今回は、医師の監修のもと公認心理師が、パーソナリティ障害の10つに分類されるタイプについて、その特徴や周囲の接し方、関わり方について専門知識や経験を交えてまとめてみました。よろしければご覧ください。
<作成日2019.9.18/最終更新日2026.9.21>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方の3つの原則
・パーソナリティ障害(症)の種類、タイプ別の接し方、関わり方
→パーソナリティ障害(症)の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。
▶「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」
▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」
▶「パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント」
▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」
パーソナリティ障害について考える際には、現在みられる言動だけではなく、生まれ持った気質、幼少期からの成育歴、愛着や対人関係、トラウマなどの経験、現在の生活環境などを含めて理解することが重要です。
同じ診断名であっても、症状の程度やその背景、置かれている環境は人によって異なります。そのため、診断名だけをもとに相手への接し方を決めるのではなく、その人がどのようなことで困り、どのような関係の取り方をすると安定しやすいのかを見ることが大切です。
また、「自分が何とかしてあげなければ」と相手を変えようとしすぎると、本人の主体性を奪ったり、支える側が疲弊したりして、かえって関係が不安定になることがあります。
相手を一人の人間として尊重しながら、必要な距離と境界線を保ち、できることは支えつつ、相手の人生そのものを代わりに背負わないことが大切です。
距離を取ることは、必ずしも相手を見捨てることではありません。必要な距離を保つことが、「あなたには自分で生きていく力がある」という信頼の表現になることもあります。
暴言、暴力、脅迫、金銭的な被害などで自分や家族の安全が脅かされている場合には、無理に関係を維持せず、距離を取ることや外部の専門機関に相談することも必要です。
パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方の3つの原則
パーソナリティ障害の人との接し方で大切なのは、①相手を一人の人間として尊重すること、②相手を無理に変えようとせず適切な境界線を保つこと、③本人が自分で選びやすい環境を整えることです。支える側が相手の人生を背負いすぎないことも重要です。
1.本来のあなたは大丈夫(You are OK)と思って見守る。距離をとって一貫した姿勢で接する
何とかしようと、関わりすぎたりすることはこちらも巻き込まれて結局息切れしてしまいます。パーソナリティ障害の対応は長丁場でもあります。
自己愛の未熟さからくる要望にすべて答えることはできませんし、本人のそのようなことを望んでいるわけではありません。むしろ、距離を取りながら、浅く長く関わる。あなたは大丈夫、と思いながら、一貫した姿勢で関わることが大切です。自分の子どもに接する場合であれば、実の子供というよりは親戚の子どもを扱うように扱うと、程よくバランスが取れた対応ができるといわれています。相手から暴言を言われても、距離をとって、非難もせず、機嫌も取らないようにしましょう。
2.無理に相手を変えようとしない
相手の考え方や行動を何とか修正しようとし続けると、双方が疲弊し、かえって関係が硬直することがあります。また、「あなたは変わらなければならない」という働きかけが続くことは、意図せず「今のあなたではだめだ」というメッセージとして伝わる場合もあります。相手のすべてを受け入れる必要はありませんが、相手の考え方や生活の仕方を尊重しながら、必要なところだけ境界線を示すことが大切です。
本人が変化するかどうかは、本人自身の意思や経験、治療・支援、環境などによります。周囲の人が相手を「治す」役割を背負う必要はありません。周囲の人自身が、自分の生活や仕事、家族、趣味などを大切にし、自分の人生を充実させることも重要です。
3.本人がより安定して過ごせる環境を整えることをサポートする
ゆとりは精神障害を改善し、焦りは精神障害を際立たせる、と言われます。パーソナリティ障害も同様で、本人にとって受容的で安心できる環境は、パーソナリティ障害を改善させます。逆境にある場合や、本人に適さない環境にある場合は、環境を変えることをサポートしてあげることは大変有効です。強いストレスや本人に合わない環境では、感情や対人関係の問題が目立ちやすくなることがあります。反対に、安心できる人間関係や、自分の特性を生かしやすい環境を持つことで、状態が安定する人もいます。
そのため、本人が強いストレスを抱えている場合には、何が負担になっているのかを一緒に整理し、必要に応じて仕事、生活、人間関係などの環境を調整することが役立ちます。
ただし、周囲が本人に代わってすべてを決めたり、先回りして問題を取り除いたりすることとは違います。本人自身が考え、選び、決められるように支えることが重要です。
環境を整えることと、本人が少しずつ対人関係や感情の扱い方を身につけていくことは、どちらか一方ではなく、両方が大切です。
パーソナリティ障害(症)の種類、タイプ別の接し方、関わり方
パーソナリティ障害について、その特徴、症状をもとに便宜的に分類したものです。各タイプ別に接し方、関わり方をまとめてみました。
※それぞれのタイプはあくまで要素を分かりやすく区切りにしたもので、複数の特徴が重なってみられることもあります。固定したラベルではなく、”要素”として捉えてください。
パーソナリティ障害の10のタイプ(種類)の特徴について詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」
シゾイドパーソナリティ障害(症)
親密な関係をあまり求めず、一人で過ごすことを好み、感情表現が乏しく見えることがあります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
当人のスタイルを尊重し、世間の価値観を押し付けず、親密さを求めず、適度な距離をもって接することです。内面に土足で入り込むようなことは禁物です。プライベートなことに踏み込まれることを負担に感じる人もいるため、本人の反応を見ながら距離を調整します。そっけない反応をされてもそれが本人のスタイルだと認めて、無理に社交性を求めないことです。そっけいのは、相手を無下にしているからではありません。
統合失調型パーソナリティ障害(症)
独特な考え方や話し方、奇妙な信念、関係念慮、通常とは異なる知覚体験などがみられることがあります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
当人のペースを尊重し、ユニークな強みが発揮できるようにすることが大切です。現実と齟齬が出るような部分は、折り合えるように調整することです。
不信や警戒が強い場合には、急いで距離を縮めず、信頼関係を少しずつ築くことが大切です。無理をしている場合は、何がストレスの原因かを明らかにして、ストレスを除いていくことが大切です。周囲は、当人の世界に踏み込みすぎたり、否定や批判したりしないことです。
猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害(症)
さい疑心、警戒心が強く、親しい人も信じることができない、過度の秘密主義、傷つけられたことを根に持つ、などを特徴とします。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
急に踏み込むと、不安や警戒が強まり、関係が悪化することがあります。適切な距離を取り、あっさりとした関係を心掛け、役割や関係に応じた適切な距離を保つようにしましょう。関わりが必要な場合は、相手を警戒させないように、自らについては普段以上に誠実に、わかりやすく、オープンにして付き合うことが大切です。
妄想には迎合する必要はありませんが、否定や批判をしたりせずに、別の見方を提示したり、相手に不安を理解し、緊張を下げるようにすることが大切です。
ボーダーライン(境界性)パーソナリティ障害(症)
境界性パーソナリティ障害は強烈な「見捨てられる不安」が特徴です。強い見捨てられ不安や自己評価の不安定さがみられることがあります。気分や相手への評価が両極端に揺れ動きます。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
当人のすべての要求に応え続けると、双方の負担が大きくなり、関係が不安定になることがあります。ニュートラルで、落ち着いていつも冷静に安定して対応すること、一貫性がとても大切です。境界性パーソナリティ障害はあいまいな生き方が特徴ですから、一貫しているものは安心感を与えます。
相手が要求してきても、相手が傷ついたり怒ったりする可能性があっても、できないことは落ち着いて一貫して伝えます。自分には価値がない、と思っていることが多いですから、できている点や努力を具体的に伝えることも大切です。
関連する記事はこちら
▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」
▶「境界性パーソナリティ障害(症)の治し方、接し方のポイント」
自己愛性パーソナリティ障害(症)
自己愛性パーソナリティ障害は、過剰な自信、万能感、誇大な願望を特徴とする「自己誇大感」、尊大な態度、自分には特別な配慮があって当然という気持ち、他者の立場や感情への共感が難しくなることがあります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
過大な自信や態度を修正しようとはせずに、まずはその人の自己像を映し返すことが大切です。直面化を急がせすぎてはいけません。人格を否定したり、恥をかかせる形で批判することは避けます。一方、必要な指摘は具体的な行動に焦点を当てて伝えます。
自己愛を尊重し、当人と信頼関係を得られれば、適切なサイズに自己像を徐々に修正していくこともできます。等身大の自分で大丈夫ですと、というメッセージを伝えながら、誇大な自己と非力な自分のギャップに少しずつ気づかせて、現実的なサイズに着地させていくことが必要です。
当人からの過度な要求は、自己愛を尊重しながら丁重にお断りすることが大切です。
自己愛性パーソナリティ障害の方は他人に称賛されたりといった経験はありますが、他者との相互的な共感や安定した関係を築くことに難しさがある場合があります。そのため、治療者もできる限り共感をすることが、当人が共感能力を発達させることにつながります。
演技性パーソナリティ障害(症)
派手なパフォーマンスや外見で人の興味を引き付けようとします。感情表現が大きく、話し方が印象的でも具体性に乏しくなることがあります。対人関係を過度に親密なものと考えます。相手に合わせよう、流行に乗ろうという気持ちが強く自分の感覚が希薄です。そのため、暗示にかかりやすい傾向があります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
相手の派手な態度を批判したり、修正しようとすることは逆効果となります。安定した関わりを持ちながら、外見やその場の印象だけでなく、本人の努力、考え方、能力にも関心を向けて伝えることが役立ちます。
反社会性パーソナリティ障害(症)
ルールを無視したり、危険を冒すことを好む傾向があります。人の痛みに鈍感です。他者の権利や社会的ルールを軽視する行動、虚言、衝動性、攻撃性、無責任な行動などが持続的にみられます。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
自分自身の安全を優先し、できること・できないことを明確にし、必要な境界線を一貫して保ちます。反社会的な人と心を通じ合うことに長けた人が関わるといったことが必要です。
関わらざるを得ない環境でも、できるかぎりニュートラルで、相手に合わせすぎない。無理な要求ははっきりと断るようにしましょう。危険や犯罪行為がある場合には、家族だけで対応せず、医療・福祉・警察・法律相談などの専門機関につなげます。否定的な対応に敏感なために、そうした態度はとらないようにしましょう。
身近な方が反社会性パーソナリティ障害で犯罪などに手を染めるといったような場合は、更生を支援するようなNPOなどの専門機関に相談することも有効です。
回避性パーソナリティ障害(症)
批判や拒絶、失敗を強く恐れ、新しい人間関係や挑戦を避けやすくなります。自己評価が低く、自信がなく、失敗を恐れて、人から嫌われるからと人との関わりを持とうとしません。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
プレッシャーがない中で、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。他人に依存する傾向もあるため、サポートはあくまで示唆にとどめ、先回りしないことが大切です。主体性を尊重し、自分の力で成功体験を重ねていくことが必要です。強いプレッシャーをかけるより、課題を小さくし、本人が自分で選び行動できるよう支えます。結果だけでなく、取り組んだことや変化を具体的に伝えます。
回避の症状がまだ小さい場合は、ストレス源から離れて休んで気力を回復させることです。
依存性パーソナリティ障害(症)
自己決定が苦手で、他者の支えがなければならないという思いにとらわれています。常に相手を優先してしまいます。嫌でも断ることができず、関係を失うことを恐れて、無理な要求でも断れず、自分の希望を後回しにすることがあります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
相手を尊重してあげて、小さな決断から少しずつ行えるように促してあげることがポイントです。
当人の代理人になったり、代わりに意思決定をするようなことは行うべきではありません。助言はしても最終的な選択はできるだけ本人に委ねることが大切です。
強迫性パーソナリティ障害
規則や秩序、責任、完璧さを強く重視し、柔軟に切り替えることが難しくなることがあります。
・このタイプへの周囲の接し方のポイント
当人の価値観を尊重して、礼儀正しく接することです。
価値観が対立することがありますから、互いの領分を分けることがポイントです。どちらが正しいかを争うより、目的を共有し、『別の方法でも目的を達成できる』と具体的に示します。
→パーソナリティ障害(症)の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。
▶「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」
▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」
▶「パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント」
▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」
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(参考・出典)
青木省三「精神科治療の進め方」(日本評論社)
青木省三「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)
林直樹 編「こころの科学vol.185 パーソナリティ障害の現実」(日本評論社)
林直樹 編「こころの科学vol.154 境界性パーソナリティ障害」(日本評論社)
林直樹「パーソナリティ障害」(新興医学出版社)
市橋秀夫「パーソナリティ障害のことがよくわかる本」(講談社)
磯部潮「人格障害かもしれない」(光文社)
岡田尊司「ササっとわかるパーソナリティ障害」(講談社)
岡田尊司「パーソナリティ障害」(PHP)
岡田尊司「ササっとわかる「境界性パーソナリティ障害」」(講談社)
牛島定信「やさしくわかるパーソナリティ障害」(ナツメ社)
高岡健「人格障害のカルテ 理論編」(批評社)
高岡健「人格障害論の虚像」(雲母書房)
大泉実成「人格障害をめぐる冒険」(草思社)
笠原嘉「精神病」(岩波書店)
ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」(金剛出版)
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