悩みの原因や解決方法

パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント

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 今回は、パーソナリティ障害について、その特徴や克服するために必要なポイントについてまとめてみました。よろしければご覧ください。

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パーソナリティ障害

 

 

はじめに~パーソナリティ障害を正しく理解する

 パーソナリティ障害は、いわゆる精神障害とは趣を異にするものです。パーソナリティ障害はまずそうしたことを理解したうえで用いる必要があります。理解するための前提として大切なことをまとめてみました。

 

・パーソナリティ障害 という概念は、いわゆる精神障害や精神疾患とは異なるカテゴリに属する

 心の不調には大きく2系統あるとされます。

  1つ目の系統は、いわゆる精神疾患や精神障害
  2つ目の系統は、パーソナリティの歪み

 これらはそれぞれ別の系統のものでした。

 精神医学や臨床心理学は、1つ目の系統、つまり精神疾患や精神障害を扱うものとされてきました。
 パーソナリティの特性はあくまで精神障害の背景を深く理解するために参照されてきました。パーソナリティの歪みをケアすることは、どちらかといえば守備範囲を超えるものと考えられてきました。

 

 次項にも書きますが、うつ病などを医学の対象とすることは異論はありませんが、「パーソナリティ」を何の疑問もなく同じように医学の対象とすることについては、さすがに違和感を感じる人が多いことも事実なのです。

 「パーソナリティ障害」という概念自体もまだまだ暫定で、はっきりと確立されたものではありません(十分なエビデンス、論文があるのは、反社会性、境界性、失調型の3タイプのみとされます。ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」より)。
 あくまで人間が社会で目にする現象に名前を付けているだけです。カテゴリについてもすべて網羅されているとは言えませんし、今後変わりえます。パーソナリティ障害という概念は、あくまで当人や患者が自由に生きることができるようになるための道具であって、固定されたラベルではありません。いわゆるレッテルとして暗に攻撃の道具になったり、悩みを持つ当事者の姿が見えなくなることは本末転倒です。そのことは、肝に銘じておく必要があります。

 


・パーソナリティ障害という概念に違和感を感じている臨床家は少なくない

 

 「ボーダーなんて存在しないとおもうけどなあ」

  ※ボーダーとは、境界性パーソナリティ障害や境界例のことを指します。


 これは、学会で東京大学のある先生がシンポジウムでおっしゃった発言です。
 川崎医科大の青木省三教授も「私は、パーソナリティ障害という言葉をできる限り用いないようにしている」と著書で記しています。
 パーソナリティ障害という概念を用いることについては、違和感を感じていたり、慎重な臨床家は少なくありません。

 違和感を感じることについては、様々な理由があるようです。
 代表的なものとして以下のことがあります。


  ・パーソナリティの問題を精神障害などと同列に用いることへの違和感
  ・「パーソナリティ障害」「ボーダー」という言葉が「厄介な患者」から臨床家が身を守るために都合よく用いられているのではないか、という違和感
  ・パーソナリティ障害よりも別の精神障害としてとらえたほうが適切なのではないか、という実感

 など


 
 パーソナリティ障害とは、もともと精神病とまでは言えないようなグレーな症状、「境界例」とされていたものにパーソナリティという考え方を援用してカテゴリを与えたものです。
 もともとは、診断に収まりきらない症候群だったものですから、診断の精度や知見が高まれば見え方は変わり、なんらかの精神障害とすることが適切な場合もあります。


 例えば、精神科医の神田橋條治氏は、下記のように述べています。
 「最近のボクは「境界例」というラベルを使わなくなった。これまでの「厄介な人々」を、「発達障害」「軽症の双極性障害」「医原症」あるいはその3つの混合状態と診断するようになった。(中略) これで診療がしやすくなっている。」

 パーソナリティ障害は、DSMでも認知、感情性、対人関係機能、衝動の抑制 に症状が現れるものとされていますが、パーソナリティそのものが歪んでいるというのはあくまで推測です。
 そうした複数にまたがる問題がパーソナリティの歪みによるものであるということは仮説で、見方を変えれば、結局は従来の精神障害にまつわる症候群であることも考えられるのです。

 

 また、愛着障害や、発達障害が最近は注目されていますが、愛着の土台が揺らぐことで、対人関係に様々な問題が生じることが考えられています。人間の発達も想像以上に多様であることが分かっています。そうした知見を踏まえれば、パーソナリティ障害は、パーソナリティの問題というより、愛着や発達の問題としてとらえることが適切とも考えられます。
 発達障害は、一般社会の基準からみれば奇異なコミュニケーションのスタイルが特徴ですが、人格には何も問題がないとされます。パーソナリティ障害とされる症状で、認知や感情で一般社会の平均とは違う反応があったとしても、それをパーソナリティの歪みによるものととらえてよいかは疑問が呈されても当然といえます。

 ⇒「「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと

 ⇒「大人の発達障害の本当の原因と特徴~様々な悩みの背景となるもの

 


・パーソナリティ障害の概念はうまく用いれば強力な道具になる

 慎重な捉え方をご紹介してきましたが、一方で、その成り立ちを理解したうえで活用するのであれば、パーソナリティ障害は、非常に使える概念でもあります。
 私たちの悩みというのは、教科書的な精神障害のカテゴリではおさまらないものであることが多いのです。
 パーソナリティ障害という概念があるおかげで、これまで治療の対象とされてこなかった多くの問題が治療の対象となってきました。
 枠組みを与えられることで曖昧模糊としていた問題をとらえやすくなったり、対人関係において他者を理解しやすくなりました。世の中には、様々なタイプの人がいますが、パーソナリティの違いを理解していれば、誤解によって傷つくこともなくなります。
 上手に活用すれば、悩みから自由になるための強力な道具となります。
 
 
具体的にパーソナリティ障害とは何か、を見ていきたいと思います。
 

パーソナリティ障害2

 

 

 

パーソナリティ障害とは何か?

・パーソナリティとは

 単なる性格というよりは、情緒や行動などその人のふるまい全体を指します。

 「人格」という言葉は日本では道徳や良心なども含んだニュアンスとなり、「人格障害」というと人格が破たんした危険な人物との誤解を招きやすいために、最近は人格とパーソナリティとは区別して用いられています。通常は「パーソナリティ障害」と呼ばれます。

 

・パーソナリティ障害の定義

 性格の著しい偏りによって、周囲を苦しめたり、本人も苦しんでいる状態です。
 (DSMでは、「著しく偏った、内的体験および行動の持続的様式」とされています。)
  
 正常、異常の線引きは明確なものはなく、当人や周囲が不都合を感じているか否かということになります。

 

・パーソナリティ障害とは人格の障害ではない

 パーソナリティ障害とは、「パーソナリティ」と名前が付くために大変紛らわしいのですが、社会的に「パーソナリティ」とみなされる要素が失調している状態であり、人格そのものが損なわれているわけではありません。
 感情、対人関係、社会行動などのパターンに偏りが生じて、社会生活に支障が出ている状態です。
 人格そのものの問題ではなく一時的に表れる症状にすぎませんから、状況やライフサイクルに応じて変化しますし、治療可能なものです。

 

・パーソナリティ障害の割合と発症時期

 アメリカの調査では、人口10%強となっています。
 診断基準にもよりますが、日本も同等かやや少ないのではないか?と考えられています。
 男性よりも、女性のほうが3倍程度多いとされています。

 10代後半から20代前半までの間に徐々に傾向が現れるとされます。
 トラウマ体験をきっかけに大きく崩れることもあります。
 20代後半以降に現れる場合は、パーソナリティ障害とは別の要因が考えられます。

 

・パーソナリティ障害の歴史

 20世紀初頭、パーソナリティの歪みは、「精神病質」と呼ばれていました。精神病質とは、精神病に移行する途中の段階、正常と病気の間という意味です。その後シュナイダーによって、現在のパーソナリティ障害概念の基礎が作られました。


 1950年代以降は、精神疾患と神経症の中間の状態は「境界例(ボーダーライン)」と呼ばれるようになりました。境界例とされる患者が、治療にかかわる人たちを振り回す状態をカーンバーグが「境界性パーソナリティ構造」と呼びました。

 精神分析家のコフートは、自己愛が適切に発達していない状態として「パーソナリティ障害」を捉えました。コフートの研究は、パーソナリティ障害のメカニズムを理解するうえでとても重要なものです。

 1980年代に入ると、パーソナリティ障害という概念が確立し、境界例とされていたケースを取り込み、パーソナリティは治療の対象として位置づけられるようになりました。

 ハーマンによって、虐待を受けた人たちが対人関係や情緒において不安定な姿を見せることから、トラウマにさいなまれてきた人たちが境界性パーソナリティ障害とみなされてきたのではないか、との捉え方も提起されました。ただ、パーソナリティ障害のすべてがトラウマと関係しているわけではない、ということもわかってきており、トラウマは数ある要因の一つであるという理解に落ち着いています。

 パーソナリティ障害は、現在では、生まれながらの気質や養育環境など成長する中で様々な影響を受けて自己愛に問題が生じた結果であると考えられています。

 

 社会的にみると、かつては、宗教団体やヤクザなどが一般的な社会では生きづらい人を上手に吸収してきた歴史があります。あるいは、落語の世界のように、人間というのは困った人がたくさんいるというおおらかさがあったのかもしれませんが、最近は、自己愛型社会と言われるような状況や、周辺の居場所が失われてきたことなど様々な理由からパーソナリティ障害とされる症例は目立つようになってきています。

 

 

 

パーソナリティ障害の原因

 パーソナリティ障害の原因は、一つではなく、気質、環境など様々なものが影響して発想に至ると考えられています。

 ・生まれ持っての気質(性格気質、発達障害)

  遺伝を背景とした気質がベースとなると考えられています。
  ただ、うつ病などの精神障害などと比べて突出して遺伝の影響が強いとは言えません。

 

 ・養育環境

  自己愛の病と言われるように、養育環境、生まれるまでに経験した人間関係が影響します。
  養育環境というのは、すなわち親のせいということではありません。
  大切なポイントは、親も家庭という環境に巻き込まれる1プレーヤーであるということです。親も否応なく巻き込まれていたという認識が大切です。また、家庭だけではなく学校、地域なども含めた環境が影響を及ぼします。解決に際しては、親に責任を取らせようとしてもうまくいくことはありません。

  養育環境への葛藤がある場合は、トラウマケアなどを通じて解消していくことが大切です。

 

 ・現在の環境(不遇な状況、急激な変化)

  過去の状況だけではなく、現在がストレスフルな環境であったり、急激な変化に見舞われている場合も、パーソナリティ障害を発症する要因となります。

 

 ・時代背景

  時代背景もパーソナリティ障害の要因となります。家族の形態や、社会の風潮も影響します。例えば、自分を表現することが当たり前になると演技性パーソナリティ障害は目立たなくなったり、社会全体での共通する活動(政治や戦争)が後退すると自己愛性パーソナリティ障害が増えるといったことです。 

 

 

 

パーソナリティ障害のメカニズム

 パーソナリティ障害とは、人格や性格の問題ではなく、自己愛の問題としてとらえるととらえやすくなります。私たちは、自分を大切にする心性をもっています。それが自己愛というもので、自己愛によってアイデンティティが形成され社会適応を果たしていきます。

 人間は、主として母親との以心伝心のかかわりの中で愛着が形成されます。最近の研究では愛着が形成されるのは、生後半年から1歳半頃だとされます。その時のかかわりが不適切な場合は、愛着障害に陥ると考えられています。バリントなどが「基底欠損」と呼んだものとほぼ同じ状態です。
 
 1歳半から3歳ごろになると、それまでの母子一体となっている状態から母子が分離していく状態になります。その期間のことを、分離‐個体化期と呼びます。

 分離―個体化期で重要なことの一つは、「対象恒常性の獲得」です。自己愛の発達の過程では、愛着の対象が安定していることが重要とされます。一貫したものとして対象が安定していると「対象恒常性」が身につきます。つまり、目の前にいるお母さんが自分の欲求を満たしてくれる時は「良い母親」、満たしてくれない時は「悪い母親」と別のものとして認識されるのではなく、状態は変わっても同じものとして認識することです。その状態のことを、クラインは「全体対象関係」と呼びました。愛着の対象が情緒的で不安定であったり、愛情の満たされ方や母子の分離が不適切だと、対象のある一面を別々のものとして認識する「部分対象関係」のままにとどまってしまいます。

 

 対象恒常性が身につくと、場面が違っても対象のいろいろな面を統合してバランスをもって認識できるようになります(全体対象関係)。一方、部分対象関係の場合、自分にとって都合のよい時は「良い人」「味方」、そうではければ「悪い人」「敵」というような二分法的で、極端な認識となります。
 境界性パーソナリティ障害などでみられる、極端に自己や他者の評価が揺れ動くのはこうしたメカニズムによると考えられます。

 

 分離―個体化期でもう一つ大切なのは、自己愛の中間段階である「誇大化した自己」「親のイマーゴ(理想像)」が適度に満たされることです。この時期の子どもは、誇大化した自己のイメージと万能感、親については全能の理想的な存在と感じている段階です。子どもは絶えず自己顕示と親からの承認を必要とします。承認欲求や理想像としての役割が適切に満たされると、次の段階では、自分は万能ではないと知りながらも自尊心をもって自分を大切にできたり、親も等身大の人間なのだと知ることで、他者への共感や思いやりの気持ちを獲得していきます。


 親からの承認や理想像としての役割が不十分だと、「誇大化した自己」「親のイマーゴ」の未熟な段階でとどまり続けることになります。自己愛性パーソナリティ障害などで、他者からの称賛が得られないと怒りを感じたり、ひどく落ち込んだりすることはこうしたことから説明できると考えられています。

 パーソナリティ障害は、このように自己愛が未熟な段階にとどまることで生じる障害(失調)とされます。パーソナリティ障害でみられる数々のアンバランスさや問題行動は未熟な自己愛からくる生きづらさを補い、社会に適応するための代替の方略と言えます。

 

パーソナリティ障害3

 

 

 

パーソナリティに共通する特徴

 パーソナリティ障害は、様々なタイプがありますが、共通する特徴があります。
 それは下記のようなことです。

 

 退行

 幼い心の状態のままでとどまっていて、認知、感情、対人関係、衝動性などにおいて、著しい偏り(未熟さ)が見られる。

 

 部分対象関係

 その人全体で評価するのではなく、その場その場、部分部分でしか評価しない傾向が強くあります。そのため、いつも極端に評価が揺れ動きます。他者だけではなく、自分に対しても評価が極端になります。スプリット(分裂)と言いますが、「全か無か」「敵か味方か」「称賛か、批判か」といった極端な捉え方が特徴です。
 全体を見ていれば良いところもあれば悪いところもある、といったほどほどの評価ができるが、それができません。赤ん坊のころに、「お乳が出るときは、良い乳房」「お乳が出ないときは、悪い乳房」といったように、継続した同じものと見ずに目の前の部分対象で評価していた段階を引きずっているとされます。

 

 妄想・分裂ポジション

 パーソナリティ障害状態の方は、部分対象関係の段階を引きずっているために、他者や自分の評価が極端に振れやすく、傷つきやすく、被害妄想的になりがちです。 

 

 躁的防衛

 パーソナリティ障害状態の方は、自信と劣等感、強い自己否定感が同居してかろうじてバランスをとっている状態です。
 そのため、ちょっとしたことがあるとすぐに落ち込んでしまいます。そうした状態に陥ることを避けるために、相手を責めたり、見下したり、支配したり、尊大になったりします。いわゆる躁的防衛と呼ばれるものです。躁的防衛で自らを守っていますが、躁的防衛が崩れると極端に落ち込むようになります。
  

 境界性人格構造

 パーソナリティ障害状態の方は、自他の境界があいまいなために、自分の立場と相手の立場をしばしば混同します。相手が自分の思い通りになると考えたり、自分と同じように自分のことを考えているように感じてしまいます。
 境界性人格構造という名称は、自他の境界が失われた統合失調症性人格構造と自他の別はある神経症性人格構造との境界(中間)という意味です。

 

 自己愛障害

 上記のメカニズムで書きましたが、精神科医のコフートによると自己愛は、万能感を抱いている「誇大自己」の段階と、親を神のように理想化して、自己と一体化する「理想化された親のイマーゴ」の段階を経て、成熟した自己を育んでいきます。
 しかし、パーソナリティ障害の場合は、自己愛が適切に満たされず、自己の発達が上手く行かないまま成長するため、自己愛が歪になってしまっています。そのため、過度に自信家になり、傲慢になったり、逆に自己否定的になったりします。

 

 

パーソナリティ障害の種類と特徴

 大きく10のタイプに分かれるとされます。それぞれのタイプはあくまで要素を分かりやすく区切りにしたもので、一つの人間にいくつかの要素が混ざり合うことが通常です。

 

・重なりやすいパーソナリティ

 ・境界性パーソナリティ障害と演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害 
 ・自己愛性パーソナリティ障害と回避性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害


 また、10タイプの中でも境界性パーソナリティ障害は特別な位置にあります。各パーソナリティ障害のタイプも対人関係において余裕が失われると境界性状態を引き起こします。つまり、各パーソナリティ障害状態が悪化すると境界性パーソナリティ障害になりえるのです。

 

 

●A群(オッド・タイプ)統合失調症に関連した気質。奇妙で風変わりな考え方や行動が特徴。孤立的で打ち解けない。

 

シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害(統合失調症質パーソナリティ障害)

 世間の価値観から超然としているタイプです。
 世の中の名声やお金に興味がなく、感情の起伏、喜怒哀楽に乏しく、人とのかかわりを避け、一人でいることを好みます。親友などおらず、ごく少数の人と関わります。社会的に喜びを感じる活動が少なく、性的関心も弱く、生涯独身の場合もあります。

 回避性パーソナリティ障害が、本音では人との関わりを求めているのに対して、シゾイドの場合は関わりを求めてはいません。
 手先が器用で、芸術を好む人が多く、感受性も豊かで芸術分野で才能を発揮することがあります。
 我慢強く同じような生活を黙々とこなすことができます。平和主義で人のことを悪く言うこともなく、嘘をつかず正直で、穏やで豊かな内面を持っています。超然としている反面、敏感で被害妄想に陥りやすい面もあります。  
 一方、統合失調症の病前性格とも考えられ、社会に出る際や人との関わりが求められストレスが増えると統合失調症に進展する恐れもあります。

 気質としてはDISC-1遺伝子の失調(統合失調症や社会的無快感症に関連する遺伝子)や、ネグレクトや愛情に乏しい養育環境が影響するとされます。

 人口の約3%が該当するとされます。

 ⇒「統合失調症の症状や原因、治療のために大切なポイント

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 当人のスタイルを尊重し、世間の価値観を押し付けず、親密さを求めず、適度な距離をもって接することです。内面に土足で入り込むようなことは禁物です。プライベートな質問も好まれません。そっけない反応をされてもそれが本人のスタイルだと認めて、無理に社交性を求めないことです。そっけいのは、相手を無下にしているからではありません。

<セルフケアのポイント> 

 マイペースで淡々と取り組めるような、自分のスタイルを生かせる仕事に就くと大成することがあります。

 

・このタイプで知られる有名人

 哲学者のウィトゲンシュタイン、キルケゴール、など

 


失調型パーソナリティ障害(スキゾタイパル・パーソナリティ障害)

 シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害と同様の気質を持っています。常識を超越した感性、直観力、関係念慮、奇妙な知覚や体験、風変わりな容姿、奇異な考えと話し方、孤独を好む、などが特徴です。

 何か不思議なものに意味を見出したり、幻覚や妄想を見たりすることがります。そのため、人とは分かり合えないと考えていることが多いです。また、自分の内的世界にこもりたいのに、むりに周囲に合わせて社交的にしている場合もあります。無理が続くとストレスがたまり精神障害に陥ることがあります。

 一見すると、普通に生活している人も多いですが、問題を起こしてから初めてその奇妙さが明らかになることがあります。内面の葛藤が一般の常識からは理解できず、突然、自傷行為や薬物依存、援助交際など、突飛な行動をとることがあります。

 疑い深く、敏感なために被害妄想に陥ることもあります。非社交的で会話がかみ合わないことがあります。感情表現が鈍くなっていたり、場面と合わずにコミュニケーションが不適切なものになっていたりします。

 統合失調症の前駆的な段階ともとらえられます。遺伝子的にも親和性があります。アスペルガー障害と一見すると似たところがありますが、アスペルガー障害が客観的な感性を持っているのに対して、失調型の場合は、直感的な感性を持っているところに違いがあります。

 人口の約3%が該当するとされます。

 ⇒「統合失調症の症状や原因、治療のために大切なポイント


    
・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 当人のペースを尊重し、ユニークな強みが発揮できるようにすることが大切です。現実と齟齬が出るような部分は、折り合えるように調整することです。
  
 被害妄想から他人を信頼できないことが多いので、十分に信頼関係を作ることが必要です。無理をしている場合は、何がストレスの原因かを明らかにして、ストレスを除いていくことが大切です。周囲は、当人の世界に踏み込みすぎたり、否定や批判したりしないことです。 

<セルフケアのポイント> 

 せっかくの豊かな感性も、現実への対応が苦手なために変人扱いされて実らないことが多いです。そのため、日常生活の雑務や実務能力を身に着け周囲との協調を意識して、よき理解者やパートナーを作り、現実とうまく折り合い表現できるようにすることを意識すると芸術や研究などの分野で大成することができます。

 

・このタイプで知られる有名人

 ユング、ヘルマン・ヘッセ、夏目漱石、ヴァージニア・ウルフ、など

 


妄想性パーソナリティ障害

 猜疑心、警戒心が強く、親しい人も信じることができない、過度の秘密主義、傷つけられたことを根に持つ、裁判に訴えたり(好訴妄想)、自分の正当性を強く主張する、権謀術数にのめりこむ、などを特徴とします。
 頑固で他人の意見を聞くことができません。他人の批判に過剰に反論したりします。論理的に整理して考えることが苦手です。いったん恨みを持つと、寛容になるといったように自分の気持ちを修整することができません。
 強い執着を持ち、他のパーソナリティ以上に執拗なストーカーとなることがあります。常に緊張状態にあります。そのためうつ病や不安障害に陥ることがあります。妄想に陥っているときは活動的で元気ですが、妄想が現実的ではないとわかるとうつ状態に陥ります。妄想が進展して、妄想型障害や妄想型統合失調症となることがあります。

 他のパーソナリティでも、独自のスタイルを理解してもらえずにストレスがたまると、妄想性パーソナリティ障害に陥ることがあります。

 遺伝的な背景とともに、あらさがしや批判の多い環境で育ったことで基本的な信頼感が育たなかったことなどが原因とされます。薬物、アルコールなどの影響などによっても生じるとされます。

 人口の約0.5~2%が該当するとされます。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>

 気分の波があり、相手を攻撃したり、うつ状態になると自分強く責めたりするようになります。

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 踏み込むと猜疑心に取りつかれて、逆恨みで無用な攻撃を加えられる恐れもあるため、適切な距離を取り、あっさりとした関係を心掛け、深くかかわらないようにしましょう。関わりが必要な場合は、相手を警戒させないように、自らについては普段以上に誠実に、わかりやすく、オープンにして付き合うことが大切です。
 妄想には迎合する必要はありませんが、否定や批判をしたりせずに、別の見方を提示したり、相手に不安を理解し、緊張を下げるようにすることが大切です。

<セルフケアのポイント>  

 相手の状態を読んだり、察したりということには長けているため、人を気遣うことにその力を使ったり、組織の管理職や参謀役として活用したりするなど建設なものへ振り向けることは良いとされます。
 人の気持ちは裏切る―信じるといった2文法ではなく、移ろいやすくて当然でコントロールできないということを知るなど、対人関係を学ぶソーシャルスキルトレーニングなども有効とされます。
 

・このタイプで知られる有名人

 権力者に多く見られる傾向がある。
 ヒトラー、スターリン、ロベスピエール、ネロ、など

 

 


●B群(ドラマチック・タイプ)気分障害に関連した気質。魅力的で、ドラマの主人公のように自分本位。感情的で衝動的。

 

境界性パーソナリティ障害

 境界性パーソナリティ障害は、現在のパーソナリティ障害概念の中心に位置するタイプです。「境界性」とは、一般的な悩み(神経症)と精神病との境界にある、ということがもともとの意味です。境界性パーソナリティ障害は強烈な「見捨てられる不安」が特徴です。

「自分は価値がなく、捨てられる」という見捨てられ不安が根底にあり、気分や相手への評価が両極端に揺れ動きます。
 例えば医師に対しても、「これまであった中で一番いい先生。名医だ」といったと思ったら、「あの先生は冷たい。最悪」というように極端に揺れ動きます。にこやかに会話していても、帰り間際に、先生がふと次の患者のカルテを見ただけで、自分はないがしろにされたと感じたり、といったことが起きます。
 あいまいな生き方がその特徴で、慢性的な空虚感があります。何かを達成しても、常に「これは本物ではない」という感覚があります。
  
 外からは魅力的であり、周囲も「何とかしてあげたい。放っておけない」と思わされて、巻き込まれてしまいます。

 感情が不安定です。自暴自棄になったり、激しく不安になったりするために、リストカット、過量服薬、過食、薬物依存、過呼吸、解離性症状、幻覚、性的逸脱、自殺企図などが見られます。
 自分に気を惹きつけるために、周囲の人間関係を壊すようなことを言ったりします。
  
 気分が変動しやすい気質に加えて、幼少期の愛情不足、見捨てられ体験、トラウマなどが原因とされます。
 ここ、2,30年で急増し、ここ数年は顕著なタイプは減少してきているとされます。

 人口の約2%が該当するとされます。若い女性に多い症状です。

 ⇒「境界性パーソナリティ障害の原因とチェック、治療、接し方で大切な14のこと

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 当人の期待に応えようとすると無制限に要求はエスカレートして、結局破綻してしまいます。ニュートラルで、落ち着いていつも冷静に安定して対応すること、一貫性がとても大切です。境界性パーソナリティ障害はあいまいな生き方が特徴ですから、一貫しているものは安心感を与えます。
 相手が要求してきても、できないことはできないと落ち着いて伝えられれば、相手は傷つけられたとは感じません。自分には価値が無い、と思っていることが多いですから、良い点を見つけて伝えてあげることも大切です。

<セルフケアのポイント>  

 当人は自分の状態を親や他人のせいにしていても恨みが募るばかりで、解決に向かうことはありません。相手は変わることは難しいですし、自分を育て直してもらうということもできるものではありません。他人にすべてを受け止めてもらうというようなことは難しいものです。自分で自分を引き受けるようにすることが大切です。パートナーと出会うことでよくなることもあります。ただ、パーソナーに多くを期待しすぎると関係が破たんする恐れがありますから注意が必要です。


・このタイプで知られる有名人

  マリリン・モンロー、太宰治、など

 

 

自己愛性パーソナリティ障害

 自己愛性パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害と並びパーソナリティ障害概念の中心に位置するものです。 

 過剰な自信、万能感、誇大な願望を特徴とする「自己誇大感」、尊大な態度、自分には特別な配慮があって当然という気持ち、他人への関心が薄く、共感、同情、思いやりの欠如を特徴とする症状です。世界は自分のために存在している、というような感覚があります。
 結果がすべてで、刹那的、努力を軽んじて、平凡よりも特別を求めます。

 自分を特別と考え、他人を利用することや犠牲にすることにも平気で行います。自信家に見えますが、内面では劣等感や卑屈な体験が潜んでいて、自分を愛せず、誇大な自信でバランスしている状態です。他者の評価が気になり、批判を寄せ付けません。失敗すると過度に落ち込むこともあります。失敗を直視できず、周囲との摩擦を軽視して調整することとができません。 挫折によって、抑うつや反社会的行動をとる場合もあります。


 期待する称賛が得られないと、屈辱を味わったと感じて、等身大の自分を見つめることができずに、自己防衛として強い怒りをぶつけるようになります(自己愛的怒り)。

 自分に自信がないため、自尊心を膨らませ続けなければ自分を保つことができないと考えています。褒められなければ愛されないと考えています。 
 恥の感覚にゆがみがある「恥の精神病理」が特徴で、自分がバカにされてきた体験を過去に持っていたりするために、それらをかき消すように尊大になり、あるいは、バカにされているのでは、という意識をもっています。

 幼いころに溺愛されたり、劣等感を感じる体験をしたために、自己愛が適切に発達せずに、「誇大自己」の段階にとどまっている状態と考えられます。ありのままの自分を愛することができないために、誇大化する自己を誇っているといえます。

 尊大で自己を前面に押し出すタイプもいれば、一見すると控えめですが、内面ではプライドが高く、傷つきやすいタイプもいます。
 両者とも劣等感と誇大な自己イメージとがあります。後者は回避性パーソナリティ障害の特徴とも重なります。

 会社の社長やスポーツ選手、芸能人など社会的に成功している人も多いとされます。成功に伴って自己愛を適度なサイズに落ち着けていくことをしていかないと、慢心しすぎて大きな転落につながる危険もあります。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>

 根底に劣等感があるため、劣等感が強いタイプに境界性パーソナリティ障害状態が見られます。見かけの強さと反対に、不安定で激しい感情に周囲も振り回されます。

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 過大な自信や態度を修正しようとはせずに、まずはその人の自己像を映し返すことが大切です。直面化を急がせすぎてはいけません。欠点やミスなどを指摘することは逆効果です。

 自己愛を尊重し、当人と信頼関係を得られれば、適切なサイズに自己像を徐々に修正していくこともできます。等身大の自分で大丈夫ですと、というメッセージを伝えながら、誇大な自己と非力な自分のギャップに少しずつ気づかせて、現実的なサイズに着地させていくことが必要です。
 当人からの過度な要求は、自己愛を尊重しながら丁重にお断りすることが大切です。 

 自己愛性パーソナリティ障害の方は他人に称賛されたりといった経験はありますが、本当に共感したり、されたりした経験は少なく、実際は孤独です。そのため、治療者もできる限り共感をすることが、当人が共感能力を発達させることにつながります。  

<セルフケアのポイント> 

 仕事など社会生活を通じて、チームでの協調性や、社会への貢献などを意識してうまく自己愛を昇華させていくことは、とても良い解決方法になります。また、歳とともに丸くなる「晩熟現象」によって改善が進むこともしばしばあります。
 若いころは傍若無人だったスポーツ選手が、ベテランになるにつれチームへの貢献を口にするようになる、といったことはその典型と言えます。


・このタイプで知られる有名人

 ココ・シャネル、ダリ、ロダン、ワグナー、サルトル、など
 会社の社長、芸能人などに非常に多く見られるとされます。

 


演技性パーソナリティ障害

 派手なパフォーマンスや外見で人の興味を引き付けようとします。場合によっては中身のない話や嘘をついたりということも厭いません。
 対人関係を過度に親密なものと考えます。相手に合わせよう、流行に乗ろうという気持ちが強く自分の感覚が希薄です。そのため、暗示にかかりやすい傾向があります。
 根底には外見の魅力がなければ自分は価値がないという不安があります。頭痛やめまい、腹痛、痙攣、過呼吸など身体化症状が出ることがあります。現代の日本では、あまり目立たなくなってきたタイプです。

 厳格な家庭で育ったケースが多く、外見を重視する価値観や親の性的側面、性的虐待の影響を受けて育った場合に生じます。性的虐待を受けているケースも多く含まれます。
  

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 相手の派手な態度を批判したり、修正しようとすることは逆効果となります。安定した関わりを持ちながら、内面を評価してあげて、少しずつ内面も磨かれるようにしてあげることがポイントです。
<セルフケアのポイント> 
 当人も、外見だけではなく内面も磨くように意識すると安定していきます。日記をつける、読書をするなど自分だけで内省する時間を持つことは有効です。

 

・このタイプで知られる有名人

 チャップリン、など

 


反社会性パーソナリティ障害

 ルールを無視したり、危険を冒すことを好む傾向があります。人の痛みに鈍感です。倫理観、責任感がなく、無鉄砲で、命知らずです。戦いの中では、豪胆で勇敢で活躍しますが、平和な世の中ではアウトローとみなされます。
 言葉が上手い虚言タイプ、暴力的に支配する暴力タイプに分かれます。発症の由来では、やんちゃな傾向がある少年時代に厄介者扱いされたり不遇な経験を経て親や社会を恨むようになったタイプや青年期以降に反社会性の傾向が現れるタイプとがあります。
 行為障害(非行や犯罪)、反抗挑戦性障害(反抗的な態度をとる)、アルコールや薬物依存症に陥ることもあります。
 明らかに反社会的なタイプは近年減ってきている傾向にあります。
 
 もともとの気質として新奇なものへの好奇心やリスクを恐れない性格もありますが、幼少時の養育環境などで否定的な扱いを受け、反抗的な態度が強まったために生じます。一般の人と比べると恐怖を感じる偏桃体の働きが低下しているとされます。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>

 非常に衝動的だったり、自己破壊的な行動を起こします。

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 相手が魅力的で言葉巧みなケースが多いのですが、基本的にはあまり関わらないほうが無難です。反社会的な人と心を通じ合うことにたけた人が関わるといったことが必要になります。
 関わらざるを得ない環境でも、できるかぎりニュートラルで、相手に合わせすぎない。無理な要求ははっきりと断るようにしましょう。距離を置いて温かく見守ることが大切です。
 否定的な対応に敏感なために、そうした態度はとらないようにしましょう。

<セルフケアのポイント> 

 当人が克服するうえでのポイントとしては、良きパートナーや先輩に巡り合うことは重要です。
 結婚したり、子どもができるなど愛する人ができたりすると丸くなったり、同じような境遇を経て丸くなった人やパートナーに受容されることで徐々に克服されていくことがあります。歳とともに丸くなる傾向もあります(晩熟現象)。
 また、リスクを恐れない性格を生かせるような職業。自衛官、とび職、格闘家、スポーツ選手などに就き、仕事の中で徐々に成熟していくことも良い方法です。
 宗教の世界観に出会い、反社会的な感情を昇華していくというケースもあります。

 

・このタイプで知られる有名人

 犯罪者、暴力団関係者、政治家や経営者にもそうした性質があるといわれています。

 

 

●C群(アンクシャス・タイプ)神経症に関連した気質。一見すると、パーソナリティ障害には見えない。常識的に見える。不安や緊張が強く、内向的。

 

回避性パーソナリティ障害

 責任やプレッシャーがかかる状況を避けようとします。自己評価が低く、自信がなく、失敗を恐れて、人から嫌われるからと人との関わりを持とうとしません。
 他人の評価にも敏感です。親の期待に応えようとして果たせなかったという思いが強く影響しています。
 優秀すぎたり、有名な親の子どもに見られることがあります。親の価値観や接し方が「自我理想(生の欲望、甘えの構造)」として残っています。
 「理想的な自己」と劣等感をもつ自分とのギャップに苦しんでいます。
 性的なかかわりにも消極的です。ただ、内面では人とのかかわりを強く求めていたりもします。ただ、親密になると傷つくことを恐れて行動には移しません。
 かつての森田神経質(几帳面で律儀ですが、完璧主義で理想が高く、自信がなく劣等感を持つ傾向)と同様のタイプです。日本人に比較的多いタイプです。
 引きこもり、登校拒否などの一部は、回避性パーソナリティ障害が含まれると考えられます。
 スチューデントアパシーといった燃え尽きのような症状も回避性パーソナリティ障害の一部と考えられます。

 不安な気質を土台として、褒められずに自信を奪うような養育環境で育った場合、親の望むことを押し付けられて育ったり、いじめや受験勉強など逃げ場のない苦しい体験をしたりした場合に生じます。親の支配に押しつぶされた結果と考えられます。親が社会的に成功していて過度な期待をかけられているケースも多く、著名人や経営者の2世などにそうしたタイプが見られることがあります。

 人口の約0.5~1%が該当するとされます。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>

 社会への適応が上手くいかなくなり、引きこもり状態になったことがきっかけで生じることがあります。

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 プレッシャーがない中で、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。他人に依存する傾向もあるため、サポートはあくまで示唆にとどめ、先回りしないことが大切です。主体性を尊重し、自分の力で成功体験を重ねていくことが必要になります。プレッシャーをかけるのではなく、褒めて伸ばしていくことが重要です。義務や責任を説くことは逆効果です。
 回避の症状がまだ小さい場合は、ストレス源から離れて休んで気力を回復させることです。

<セルフケアのポイント> 
 
 不安が先に立つため、まずは小さく実行していくことを習慣化することです。徐々に、あるがままの等身大の自分に自信がついてくるようになります。

 

・このタイプで知られる有名人

 森鴎外、など

 


依存性パーソナリティ障害

 自己決定が苦手で、他者の支えがなければならないという思いにとらわれています。常に相手を優先してしまいます。
 嫌でも断ることができず、貢いだり、身を貶めたり、理不尽な要求にこたえようとしてしまいます。
 盲目的、楽観的に依存対象に服従する幼児(赤ん坊)型と、相手の悪意を知りながら抵抗できない服従(献身)型に分かれます。
 反社会性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害のある人からDVや支配を受けたり、指示されて反社会的行為を行うこともあります。 

 親が支配的であったり、不安定であったりした環境で育った人に良く見られます。
 親の支配に依存することで養育環境に適応してきて結果と考えられます。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>

 このタイプの方が境界性パーソナリティ障害状態になると、不安定で衝動的になります。信頼して依存していた人を一転して、否定したり、拒絶したりということが起きます。

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 相手を尊重してあげて、小さな決断から少しずつ行えるように促してあげることがポイントです。
 当人の代理人になったり、代わりに意思決定をするようなことは行うべきではありません。

<セルフケアのポイント> 

 自ら判断すること、本音を言うことを意識することです。その際は、善悪や失敗などはなく、自分がしたいかしたくないかで判断して良いと知り、些細なことから自己決定を行うことが大切です。
 他人に献身できるような仕事に就くと本人の気質を生かしながら、社会に適応していくことができます。

 

・このタイプで知られる有名人

 ユトリロ、など

 

 

強迫性パーソナリティ障害

 規律や道徳や義務感、責任、良心に過度に忠実で、完璧主義で融通が利かないことが特徴です。
 決められた計画を進めることにこだわり、無理をしがちです。プライベートを犠牲にして仕事にのめりこむことがあります。
 他人が思い通りに動かないと心配で、うまく仕事を任せることができません。
 古いものを捨てられなかったり、お金に対して過度にケチであったりします。
 
 強固な罪悪感がベースにあり、感情や行動を規制してしまいます。感情表現も抑制的です。
 自分にも他人にも厳しく、周囲も息が詰まるようになり、周囲が病気となったり、ケンカ別れとなったりすることがあります。

 固執性の強い気質や、親が支配的でしつけに厳しい養育環境などによって生じると考えられます。
 親の支配に忠実だった結果と考えられます。

 規範の順守ではなく、過食や依存症として現れるケースも増えてきています。

 

<境界性パーソナリティ障害状態になった場合の特徴>
 親の支配に従って優等生であるため、このタイプの方が境界性パーソナリティ状態になると、一転して、人格が変わったように見えることがあります。

 

 

・このタイプへの対応やセルフケアのポイント

<周囲の対応のポイント>

 当人の価値観を尊重して、礼儀正しく接することです。 
 価値観が対立することがありますから、互いの領分を分けることがポイントです。 
<セルフケアのポイント>  
 善悪や価値観は人それぞれ多様であることや、過ぎたるは猶及ばざるが如しということを知り、ほどほどで満足することが、結局はより良い結果につながることを経験していくことが大切です。
 仕事においては、正確さが求められる仕事において力を発揮します。

 

・このタイプで知られる有名人

  ヘルマン・ヘッセ、など

 

 

パーソナリティ障害に関連する障害や病気


・双極性障害(Ⅱ型)

 躁状態になると、ハイテンションになって誇大な自信や行動で相手を振り回したり、うつ状態になって急に落ち込んだりします。
 境界性パーソナリティ障害と誤診されやすい症状です。

 ⇒「双極性障害(躁うつ病)の治療と理解のために大切な4つのポイント

 

・うつ病

 パーソナリティ障害全般で関連があります。

 ⇒「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 

・統合失調症

 妄想性パーソナリティ障害、シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害、失調型パーソナリティ障害と関連があります。

 ⇒「統合失調症の症状や原因、治療のために大切なポイント

 

・妄想性障害 

 妄想性パーソナリティ障害と関連があります。

 

・不安障害

 パーソナリティ障害全般と関連があります。

 ⇒「パニック障害とは何か?その本当の原因と克服に必要な5つのこと

 

・強迫性障害

 自己愛性パーソナリティ障害と関連があります。
 同じような名前の強迫性パーソナリティ障害はあまり関連がありません。

 ⇒「強迫性障害を克服するために知っておきたい9つのこと~原因、症状、チェック

 

・摂食障害

 境界性パーソナリティ障害、失調型パーソナリティ障害と関連があります。

 ⇒「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

・アルコール依存症、薬物依存症

 反社会性パーソナリティ障害と関連があります。
 パーソナリティ障害と合併している場合、依存症の治療は比較的難しいとされています。

 ⇒「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

 

・発達障害

 診断においては発達障害とパーソナリティ障害は合併することは基本的にないと考えられています。
 発達障害傾向のある人が不遇な環境におかれて、次第にパーソナリティも偏り始める、といったことはあるようです。

 アスペルガー障害傾向があれば、シゾイドパーソナリティ障害や強迫性パーソナリティ障害が生じやすくなります。

 ADHD傾向があれば、反社会性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害が生じやすくなります。

 発達障害とパーソナリティ障害とは、鑑別が非常に難しいです。自己愛の未熟さという観点から、広義の発達障害として臨床を行っている医師もいます。

 ⇒「大人の発達障害の本当の原因と特徴~様々な悩みの背景となるもの

 

パーソナリティ障害3

 

 

 

パーソナリティ障害の主な治療方法

 パーソナリティ障害の治療はまだ確立されたものはありません。特効薬や即効的な方法があるわけではなく、患者の状態を見ながら、薬物療法や精神療法を組み合わせて行われています。対応できるカウンセラーや医療機関はまだまだ限られています。

 

・薬物療法

 パーソナリティ障害に伴う不安や衝動性などについては、依存性の少ない非定型抗精神病薬や気分安定化薬などで落ち着かせていきます。
 根本的なものを治療する薬はないので、症状を緩和して、治療をしやすくするために用いられます。 

 

・精神療法

 不安定な自己愛などの根本的な部分の改善には、精神療法と組み合わせていく必要があります。
 支持的カウンセリング、認知行動療法、マインドフルネス、対人関係療法、トラウマ療法などがあります。
 認知行動療法を用いて、ほどほどの考え方や、見捨てられることはない、ということを知っていくと徐々に安定したかかわりを持つことができるようになります。
 弁証法的行動療法は、境界性パーソナリティ障害に効果があるとされます。
 同じ症状の人がグループワークを行うことも効果があります。

 ⇒「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ

 

 

 

パーソナリティ障害を克服、対応するための7つのポイント

  1.パーソナリティは“状態”であり、治るものである

  パーソナリティ障害における、パーソナリティとは、人格ではなく“状態”を指しています。
  そのため適切な治療や時間の経過によって変わっていきます。
  ある研究によれば、境界性パーソナリティ障害の患者は、1年度には約6割が、6年後に診断すると約7割が診断基準を満たさなくなっていることが分かっています。
  他のパーソナリティ障害についても同様に時間が経過した後に診断すると、多くのケースで診断を満たさなくなっているとされます。  

 

 

 2.パーソナリティ障害は、年齢とともに落ち着いてくる傾向にあります

  パーソナリティ障害はある種の発達の問題ともされるように、歳とともに成熟していきます。 
  歳とともに成熟することを「晩熟」現象といいます。

  晩熟が起きやすいパーソナリティ障害のタイプとして
   反社会性、境界性、演技性、依存性、自己愛性 があり、

  晩熟が起きにくいタイプとしては、
   強迫性、妄想性、シゾイド、失調型、回避性 があげられています。

 

 

 3.パーソナリティ障害は環境によって改善される

  ゆとりは精神障害を改善し、焦りは精神障害を際立たせる、と言われます。
  パーソナリティ障害も同様で、本人にとって受容的で安心できる環境は、パーソナリティ障害を改善させます。良いパートナーに恵まれることも影響が大きいです。
  逆境にある場合や、本人に適さない環境にある場合は、環境を変えることは大変有効です。

 

 

 4.パーソナリティ障害は大器晩成。長所を伸ばして短所は成熟させる

  人間は、平均から外れる部分がなければ社会で大成しないとも言えます。
  パーソナリティ障害は、才能や強いエネルギーの源でもあります。
  未熟な部分も歳とともに発達していきます。パーソナリティ障害は、大器晩成とも言えます。長所は尊重して伸ばして、短所は成熟を見守ることが大切です。

 

 


 <家族や知人がパーソナリティ障害である場合>

 5.あなたは大丈夫と思って見守る。距離をとって一貫した姿勢で接する

  何とかしようと、関わりすぎたりすることはこちらも巻き込まれて結局息切れしてしまいます。パーソナリティ障害のケアは長丁場でもあります。
  自己愛の未熟さからくる要望にすべて答えることはできませんし、本人のそのようなことを望んでいるわけではありません。むしろ、距離を取りながら、浅く長く関わる。あなたは大丈夫、と思いながら、一貫した姿勢で関わることが大切です。実の子供というよりは親戚の子どもを扱うように扱うと、程よくバランスが取れた対応ができるといわれています。相手から暴言を言われても、距離をとって、非難もせず、機嫌も取らないようにしましょう。
  

 

 6.無理に変えようとしない

 相手のスタイルを尊重しながら、ニュートラルで安定したかかわりを心掛け、自分自身の人生を充実させることを優先しましょう。
 縁があれば相手は変わるし、変わらなくても仕方がない、という関わり方が結果的には改善を後押しし、大切です。

 


 7.犯人探しをしない。必要なのは自らを自らで引き受け、成熟すること

 「育て直しが必要」といったことをいう方もいますが、現実にはなかなか難しいです。育て直しにこだわるあまり、応えてくれない親を恨んだり、誰かに親の役割を要求してかえってこじれることがしばしばあります。他人は自らの期待通りには動いてくれず、失望を繰り返すことになります。  
 逆に、自分を自分で引き受ける気持ちを持ち、自らの自己愛を成熟させることで大きく改善していきます。 

 どうしても過去のことで苦しくなる場合は、トラウマケアなどを受けるなどして、解消しましょう。
 

 

 

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(参考)

青木省三「精神科治療の進め方」
青木省三「大人の発達障害を診るということ」
林直樹 編「こころの科学vol.185 パーソナリティ障害の現実」
林直樹 編「こころの科学vol.154 境界性パーソナリティ障害」
林直樹「パーソナリティ障害」
市橋秀夫「パーソナリティ障害のことがよくわかる本」
磯部潮「人格障害かもしれない」
岡田尊司「ササっとわかるパーソナリティ障害」
岡田尊司「パーソナリティ障害」
岡田尊司「ササっとわかる「境界性パーソナリティ障害」」
牛島定信「やさしくわかるパーソナリティ障害」
高岡健「人格障害のカルテ 理論編」
高岡健「人格障害論の虚像」
大泉実成「人格障害をめぐる冒険」
笠原嘉「精神病」

ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」

神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」

 

 

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