ゲーム行動症(ゲーム依存)はICD-11で正式な診断として位置づけられています。一方、「スマホ依存」「ネット依存」は一般に広く使われる言葉ですが、現在のDSM-5-TRやICD-11で独立した正式診断名になっているわけではありません。本記事では、ゲームについては正式な診断基準を、スマホ・インターネットについてはスクリーニング尺度を用いながら、医師の監修のもと公認心理師がまとめてみました。※ここで紹介するチェックだけで医学的な診断が確定するものではありません。
<作成日2016.4.19/最終更新日2026.9.29>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・スマホ依存・ネット依存・ゲーム依存とは?
1.ゲーム依存症(行動症)をチェックする
2.スマホ依存をチェックする
3.インターネット依存をチェックする
4.ゲーム・スマホ・ネット依存症の原因(背景)を理解する
5.ゲーム・スマホ・ネット依存症のタイプ
6.ゲーム・スマホ・ネット依存に伴ってみられることがある変化
7.ゲーム・スマホ・ネット依存と併発する問題
→依存症全体の知識、スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方については、下記をご覧ください。
▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント」
スマホ、ネット、ゲーム依存症については、通常の遊びの範囲かどうかをチェックすることは難しい場合があります。特に、親の言うことを聞かずにゲームばかりをしているということをもって、「スマホ依存かも??」とご不安になる親御さんは少なくありません。実際にお伺いしてみると、依存症でもなんでもない、というようなケースは現場で多く経験します。やはり、的確な診断(アセスメント)が必要になります。
スマホ依存、インターネット依存、ゲーム依存の背景には、家庭や現実での居場所のなさ、孤立、強いストレスなどが深く関わります。ゲームやスマホの過剰使用は、不安や孤独、現実での居場所のなさを一時的に和らげる手段になることがあります。当センターでは、このような依存行動を、本人なりの「自己治療」として理解する視点を重視しています。
「家に閉じこもってゲームばかりしているから、ゲーム依存に違いない!」と表面的な現象に飛びついたりすることは本質を見誤ってしまいます。まずは、ご本人の考えをゆっくり聴く機会を持ち、「背景にあるもの」、「問題の全体像」を先入観なく明らかにすることが大切です。今回の記事では、多面的に判断いただけるように海外などの複数の診断基準と様々な視点からご判断いただけるように工夫をしています。ご覧ください。
スマホ依存・ネット依存・ゲーム依存とは?
ゲーム依存(ゲーム行動症)とは、ゲームをする時間や頻度を自分で調整することが難しくなり、仕事や学業、家庭生活などよりゲームを優先し、生活に問題が生じても続けてしまう状態です。ICD-11では、こうした状態が生活に重大な支障を生じ、通常12か月以上続いていることなどを診断上の目安としています。
一方、「スマホ依存」「ネット依存」は一般によく使われる言葉ですが、現在のDSM-5-TRやICD-11で独立した正式診断名になっているわけではありません。利用時間が長いだけで「依存症」と判断するのではなく、自分で使用をコントロールできるか、学業や仕事、睡眠、人間関係などにどの程度支障が生じているかを見ることが重要です。APAも、DSM-5-TRのInternet Gaming Disorderの基準はゲームに限定され、一般的なネット利用やSNS、スマートフォンには適用しないとしています。
下記に3つの診断基準と、その他4つの視点を並べています。単に診断基準だけではなく、その他の視点もご覧いただき、当てはまるかどうか?多角的にとらえていただければと思います。支援や改善を考えるうえでは、診断基準への該当だけでなく、「なぜゲームやスマホに強く依存するようになったのか」という背景を理解することが非常に重要です。
1.ゲーム依存症(行動症)をチェックする
・ゲーム依存症(行動症)を判断する3つの中核的特徴
- ゲームを始める・やめる・時間を調整することが難しい
- 仕事、学業、家族、趣味などよりゲームを優先するようになる
- 問題が起きているにもかかわらずゲームを続けたり、さらに増やしたりする
これらによって、家庭、学校、仕事、対人関係などに重大な支障が生じ、通常12か月以上続いていることが診断上重要です。
・インターネットゲーム障害(IGD)の基準―DSM-5-TR
DSM(米国精神医学会の診断マニュアル)の第5版で「インターネット・ゲーム障害」という名称で、インターネット・ゲームへの依存症について基準が定められています。これはゲームに関する基準であり、一般的なインターネット利用やSNS、スマートフォン利用を診断する基準ではありません。
以下の項目に5つ以上に該当する場合、依存症と考えられます。
1.インターネットゲームへのとらわれ
2.インターネットゲームが取り去られた際の離脱症状
3.耐性、すなわちインターネットゲームに費やす時間が増大していくことの必要性
4.インターネットゲームにかかわることを制御する試みの不成功があること
5.インターネットゲームの結果として生じる、インターネットゲーム以外の過去の趣味や娯楽への興味の喪失
6.心理社会的な問題を知っているにもかかわらず、過度にインターネットゲームの使用を続ける
7.家族、治療者、または他者に対して、インターネットゲームの使用の程度についてウソをついたことがある
8.否定的な気分を避けるため、あるいは和らげるためにインターネットゲームを使用する
9.インターネットゲームへの参加のために、大事な交友関係、仕事、教育や雇用の機会を危うくした、または失ったことがある
※いわゆるインターネットの使用や、インターネットを利用したギャンブルの利用は除きます。
ゲーム依存については、下記からも簡単にチェックすることができます。
2.スマホ依存をチェックする
スマホ依存傾向については、久里浜医療センターが公開しているSAS-SVなどのスクリーニング尺度があります。これは医学的な診断を確定するものではなく、問題使用の可能性を確認するためのものです。
3.インターネット依存をチェックする
・インターネット依存についての基準(ヤングのチェックリスト)
1998年に米国の心理学者キンバリー・ヤングが作成したチェックリストです。※成人の場合は、学業や成績についての記述は仕事に置き換えて仮にチェックしてみてください。IATはインターネットの問題使用を評価するために作られた尺度です。ゲーム行動症についてはゲーム専用の尺度、スマートフォンについてはスマートフォン専用の尺度を用いる方が適切です。
1.気がつくと思っていたより、長い時間インターネットをしていることがありますか
2.インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割をおろそかにすることがありますか
3.配偶者や友人と過ごすよりも、インターネットを選ぶことがありますか
4.インターネットで新しい仲間を作ることがありますか
5.インターネットをしている時間が長いと周りの人から文句を言われたことがありますか
6.インターネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障をきたすことがありますか
7.他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールをチェックすることがありますか
8.インターネットのために、仕事の能率や成果が下がったことがありますか
9.人にインターネットで何をしているのか聞かれた時に防衛的になったり、隠そうとしたことがどのくらいありますか
10.日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静めることがありますか
11.次にインターネットをするときのことを考えている自分に気づくことがありますか
12.インターネットのない生活は、退屈でむなしく、つまらないものだろうと恐ろしく思うことがありますか
13.インターネットをしている最中に誰かに邪魔されると、イライラしたり、怒ったり、大声を出したりすることがありますか
14.睡眠時間を削って、深夜までインターネットをすることがありますか
15.インターネットをしていない時でもネットのことを考えていたり、ネットをしているところを空想したりすることがありますか
16.インターネットをしているとき「あと数分だけ」と言っている自分に気づくことがありますか
17.インターネットをする時間を減らそうとしても、できないことがありますか
18.インターネットをしていた時間の長さを隠そうとすることがありますか
19.誰かと外出するより、インターネットを選ぶことがありますか
20.インターネットをしていないと憂うつになったり、イライラしたりしても、再開するといやな気持ちが消えてしまうことがありますか
それぞれの質問について下記の点数で計算します。
いつもある=5点
よくある=4点
ときどきある=3点
まれにある=2点
まったくない=1点
<判定>
総得点70点以上=依存傾向が高い。治療が必要
総得点40~69点=依存傾向がある
総得点39点以下=平均的なユーザー
下記からも簡単にチェックすることができます。
・データで見る「スマホ依存、インターネット依存、ゲーム依存」
DSM-5-TRでは、インターネットゲーム行動症の12カ月有病率は、複数の国の平均で4.7%と推定されています。これは、1年間におよそ21人に1人が基準を満たす割合です。ただし、研究によって0.7~15.6%と大きな幅があります。米国では、DSM-5の基準を満たす人は1%以下、すなわち100人に1人以下と報告されています。
日本では、久里浜医療センターが2025年1~2月に実施し、2026年に公表した全国調査で、10~80歳の4,650人を分析しています。全年代では、インターネットの病的使用が疑われる人は6.2%で、約16人に1人でした。これに対して、SNSの病的使用が疑われる人は1.7%で、約59人に1人でした。また、ICD-11に対応する質問票によるゲーム行動症疑いは3.8%でした。
4.ゲーム・スマホ・ネット依存症の原因(背景)を理解する
・現実への居場所のなさ(不適応)
私たち人間は、ゆるやかに多くのものに依存しながら生活をしています。
例えば、人間関係では家族、職場、友人・知人など、社会(職場、地域、趣味のグループなどが挙げられます。依存の中で私たちは居場所を持つようになります。自分のアイデンティティも関係性の中で確立されます。
しかし、さまざまな要因で人間関係や社会においてゆるやかな依存がなくなると居場所を失うようになります。私たちは居場所のなさに耐えることができません。そこで、何か特定のものに極端に依存して擬似的に報酬を得ることで、居場所を得ようとします。
依存症とは「社会のパラレルワールド」(社会薬理学者マリー・ジャホダ)といわれるのはまさにこのためです。
・家族の不和
スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存の子どもを見ると、家族に不和があるといったケースも少なくありません。事実、家族の不和はリスク要因に挙げられています(ダニエル、L.キング「ゲーム障害 ゲーム依存の理解と治療・予防」福村出版)。特に、子どもの場合は、両親や家族の不和は大きな影響があります。家族が安全で落ち着いた場所ではなくなります。また、不適切な養育などによってトラウマや愛着障害になるなど、さまざまな悪影響があります。
・愛着障害、発達性トラウマ
生育環境や家族関係、愛着の不安定さ、幼少期の逆境体験やトラウマは、ゲームやインターネットの問題使用を理解するうえで重要な背景です。幼少期の逆境体験やマルトリートメントとインターネット依存との関連、不安定な愛着と問題的なインターネット・スマートフォン利用との関連は、多くの研究やメタ解析でも示されています。当センターでも、こうした愛着やトラウマの背景を重視しています。
⇒参考となる記事はこちら
▶「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、メカニズム」
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
・発達障害
ADHD、特に不注意や衝動性とゲーム行動症との関連は、多くの研究で示されています。発達特性による衝動性、報酬への反応、対人関係や適応の難しさなどが、ゲームへの没入と結びつきやすくなります。当センターではさらに、愛着不安やトラウマ、本人と環境とのミスマッチがどのように重なっているかを重視しています。
▶「大人の発達障害、ASD(アスペルガー症候群)とは何か?公認心理師が詳しく解説」
上記のように研究ではされていますが、発達障害のみのよって大きな問題になるということは少ないと感じます。発達障害は気質、体質としてありますが、問題が生じる場合は、必ず後天的な環境要因が存在していて、「気質×環境」(環境の問題がレンズのように気質の凸凹を歪に拡大させる)となって問題となっていることが多いです。

5.ゲーム・スマホ・ネット依存のタイプ
日本の総務省の研究プロジェクトが下記のような分類を示しています。どのタイプに当てはまるか、確認してみてください。
・リアルタイム型ネット依存
チャットやゲームなどリアルタイムにやり取りをすることを前提としたサービスへの依存です。オンラインゲームなどはこれに該当します。ユーザーが集まる深夜にプレイし、昼夜逆転を引き起こします。
・メッセージ型依存
ブログや、掲示板、SNSへの書き込みやメール交換など、利用者同士のメッセージをやり取りするサービスへの依存です。LINE、X(旧ツイッター)などが代表的です。
・コンテンツ型依存
ネット上の記事や動画など、受信のみで成立する一方向のサービスへの依存です。動画配信サイト、ニュースサイト、まとめサイトなどが代表的です。
6.ゲーム・スマホ・ネット依存に伴ってみられることがある変化
スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症になると、下記のような特徴が現れます。衝動の制御や認知、注意力、社会的機能に悪影響があることがわかります。以下のようなことが生じていないか?確認してみてください。※これらは依存症だけに特有の症状ではなく、原因・結果・併存する問題が含まれます。
・神経過敏
・不機嫌になりやすい
・イライラしやすい
・不安、
・うつ状態
・無気力
・注意力や集中力の低下
・社会的機能の低下
・多動、不注意の増加
・学力、仕事の成績の低下
・睡眠障害や昼夜逆転
・偏食、欠食
・無断欠席、無断欠勤、遅刻
・課金など金銭面でのトラブル
・ネットでの不正アクセスのトラブル
また、上記以外でも、視力の低下や腰痛、肥満、エコノミークラス症候群など付随する身体の不調も指摘されています。
・依存行動は多様で波がある
アルコール依存症においても指摘されていることですが、依存症の行動は人によって多様で、症状に波があります。あるとき熱中しているかと思えば、パタリとやめてしまう。そしてまた行うようになる。スマホのゲームはしないが家での据え置きゲームはする。逆に家では全くしない、といったことです。
多様で波があるということを知らず誤ったイメージをもっていると、「自分は依存症ではない」と考えたり、家族も「いつもしているわけではないから、依存症というわけではないかも」と捉えてしまい、適切な対処が遅れてしまう原因となりかねません。
7.ゲーム・スマホ・ネット依存と併発する問題
スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症は、ひきこもりやその他の精神障害などと併発することもあります。併発するものから、依存症ではないか?とチェックすることができます。下記に該当するものがないか、チェックしてみてください。
・ひきこもりとの併発
スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症は、ひきこもりと併発することも少なくありません。
その際にも2つのタイプがあります。
一つはもともとひきこもりの人がインターネット・ゲーム依存症に陥ってしまうケース。
もう一つは、インターネット・ゲーム依存症の人がひきこもりとなってしまうケース。
ひきこもりが先行している場合には、ゲーム使用だけを減らしても、背景にある対人不安や適応の問題が残ることがあります。一方、ゲームの問題使用に伴って生活範囲が狭くなったケースでは、ゲーム使用の改善とともに外出や社会参加が回復することもあります。
▶「ひきこもり、不登校の真の原因と脱出のために重要なポイント」
・発達障害、適応障害(適応反応症)、うつ病など精神疾患との併発
発達障害を持つ人が、対人関係や適応がうまくいかないために、インターネットの世界に没入してしまうというケースも多いです。
過度なゲーム・インターネット利用に伴って、睡眠不足、注意・集中力の低下、生活リズムの乱れなどが生じ、発達特性に似た困難が目立つ場合があります。ただし、これは発達障害そのものが後天的に生じるという意味ではありません。
久里浜医療センターの調査では、ゲーム依存の約45%が何らかの精神障害を併発していると報告されています(樋口進「ゲーム・スマホ依存から子どもを守る本」(法研))。
▶「大人の発達障害、ASD(アスペルガー症候群)とは何か?公認心理師が詳しく解説」
▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」
▶「適応障害(適応反応症)とは何か?~本当の原因、症状とその治療」
・その他の依存症との併発
複数の依存行動が併存したり、ある依存行動が減った後に別の行動が問題になることがあります。背景には、衝動性、ストレス対処、感情調整など共通する要因が関係する場合があります。
→依存症全体の知識、スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方については、下記をご覧ください。
▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント」
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(参考・出典)
樋口進「ネット依存症」(PHP研究所)
樋口進「ネット依存症のことがよくわかる本」(講談社)
樋口進「ゲーム・スマホ依存から子どもを守る本」(法研)
岡田尊司「インターネット・ゲーム依存症」(文春新書)
遠藤美季「脱ネット・スマホ中毒」(誠文堂新光社)
墨岡孝、遠藤美季「ネット依存から子どもを救え」(光文社)
清川輝基編著「ネットに奪われる子どもたち」(少年写真新聞社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
ダニエル、L.キング「ゲーム障害 ゲーム依存の理解と治療・予防」(福村出版)
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