医師の監修のもと公認心理師が、多くの人が悩む「適応障害(適応反応症)」について、その原因やメカニズムなどをまとめさせていただきました。
<作成日2015.12.3/最終更新日2026.9.13>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・適応障害(適応反応症)(Adjustment disorder)とは何か?
・適応障害(適応反応症)が生じるメカニズム
・適応障害(適応反応症)の原因となるストレスはさまざま
・適応障害(適応反応症)になりやすさに影響する要因
→適応障害(適応反応症)の診断基準や治し方については、下記をご覧ください。
▶「適応障害(適応反応症)の診断基準~症状や他の障害との違いから」
▶「適応障害(適応反応症)の治療、治し方、接し方~5つのポイント」
適応反応症は、特定できるストレス因への反応として心身の不調や生活上の支障が生じる「ストレス関連症群」の一つです。症状だけを見るのではなく、仕事、家庭、人間関係、病気など、何が本人にとって大きな負荷となっているのかを把握することが重要です。
当センターの臨床では、症状が長引いている場合、表面的な出来事だけでなく、職場や家庭における慢性的なストレス、過剰適応、ハラスメントなどの関係性の問題が背景にないかも確認しています。特に、自分を責めながら無理に環境へ適応し続けているケースでは、ストレス因そのものへの対処が重要になることがあります。
適応反応症は、うつ病や不安症など他の精神疾患との境界が難しいこともあります。そのため、診断名だけではなく、ストレス因、症状の経過、生活環境などを含めて理解することが大切です。
適応障害(適応反応症)(Adjustment disorder)とは何か?
適応反応症(適応障害)とは、仕事や家庭、人間関係、病気、離婚など、特定できるストレス因をきっかけとして、その出来事への強い「とらわれ」や、生活への適応の難しさが生じ、仕事・学業・家庭生活などに支障が出ている状態です。
ICD-11では「ストレス因へのとらわれ」と「適応できないことによる機能障害」が中心的な特徴とされています。DSM-5-TRでも、特定できるストレス因に関連して、著しい苦痛や生活上の支障が生じることが診断の重要な条件です。
・ストレスが原因で起きる心身の不調(ストレス障害)
環境の変化、ストレスにうまく適応できていないことから生じます。
ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)によると「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」とされます。
DSM-Ⅴでは、「心的外傷およびストレス因関連症群」に含まれています(米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院))。
臨床では気軽に診断がつけられていることも多いですが、「重大な機能障害」か「ストレス因に釣り合わないほどの苦痛」が生じていることが診断の要件となります。
・PTSDと同じ「ストレス関連症群」に含まれる
適応反応症は、ICD-11ではPTSDや複雑性PTSDと同じ「ストレス関連症群」に含まれています。ただし、PTSDのような生命の危険を伴う出来事だけが原因になるわけではありません。失職、離婚、病気、人間関係や職場での対立など、日常生活の大きなストレスもきっかけになります。
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
・他の精神疾患との区別も重要
適応反応症の症状は、うつ病、不安症、PTSDなどでもみられることがあります。そのため、症状が他の精神疾患によってより適切に説明される場合には、適応反応症とは診断しません。
一方、ICD-11では「ストレス因へのとらわれ」や「適応できないことによる生活上の支障」という特徴が明確に示され、単に「他の病気の基準を満たさない人につける診断」ではなくなっています。
・ストレス因が特定できることが診断の条件
適応反応症では、症状のきっかけとなったストレス因を確認できることが重要です。ストレス因との関連が明確でない場合には、他の精神疾患や身体疾患なども含めて別の原因を検討します。
・ストレス因の後、比較的早い時期に発症する
DSM-5-TRでは、ストレス因が生じてから3か月以内に症状が現れることが診断要件です。一方、ICD-11では通常1か月以内に発症するとされていますが、3か月程度たってから現れる場合もあります。
ストレス因やその影響が終わると、症状は通常6か月以内に軽減します。ただし、職場の問題、離婚後の経済的問題、慢性的な病気など、ストレス因やその影響が続いている場合には、症状が6か月以上続くこともあります。
・適応障害(適応反応症)は、決して甘えや怠け、気の緩みなどではない
適応障害(適応反応症)は、表面的には変化がないのに意欲やパフォーマンスが低下することやストレスから離れると元気になることから、単なる怠けや甘えとされてしまうことがあります。しかし、適応障害(適応反応症)が生じるのは、決して甘えや気の緩みなどではありません。本人が弱いから生じるのではなく、ストレスの強さや持続期間、本人が置かれた環境、利用できる支援や対処手段など、さまざまな要因の組み合わせによって生じます。
・データで見る「適応障害(適応反応症)」
DSM-5-TRでは、適応反応症の有病率は、調査の対象や評価方法によって大きく異なるものの、非常にありふれた病気であるとされています。米国では、精神科の外来治療を受けている人のうち、適応反応症を主な診断とする人は約5~20%です。これは一般人口における割合ではなく、精神科を受診している患者のなかでの割合です。また、オーストラリア、カナダ、イスラエル、米国の総合病院で行われた精神科コンサルテーションでは、適応反応症が診断の約50%に達したこともあると報告されています。
適応障害(適応反応症)が生じるメカニズム
ストレスへの反応には個人差があり、すべての人が以下の順序をたどるわけではありませんが、一つの理解モデルとして次のように整理できます。
ストレス発生⇒ショック⇒怒り⇒混乱⇒解決の試み⇒不安、抑うつ⇒適応
つまり、だれでもストレスに遭うと少なからずショックを受けたり、混乱したり、不安になったりします。通常は、自分で吸収できる範囲で最終的に収束し適応に至ります。
しかし、適応障害(適応反応症)となる場合、ストレスに適応できないためにショックが大きく、そのプロセスで生じる「怒り」や「混乱」や「不安、抑うつ」が過大となってしまい、適応できず不調となってしまうのです。もちろん、周囲のサポートの欠如のなども影響します。
ストレス発生⇒ショック⇒不適応(適応障害(適応反応症))
ICD-11では、適応反応症の中心的な特徴として、ストレス因への「とらわれ」と「適応できないこと」が重視されています。
「とらわれ」とは、ストレスとなった出来事について何度も考えてしまう、過度に心配する、その意味を繰り返し反芻するといった状態です。さらに、その影響によって仕事、学業、家庭生活などに支障が生じます。
ストレス因が取り除かれたり、十分なサポートが得られたり、新しい対処法を身につけたりすると、症状は軽減することが多いとされています。
日々は日常の繰り返しに見えて、自分や家族のライフステージが変化したり、会社でも環境が変わったり、ストレスの原因となる変化は日々生じています。さらに、「大人であれば対応できて当たり前」と思っていても、多くの出来事は人生の中ではじめて経験することだったりします。適応というのは決して「できて当たり前」というわけではありません。些細な条件が重なるだけでも、不適応(適応障害(適応反応症))は容易に生じてしまいます。
適応障害(適応反応症)の原因となるストレスはさまざま
ストレスというと、仕事や家庭でのストレスと思われがちですが、さまざまなことがストレスとなりえます。
例えば、自身の病気や、身内の病気や死別、離婚などです。ガンといった重い病気、更年期障害、また、高齢による環境変化などからくるストレスから適応障害(適応反応症)となる人は多いのです。
ストレス学の研究者がストレスを尺度としてまとめたものでは下記のように表現されています。親族の死73はもちろん、転職61、引っ越し47、子どもの受験勉強46など日常の些細な出来事でも意外に高い値であることがわかります。
さらに、これらのストレッサーの合計値と精神疾患との関連(リスク)を調べたところ、400点以上で78.8%、300点台で67.4%、200点台で61.2%、100点台で57.1%、100点未満でも39.3%の方がリスクありということがわかっています。

ストレスのダメージは単にその強弱で決まるわけではありません。ライオンに追いかけられてもトラウマにならないキリンやシマウマもなれない土地で安全なはずの動物園の中で体調を崩してしまうことがあるように、軽度に見えても、コントロール可能性、予測可能性、ソーシャルサポートの欠如など生物にとっての脆弱な要件がそろうと深刻なダメージとなってしまいます。特に、持続的なストレスには私たち人間の身体はうまく対応できるようにはできていません。
適応障害(適応反応症)になりやすさに影響する要因
適応反応症は特定の性格の人だけに起こるものではありません。誰でも、本人にとって大きなストレスが続いたり、十分な支援や対処手段が得られなかったりすれば生じる可能性があります。
一方、真面目で無理をしやすい、人の評価を気にして合わせすぎる、つらくても助けを求めにくいといった傾向があると、ストレスを抱え込みやすくなる場合があります。特に過剰適応があると、自分では限界に気づかないまま無理を続けることがあります。
発達特性や、もともとの精神的な不調がストレスへの対処に影響している場合もあります。これらが疑われる場合には、適応反応症とは別に丁寧に評価することが大切です。
→適応障害(適応反応症)の診断基準や治し方については、下記をご覧ください。
▶「適応障害(適応反応症)の診断基準~症状や他の障害との違いから」
▶「適応障害(適応反応症)の治療、治し方、接し方~5つのポイント」
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(参考・出典)
岡田尊司「ストレスと適応障害」(幻冬舎)
貝谷久宣「適応障害のことがよく分かる本」(講談社)
ブルース・マキューアンなど「ストレスに負けない脳」(早川書房)
ステファン・W・ポージェス 「ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」」(春秋社)
ロバート・M・ サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」(シュプリンガー・フェアラーク東京 )
ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)
「ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)」(医学書院)
など
















