悩みの原因や解決方法

あなたが悩む“緊張”(過緊張)はトラウマのせいかも?

[「ハラスメント・生きづらさ」の原因と治し方悩みの原因や解決方法「トラウマ、ストレス関連障害」とは何か?]


 

 今回は、多くの人が悩み緊張(過緊張)とその原因として考えられるトラウマとの関係についてまとめました。よろしければご覧ください。

 

 

<作成日2016.7.8/最終更新日2019.9.3>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

はじめに
“緊張”とは何か?
なぜリラクセーションなどでは“緊張”は取れないのか?
内面化された「危機(トラウマ)」によって引き起こされる「過緊張」
幼い頃のトラウマによる特徴的な症状~「見捨てられる不安」
“緊張”が高すぎると、本人も“緊張”に気がついていないことも多い
トラウマの衝撃で、“緊張”(テンション)のコントロールがうまくいかなくなる
あらためて“緊張”とは何か?~自分が自分でいれなくなること
過緊張かどうかをチェックする
“緊張”を解消する方法~トラウマを除去する

 

緊張、過緊張

 

 

はじめに

 私たちが感じる悩みで上位に来るのが“緊張”という悩みです。緊張は誰にでもあることですが、本来緊張するはずではない場面で緊張するようでしたら、困りものです。大切な仕事で失敗してしたり、自分が伝えたいことを伝えることができなくなります。
 本当だったら、もっと活躍できるはずなのにできなかったり、挙動不審になったりして、相手からも誤解され、落ち込んでしまいます。

 「私は、緊張しやすいんだよな~」
 「いつも、リラックスできない」
 「人と一緒にいても楽しくない」


 マッサージに行ってほぐしてもらったり、心理学にくわしい方なら、瞑想などをしてみたり、あるいは自己啓発に取り組んで見た方もいらっしゃるかもしれません。少しは緩みますが、根本的には解消する気配はないのではないでしょうか?

 

 あなたが感じている“緊張”の原因。実は「トラウマ」のせいかもしれません。トラウマというと、特別なことのように思うかもしれませんが、トラウマを抱えていない人はいないといってもよいくらい、多くの人が影響されているものです。
 
 今回に記事では、トラウマによって引き起こされている“緊張”(過緊張)について記事をまとめてみました。

 

 

 

“緊張”とは何か?

 生理的に見た“緊張”とは、ストレスに直面した際に視床下部を通じ自律神経の働きによってコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され、交感神経が活発になり、危機に備えようとしている状態です。肝臓ではブドウ糖が増産され、エネルギーに変換するために心拍数も増大します。血流の増加で筋肉も硬くなり、震えるようになります。体温上昇を緩和させるために汗も多量に出るようになります。
 また、脳にもホルモンが伝わり、海馬などが刺激され、過去の不安な記憶がよみがえるようになります。
 
 このように、“緊張”とはもともとは悪いものではなく、私たちが危機を乗り越えるためになくてはならないものです。車のエンジンが全開になったり、コンピューターがフルに稼働するように、必要なことです。

 ただ、私たちが困るのは、本来は危機ではない状況でも緊張してしまうことにあります。

 

 

 

なぜリラクセーションなどでは“緊張”は取れないのか?

 “緊張”をほぐす方法としては、さまざまな方法があります。そのような本も出ています。もちろん、まったく効果がないわけではありませんが、多くのケースでは対症療法の域を出ません。
 なぜでしょうか?

 それは、リラクゼーションや呼吸法ということを活用するという際には、“緊張”を、単なる「考え方の問題」や「ストレスの蓄積」、「自律神経の失調」というとらえ方をされているからです。

 たしかに、“緊張”が、考え方の問題や一時的なストレス、自律神経の問題ということでしたら、比較的容易に解消されていくでしょう。しかし、“緊張”が起きる原因はそれだけではありません。現在の問題は解決されるかもしれませんが、過去から積み重なった影響についてはなかなかその効果が届かないからです。


 そこで注目されるのは「トラウマ」の影響です。

 

 

 

内面化された「危機(トラウマ)」によって引き起こされる「過緊張」

 「トラウマ」についてはさまざまな説明が可能ですが、簡単に言うとある種の記憶の障害です。通常、人間の記憶は時間とともに薄れていきます。特に睡眠によって記憶の処理は促進されていき、忘却されていきます。

 しかし、あまりにもショックが大きい出来事は、脳が記憶を適切に処理をすることができません。扁桃体が過活動を起こして、処理をやめてしまいます。そのため、記憶は処理されずにフレッシュなまま意識下(扁桃体など)に残ってしまうのです。扁桃体では恐怖の記憶だけが無意識に刻まれます。記憶としては処理されていないため、通常は思い出すことはできません。

 フラッシュバックと言いますが、同様の状況に接したときに無意識に恐怖が沸き起こり、知らず知らずに危機を回避するような行動をとってしまいます。その人にとっては、常に危機にあったころで時間が止まっているような状況です。言い換えると、平和な日常生活にあっても、その人の内面では常に危機にあるのです。

そして、その危機に備えるように、身体は反応して常に備えようとしています。

その状態のことを「過緊張」と言います。 

 扁桃体に刻まれている記憶に基づくものなので、リラクゼーションなどでは容易には落とすことはできません。緊張緩和の方法を行っても結局のところ根本的にはよくはならない、という経験をするのはそのためです。

 

 

 

幼い頃のトラウマによる特徴的な症状~「見捨てられる不安」

 “緊張”を高めるもう一つの要因として、「見捨てられる不安」があります。「見捨てられる不安」とは、幼い頃に受けたトラウマがひき起こす特徴的な症状の一つです。


 幼い頃のトラウマとは、大人からするとささいなことで生じます。親のケンカ、暴言や暴力はトラウマになることが分かっていますし、引っ越しなど急な環境の変化もトラウマとなる可能性が指摘されています。「関係性のストレス」といいますが、不安定な親、過干渉な親のもとでもトラウマは生じる可能性が高いです。

 トラウマというと虐待やネグレクトという激しいイメージがあるかもしれませんが、ほんのちょっとした関係性によるものです。町中でも、子どもに対して心ない言葉を投げかけている親御さんを見かけることがありますが、珍しいことではありません。

 ただ、自立していない子どもにとって、親から捨てられることは死を意味します。そのため、子ども時代にトラウマを受けると、強い「見捨てられ不安」にさいなまれるようになります。

 そして、成長した後も「見捨てられ不安」に襲われて、対人関係では常に「見捨てられるのではないか?」として、意識レベルでも“緊張”を強いられます。
 そして、人に気を使いすぎる状態まで達すると「過剰適応」とよばれる状態になります。「過剰適応」とは、わかりやすく言うと「いつも気を遣いすぎてへとへと」ということです。

 
 私たちの“緊張”とは、リアルタイムなストレスや考え方の問題だけではなく、「トラウマ」と「見捨てられ不安」によって引き起こされていることがわかります。

 火事でいうと、“煙”が“緊張”で、“火”が「トラウマ」であり、「見捨てられ不安」です。“火”を消さないと煙のように次々と立ち上る“緊張”をおさえることは難しいのです。

 

 

 

 

 

“緊張”が高すぎると、本人も“緊張”に気がついていないことも多い

 明らかにご自身で“緊張”を感じていて悩んでいる方はまだよいのですが、幼い頃から高い緊張状態が続いていると、それが当たり前になって本人も気づいていないことも多い。感覚というのは相対的なものですから、比較するものがないとなかなか気がつきません。

ただ、よくよく確認していくと、

 ・「自然体」という感覚がない
 ・「リラックス」できていない
 ・人といても楽しくない

といった感じを普段から持っていることがあります。

 若い頃はなんとか乗り越えていても、かつてのエネルギーも下がり、トラウマの長期の影響が出始めると、常に“緊張”し続けていることには無理が生じます。生活での支障が起きるようになって、“緊張”の緩和の必要に迫られるようになります。

 

 

 

トラウマの衝撃で、“緊張”(テンション)のコントロールがうまくいかなくなる

 ラットを使った実験では、強いストレスを与えたネズミは、ストレスを除いた後も強いストレス反応が出続けるそうです。“緊張”をコントロールするセンサーがおかしくなってしまい、環境に合わせることができなくなってしまいます。

 特に対人関係では相手のテンションに合わせることが求められます。しかし、”過緊張”の人は、相手の“緊張”の度合いが2の場合も6か7の“緊張”で接してしまったり、逆に、相手が8,9くらいの緊張(テンション)の場合、相手の緊張についていくことができなくなり、脳がエネルギー切れを起こして低血糖状態となり、逆に“緊張”が途切れてストンと下がってしまいます。よく飲み会などで、周りが騒いでいるけど自分はどこか醒めた目で見ているという感覚がそれです。
 このような状態では周囲の人間とペースを合わせることができず、「一緒にいても楽しくない」となってしまうのです。

 

 “緊張”(テンション)のコントロールは、無意識レベルのことですから、意識でいくら盛り上げよう、リラックスしよう、としてもなかなか難しいものです。意識で緊張をコントロールしようとすると無意識(自律神経)の力の強さの前に敗れてさらにみじめな状態になります。
 脳は、今まさに危機を上演しているトラウマにそなえている状態で、さらに「見捨てられ不安」にもさいなまれています。認知レベルの解決で一生懸命、緊張をコントロールしようとしても、なかなか難しいものです。
 
 パソコンでいえば、オペレーションシステムが処理されていないプロセスの処理に高レベルで稼働している状態なのに、画面操作でそれらをおさえようとしているようなもので、追いつくはずもありません。逆にマウスを動かせば動かすほど、CPUのレベルは高まり、ついにはパソコンは固まって動かなくなってしまいます。

 

 

 

あらためて“緊張”とは何か?~自分が自分でいれなくなること

 あらためて“緊張”とはなにかといえば、簡単に言うと、自分が自分でいれなくなることです。

 トラウマによって過去の出来事への対応に心身が占領されている状態であり、見捨てられ不安で周囲への過剰な気遣いを余儀なくされている状態です。
 
 自分はそこにいるんだけども自分ではない、なのに目の前の仕事はしないといけない、対人関係を処理しないといけない・・・・ できるわけがありません。ミスをしたり、うまく対応できなくなり、自分を責める結果となります。

 私たちは直感的に、自分がおかしくなることを感じていて、その状態から抜け出したい、と感じています。

 

 

 

過緊張かどうかをチェックする

トラウマによる過緊張状態にあるかどうかのチェック

 これをお読みの方が過緊張にあるかどうかをチェックするためのリストを作ってみました。いくつ当てはまるかチェックしてみてください。

 

 □人にはかなり気を遣ってしまう。
 □飲み会など人が集まる場ではとても気疲れする。
 □プレゼンテーションなど発表がとても緊張する。
 □人との会話で何を話してよいかわからなくなることがある。
 □人からどう思われるかが気になる。
 □「自然体」の感覚がよくわからない
 □上手にリラックスすることができない。
 □人の集まりから家に帰った後に、気持ちがたかぶることがある。
 □スポーツなどで力みやすい。
 □目や肩などがよく凝るほうだ。
 □緊張から頭痛になることがある。
 □表情が硬いといわれることがある。
 □身体が硬い。
 □子どものころ、親同士のケンカを見たことがある。
 □子どものころ、親の暴言や暴力を見聞きしたことがある。
 □親から暴言や暴力を受けたことがある。
 □3,4歳のころ引越を経験したことがある。
 □親が自分のやり方、考え方を子どもに強いることがしばしばあった。
 □子どものころの記憶が薄い。あまり思い出すことができない。
 □目上の人に必要以上にへりくだってしまうことがある。

 

<結果の見方>

 3以下 過緊張の可能性は低いです。
 4~8 過緊張の可能性が疑われます。
 9以上 明らかに過緊張にあると考えられます。

※リストや結果は暫定のものです。あくまでも目安としてください。

 

 

 

“緊張”を解消する方法~トラウマを除去する

 「トラウマ」と「見捨てられ不安」によって引き起こされた“緊張”を解消するためには、
文字通りトラウマを除去する必要があります。

 

トラウマの原因と解決方法についてはこちらにまとめています。 
 ⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

 

 

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(参考)

J・L・ハーマン「心的外傷と回復」(みすず書房)

バベット ロスチャイルド「これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識」(創元社)

水島 広子「正しく知る心的外傷・PTSD」(技術評論社)

森茂起「トラウマの発見」(講談社)

宮地尚子「トラウマ」(岩波文庫)

飛鳥井 望「PTSDとトラウマのすべてがわかる本」(講談社)

岡野憲一郎「新外傷性障害」(岩崎学術出版社)

大嶋信頼「それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?」(青山ライフ出版)

「季刊 ビィ 2015年9月号」(アスク・ヒューマン・ケア)

白川美也子「赤ずきんとオオカミのトラウマケア」(アスク・ヒューマン・ケア)

友田明美「第23章 愛着と虐待」『脳の発達科学』(新曜社)

ベッセル・ヴァン・デア・コーク「身体はトラウマを記録する」(紀伊國屋書店)

福間詳「ストレスのはなし」(中公新書)

「ストレス学ハンドブック」(創元社)

ブルース・マキューアン&エリザベス・ノートン・ラズリー「ストレスに負けない脳」(早川書房)

田中正敏「ストレスの脳科学」(講談社)

ロバート・M・ サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」(シュプリンガー・フェアラーク東京 )

ステファン・W・ポージェス 「ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」」(春秋社)

杉晴夫「ストレスとはなんだろう」(講談社)

ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)

など

 

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 ”トラウマ”とはストレスによる心身の失調のことを指します。私たちは誰もが影響を受けているといってよいくらいトラウマは身近なものです。※トラウマを負うと、うつ、不安、過緊張、対人関係、仕事でのパフォーマンス低下、身体の不調、依存症、パーソナリティ障害などさまざまな問題を引き起こすことが分かっています。

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