視線恐怖症(脇見恐怖、正視恐怖)の治し方

視線恐怖症(脇見恐怖、正視恐怖)の治し方

不安障害身体に現れる不調

 医師の監修のもと公認心理師が、日本人に多いとされる視線恐怖症の治し方についてわかりやすくまとめてみました。

 

<作成日2024.2.9/最終更新日2026.9.18>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

・専門家(公認心理師)の解説

・薬物療法

・心理療法

・その他(有酸素運動)

 

 →視線恐怖症の特徴や原因については、下記をご覧ください。

 ▶「視線恐怖症(脇見恐怖、正視恐怖)とは何か? 原因と特徴」

 

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 ここでは、視線恐怖症の治し方をまとめています。ご覧いただくのに先立ち、治すためのポイントを解説させていただきます。 まず、臨床現場では様々なお悩みに対応していますが、数ある症状の中でも視線恐怖症は手強い症状の1つといえます。症状の印象からは難しくないように見えますが、その印象に比して改善の動きがとても緩慢です。 視線恐怖症の原因として、生まれ持っての気質やホルモンなどの心理、身体的な要因から、環境要因など様々なことが考えられます。視線恐怖では、単に視線への不安だけでなく、環境への適応の難しさ、自己評価の不安定さ、他者の評価への敏感さなどが背景にある場合があります。当センターでは、症状だけを抑えるのではなく、現在どのような環境でストレスが高まっているのか、自分自身や他者をどのように捉えているのかを整理していくことも重視しています。特に、こうした自己感覚や環境への適応力が安定していく過程を「自我の成熟」という観点から捉えることがあります。現在ストレスとなっている環境がどのようなもので、自身としてはどのようにそれをとらえて対応を変えていくのか?ということを吟味することが重要です。 視線恐怖が社交不安症の一部として強く現れている場合、認知行動療法などの心理療法や、症状に応じた薬物療法が治療の選択肢となります。どの方法が適しているかは、症状の程度や本人の希望、併存する問題などを踏まえて検討します。

 

 

 

視線恐怖症を克服する方法

 視線恐怖の改善には、認知行動療法(CBT)や段階的なエクスポージャーが中心的な方法となります。症状が強い場合には、医師と相談してSSRIなどの薬物療法を併用することもあります。また、背景に強い対人ストレスやトラウマがある場合には、その問題も含めて心理的支援を行います。運動や生活習慣の改善は補助的なセルフケアとして役立つことがあります。

・薬物療法

 ・SSRI

  SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、セロトニン神経系に作用する抗うつ薬で、社交不安症などの不安症にも用いられます。効果が現れるまでには一定の期間が必要で、使用については医師と相談して判断します。

 

 ・抗不安薬

  ベンゾジアゼピン系抗不安薬は比較的速く不安を和らげることがありますが、長期使用では依存や耐性などに注意が必要です。そのため、使用期間や減量・中止については医師の管理のもとで検討します。

 

 

 
Point

 薬物療法は症状が強い場合に用いられます。あくまで補助的な手段で、解決するためには精神(心理)療法やライフスタイルのパターンを変えることが大切です。

 

 

・心理療法

・認知行動療法

 視線恐怖が社交不安症の一部として現れている場合、認知行動療法(CBT)は標準的な心理療法の一つです。 認知、考え方を客観的にとらえて、修正を行うものです。自分や他人の「視線」の持つ意味や解釈を修正することで、視線恐怖を和らげることができます。
 
  例えば、「相手は自分のことを変だと思っている。だから見ている」という考えがあれば、そのことに対してそれが現実的な考えなのか、をカウンセラーとともに吟味して、修正を図っていきます。

 

・エクスポージャー(暴露)

  エクスポージャーとは人間の身体の恒常性維持機能を利用する方法です。
  エクスポージャーでは、恐れている状況を安全に段階づけながら経験し、「恐れていた結果が必ず起こるわけではない」「不安があっても対処できる」と新しい学習を重ねていきます。

 

・森田療法

  対人恐怖症や視線恐怖恐怖症については、日本では森田療法が用いられてきました。

 
・トラウマケア

 視線恐怖の背景に、過去のいじめや対人関係での強い傷つき、慢性的なストレス、トラウマなどが関係しているケースもあります。その場合には、視線への不安だけを扱うのではなく、その人の体験や現在の安全感を含めて心理的支援を行うことがあります。当センターでは、必要に応じてトラウマ臨床の視点も取り入れています。

→参考となる記事はこちらをご覧ください。
  ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 

 
Point

 軽度の場合にはCBTに基づくセルフヘルプが役立つこともありますが、強い不安や回避がある場合には、専門家と相談しながら段階的に取り組む方が安全です。解説にも書きましたが、その際は「自我の成熟」が重要なポイントになるケースが多いです。トラウマや愛着障害が疑われるかどうかは、専門のカウンセラーなどに生育歴などを聴取をお願いしてみるとよいでしょう。

 

 

・その他

・有酸素運動

 運動は、不安や抑うつの軽減、睡眠や身体の健康の改善などに役立つことがあります。社交不安症に対しても補助的な効果が期待されていますが、認知行動療法や必要に応じた薬物療法に代わる治療とまではいえません。無理のない範囲で、ウォーキングなど継続できる運動を生活に取り入れることは一つのセルフケアになります。

 有酸素運動といってもハードな運動は必要ありません。週に2、3日30分程度ウォーキングを行うだけで大丈夫です。日中外に出ることが難しい場合は、夜中に歩く、屋内でのヨガ、ピラティスなども効果的です。最近であればYoutubeなどの動画を見ながら簡単に自分でヨガを行うことができます。

 

 
Point

 有酸素運動は、決して気休めや道徳的な助言ではありません。非常に高い効果が見込めますので、すべての方に必ず取組んでいただきたいセルフケアの方法の1つです。

 参考:ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版) など

 

 

 →視線恐怖症の特徴や原因については、下記をご覧ください。

 ▶「視線恐怖症(脇見恐怖、正視恐怖)とは何か? 原因と特徴」

 

※サイト内のコンテンツの引用する際は、引用元を明示しリンクしていただけますようお願い申し上げます。 

(参考・出典)

上野玲「視線がこわい」(集英社新書)

笠原敏彦「対人恐怖と社会不安障害」(金剛出版)
貝谷久宣「社会不安障害のすべてがわかる本」(講談社)
水島広子「正しく知る不安障害」(技術評論社)
クレア・ウィークス「不安のメカニズム」(筑摩書房)
クリフトフ・アンドレ、パトリック・レジュロン「他人がこわい」(紀伊國屋書店)
大野裕「不安症を治す」(幻冬舎)

山田和夫「やさしくわかる社交不安障害」(ナツメ社)

「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院)

など