得る
双極性障害では、躁状態・軽躁状態・うつ状態それぞれの特徴や、再発のサイン、治療の必要性を知っておくことが重要です。病気について理解する「心理教育」は、双極性障害の治療や再発予防の基本的な心理社会的支援の一つです。
そのうえで、神田橋條治氏が述べる「躁うつ体質」のような臨床的な見方を知ることも、自分の特徴や環境との付き合い方を考える参考になります。
そのために、まずは、双極性障害、躁うつ体質とは何かを知らなければなりません。
入手できるものとしては下記の本がおすすめですので、よろしければご覧ください。
2.双極性障害について知識、経験のある医師、医療機関にかかる
双極性障害は、躁状態・軽躁状態・うつ状態、混合状態など病相によって治療が異なります。また、うつ病と診断されていた人が後に双極性障害と分かることもあります。そのため、双極性障害について経験のある精神科医のもとで、これまでの気分の波や生活の変化を丁寧に確認してもらうことが重要です。
3.本人の異変に適切なタイミングで気づく
双極性障害は病気との認識を持つことがとてもむずかしい病気です。躁状態や軽躁状態では本人が「調子がよい」と感じることも多く、うつ状態になって初めて受診するケースも少なくありません。家族や職場など周囲の人は、本人のテンションが異常に高く生活や仕事に支障が出てきたら、本人にそのことを伝えて診断を進める事が必要です。
その際、騙して連れてくる、強制的といったことは結局は適切な治療につながりません。本人とよく話して、「一度診察を受けてみたら?」と話し、納得した上で診察をうけることがのぞましいです。
本人や周囲に差し迫った危険がある、極度の興奮や精神病症状があるなど緊急性が高い場合には、精神科救急や医療機関、必要に応じて警察などへ相談してください。
4.環境調整、資質の沿った生き方を目指す~「気分屋的に生きれば、気分は安定する」
薬物療法や心理教育などの標準的な治療に加えて、長期的な安定のためには、睡眠や生活リズム、仕事、人間関係などの環境調整も重要です。
精神科医の神田橋條治の有名な言葉に、「気分屋的に生きれば、気分は安定する」「小さな気分屋的生活は大きな波を予防する」というものがあります。
神田橋氏は、躁うつ体質の人では、窮屈さや閉塞感の強い環境が負担となりやすく、小さく気分に沿って動ける余地を持つことが安定につながると捉えています。そのため、完璧主義にならず、一つのことに集中せず、複数のことを「~しながら」行ったり、流れに任せて概ね適当で生活することはとても大切です。
精神疾患による生活上の困難は、本人の症状だけでなく、置かれている環境や求められる役割との相互作用によっても大きく変わります。本人の特徴に合った働き方や居場所が得られることで、安定した生活を送りやすくなる場合があります。
Ⅰ型・Ⅱ型のいずれでも、医療的な治療と再発予防が重要です。そのうえで、状態が安定している時期には、活動性など本人の長所を活かしながら、無理の少ない生活環境を整えることも大切です。躁うつ体質は決して病的な体質でもなんでもなく、資質、特質です。特に対人関係職などで才能を発揮することが多いとされます。反対に苦手な職種や環境に身をおいて、自分を追い込まないようにする必要があります。
うつ病も同様ですが、睡眠リズムを安定させることはとても大切で、睡眠時間の確保と同時に、リズムを安定させることもとても大切です。
5.薬物療法で気分の波を安定させる
双極性障害の治療では、薬物療法が重要な位置を占めます。躁状態、抑うつ状態、維持期によって治療方針や使用する薬剤は異なり、気分安定薬や第2世代抗精神病薬などが用いられます。双極性障害は、自殺率も高いため、必ず精神科医にかかり観察を受ける必要があります。特にⅠ型の場合は、薬物治療は必須となります。
代表的な気分安定薬にはリチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなどがあり、第2世代抗精神病薬も病相に応じて用いられます。例えばリチウムは躁状態や再発予防などで重要な薬剤ですが、血中濃度や腎機能、甲状腺機能などの確認が必要です。バルプロ酸も躁状態や再発予防などに用いられます。
どの薬が適するかは、躁・うつのどちらが中心か、過去の治療反応、副作用、身体状態などによって異なります。
双極性障害では、抗うつ薬の使用によって躁転や気分の不安定化が生じる可能性があるため、うつ病とは異なる注意が必要です。抗うつ薬を使用するかどうかは病型や病状を踏まえて慎重に判断されます。
→最近はオンラインで精神科・心療内科の診療を受けることも可能です。
「双極性障害の治療法と乗り越えるためのアドバイス|オンライン診療エニキュア」
双極性障害は、薬の合う合わないがはっきりしているようで、合わないと全く効かないことがあるようです。
6.心理教育・精神療法を再発予防に活かす
双極性障害では、薬物療法に加えて心理教育や精神療法も重要です。病気の特徴や再発のサインを理解し、睡眠や生活リズム、ストレスへの対処を身につけることが再発予防につながります。双極性障害に特化した認知行動療法、家族療法、対人関係・社会リズム療法なども用いられています。
一方、神田橋氏は、躁うつ体質の人は内省が苦手で、過度に内面を掘り下げるような関わりが、かえって混乱や不安定さにつながる場合があることを指摘しています。特に病状が不安定な時期には、深い内省を促すよりも、まず生活や気分を安定させることを優先することが大切です。
また、神田橋氏の臨床知見では、躁うつ体質の方は他者に合わせることが得意(対人過敏性)です。双極性障害の患者は、自分は自分のままでよいという安心感に乏しく、人がどのように考えているのかという他者中心の考え方、他者に評価されて自分の価値を見出す、といった点が強いとされます。自分の気持を深掘りするよりは、ねぎらいながら自己価値を修復し、相手の気持を考えてどう動くか、といった方向で行うのがコツです。
また、対人関係を気づくことに優れた能力を持つ方が多く、人によっては、裁量が少なく役割や規則に強く縛られる環境が大きなストレスになることがあります。反対に、本人の活動性や対人能力を活かせる環境では安定して力を発揮できる場合もあります。場合によっては役職を外して、のびのび生きることができる環境を作るなど、職場に働きかけて調整をして貰う必要があります。
症状が安定した後も、再発予防のための治療は重要です。薬をどの程度・どのくらいの期間続けるかは、これまでの病相や再発歴などによって異なるため、自己判断で中止せず主治医と相談する必要があります。
そのうえで、薬物療法だけに頼るのではなく、自分の特徴を理解し、生活リズムや環境を整えながら、自分らしく社会生活を送ることが長期的な目標になります。
双極性Ⅰ型の場合は、カウンセリングだけで改善させることは難しいです(そもそも続かないことがほとんどです)。特に躁状態など病状が強い時期には医療機関での治療が必要です。一方、状態が安定した後には、心理教育や精神療法、生活・環境調整を組み合わせることが再発予防や生活の安定に役立ちます。
→双極性障害(躁鬱病)とは何か?については、下記をご覧ください。
▶「双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解」
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(参考・出典)
日本うつ病学会「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023」
樋口輝彦 神庭重信「双極性障害の治療スタンダード」(星和書店)
ラナ・R・キャッスル「双極性障害のすべて」(誠信書房)
岡田尊司「うつと気分障害」(幻冬舎)
加藤忠史「双極性障害」(医学書院)
内海健「双極Ⅱ型という病 改訂版うつ病新時代」(勉誠出版)
貝谷久宣「よくわかる双極性障害」(主婦の友社)
森山公夫「躁と鬱」(筑摩書房)
青木省三「精神科治療の進め方」(日本評論社)
神田橋條治「第一回 福岡精神医学研究会講演会記録」
「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院)
神田橋條治、白柳直子「神田橋條治の精神科診察室」(IAP出版)
かしまえりこ、神田橋條治「スクールカウンセリングモデル100例」(創元社)
かしまえりこ「神田橋條治 スクールカウンセラーへの助言100」(創元社)
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