悩みの原因や解決方法

ネット、ゲーム依存症の本当の原因と治し方の8つのポイント(下)

[悩みの原因や解決方法「依存症」の原因と治し方]


 前回につづき、インターネット・ゲーム依存症(Internet addiction/Game addiction)についてまとめてみました。

「依存症」全体については下記の記事を参考にしてください。

 「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと」 

 

<作成日2016.4.19/最終更新日2019.9.27>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

インターネット・ゲーム依存症のメカニズム
インターネット・ゲームへの依存を促進する仕組み 
インターネット・ゲーム依存症の原因(背景)
インターネット・ゲーム依存を治療(予防)するための8つのポイント

 

 

 

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インターネット・ゲーム依存症のメカニズム

・報酬系の異常

 依存症の記事(「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと」)でくわしくまとめていますが、人間には、将来の報酬を予測し、行動したり、衝動を制御したりする「報酬系」と呼ばれる脳のしくみが存在します。


 子どもの頃は衝動をおさえることができず報酬系が非常に短期なものとなっています。大人になるにつれ、教育や経験によって報酬系のサイクルは長期のものになっていきます。数カ月後、数年後の成果に向けて、コツコツ努力をする、といったことが可能になります。

 

・簡単に得られる快感

 しかし、依存症は報酬系の機能を狂わせます。薬物や刺激的な行為(プロセス)はちょっとした行動で、仕事や勉学でコツコツ努力をして得られた時に感じるのと似た快楽を得ることができるため、簡単な行為-高い快感、というサイクルに条件づけられてしまいます。


 たとえば、薬物を摂取するのは簡単な行為です。ギャンブルで馬券を買うのも簡単なことです。ゲームも同様です。行為は簡単ですが、その行為は大きな快楽をもたらします。
 研究によると、ゲームをした際のドーパミンの放出量は、覚醒剤を投与された際とほぼ同じ程度の量が放出されていることが明らかになっています。
 

・依存の習慣の形成

 ゲーム以外のインターネットの利用でも、面白いニュースを探す、出合い系で相手を探す、動画を見る、といったことも、かつてであればまれに遭遇する経験であったものが、インターネットでは簡単にアクセスできてしまいます。
 もちろん、いつも良い結果ばかりではないのですが、人間は過去に快感を得た行動を繰り返そうとし、依存の習慣が形成されてしまうのです。 

 


・社会性、共感性、情緒に関わる領域の異常

 報酬系の異常によって、情緒を制御する眼窩前頭葉や全帯状回の機能が低下するため、ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなったります。
 それまではおとなしく優しい人だったのが、人が変わったように怒りっぽくなったり、家族に暴力を振るったりということが起きます。   

 

 

・認知機能の異常

 ドーパミンが大量放出されると、影響を受けすぎないようにするために、ドーパミン受容体の数が減ってしまうダウンレギュレーション(脱感作)が生じます。
 脳内の神経伝達の機能が通常よりも低下するためにうつっぽくなったり、注意力が低下するようになります。
 その結果、認知機能にも悪影響を及ぼし、ネガティブになったり、判断力が低下したり、といったことが生じます。
 学力にも明らかな悪影響を及ぼすことがわかっています。

 

 

 

インターネット・ゲームへの依存を促進する仕組み 

 そもそもインターネットサービスやゲームは利用者を増やすことを目的としていますから、随所に“ハマる”工夫が凝らされています。依存症のメカニズムに沿うような形でゲームは作り込まれています。

 

 インターネット・ゲームにある要素としては下記のようなものがあります。

 ・非日常的な興奮
 ・仮想の世界でのもう一つの自分(アバター)や生活
 ・仲間とのつながり
 ・報酬
 ・成長感
 ・達成感
 ・自己効力感

 

 インターネットやゲームの中には、生活があり、成長があり、つながりがあり、達成があり、興奮があります。単純なパズルゲームでも、RPGの要素をもたせたものがあり、技能の向上やミッションの達成があります。「社会のパラレルワールド」に必要なすべてがそろっているといってもいいでしょう。

 

 

 

インターネット・ゲーム依存症の原因(背景)

・現実への居場所のなさ(不適応)

  私たち人間は、ゆるやかに多くのものに依存しながら生活をしています。
 例えば、人間関係では家族、職場、友人・知人など、社会(職場、地域、趣味のグループなどが挙げられます。依存の中で私たちは居場所を持つようになります。自分のアイデンティティも関係性の中で確立されます。

 

  しかし、さまざまな要因で人間関係や社会においてゆるやかな依存がなくなると居場所を失うようになります。私たちは居場所のなさに耐えることができません。そこで、何か特定のものに極端に依存して擬似的に報酬を得ることで、居場所を得ようとします。
 依存症とは「社会のパラレルワールド」(社会薬理学者マリー・ジャホダ)といわれるのはまさにこのためです。

 

 


・家族の不和

 ゲーム依存の子どもを見ると、家族に不和があるといったケースも多いとされます。事実、問題のある家庭で育つとそうではない場合と比べて3.4倍のリスクとなります。
 子どもの場合は、両親や家族の不和は大きな影響があります。家族が安全で落ち着いた場所ではなくなります。また、不適切な養育などによってトラウマや愛着障害になるなど、さまざまな悪影響があります。

 →「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

・パーソナリティ

 本人のパーソナリティの傾向も依存症の背景として重要であるとされます。パーソナリティとして指摘されているのは2つ、「新奇性探求の強いタイプ」と対人関係が苦手な「回避的なタイプ」です。


 新奇性探求の強いタイプでは、衝動性が強く刺激を求めることから依存に陥りやすいことが指摘されています。回避的なタイプでは、煩わしい現実の対人関係を避け、インターネットやゲームに居場所を求めやすいことがその要因です。


 また、「自己愛的な性格」、「承認欲求が高い性格」も依存症の要因となりやすいようです。一方で、「勤勉さの強いタイプ」は依存症になりにくいとされます。

 

 

・愛着障害、トラウマ

 幼いころに不適切な養育環境にあった場合、社会との関わりの基礎となり安全基地となる「愛着」がうまく形成されず、パーソナリティの不安定さや、適応の難しさを生むことがわかっています。不安定な愛着は、行為への依存を生む大きな原因の一つです。


 アルコール中毒では「アダルトチルドレン」という言葉が生まれたように、依存症あるいは依存症の親に育てられても同様にその子どもも依存症に陥ることが指摘されています。逆に過保護すぎてもダメで、依存症に陥る危険度が2.8倍高まるとされます。

 

 ⇒参考となる記事はこちら
  「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、4つの愛着スタイルについて」 

  「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 


・発達障害

 発達障害は、生まれつきの場合と養育環境によって同様の問題が生じる場合とがあります。発達障害傾向のある人は独特なコミュニケーションのスタイルから不適応を起こしてしまいます。また、特定の事柄に強い執着をもつこともあり、依存症の背景として考えられます。
 ADHD傾向のある子どもの場合、もともとドーパミンの働きが弱く、衝動性や不注意につながっています。
 ゲームに依存することでドーパミンが放出されて一時的に落ち着き、注意力が高まる効果があるため、ある種の自己治療として依存症に陥ってしまうのです。

 ⇒「大人の発達障害の本当の原因と特徴~さまざまな悩みの背景となるもの」

 

参考)「厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 発達障害」

 

 

 

インターネット・ゲーム依存を治療(予防)するための8つのポイント

  インターネット・ゲーム依存を治療(予防)するためには何が必要なのですか?大切なポイントをまとめてみました。下記のポイントは予防にも役立ちます。


1.家族間の絆が大切。承認と安心感を与える

 依存症の大きな原因は、本来安全な場所である家庭が安全ではなかったり、居場所がないことにあります。依存症とはあくまで現象であって、依存症そのものは原因ではないということです。


 絆とは、双方のコミュニケーションで築かれるものです。関わりが欠けていたり(ネグレクト)、過剰(過干渉)でもバランスを欠いてしまいます。ほどほどに安定していることが大切です。親がケンカをしている、「躾」「教育」という建前のもと、子どもに心ない言葉をかける、といったことを繰り返していては絆は作られません。支配と絆とは異なります。

 

 健全な状態とは、たくさんの依存の糸が張り巡らされて心地よいネットのようになっているものです。健全な依存のネットワークが切れていくことである特定の物事に依存(依存症という状態)せざるを得なくなってしまうのです。繊細で、気遣いのできる人ほど、しわ寄せを受けやすいのです。

 

 依存症の解決には、まず家族間の絆を取り戻す必要があります。ちょっとした気付きで取り戻せる場合もあれば、大変な作業になる場合もあります。親自身が、さらにその親から承認されていなかったことが、家族を承認できていない原因となっているといったことも珍しくありません。家族の中で依存症が発生したということは、絆が切れている、という事に気づき、取り組みを始めることが大切です。

 

 


2.家族も変わる必要がある

 依存症は「家族の病」と呼ばれます。そのため、依存症の当事者だけを治せばよい、という考えではなかなくうまくいきません。家族も一緒に変わる必要があります。これは決して依存症が親の責任という意味ではなく、家庭という"環境”に原因があるということです。親自身も、環境の影響を受けて否応なく問題に巻き込まれているプレーヤーということです。


 依存症を生み出し維持させられてしまうことを「イネーブリング」といいます。家庭の環境は適切か、環境を形成する家族自身の関わり方は適切か、見直してみることが必要です。家族がカウンセリングを受けるだけで環境が変わり、依存症が解決した、というケースもまれではありません。

 →「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 


3.依存症とは、自己治療であるという視点を持ち、背景を理解する。本人の性格やいい加減さのせいにしない

 依存症とは、つらい現実からの緊急避難であり、癒やすための自己治療という側面があります。
 頼るべき親が不安定であったり、自分の味方をしてくれないような環境に置かれることの絶望感は計り知れません。特に子どもにとっては逃げ場というのは限られます。依存症という逃げ場がなければ、ひょっとしたら自殺していたかもしれません。依存症が命綱となって、その子を助けてくれている、ということもあるのです。

 

 そうした背景を理解しないまま、「ネットやゲームばかりして、あなたは!」と叱りつけたり、説得しても解決にはなりません。

 

 


4.無理やり取り上げたり、制限することは逆効果

 ゲームを取り上げて隠したり、売ったり、壊したり、制限ツールを導入したり、さまざまな手段でインターネットやゲームの利用に制限をかけようとします。しかし、上記に書いたように、依存症に至るのはゲームそのものよりもそれ以前に原因があります。原因を理解した上で、親子でお互いに納得した上で制限を行う必要があります。
 子どもは確かに未熟ですが大人が思う以上にさまざまなことを感じて理解しています。大人の一方的な都合などは見抜かれてしまいます。
 
 「甘やかしてはいけない!」として無理に制限を課しても決してうまくいきません。一時的にうまくいったように見えても、問題を先送りしているだけだと捉えたほうが良いでしょう。

 

 


5.安心感の鍵は、Being(存在)を承認すること

 安心感を与える際に陥りやすい過ちは、「~をしたら、認めてあげる」「~しないから、怒られるのだ」といった考え方です。「自分は安心感を与えようとしているが、子どもは勉強しない」といったことはよく聞かれます。しかし、実は行動の見返りに承認を与える、というのは安心感を与えることにはならないことがわかっています。

 

・Being(存在)-Doing(行動)-Having(所有)の3つのモデル

 私たち人間を理解するわかりやすいモデルに、Being(存在)-Doing(行動)-Having(所有)というものがあります。Beingとは、存在そのものでOKと思えるような感覚を持つことができていること、存在を承認されているということ。Doingとは、仕事や勉強などで成果を上げること。Havingとは、何かを達成して報酬を得ること、です。

 社会生活を送る中で、これら3つがバランスよく満たさせることがとても大切とされます。

 

・Doing、Having偏重

 現在社会は競争社会です。そのため、Doing、Having偏重になりやすく、子どもに対しても、ついつい何かをしたら認めてあげる、といった態度をとりがちです。

 しかし、Doing、Havingとはどこまで言ってもキリがなく、今日成功しても、明日は失敗して見捨てられるかもしれないという恐れと隣り合わせなのです。

 

・Beingを育む

 そこで大切なのはBeingです。どんな失敗しようが、非難されようが、自分は自分でいることができる。認めてもらえている、という感覚がその人を支えます。

 結果的にDoing、Havingも向上させてくれます。Beingは、仕事や勉強で満たすことは難しく、基本的には家庭、家族との間で築かれるものです。家は、Beingの場です。ついつい、Doing、Having ばかりを要求していないでしょうか?

 

 「あなたは何もなくてもそのままで大丈夫」と心の中でも信じて、言葉でも伝えることが大切です。存在(Being)を承認する視点を持つと大きな安心感を与えることができ、子どもの行動はそれだけで改善していきます。

 

 


6.安心感を持った上で、改善に向けての具体的な行動を一緒に検討する

 上記までに記したような対処によって安心感と居場所を確保すると、依存症の原因は解決できます。

 しかし、"習慣としての依存”は残り続けることがあります。習慣としての依存の解決には、いくつかの方法があります。

 

・心理教育を行う。実害について互いに理解する

 インターネットやゲームが及ぼす悪影響について話し合い理解を深めます。身体はもちろんですが、そのまま続けた場合に生じる学業などへの影響について話し合います。紙に書き出してみることも整理するためには効果的でしょう。また、診断のためのチェックリストなどを本人に記載させて、自覚を促すことも大切です。

 


・親子で時間の制限などルールを定める

 時間の制限などについてルールを定めていきます。これには本人のコミットメント(納得)が大切です。

 

・認知行動療法 

 考え方を修正したほうが良い場合には、認知行動療法も有効です。
  

 

・重度の場合は完全に断ち切る。「治る」はなく「回復」しかありません

 依存症も中程度以下の場合はほど良い付き合い方に戻るということはありえます。
 しかし、重度の場合はほどよい付き合い方に戻ることはできず、依存対象から生涯にわたり距離を取りつづける以外にありません。

 

 アルコール依存症など他の依存症でも、何年も断酒していた人が「もう大丈夫になった」といって、一口アルコールを摂取した途端に、おさえられなくなって酩酊してまた逆戻り、ということが起きます。

 距離を取り続けられるようになることが「回復」ということです。重度の場合は完全に断ちきるしか方法はありません。

 

 


7.離脱症状や渇望を乗り越える

 依存症で大きいのは、離脱症状(俗に禁断症状と呼ばれます)や依存への渇望を乗り越えることです。根本原因を緩和させても、習慣として染み付いた脳のメカニズムの失調はすぐには収まりません。離脱症状となって襲ってきます。


 ある一定期間を完全にアクセスできない環境に身をおいて打ち克つことが必要です。そのために入院する、プログラムに参加するということも手段としては必要になる場合もあります。※日本においては残念ながら専門の病院が少ないのが実状です。

 

 

8.精神科医やカウンセラーのサポートも適切が必要な場合  

 精神科医やカウンセラーも、病識のない本人をたちまち説得する魔法があるわけではありません。病識がない人に無理に治療しても問題をこじらせるだけです。

 精神科医やカウンセラー本人への対応策についての家族の相談はもちろんですが、依存症は「家族の病」という側面があるため、家族への心理教育やカウンセリングも行います。

 

 本人が治療を受けない場合は、家族がまずカウンセリングなどをうけることは大変効果的です。アルコール依存症などでも、家族がカウンセリングや自助グループに参加することで問題が解決したという報告は多く寄せられています。

 医師やカウンセラーはプロとして問題の全体像を明らかにしながら、問題をサポートすることで、依存症の背景にある原因を解消させていきます。

 

 依存症そのものを治す薬というものはありません。薬物療法は、衝動性をおさえるなど補助として用いられることがあります。(未成年への薬物の使用は自殺念慮を高めるなどの危険性があるため慎重な判断が必要です)

 ゲーム・インターネット依存症の専門医は日本では非常に少なく、久里浜医療センターなど数えるほどしかありません。お近くに専門の機関がないかどうかはインターネット等で調べてみましょう。

 

 

対策が遅れている日本

 韓国では、国を挙げて対策に取り組んでいます。例えば、16歳未満のユーザーは、深夜12時以降はオンラインゲームができなくなる「シンデレラ法」。インターネット依存症治療する「レスキュープログラム」「レスキュースクール」 などさまざまな施策が行われています。


 日本では、まだインターネット・ゲーム依存症が病気であるという認識も一般的ではありません。総務省が規制のための組織を作ったり、業界団体による自主規制も行われていますが、十分ではありません。適切にインターネットやゲームを楽しむためにも対策が望まれます。

 

 

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(参考)

樋口進「ネット依存症」(PHP研究所)
樋口進「ネット依存症のことがよくわかる本」(講談社)
岡田尊司「インターネット・ゲーム依存症」(文春新書)
遠藤美季「脱ネット・スマホ中毒」(誠文堂新光社)
墨岡孝、遠藤美季「ネット依存から子どもを救え」(光文社)

清川輝基編著「ネットに奪われる子どもたち」(少年写真新聞社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)

DSM(米国精神医学会の診断マニュアル)第5版

など

 

 

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