医師の監修のもと公認心理師が、リストカットなど自傷行為の治し方、対応方法について詳しくまとめてみました。
<作成日2024.2.11/最終更新日2026.9.30>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・専門家(公認心理師)の解説
・自傷行為(リストカットなど)の本質的な解決に必要なこと
・自傷行為(リストカットなど)に対処するためにできる15の方法
→自傷行為(リストカットなど)の心理と原因については、下記をご覧ください。
▶自傷行為(リストカット、など)の心理と原因~なぜ行うのか?
リストカットなどの自傷行為を、叱ったり、約束させたりして行為だけ止めようとしても、根本的な解決にはなりません。多くの場合、自傷は強い苦痛や緊張を何とかしのぐための対処として機能しているからです。自傷に至るほどの苦痛やストレス、生活環境、人間関係、自傷が本人にとって果たしている役割を理解し、安全を確保しながら、自傷以外の対処法を増やしていくことが重要です。
ただし、自傷には身体的な危険があり、繰り返すことで重症化することや、自殺リスクと関連することも知られています。傷が深い、出血が止まらない、希死念慮があるなどの場合には、早めに医療機関へ相談してください。
自傷行為(リストカットなど)の本質的な解決に必要なこと
●環境を変える
自傷の背景には、本人が抱える強い苦痛や感情調整の難しさだけでなく、家庭・学校・職場などの環境が深く関わることがあります。とくに、虐待や不適切な養育、いじめ、ハラスメントなど、現在も強いストレスを与える環境が続いている場合には、その環境を調整したり、距離を取ったりすることが重要です。
家庭で毎日のように罵倒するような親と同居したり、職場でパワハラを受けている、といった方はとても多いです。その場合は、家から出る、異動、転職するなどを試みることも必要になります。
もちろん、それらは簡単ではありません。ただ、理不尽な環境や人は待っていても容易には変わりません。自分から環境を選択して、自分にとって心地の良い居場所を見つける取り組みを始めてください。
→参考となる記事はこちらをご覧ください。
▶「モラハラ(モラルハラスメント)への対策、対処法~6つのポイント」
▶「いじめとは何か?大人、会社、学校など、いじめの本当の原因」
●過去(現在)の不適切な環境の影響をケアする
自傷行為の背景には、多くの場合、過去に何らかの不適切な環境に置かれていた、ストレスを受けていた、ということがあります。ストレスの原因としてよくあるのは、夫婦げんかなど家族の不和、不適切な養育、機能不全家庭、いじめ、パワハラ、モラハラ、などがあります。
否定的で理不尽な環境では、本人をおとしめるような常識を強制されていることがあります。例えば、いじめを受けた人が「気持ち悪い」と言われ続ければ、本人の内面では常に「自分は気持ち悪い」という言葉がこだまして苦しめ続けます。「お前がおかしい」と言語非言語に思わされる環境で過ごせば、自分を責めたり、罪悪感を常に感じるようになります。理不尽なルールや出来事の記憶は断片化して意識化に残り、現在進行形で再上演され本人を苦しめ続けます。
また、脳や自律神経やホルモンなど身体的にもダメージを負ってしまうことがあります。過覚醒といって「脳が興奮して、ソワソワして、おちつかない」「眠れない」ということから自傷行為で和らげざるを得ない、ということがあります。
こうしたストレスによる心身のダメージを「トラウマ」と言います。
トラウマがあると、自分や他人を信頼できなくなり、過剰適応や脳の過活動などさまざまな問題を引き起こしてしまいます。まさに、自傷行為の根本要因とも言えるものです。(子どもの頃のトラウマの影響は「発達性トラウマ」あるいは「愛着不安」などとも言います。)
トラウマや愛着の問題が自傷の背景にある場合には、自傷行為だけを止めるのではなく、その背景にあるトラウマや対人関係上の問題に取り組むことが重要です。
自傷が繰り返されている場合や、解離、強い抑うつ、希死念慮などを伴う場合には、精神科・心療内科や自傷に詳しい心理専門職へ相談し、状態に応じた治療・心理支援を検討します。
→参考となる記事はこちらをご覧ください。
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」
・関連する精神障害
自傷行為を行う人は、うつ病と関係していることも多いとされます。
その場合は、うつ治療もあわせて行う必要があります。
また、摂食障害とも関連性が高く、自傷を中止すると摂食障害が生じるといったことも多いです。
自傷行為(リストカットなど)に対処するためにできる15の方法
自傷したい気持ちに対処する方法には、気持ちを整理する、別の活動に注意を向ける、身体を動かす、専門的な支援を受けるなど、さまざまなものがあります。どの方法が役立つかには個人差があるため、自分に合う方法を探していくことが大切です。
また、自傷の代わりに別の感覚刺激などを用いる「ハーム・ミニマイゼーション(被害軽減)」という考え方もあります。ただし、こうした方法はすべての人に適するわけではなく、自傷が繰り返されている場合には専門家と相談しながら安全な対処法を考えることが大切です。
1.自傷に関する記録をつける
どういった時に自傷行為を行うのか?
どういった感情なのか?
そのきっかけとなっている出来事は何か?
自傷までの時間、回数などを記録してください。
また、自傷しなかった時があればそれも記録してください。
以上のようにすることで、自傷のきっかけとなる出来事に遭遇する前に回避できます。
2.日記をつける
自傷行為をしたくなったら、その状況、感情を記録する。
かなりすっきりします。
3.自傷したくなったときの「安全プラン」を作る
自傷したくなるときに備えて、あらかじめ「どんなサインが出るか」「そのとき何をすると少し落ち着けるか」「誰に連絡するか」「どこへ相談するか」を書き出しておく方法があります。
たとえば、強い不安や怒りが出る、考えがまとまらなくなる、自分を責め始める、といった自分なりのサインを確認し、その段階でできる対処を決めておきます。自分一人で作るのが難しい場合には、家族や専門家と一緒に考えます。
自傷したい気持ちが非常に強い、自分を止められない、死にたい気持ちがある場合には、安全を最優先し、医療機関や緊急の相談先につながることが大切です。
4.認知行動療法を行う
自傷を繰り返している場合には、認知行動療法(CBT)や弁証法的行動療法(DBT)など、感情の調整や問題解決、自傷に代わる対処法を身につける心理療法が役立つ場合があります。専門家と相談しながら、自分に合った方法を検討します。
5.リストカットする箇所を、アルコールで拭く
精神科医の神田橋條治氏によると、腕など普段リストカットする箇所を、焼酎など度数が高いアルコールで拭くのも効果的だとされます(出典:神田橋條治、白柳直子「神田橋條治の精神科診察室」(IAP出版))。
6.スナッピング(輪ゴムを弾く)
輪ゴムを腕に向かって弾く痛みで自傷行為の代わりとなります。これは自傷したい衝動を別の刺激へ置き換える方法として紹介されることがあります。ただし、これ自体が身体を傷つける行為にならないよう注意が必要です。
7.香水やアロマオイルなどを嗅ぐ
香りなど別の感覚に注意を向けることで、自傷したい気持ちから注意をそらす方法です。
8.氷を握りしめる
強い感覚刺激によって自傷したい気持ちから注意をそらす方法として紹介されることがあります。ただし、身体を傷めるほど長時間行わないようにします。
9.腕を水性の用具などで赤く塗りつぶす
実際に傷をつける代わりに、水性のペンなどで腕に色をつけることで、自傷したい衝動をやり過ごす方法として紹介されることがあります。
10.大声で叫ぶ
カラオケボックスなどで大声で叫ぶことで感情をそらすことができます。
11.楽器を弾いたり、ゲームをする
12.運動する
運動療法とは、有酸素運動などを行い、脳や身体の機能を改善、回復させるものです。さまざまな精神障害の改善にも高い効果があることが報告されています。
有酸素運動といってもハードな運動は必要ありません。週に2、3日30分程度ウォーキングを行うだけで大丈夫です。日中外に出ることが難しい場合は、夜中に歩く、屋内でのヨガ、ピラティスなども効果的です。最近であればYoutubeなどの動画を見ながら簡単に自分でヨガを行うことができます
有酸素運動は、決して気休めや道徳的な助言ではありません。非常に高い効果が見込めますので、すべての方に必ず取組んでいただきたいセルフケアの方法の1つです。
13.マインドフルネスなどの瞑想を行う
精神を落ち着けるだけではなく、自ら状態を客観的に捉えることにもつながります。また、意識が嫌なことに向かいにくくもなります。
→参考となる記事はこちらをご覧ください。
▶「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ」
14.薬物療法
自傷行為そのものを治療するための薬物療法はありません。ただし、うつ病、不安症、双極症など併存する精神疾患がある場合には、それらに対する薬物療法が結果的に自傷衝動の軽減につながる場合があります。薬については医師に相談してください。
15.アルコールを控える
アルコールを摂取した状態は、自傷行為がエスカレートすることが多いため、アルコールは避ける、控えるようにしてください。
周囲の人はどのように対処、サポートすればいいのか?
・適切な対応
自傷行為には下記のような態度が求められます。
・冷静で穏やかな態度をもって、自傷に至る自傷への理解、理解をする。
・自傷について話してくれたことに対して、「話してくれてありがとう」と伝え、打ち明けることができたことを受け止めます。
・本人をとりまく環境がいかにひどいものか?ひどかったのか?について理解してあげてください。自傷行為をすぐに止めさせようとしないでください。
繰り返し自傷している、傷が深くなっている、希死念慮がある、本人の苦痛が強いといった場合には、本人だけ・家族だけで抱え込まず、精神科や心理専門職などへ相談してください。
・不適切な対応
一方、不適切な対応としては、
・驚いたり、言葉を失う
・気味悪そうな、けげんそうな表情
・しっせき、非難、停止の約束
・過度に騒ぎ立てる、腫れ物に触るように扱う、必要以上に同情して本人を弱い存在として扱う
・見て見ぬふり
などが挙げられます。
本人は、やりたくてやっているわけではなく、どうしようもなく追い込まれているのです。本人に責任を帰すようなしっせきや非難はもってのほかで、本人が異常であるかのような反応も不適切なのです。
必要であれば、カウンセラーや、地域の保健所や、精神保健福祉センターに相談してみることです。
自傷行為を異常なものととらえないことが大切です。自傷行為そのものよりも、その背景にある過去、現在の不適切な環境について理解や改善に向けてのサポートをしてあげることが大切です。背景にトラウマや愛着の問題がある場合には、それらに詳しい専門家に相談し、背景を含めて支援を受けることが重要です。
→自傷行為(リストカットなど)の心理と原因については、下記をご覧ください。
▶自傷行為(リストカット、など)の心理と原因~なぜ行うのか?
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(参考・出典)
林直樹「リストカット・自傷行為のことがよく分かる本」(講談社)
松本俊彦「自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント」(講談社)
神田橋條治、白柳直子「神田橋條治の精神科診察室」(IAP出版)
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