パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント

パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント

パーソナリティ障害

 

 今回は、医師の監修のもと公認心理師が、パーソナリティ障害についての主な治療方法と種類別のセルフケアのポイントについてまとめてみました。よろしければご覧ください。

 

 

<作成日2019.9.18/最終更新日2026.9.27>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

・パーソナリティ障害を克服するための6つの原則

・パーソナリティ障害の主な治療方法

・パーソナリティ障害の種類、タイプ別のセルフケアのポイント

 

 →パーソナリティ障害の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「パーソナリティ障害とはなにか?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方~基本原則と10種類別に解説」

 ▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」

 

 

専門家(公認心理師)の解説

パーソナリティ障害では、幼少期からの愛着や対人関係、自己感覚の形成、現在の環境などが、その後の対人関係や感情調整に大きく影響します。

当センターでは、その中でも特に「愛着」と「成熟」という視点を重視しています。臨床では、愛着の不安定さや対人関係での傷つき、自己評価の不安定さなどが、その人のもともとの気質と重なり、対人関係や感情調整の難しさとして現れているケースがあります。
そのため、単に「性格を直す」といったことではなく、人や社会に対する安心感を少しずつ取り戻すこと、自分の感情や行動を理解し調整できるようになること、社会の中で自分なりの位置や役割を築いていくことなどが、回復につながると考えています。

一方、症状が強い場合には、セルフケアだけで対処しようとせず、精神科・心療内科などで状態を評価してもらうことが重要です。パーソナリティ障害の種類や重症度によっては、専門的な心理療法や医療との連携が必要になります。カウンセリングが適しているかどうかについても、その人の状態や安全性をみながら判断する必要があります。

 

 

 

パーソナリティ障害を克服するための6つの原則

 1.パーソナリティにおける「障害」は“状態”であり、治りうるものである

 パーソナリティ障害は、かつて考えられていたような固定不変のものではありません。症状や対人関係のパターンは、治療や環境の変化、年齢などによって改善することがあります。そのため適切な治療や時間の経過によって変わっていきます。特に境界性パーソナリティ障害では、長期経過の中で診断基準を満たさなくなる人が少なくないことが知られています。他のパーソナリティ障害についても同様に時間が経過した後に診断すると、多くのケースで診断を満たさなくなっているとされます(出典:林直樹「パーソナリティ障害」(新興医学出版社))。  

 

 

2.キーワードは、「愛着」と「成熟」

 当センターがパーソナリティ障害を理解する際に重視しているキーワードが、「愛着」と「成熟」です。

 基本的に「パーソナリティ」とは、それぞれの気質の要素があり発達上の経験を通じて形成されますが、そこに愛着の不安やこじれ、未成熟が重なることで「障害(disorder)」となると考えられます。

 愛着とは、人や社会への信頼であり、安心安全感です。「障害」と呼ばれるような状態を克服するためには、愛着を安定させ、成熟を目指すことがポイントになります。

 愛着を安定させるためには、一人の人との関係ではなく、多くの人と薄く広く関わることです。成人では、一人の人だけに安心や承認を求めるよりも、家族、友人、職場、地域など複数の関係を持ち、人や社会とのつながりを分散させていくことが助けになる場合があります。特定の一人に強く依存すると、その関係に大きな負担がかかることもあるためです。

 また、成熟については「社会の中での位置と役割」を得ることがとても重要です。仕事、学業、家事、地域活動、趣味などを通して、自分なりの役割や他者との関係を持つことも、自己効力感や社会とのつながりを育てる助けになります。就労が難しい場合は、就労移行支援などを利用する、地域でのボランティアなどへの関わりも助けとなります。

 

 

3.パーソナリティ障害は、年齢とともに落ち着いてくる傾向にあります

 パーソナリティ障害は固定したものではなく、年齢とともに落ち着いていく傾向があります。特に、衝動性や激しい感情反応などは、加齢とともに弱まっていくことが知られています。特に、衝動性や激しい感情反応などは加齢とともに弱まるケースがあります。

 こうした年齢に伴う変化を「晩熟」と表現する臨床家もいます。林直樹氏は下記のように整理しています

 晩熟が起きやすいパーソナリティ障害のタイプとして
   反社会性、境界性、演技性、依存性、自己愛性 があり、

 

 晩熟が起きにくいタイプとしては、
   強迫性、妄想性、シゾイド、失調型、回避性 があげられています。

 

(出典:林直樹「パーソナリティ障害」(新興医学出版社))

 

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 

 

4.パーソナリティ障害は環境によって改善される

 ゆとりは精神障害を改善し、焦りは精神障害を際立たせる、と言われます。パーソナリティ障害も同様で、本人にとって安心できる対人関係や、本人に合った生活環境は、症状の安定や生活機能の改善に大きく影響します。安定したパートナーや家族、友人などとの関係は、回復を支える重要な要素になります。逆境にある場合や、本人に適さない環境にある場合は、環境を変えることは大変有効です。

 

 

5.短所だけを見るのではなく、その人の強みを活かす

 パーソナリティ障害と診断されたからといって、その人のパーソナリティそのものがすべて問題なのではありません。平均から外れるような強い特性が、置かれる環境によっては長所や個性として生かされることもあります。人によっては年齢を重ねて特性をうまく生かせるようになり、「大器晩成」と呼びたくなるような経過をたどることもあります。

 当センターでは、本人の持つ特徴をすべて消そうとするのではなく、生かせる特徴は強みとして伸ばし、本人や周囲を苦しめている部分については、より柔軟な対処ができるよう成熟を促していくことが大切だと考えています。

 

 

6.自らを自らで引き受け、成熟に努めること

 「育て直しが必要」といったことをいう方もいますが、現実にはなかなか難しいものです。育て直しにこだわるあまり、応えてくれない親を恨んだり、誰かに親の役割を要求してかえってこじれることがしばしばあります。他人は自らの期待通りには動いてくれず、失望を繰り返すことになります。逆に、自分自身の感情や選択に少しずつ主体的に関われるようになることが、回復の一つのポイントになります。

 過去の対人経験やトラウマが現在の症状に影響しているときは、その影響を理解し、愛着やトラウマを扱う心理支援を受けることが回復につながります。
 

 →参考となる記事はこちらをご覧ください。

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」

 

 

パーソナリティ障害の主な治療方法

 パーソナリティ障害の治療は、種類や症状、重症度によって異なりますが、心理療法が中心になります。特に境界性パーソナリティ障害では、弁証法的行動療法(DBT)など、効果が研究されている構造化された心理療法があります。必要に応じて、併存するうつ病、不安症、ADHDなどへの薬物療法や、生活・社会面への支援を組み合わせます。

 

・薬物療法

 現在、パーソナリティ障害そのものを治すことを目的とした薬はありません。 薬物療法は、併存するうつ病や不安症などを治療したり、状態に応じて特定の症状を軽減したりする目的で用いられることがあります。

 特に境界性パーソナリティ障害では、薬物療法を治療の中心とするのではなく、必要な場合に目的となる症状を明確にして、心理療法を補助する形で使用することが推奨されています。服薬については、精神科・心療内科などで個々の状態に応じて判断します。

 

 

・心理療法

 パーソナリティ障害では、本人が抱えている対人関係や感情調整、自己理解などの困難に応じて心理療法が行われます。

 特に境界性パーソナリティ障害では、弁証法的行動療法(DBT)、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)、スキーマ療法、転移焦点化精神療法(TFP)など、構造化された心理療法が研究されています。また、認知行動療法的なアプローチや支持的な心理療法などが用いられる場合もあります。

 どの治療法が適しているかは、パーソナリティ障害の種類、症状の程度、本人の希望、併存する問題などによって異なります。

 トラウマが現在の症状に影響している場合には、安全性を確認しながら、トラウマへの治療を進めていくことも重要です。

 

 ▶「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ」

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 
Point

 パーソナリティ障害は、症状の程度によって必要な支援が異なります。症状が軽く、生活がある程度安定している場合には、セルフケアや一般的なカウンセリングが役立つ場合があります。一方、強い自傷・希死念慮、著しい衝動性、激しい感情の不安定さ、現実検討の低下などがある場合には、セルフケアだけで対応せず、精神科・心療内科などで評価を受けることが重要です。状態によっては、専門的な心理療法や多職種による支援が必要になります。

 

 

・運動(有酸素運動など)などのセルフケア

 適度な運動は、身体的な健康だけでなく、気分や睡眠、ストレスの軽減などにも役立つことがあります。ウォーキングや軽い運動など、無理なく継続できる方法を生活に取り入れることは、治療を補助するセルフケアの一つになります。

 有酸素運動といってもハードな運動は必要ありません。週に2、3日30分程度ウォーキングを行うだけで大丈夫です。外に出ることが難しい場合は、ヨガ、ピラティスなども効果的です。最近であればYoutubeなどの動画を見ながら簡単に自分でヨガを行うことができます。

 ただし、運動そのものがパーソナリティ障害の主要な治療法というわけではありません。 症状が強い場合には、セルフケアだけで対処せず、医療や心理支援と組み合わせることが重要です。

 
Point

 有酸素運動は、決して気休めや道徳的な助言ではありません。非常に高い効果が見込めますので、すべての方に必ず取組んでいただきたいセルフケアの方法の1つです。

 参考:ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版) など

 

 

 

パーソナリティ障害の種類、タイプ別のセルフケアのポイント

 パーソナリティ障害について、タイプごとにみられやすい特徴をもとに、日常生活で取り組めるセルフケアのポイントをまとめました。

 ここで大切なのは、パーソナリティの特徴そのものをなくそうとすることではありません。困りごとにつながっている部分については、より柔軟な対処ができるようにしながら、その人がもともと持っている特徴や長所は生かしていくことが大切です。

※以下のタイプは、人を固定的に分類するものではありません。一人の人に複数の特徴が重なってみられることもあります。また、症状が強い場合にはセルフケアだけで対処せず、医療機関や専門家へ相談してください。

 

 パーソナリティ障害の10のタイプ(種類)の特徴について詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 

 

シゾイドパーソナリティ障害(症)

 シゾイドパーソナリティ障害では、親密な対人関係をあまり求めず、一人で過ごすことを好む傾向や、感情表現が乏しく見えることなどが特徴です。周囲からの賞賛や批判に対しても、反応が少ないように見えることがあります。

 外からは感情が乏しく見えても、「感情がない」「人にまったく関心がない」ということではありません。一人でいることで安心できたり、自分の内的な世界やペースを大切にしていたりする方もいます。

 そのため、無理に社交的に変えようとするよりも、その人に合った人との距離感を見つけることが重要です。

 

・セルフケアのポイント

 一人で過ごすことや、自分のペースで物事に取り組むこと自体は問題ではありません。無理に社交的になろうとするよりも、自分に合った距離感で人とかかわることが大切です。

 一方、人とのかかわりを避けることで生活の選択肢まで狭くなっている場合には、挨拶をする、必要なことを相談する、短時間だけ人と過ごすなど、負担の少ないところから社会との接点を保つことが役立ちます。

 一人で集中して取り組めることや、自分のペースを保てることが強みになる人もいます。仕事や趣味でも、そうした特徴を生かせる環境を選ぶことは一つの方法です。

 

 

 

統合失調型パーソナリティ障害(症)

 統合失調型パーソナリティ障害では、対人関係の難しさに加えて、独特な考え方や話し方、奇妙な信念、関係念慮、通常とは異なる知覚体験などがみられることがあります。周囲からは風変わりに見えることもあります。

 独特な感性や発想を持っている人もいます。ただ、その独自性が強くなるほど、周囲との意思疎通や現実生活との折り合いが難しくなる場合があります。

 大切なのは、その感性そのものを否定することではなく、自分の感覚と、周囲の人も確認できる事実とを区別する力を持つことだと考えます。

 

・セルフケアのポイント

 独特な感性や発想を無理に否定する必要はありません。一方、自分の感じたことや考えたことと、他の人も確認できる事実とを分けて考える習慣を持つことが役立ちます。

 日々の生活では、睡眠や食事、金銭管理、予定管理など、現実生活の土台を安定させることも重要です。また、自分の考えを安心して確認できる、信頼できる人を持っておくことも助けになります。

 独自の感性や発想力が、芸術、創作、研究などで生かされる人もいます。大切なのは、その特徴を失うことではなく、現実生活とのバランスを取りながら表現していくことです。

 

 

 

猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害(症)

 猜疑性パーソナリティ障害では、他者の意図を疑いやすく、悪意があるのではないかと考えやすいこと、他人を信頼することが難しいこと、侮辱や批判を強く気にしたり、恨みを長く持ち続けたりすることなどが特徴です。

 人の言葉や表情、周囲の変化に非常に敏感な方もいます。その敏感さ自体が問題なのではありません。

 ただし、「きっと悪意がある」「裏切られるに違いない」と否定的な解釈だけに固定されると、本人にとっても対人関係が非常に苦しくなります。

 

・セルフケアのポイント

 相手の言葉や態度に敏感であること自体は、周囲の変化によく気づけるという側面もあります。ただ、その敏感さが強くなると、「きっと悪意がある」「裏切られるに違いない」と一つの解釈に固まりやすくなることがあります。

 何か気になることがあったときには、すぐに結論を出さず、「別の理由もあるかもしれない」と複数の可能性を考える習慣を持つことが役立ちます。相手の気持ちは完全には分からず、また、人の気持ちはその時々で揺れ動くものだと知っておくことも大切です。

 周囲の状況によく気づく力を、相手を警戒することだけではなく、人を気遣ったり、問題を早く察知したりする方向へ生かせる場合もあります。

 

 

ボーダーライン(境界性)パーソナリティ障害(症)

 境界性パーソナリティ障害では、対人関係、自己像、感情が大きく揺れやすいこと、強い見捨てられ不安、衝動的な行動などが特徴です。人への評価が理想化と失望の間で大きく変化することもあります。

 当センターでは、こうした大きな揺れの背景に、自己評価の不安定さや、人との関係に安心を持ちにくいことが重なっているケースにも注目しています。

 特に、安心や自分の価値を一人の相手だけに強く求めると、その関係に大きな負担がかかり、さらに不安が強くなることがあります。

 

・セルフケアのポイント

 感情が大きく揺れたときには、その場ですぐに行動したり、大切な関係について結論を出したりせず、少し時間を置くことが大切です。「嫌われた」「見捨てられた」と感じても、それがそのまま事実とは限りません。

 また、安心や自己評価を一人の相手だけに求めすぎると、その関係に大きな負担がかかることがあります。家族、友人、仕事、趣味、支援者など、複数のつながりを持つことで、一つの関係にすべてを託さないようにしていくことも助けになります。

 過去に傷ついた経験があることと、現在の自分の生活をどうしていくかは分けて考える必要があります。過去の影響を理解しながらも、少しずつ「今の自分ができること」を増やし、自分自身を引き受けていくことが回復につながります。

 自傷や強い希死念慮、衝動的な行動などがある場合には、セルフケアだけで対応せず、医療機関や専門家につながることが重要です。

 

関連する記事はこちら

 ▶「境界性パーソナリティ障害(症)の治し方、接し方のポイント」

 

 

 

自己愛性パーソナリティ障害(症)

 自己愛性パーソナリティ障害では、自分を特別な存在と捉えること、称賛を強く求めること、特別な配慮を当然と感じること、他者への共感が難しくなることなどが特徴です。

 外からは非常に自信があるように見えても、内面では自己評価が不安定で、批判や失敗によって強く傷つく方もいます。

 そのため、「自信がありすぎる人」というよりも、他者からの評価によって自己評価が大きく揺れる状態として理解すると分かりやすい場合があります。

 

・セルフケアのポイント

 他人から評価されることだけを自分の価値の基準にしていると、褒められたときには自信が高まり、批判されたときには大きく傷つくという揺れが生じやすくなります。

 「評価されるかどうか」だけではなく、自分自身が何を大切にしたいのか、どのような役割を果たしたいのかという基準を持つことが大切です。

 また、仕事や地域活動などで、個人の成果だけではなく、チームへの貢献や後輩を育てることなどに意識を向けることで、強い自己実現欲求をより建設的な形で生かせる場合があります。

 自信や向上心そのものをなくす必要はありません。自分の長所を認めながら、他者にもそれぞれの価値や事情があることを理解できるようになることが、より安定した自己評価につながります。

 

 

 

演技性パーソナリティ障害(症)

 演技性パーソナリティ障害では、周囲から注目されることを強く求めること、感情表現が大きくなりやすいこと、外見や表現を使って注意を引こうとすること、他者から影響を受けやすいことなどが特徴です。対人関係を実際以上に親密だと感じることもあります。

 他者からの反応を強く意識することで、自分自身が本当は何を感じ、何を望んでいるのかが分かりにくくなっている場合があります。

 そのため、「人からどう見えるか」だけではなく、自分自身の感覚や価値観を育てることが重要になります。

 

・セルフケアのポイント

 周囲から注目されたり、好意的な反応を得たりすることを強く求めていると、自分が本当は何を感じ、何を望んでいるのかが分かりにくくなることがあります。

 日記を書く、読書をする、一人で静かに過ごすなど、他人の反応から少し離れて自分自身の感覚を確かめる時間を持つことが役立ちます。

 また、外見やその場の印象だけではなく、自分が時間をかけて身につけたい知識や技能、長く続けたい活動などを持つことも、安定した自己評価につながります。

 表現力や人を惹きつける力がある人は、それを他者から評価を得るためだけではなく、人を楽しませたり、場を活気づけたりする方向へ生かせる場合もあります。

 

 

反社会性パーソナリティ障害(症)

 反社会性パーソナリティ障害では、他者の権利を軽視したり、社会的なルールを繰り返し破ったりすること、虚言、衝動性、攻撃性、無責任な行動などがみられます。DSM-5-TRでは、成人期だけの行動ではなく、15歳以前からの行為症の存在なども診断上重要になります。

 行動力が強かったり、危険を恐れにくかったりする特徴を持つ人もいます。しかし、その力が他者を傷つけたり、社会的なルールを大きく逸脱したりする形で表れると、本人の生活にも重大な問題が生じます。

 大切なのは、強さや行動力そのものを否定することではなく、責任を伴う形で使えるようにすることです。

 

・セルフケアのポイント

 衝動的に行動したり、刺激や危険を求めたりする傾向がある場合には、「やりたいと思ったらすぐ行動する」のではなく、一度時間を置いて結果を考える習慣をつけることが大切です。

 自分にとって得か損かだけではなく、「この行動によって相手にはどのような影響があるか」「一週間後、一年後の自分にどのような結果が返ってくるか」と考えることも役立ちます。

 また、自分が信頼できる年長者や支援者など、必要なときに相談できる存在を持つことも助けになります。

 行動力、決断力、困難な状況でもひるみにくいといった特徴がある人は、それを危険な行動ではなく、責任を伴う活動や社会的に認められる目標へ向けていくことで、強みとして生かせる場合があります。

 

 

回避性パーソナリティ障害(症)

 回避性パーソナリティ障害では、否定的に評価されることや拒絶されることへの強い不安から、人とのかかわりを避けたり、新しいことに挑戦しにくくなったりすることが特徴です。自己評価が低く、自分は人より劣っていると感じることもあります。

 本当は人との関係を求めているにもかかわらず、「傷つきたくない」「失敗したくない」という気持ちが強いために、関係そのものを避けているケースがあります。

 そのため、単に「人嫌い」と捉えるのではなく、不安や自己評価の低さによって行動の幅が狭くなっている状態として理解すると分かりやすいでしょう。

 

・セルフケアのポイント

 不安がなくなってから行動しようとすると、いつまでも動けなくなることがあります。そのため、最初から大きな目標を立てるのではなく、少し不安があってもできそうなことを小さく実行していくことが大切です。

 「人とうまく話す」ではなく「今日は一人に挨拶する」、「新しい仕事をする」ではなく「まず情報を調べる」というように、課題を小さく分けて取り組みます。

 小さな経験を積み重ねることで、「不安があってもできる」「失敗しても大丈夫」という感覚が育っていきます。完璧な自分になってから社会に出るのではなく、不完全なまま人とかかわる経験を重ねることが重要です。

 

 

 

依存性パーソナリティ障害(症)

 依存性パーソナリティ障害では、自分だけで重要なことを決めることが難しく、他者からの助言や支えを強く必要とすること、相手との関係を失うことを恐れて自分の意見を言えなかったり、嫌なことでも断れなかったりすることなどが特徴です。

 他者を気遣ったり、人を支えたりできること自体は長所です。

 ただ、それが「相手に嫌われないためには自分を犠牲にしなければならない」という形になると、自分自身の希望や感覚が分からなくなっていきます。

 

・セルフケアのポイント

 大きなことを一人で決めようとする必要はありません。まずは、「今日は何を食べたいか」「休日をどう過ごしたいか」といった小さなことから、自分で選ぶ経験を増やしていくことが大切です。

 判断するときに「相手がどう思うか」「正しいか間違っているか」だけではなく、「自分はどうしたいか」という基準を持つようにします。

 また、頼まれたことにすぐ「はい」と答えるのではなく、「少し考えてから返事をします」と時間を置くことも役立ちます。

 人を支えたり気遣ったりできることは大切な長所です。ただし、自分を犠牲にすることと人を大切にすることは同じではありません。自分の希望や限界を尊重しながら人とかかわることが、より安定した関係につながります。

 

 

 

強迫性パーソナリティ障害(症)

 強迫性パーソナリティ障害では、秩序や規則への強いこだわり、完璧主義、仕事への過度な没頭、柔軟性の乏しさなどが特徴です。自分のやり方を他者にも求めたり、人に仕事を任せにくくなったりすることもあります。強迫症(OCD)とは別の疾患です。

 責任感や正確さ、丁寧さは、大きな長所でもあります。

 問題になるのは、その基準があまりに厳しくなり、「十分によい」で終わることができなくなったり、自分や周囲を追い詰めたりする場合です。

 

・セルフケアのポイント

 「正しくなければならない」「きちんとしなければならない」という気持ちが強い場合には、あえて100点を目指さず、70~80点でも終える練習をすることが役立ちます。

 自分にとって正しい方法が、必ずしもすべての人にとって唯一の正解とは限りません。「別の方法でもよい」「人によって価値観は違う」と考える余地を持つことも大切です。

 また、休むことや楽しむことも予定の一部として考え、仕事や義務だけで生活を埋めないようにします。

 丁寧さ、責任感、正確さ、計画性などは大きな強みになり得ます。そうした特徴を生かしながらも、「十分によいところで区切る」という柔軟性を身につけることがポイントです。

 

 

 

 

 →パーソナリティ障害の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「パーソナリティ障害とはなにか?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方~基本原則と10種類別に解説」

 ▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」

 

 

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。

(参考・出典)

青木省三「精神科治療の進め方」(日本評論社)

青木省三「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)

林直樹 編「こころの科学vol.185 パーソナリティ障害の現実」(日本評論社)

林直樹 編「こころの科学vol.154 境界性パーソナリティ障害」(日本評論社)

林直樹「パーソナリティ障害」(新興医学出版社)

市橋秀夫「パーソナリティ障害のことがよくわかる本」(講談社)

磯部潮「人格障害かもしれない」(光文社)

岡田尊司「ササっとわかるパーソナリティ障害」(講談社)

岡田尊司「パーソナリティ障害」(PHP)

岡田尊司「ササっとわかる「境界性パーソナリティ障害」」(講談社)

牛島定信「やさしくわかるパーソナリティ障害」(ナツメ社)

高岡健「人格障害のカルテ 理論編」(批評社)

高岡健「人格障害論の虚像」(雲母書房)

大泉実成「人格障害をめぐる冒険」(草思社)

笠原嘉「精神病」(岩波書店)

ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」(金剛出版)

神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」(創元社)

など