今回は、医師の監修のもと公認心理師が、多くの人が悩み緊張(過緊張)とその原因として考えられるトラウマとの関係についてまとめました。よろしければご覧ください。
<作成日2016.7.8/最終更新日2026.9.7>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・はじめに
・“緊張”とは何か?
・なぜリラクセーションだけでは“緊張”が十分に取れないことがあるのか?
・内面化された「危機(トラウマ)」によって引き起こされる「過緊張」
・幼い頃のトラウマによる特徴的な症状~「見捨てられる不安」
・“緊張”が高すぎると、本人も“緊張”に気がついていないことも多い
・トラウマの衝撃で、“緊張”(テンション)のコントロールがうまくいかなくなる
・あらためて“緊張”とは何か?~自分が自分でいれなくなること
・過緊張かどうかをチェックする
・過緊張を改善するには?~ストレスへの対処、トラウマをケアする
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緊張が必要以上に高まり、なかなかリラックスできない状態を「過緊張」と呼ぶことがあります。過緊張は、現在の強いストレスや不安などによって生じることもありますが、長期間のストレスやトラウマ、愛着の問題などが背景にある場合もあります。とくに、緊張する必要のない場面でも常に身体がこわばる、人といると過度に気を遣う、「自然体」でいる感覚がわからない、といった状態が長く続いている場合には、単なる一時的な緊張だけではなく、その背景を考えることが大切です。トラウマや慢性的ストレスの影響も検討してみる価値があります。
はじめに
私たちが感じる悩みで上位に来るのが“緊張”という悩みです。緊張は誰にでもあることですが、本来緊張するはずではない場面で緊張するようでしたら困りものです。大切な仕事で失敗してしたり、自分が伝えたいことを伝えることができなくなります。
本当だったら、もっと活躍できるはずなのにできなかったり、挙動不審になったりして相手からも誤解され、落ち込んでしまいます。
「私は、緊張しやすいんだよな~」
「いつも、リラックスできない」
「人と一緒にいても楽しくない」
マッサージに行ってほぐしてもらったり、心理学にくわしい方なら、瞑想などをしてみたり、あるいは自己啓発に取り組んで見た方もいらっしゃるかもしれません。少しは緩みますが、根本的には解消する気配はありません。こんなことはありませんか?
あなたが感じている“緊張”の原因。実は「トラウマ」のせいかもしれません。トラウマというと、特別なことのように思うかもしれませんが、トラウマを抱えていない人はいないといってもよいくらい多くの人が影響されているものです。
今回の記事では、トラウマによって引き起こされている“緊張”(過緊張)について記事をまとめてみました。
“緊張”とは何か?
生理的に見た“緊張”とは、ストレスに直面した際に視床下部を通じ自律神経の働きによってコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレス反応に関係するホルモンや神経伝達物質が分泌され、交感神経が活発になり、危機に備えようとしている状態です。肝臓ではブドウ糖が増産され、エネルギーに変換するために心拍数も増大します。血流の増加で筋肉も硬くなり、震えるようになります。体温上昇を緩和させるために汗も多量に出るようになります。
また、脳では、過去の危険に関する記憶や注意が活性化しやすくなります。
このように、“緊張”とはもともとは悪いものではなく、私たちが危機を乗り越えるためになくてはならないものです。車のエンジンが全開になったり、コンピューターがフルに稼働するように、必要なことです。
ただ、私たちが困るのは、本来は危機ではない状況でも緊張してしまうことにあります。
なぜリラクセーションだけでは“緊張”が十分に取れないことがあるのか?
“緊張”をほぐす方法としては、さまざまな方法があります。そのような本も出ています。もちろん、まったく効果がないわけではありませんが、多くのケースでは一時的には楽になっても、十分に改善しないことがあります。
なぜでしょうか?
それは、自己啓発やリラクセーションの世界では、“緊張”を単なる「考え方の問題」や「(一時的な)ストレス、自律神経の失調」というとらえ方をしているからです。
たしかに、“緊張”が、考え方の問題や一時的なストレス、自律神経の問題ということでしたら比較的容易に解消されていくでしょう。しかし、“緊張”が起きる原因はそれだけではありません。現在の問題は解決されるかもしれませんが、過去から積み重なった影響についてはなかなかその効果が届かないからです。
そこで注目されるのは「トラウマ」の影響です。
内面化された「危機(トラウマ)」によって引き起こされる「過緊張」
トラウマとは、簡単に言えば「ストレス障害」のことをいいます。通常、過度または慢性的なストレスによって心身のバランスが乱れ不調をきたしてしまうことです。心身のバランスが乱れる、ということは、言い換えれば、その人の内面が平常ではない、危機にあるような状態であるということです。
「フラッシュバック」と言いますが、同様の状況に接したときに無意識に不安、恐怖が沸き起こり、知らず知らずに危機を回避するような行動をとってしまうこともあります。その人にとっては、常に危機にあったころで時間が止まっているような状況です。強いフラッシュバックはなくても、常に危機に備えるように、身体は反応して常に備えようとしていることはあります。
こうした危機への備えが過度に続いている状態は、「過緊張」として現れることがあります。
ストレス応答系(免疫系、内分泌系、自律神経系)の失調、そして、自己に関わる心理、社会との関係など様々なことが重なっているため、リラクセーションなどでは容易には緊張を落とすことはできません。緊張緩和の方法を行っても結局のところ根本的にはよくはならない、という経験をするのはそのためです。
幼い頃のトラウマによる特徴的な症状~「見捨てられる不安」
“緊張”を高めるもう一つの要因として、「見捨てられる不安」があります。幼少期の不安定な愛着や対人トラウマなどを背景に、「人から見捨てられるのではないか」という不安が強くなることがあります。
幼い頃のトラウマとは、かつてはなんでもないと思われていた日常のストレスによって生じます。親のケンカ、暴言や暴力はトラウマになることが分かっていますし、引っ越しなど急な環境の変化もトラウマとなる可能性が指摘されています。「関係性のストレス」といいますが、不安定な親、過干渉な親のもとでもトラウマが生じる可能性が指摘されています。
トラウマというと暴力を伴った虐待やネグレクトといった激しい行為によって生じるイメージがあるかもしれません。しかし客観的には虐待に相当しなくても、両者の関係性が「かみ合っていない」(=関係性のストレス)によって生じる場合もあり得ます(例:カサンドラ症候群)。
町中でも、子どもに対して乱暴な言葉を投げかけている親御さんを見かけることがありますが、明確な虐待には該当しなくても、養育者との関係が長期間ストレスフルで、子どもが安心感を持ちにくい状況が続くことはあります。当センターでは、こうした関係性の中で生じる慢性的なストレスにも注目しています。
特に、幼い子どもにとって養育者とのつながりは安全を確保するうえで非常に重要なため、その関係が不安定だと強い不安が生じることがあります。そのため、子ども時代にトラウマを受けると、強い「見捨てられ不安」にさいなまれるようになります。
そして、成長した後も「見捨てられ不安」に襲われて、対人関係では常に「見捨てられるのではないか?」として、意識レベルでも“緊張”を強いられます。
そして、人に気を使いすぎる状態まで達すると「過剰適応」とよばれる状態になります。「過剰適応」とは、わかりやすく言うと「いつも気を遣いすぎてへとへと」ということです。
慢性的な過緊張の背景には、現在のストレスだけでなく、過去のトラウマや見捨てられ不安などが関係している場合があります。
そうしたケースでは、火事でいうと、“煙”が「緊張」で、“火”が「トラウマ」であり、「見捨てられ不安」です。“火”を消さないと煙のように次々と立ち上る“緊張”をおさえることは難しいのです。
“緊張”が高すぎると、本人も“緊張”に気がついていないことも多い
明らかにご自身で“緊張”を感じていて悩んでいる方はまだよいですが、幼い頃から高い緊張状態が続いていると、それが当たり前になって本人も気づいていないこともあります。感覚というのは相対的なものですから、比較するものがないとなかなか気がつきません。
ただ、よくよく確認していくと、
・「自然体」という感覚がない
・「リラックス」できていない
・人といても楽しくない
といった感じを普段から持っていることがあります。
若い頃はなんとか乗り越えていても、かつてのエネルギーも下がり、トラウマの長期の影響が出始めると、常に“緊張”し続けていることには無理が生じます。生活で支障が起きるようになって、“緊張”の緩和の必要に迫られるようになります。
トラウマの衝撃で、“緊張”(テンション)のコントロールがうまくいかなくなる
ラットを使った実験では、強いストレスを与えたネズミは、ストレスがなくなった後もストレス反応が過敏になったり、元の状態に戻りにくくなったりすることが研究されています。“緊張”をコントロールするセンサーがおかしくなってしまい、環境に合わせることができなくなってしまうからだと考えられます。
特に対人関係では相手のテンションに合わせることが求められます。しかし、”過緊張”の人は、相手の“緊張”の度合いが10段階で2程度の場合も6か7の“緊張”で接してしまったり、逆に、相手が8,9くらいの緊張(テンション)の場合、早々に脳が疲労状態となってしまい、ついていくことができず、逆に“緊張の糸”が途切れてストンと緊張度が下がってしまいます。通常の人でも経験することのある飲み会などで、周りが騒いでいるけど自分はどこか醒めた目で見ているという感覚がそれです。
このような状態では周囲の人間とペースを合わせることができず、「一緒にいても楽しくない」となってしまうのです。
“緊張”(テンション)のコントロールは、無意識レベルのことですから、意識でいくら盛り上げよう、リラックスしよう、としてもなかなか難しいものです。意識で緊張をコントロールしようとすると無意識(自律神経)の力の強さの前に敗れてさらにみじめな状態になります。
脳は、今まさに危機を上演しているトラウマに備えている状態で、さらに「見捨てられ不安」にもさいなまれています。認知レベルの解決で一生懸命、緊張をコントロールしようとしても、なかなか難しいものです。
パソコンでいえば、オペレーションシステムが未処理のプロセスの処理に高レベルで稼働している状態なのに、さらに高負荷なアプリを起動してしまっているような状態です、やがでCPUの活動レベルは限界を超え、ついにはパソコンは固まって動かなくなってしまいます。

あらためて“緊張”とは何か?~自分が自分でいれなくなること
あらためて“ 過緊張”とはなにかといえば、場面にそぐわない極度の緊張のため自分が自分でいれなくなることです。
自分はそこにいるけども自分ではない、なのに目の前の仕事はしないといけない、対人関係を処理しないといけない・・・・ できるわけがありません。ミスをしたり、うまく対応できなくなり、自分を責める結果となります。
私たちは直感的に、自分がおかしくなることを感じていて、その状態から抜け出したい、と感じています。
過緊張かどうかをチェックする
過緊張の傾向を知るためのセルフチェック
自分が過緊張にあるかどうかをチェックするためのリストを作ってみました。いくつ当てはまるかチェックしてみてください。※このチェックリストは、医学的な診断や標準化された心理検査ではありません。当センターが臨床経験をもとに、過緊張に関連してみられることのある特徴を整理したものです。ご自身の状態を振り返る目安としてご利用ください。
□人にはかなり気を遣ってしまう
□飲み会など人が集まる場ではとても気疲れする
□プレゼンテーションなど発表がとても緊張する
□人との会話で何を話してよいかわからなくなることがある
□人からどう思われるかが気になる
□「自然体」の感覚がよくわからない
□上手にリラックスすることができない
□人の集まりから家に帰った後に、気持ちがたかぶることがある
□スポーツなどで力みやすい
□目や肩などがよく凝るほうだ
□緊張から頭痛になることがある
□表情が硬いといわれることがある
□身体が硬い
□子どものころ、親同士のケンカを見たことがある
□子どものころ、親の暴言や暴力を見聞きしたことがある
□親から暴言や暴力を受けたことがある
□親が自分のやり方、考え方を子どもに強いることがしばしばあった
□子どものころの記憶が薄い。あまり思い出すことができない
□目上の人に必要以上にへりくだってしまうことがある
<結果の見方>
当てはまる項目が多いほど、日常的に緊張が高い状態や、慢性的なストレスの影響がある可能性があります。特に、「自然体の感覚がわからない」「リラックスできない」「人に気を遣いすぎる」などが長期間続き、仕事や人間関係、睡眠などに支障がある場合には、一度状態を見直してみることをおすすめします。
ただし、このリストだけで過緊張やトラウマを判断することはできません。
※リストや結果は暫定のものです。あくまでも目安としてください。
過緊張を改善するには?~ストレスへの対処、トラウマをケアする
過緊張への対処は、その原因によって異なります。一時的なストレスが中心であれば、休養、睡眠、運動、呼吸法や筋弛緩法などが役立つことがあります。
一方、長期間のストレスやトラウマ、対人関係上の不安などが背景にあり、緊張が慢性化している場合には、セルフケアだけでなく、その背景そのものを整理していくことも重要です。トラウマ症状が強い場合には、トラウマに詳しい専門家への相談も選択肢になります。
▶「トラウマ、PTSD(複雑性PTSD/発達性トラウマ)の克服、治し方」
関連する記事はこちら
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDの症状とは?さまざまな症状や影響」
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(参考・出典)
バベット ロスチャイルド「これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識」(創元社)
みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)
飛鳥井 望「PTSDとトラウマのすべてがわかる本」(講談社)
大嶋信頼「それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?」(青山ライフ出版)
「季刊 ビィ 2015年9月号」(アスク・ヒューマン・ケア)
白川美也子「赤ずきんとオオカミのトラウマケア」(アスク・ヒューマン・ケア)
ベッセル・ヴァン・デア・コーク「身体はトラウマを記録する」(紀伊國屋書店)
ブルース・マキューアン&エリザベス・ノートン・ラズリー「ストレスに負けない脳」(早川書房)
ロバート・M・ サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」(シュプリンガー・フェアラーク東京 )
ステファン・W・ポージェス 「ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」」(春秋社)
ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)
ドナ・ジャクソン・ナカザワ「小児期トラウマがもたらす病」(パンローリング出版)
ナディン・バーク・ハリス「小児期トラウマと闘うツール――進化・浸透するACE対策」(パンローリング出版)
川野 雅資「トラウマ・インフォームドケア」(精神看護出版)
野坂 祐子「トラウマインフォームドケア :“問題行動"を捉えなおす援助の視点」(日本評論社)
「精神療法 第45巻3号 複雑性PTSDの臨床」(金剛出版)
など
















