依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

[「インターネット・ゲーム依存症」の原因と治し方「過食」の原因と治し方「ギャンブル依存症」の原因と治し方「アルコール依存症」の原因と治し方「依存症」の原因と治し方]


 

 依存症(嗜癖 Addiction)は、精神障害の一つですが、だらしない性格のせい、といった誤解が多い症状です。
 実際は、その要因はとても複雑で奥深いものです。当人だけではなく家族も巻き込んだ症状とされます。
 アルコール依存症が典型ですが、ネット依存症など、時代の流れや社会状況によって様々な形の依存が存在します。依存症についてまとめてみました。

 

⇒関連する記事はこちら

 「ネット、ゲーム依存症の本当の原因と治し方の8つのポイント

 「ギャンブル依存症の本当の原因と治療のために必要な4つのポイント」

 

 ※サイト内のコンテンツのコピー、転載、複製を禁止します。

依存症のイメージ

 

 

依存症(嗜癖)は、個人のだらしなさか?病気か?

 芸能人などで薬物で捕まったりといったニュースを目にすることがあります。その時の論調としては「道を踏み外した」「ファンを裏切った」「心が弱い」といったものです。一般の感覚としては、薬物に手を出すのはその人の責任、問題である、ということになります。
 しかし、実は、薬物に手を出すのは個人の性格が原因ではなく、「薬物依存症」という病気によるものです。
 
 依存症になるのは、その人では抱えきれないストレスや悩み、体質などを背景としています。

 どうしようもない心の痛み、不安、生きづらさを癒やすためのやむを得ない手段として物質や行為に依存しているのです。もしそうでなければ、早々に自殺していたかもしれません。依存物によって自殺を免れているとも言えるのです。(事実、清原和博容疑者は、テレビ番組などでストレスから自殺願望をほのめかしていました)

 近年、心理学や脳科学などでは、人間には主体的な自由意志は存在せず、様々な環境からの刺激や影響を受動的に受けて行動している存在であると考えられるようになってきています。自由意志はあくまで後付けの解釈であり、自ら決めているという信念を持っているだけ、ということです。
 人間は、生まれることを自分で選択できませんし、養育環境も選べません。幼少時のストレスが、成人時の行動に大きく影響することがラットの実験などで明らかになっていますが、自分で選択できない要因によって私たちは行動が制限されているのです。

 依存症とは、そうした環境によって否応なく降りかかってくるストレスやトラウマ、個人の責任というある種のドグマによってどうしようもなくなった人にとっての未熟な自己治療であるということです。その未熟な自己治療の副作用として脳のメカニズムが書き換わりコントロールを喪失してしまう病気、精神障害なのです。

 

 

依存症に関する言葉の整理

 依存症には、様々な類似の用語が使われています。まずは、それらについて整理してみました。

 

・依存

 「依存」とは、何かを頼る状態を指します。人や環境など誰でも何かに依存します。依存それ自体は悪くありません。依存には、「精神依存」と「身体依存」があります。「精神依存」とは、依存の対象を欲して抑えきれなくなることです。一方、「身体依存」とは、依存の対象を断つことで身体的な不調をきたし、その不調を抑えるためにまた依存してしまうことを指します。

 

・依存症

 「依存症」とは、依存の結果、生活(本人や周囲の)に支障が生じている状態を指します。

 

・中毒

 「中毒」とは、医学用語で、化学物質によって身体に生じる問題を指します。一回の使用で身体に不調が生じることを「急性中毒」といいます。長期間の使用で不調をきたすことを「慢性中毒」といいます。 医学的には、「急性中毒」のみを指して「中毒」とされます。かつては、「依存症」のことを「(アルコール)中毒」と呼んでいましたが、1977年頃から「(アルコール)依存症」という名称が用いられるようになりました。

 

・嗜癖

 「嗜癖」とは、昔は依存症を指す言葉として用いられていましたが、近年は、「依存症」あるいは「アディクション」という言葉が用いられています。特定のモノや習慣を特に好む傾向や執着を指します。

 

 上記のようにそれぞれ区別されますが、一般的には「アルコール中毒」「セックス中毒」、「恋愛依存」など区別なく用いられています。

 

・「乱用・中毒・依存」の関係

 「乱用・中毒・依存」の関係については、下記のように整理されています(和田清「薬物乱用・依存の現状と鍵概念」による)。

 

    渇望 ⇒ 乱用 ⇒ 急性中毒 
            ⇒ 繰り返し ⇒ 依存 ⇒ 慢性中毒
                        ⇒ 渇望   ⇒ 乱用


 渇望が乱用を生み、その繰り返しが、依存を生むことが分かります。 
依存が正しい依存、例えば、家族や友人、専門家への適切な依存である場合は良いのですが、適切に依存することが出来ない場合、「依存症」となってしまいます。

 

 

 

様々なタイプの依存症(嗜癖)

 基本的に、依存症の研究や治療は、アルコール依存症を雛形として発展してきました。様々なタイプの依存症がありますが、そのメカニズムは同様だとされます。依存症は、日本全体で2000万人存在するとされている。うつ病よりも多い心の病気です。

 

主として物質への依存

 

・アルコール依存症(Alcoholism

 依存症の代名詞とも言えるものです。古くからありますが、昔は王様や貴族など普段お酒が手に入る裕福な人しか陥る可能性はありませんでした。
 しかし、近代に入り、アルコールが大量生産されると庶民の間でも依存症が生じるようになりました。
 日本では、アルコール依存症患者の数は230万人とされます。ただ、かつてのような重篤なケースは減ってきているようです。
 いわゆる麻薬などの薬物依存は誰でも恐ろしさがわかりますが、アルコール依存症も死に至る重篤な病です。アルコール依存症患者の平均寿命は52歳とされ、放置すると最後は事故や内臓疾患、がんなどで死亡します。

 

アルコール依存症のイメージ

 

 

・薬物依存症(Drug addiction

 薬物とは、覚せい剤、大麻、シンナー、睡眠薬等を指します。
 他の先進国と比べると日本では薬物が手に入りにくいため、患者数は少ないです。
 ただ、著名人の逮捕事件や、中高生が大麻を入手しているというニュースもあり、日本でも薬物依存のリスクは見過ごすことは出来ません。
 


<行為、プロセスへの依存>

 

・ギャンブル依存症(Gambling addiction

 文字通り、ギャンブルへの衝動をコントロールできなくなる症状です。患者の割合は欧米では人口の1%前後であるのに対して、日本は、4.8%と高い状況です。患者数は536万人とされます。
 韓国や台湾などパチンコを全面的に規制している国もあることに対して、日本では容認していることについて、認識が甘いと指摘されています。競馬などよりもパチンコ・スロットなどのほうが依存の危険性が高いとされます。(視覚、聴覚の刺激や、街なかにありいつでも行えるといったことが原因とされます)

 ギャンブル依存の人は、そうでない人よりもアルコール依存になる危険は4~20倍高く、ギャンブル依存症でうつ病を併発する人は全体の3~8割。不安障害は3~4割とされます。生涯自殺企図率は、40.5%とアルコール依存症の30.6%よりも高い割合です。

 また、ADHD、自己愛性人格障害。反社会性人格障害、境界性人格障害、行動障害などとも関連性が見られるとされます。ギャンブル依存症も非常に危険な依存症です。

 ⇒参考となる記事はこちら

 「ギャンブル依存症の本当の原因と治療のために必要な4つのポイント」 

 


・過食(Bulimia)

 過剰な量を摂取することや、食べ吐きを繰り返す行為を指します。男性よりも女性に罹患者が多い依存症です。※摂食障害そのものは依存症ではありません。

 ⇒参考となる記事はこちら

 「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

 

・ドメスティックバイオレンス(DV)

 ドメスティックバイオレンスも依存症の一種です。
 暴力を振るうことでしか自分の気持を表現できないということです。
 まさに癖のように、本人も止められなくなってしまいます。

 


・インターネット・ゲーム依存(Internet/Game addiction)

 近年問題となってきている依存症です。
 インターネットやゲームスマホへの依存によって、日常生活に支障をきたしている状態です。ネット依存は、家庭に居場所がなく、親子の関係が良くないと強まります。現在はまだ正式な病名ではありませんが、今後、病名としてDSMなどに掲載される可能性があります。韓国などでは小中学生の5%にその危険性があると指摘されています。

 ⇒関連する記事はこちら

  「ネット、ゲーム依存症の本当の原因と治し方の8つのポイント

 

 

・その他の依存症

その他の依存症としては下記のようなものがあります。
 ・セックス依存症
 ・恋愛依存症
 ・ニコチン依存症
 ・仕事依存症
 ・窃盗癖
 ・放火癖
 ・抜毛癖
 ・爪噛み
 ・買い物依存症
 ・世話型依存症
 ・虐待
 ・カルト宗教
 ・自傷、リストカット

  ⇒関連する記事はこちら
  「リストカット、自傷行為の本当の心理、原因・理由とその対応」

 

 

 

なぜ、依存症は生まれるのか?~依存症の原因と背景

 他の精神障害もそうですが、依存症においても体質的な要因、心理的な要因、社会的な要因という多元的な要因が背景にあります。
 わかりやすくするために、「個人にまつわる要因」と、「家族や社会との関係によるもの」と2つに分けてまとめてみました。
 

個人にまつわる要因

 <心理>

・ストレスや孤独    

 過大なストレスや居場所のなさ、その人では背負いきれない過大なストレスの存在が背景にはあります。どういった問題がストレスになるかについては体質や環境によっても影響を受けます。
 アルコール依存症の自助グループ(AA)で再飲酒をしないために避けるべき感情としてH=Hungry(飢え)、A=Angry(怒り)、L=Lonely(孤独)、T=Tired(疲労)をあげていますが、このことからもストレスや孤独の影響が強いことが伺えます。

 

・トラウマや愛着障害

 幼いころの虐待やネグレクト、不適切な育児も依存症の要因となります。「関係性のストレス」といいますが、客観的には虐待とはいえないような些細なことでもトラウマになりえると考えられています。
 ラットの実験では、一定時間、母親から離された赤ちゃんラットは、成人すると、アルコールなどの物質をより求めるようになることがわかっています。人間でも同様に、依存物質(行為)への依存のしやすさ(物質依存は4倍のリスクがある)や脆弱性が高まるとされます。
 愛着対象との関係がうまく行かずに、その後の人間関係などに支障をきたすことを愛着障害といいますが、依存症と愛着障害との関係も指摘されています。
 特に、アダルトチルドレンと呼ばれるように、依存症の親のもとで育った子どもは自らも依存症になってしまうことが知られています。

 ⇒参考となる記事はこちら
  「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」
  「「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと」


 
・他の精神障害の影響

 うつ病、双極性障害、統合失調症、ADHDなどは、アルコールやニコチンなどの物質依存のリスクが高まるとされます。統合失調症では、ヘビースモーカーが多いことやアルコールが幻覚や怒りを抑えてくれることから依存傾向の方が多いとされます。

 

 

<体質や気質>

 依存症に関する研究では、同じ依存物質を摂取しても依存しやすい人としにくい人がいることがわかっています。アルコールを飲む人はたくさんいますが、必ずしも依存症に陥るわけではないことが一つの例です。

 

・遺伝的背景

 依存症には、遺伝的背景があるのと考えられています。
 遺伝とは体質のことで、環境との相関で遺伝的要素は活性化するかどうかが決まるとされます。依存症に陥る要因の3分の1程度は、遺伝的背景によって説明できると言われています。 


・性格気質

 衝動性が高い、感情的に怒りやすいなどの性格気質がある場合は、依存症になりやすいことがわかっています。一方、イメージに反して依存症に陥る人たちは意志は強く、頑張るタイプの人達が多いとも言われます。本当に不真面目であれば、自分の苦しみを自分でなんとかしようとしないのですが、真面目でセルフコントロール過剰な人が、頑張ってなんとかしようとして解決手段として依存を用いている、ということがあります。


・失感情言語化症(感情調整障害)などによるセルフケアの欠如 

 自分の感情に気づいたり、内省したり、それを言葉にしたりすることに困難のある人格特性(アレキシサイミア)のことです。自分の感情に気づかないので適切なセルフケアが出来ず、フラストレーションを貯めこみ、心身症になりやすいとされます。
 依存症においても同様で、フラストレーションを抱え込み、それを解消するためにアルコールなどを必要とするのでは、と考えられています。

 

 

家族や社会との関係によるもの

<家族・社会>
 
・家族の問題としての依存(関係の嗜癖)

 依存症は個人の問題だけではなく”家族の病”とされます。多くの場合、家族を巻き込んで症状を形成しているからです。その際に登場するのは、「共依存」という概念です。

 「共依存」とは、もともとは、アルコール依存症を持つ妻と夫との関係を指す言葉でした。アルコール依存で何もできなくなった夫を支えることで、何もできない状態が継続し、依存症に手を貸している状態。夫はアルコールで万能感を得ていますが、妻は夫の世話である種の万能感を得ている、という境界不明瞭でいびつな関係です。

 依存症とはその人個人で成立しているわけではなく、手を貸す家族関係によって維持されているという考え方です。


 依存症に手を貸すことを「イネーブリング」、手を貸す人を「イネーブラー」といいます。手を貸すというのは、アルコール依存症の人の不始末の尻拭いをしたりすることはもちろん、お酒を隠したり、非難したり、といったことも、歪な共依存を生み、依存に手を貸していることになります。

 

 ある家族が依存症になると、その患者を中心に家族全体が動くことになります。そうすると、家族本来の役割や関係性、世代境界が崩壊してしまうのです。例えば、親が依存症に陥り、衝動を抑えられずに問題を起こすと、代わりに子どもが親の役割を担って家族の世話や相談に乗るなど役割の逆転が起こります。

 アルコール依存症では、親の暴言、暴力の脅威に子どもがさらされます。夫婦での諍いを日々見せられるようになります。飲んだくれた親が四六時中家にいることで、ずっと気兼ねしたまま生活し、子どもはそのことを秘密にするようになります。友達を家に呼ぶこともできなくなります。子どもは人間関係に制約を受けて成長することになります。

 

 依存症の家庭では、本来親や家庭から与えられるはずの必要なものを与えられずに子どもは成長していくことになり、その悪影響は後々に現れることがあります。過剰適応や、子ども自身が成人後に依存症に陥るといったことです(世代連鎖)


 家族に依存症がいると、その子も依存症になりやすいことが知られています。アルコール依存症の親を持つ子を「アダルトチルドレン(Adult Children of Alcohlics)」と呼ばれます。かつて一世を風靡した概念です。

 薬物依存でも自分だけで使うことは少なく、人間関係の依存が同時に存在するケースが多いとされます。

 

絆と愛着と家族のイメージ

 

・仕事の陰画(社会のパラレルワールド)としての依存症

 社会薬理学者マリー・ジャホダによって提唱された仮説で、「依存症は、仕事の陰画である(社会のパラレルワールド)」とするものです。

 依存症には、「毎日のスケジュールがある」「他人との接触がある」「何かを集める」「活動的になる」「社会的地位ができる」という社会活動を構成する要素が揃っています。そのため依存症は第二の人生、パラレルワールドとして、生きがいとなり、のめり込みやすい、とする考え方です。

 

 例えば、ギャンブルはまさにそうで、仕事のように毎日パチコン通って、客や店員などと接触があり、玉を集め、勤勉に足繁く通い、お店や仲間の中では知られる存在となります。ギャンブルでは「意思決定に参加できる」「勝利の喜びがある」など仕事の醍醐味が詰まっています。

 


・依存物質(行為)へのアクセシビリティ 

 依存物質(行為)が簡単に手に入るかどうかは依存症への陥りやすさに影響します。例えば、日本では他の先進国と比べてギャンブル依存症が多く、薬物依存症が少ないことはそれらへのアクセスの容易さを反映していると考えられます。
 当たり前ともいえますが、依存物質や行為が手に入らなければ依存には陥りません。

 

 

・近代に特有の病としての依存

 依存症の遠因として、近代、現代社会の構造があります。

<日常と非日常の曖昧さ>

 かつては、日常と非日常は明確に分かれていました。お酒や幻覚を生む薬物を用いるのは年に数回ある特別な祝祭の時だけでした。ギャンブルも「運」という神にしか操れないものに触れることができる非日常のものでした。多くの社会で賭博は違法とされてきました。酩酊や幻覚を生む物質は稀少で手にはらなかったこともあります。
  
 しかし、近代に入り祝祭空間を失い、日常と非日常が曖昧になり、アルコールは大量生産されるようになり、冷蔵庫などが普及してお酒が常に家にあるものとなりました。
 また、射幸心を煽る娯楽は大衆化し、快楽を生む刺激が身近となりました。

 

<個人に振りかかる過大な責任>

 農業など共同体全体で行っていた労働も、資本主義が広まり、工場労働や賃金労働など個人として関わり、個人として責任を求められるようになります。
 人間とは環境や関係性によって成り立つ存在で、身に起こる多くのことは個人ではどうしようもないものです。しかし、近代に入り、個人の責任が強調されることによって、個人ではどうしようもないものまで個人の責任として捉えられるようになります。事実、アルコール依存に陥る人は、真面目で勤勉な人が多いです。
 個人に振りかかる過大なストレスを紛らわせて近代的個人として生きるために、アルコールなどへの依存が必要になる、ということも考えられます。

 

 

依存症のメカニズム

 依存症はどのようなメカニズムで成り立っているのでしょうか。メカニズムについて、まとめてみました。

 

脳の「報酬系」の変調

 ジェームズ・オールズという米に心理学者によって確認されましたが、人間の脳には、目標に向かって動かされる「報酬系」と呼ばれるメカニズムがあることがわかっています。「報酬系」とは、中脳の腹側被蓋野から前方にある側坐核にかけてドーパミンを作動させる神経系を指しています。脳幹でノルアドレナリンを生む青斑核なども関わりがあるとされます。報酬系では「好きなもの」「手に入れたいもの」「思った以上の見返りがあるもの」「報酬の予測」に反応してドーパミンが出るとされています。


 これが正常な働きですが、依存症を促す薬物は、ドーパミンを強制的に促進してしまうことで衝動が高まり、我慢ができなくなってしまうのです。

 行為への依存でも、対象物からの刺激や習慣によって類似のことが生じます。摂食障害でも、チョコレート、小麦粉などある種の食べ物(炭水化物)は、コカインのような働きをする依存の対象となるとされています。
 また、過食という行為によって糖分などを過剰に摂取することが、ドーパミンの放出を促すことがわかっています。
  

 人間には、衝動制御をおこなう器官(前部帯状回や前頭眼窩野など)が脳には存在しますが、依存症になると報酬系に対する衝動制御が働かなくなります。
  
 子どもの時は誰でも衝動制御は容易ではありません。子どもへの実験で、目の前のお菓子をガマンすればもう一つあげる、という命題を出しても、我慢できず食べてしまったりする(誘因特性といいます。)。大人であれば、ガマンすればすぐに2倍になるわけですから我慢します(合理的な行動を認知欲求といいます。)。


 依存症はこれに似ています。教育によって育まれた長期の報酬系が、依存によって短期の報酬系に脳が書き換えられてしまい、衝動を抑えられなくなってしまうのです。

 

 

「連合記憶」と「習慣記憶」による再発の促進

 依存症になると、依存行為を行っている際の感情や環境にまつわる様々な記憶が連合して記憶(連合記憶)が刻まれる。具体的には海馬、扁桃体から側坐核へと至るルートに記憶されることがわかっている。そうすると、ちょっとした刺激、例えば、悲しい気持ちになった、とか、人の話し声が耳に入ったとか、居酒屋の看板を見た、だけで依存症の記憶が蘇り、渇望が喚起される。

 また、行動の習慣も記憶として刻まれる(習慣記憶)。側坐核から背側線条体にかけて記憶されることがわかっている。習慣は、文字通り、半ば無意識的に同じ行為を繰り返すことであるが、これも、気がついたら飲んでいた、パチンコ屋に入っていた、という強迫的な行動に繋がる。

 こうした、2つタイプの記憶によって、少しでも記憶を刺激するような体験があると依存への渇望は喚起されてしまう。依存からの脱出は意志の力では難しいことがよくわかる。

 

 

過剰な自己コントロールと未熟な自己治療

 依存症の背景には、過剰な自己コントロールが存在しています。本来、自らの手に負えない苦しみは、やり過ごしたり、他人に頼ったり、環境を変えたりするなどして回避することが大切ですが、依存症患者は抱える苦しみを自らなんとかしようと過剰な自己コントロールの果てに依存症に陥ってしまうと考えられています。

 つまりだらしなくて陥るのではなく、むしろ意志が強すぎて罹る病なのです。

 こうした捉え方は「自己治療仮説」といいます。アメリカの精神科医、カンツィアン博士らが唱えた説です。依存症になる人は自身の必要性に基づいて選択をしている。そしてそれは、苦痛を和らげるためのある種の自己治療である、という説です。※最近の脳科学の研究によっても、依存症とは、快楽を求めてではなく、扁桃体の過活動など痛みの緩和のために生じているの、と指摘されています。

 

 

酔い

 人間は、苦しみを癒すために、本来であれば、自分の中にある愛着(親との関係で築いた心の安全基地)に戻る中や人間関係の中で癒やされます。しかし、そうしたものが得られない場合に代わりの物で満たそうとします。
 当初は、「私は罪深いから愛されない。良い子でいれば愛される」といったファンタジーで満たしています。しかし、努力をしても愛は得られない、とわかると別のもので埋め合わせようとします。それが依存物質や依存行為です。

 アルコールや薬物以外の依存症でも、依存行為によってある種の「酔っぱらった」状態が生まれていると考えられます。依存行為を行っている時には、脳内物質が分泌されて現実を否認することができます。「私はなんでもできる」「世界をコントロールしている」といった万能感や「お母さんのお腹に包まれたような」一体感を感じることができます。

 しかし、万能感や一体感も長くは続かずに、目を覚ますと、自己嫌悪に陥り、自己嫌悪を癒やすためにさらに依存を深めていくことになります。

 

 

 

依存症の特徴

・進行性の病気(死に至る病) 

 進行性とは、放っておくと必ず悪化していくということです。依存症は、自分の身体や家族、人間関係、社会的地位を壊しながら止まることなく進行していき、最後は死に至ります。
 その人の性格や癖、だらしなさといったようなものではなく、致死率の高い恐ろしい「病気」なのです。アルコール依存症では、生還率が2,3割とも言われます。アルコールや薬物以外のものでも、家族や社会的地位を破壊していきます。

 

・コントロールの障害

 依存への衝動を抑えることができなくなります。「ほどほど」ということがなくなります。
 精神依存だけではなく身体依存に陥ると、例えばアルコール依存症であれば連続飲酒といった状態に陥ります。

 

・否認(病識の欠如)

 否認とは、自分ではいつでも止めることができるとして、自分が依存症であることを認めないことです。患者自身ではなく、パートナーも責任を咎められることを怖れて認めない、ということが生じます。
 依存によって脳内の「島皮質」の活動が低下するために気づきが損なわれることも背景としてあるようです。依存症全体に見られますが、アルコール依存症ではより顕著に現れるとされます。

 本人も周囲も「このくらいの飲み方ならアルコール依存症というほどではない」と思いがちなのです。一つにはいわゆる「アル中」のイメージがあまりにも重篤なケース、呑んだくれ、と言ったイメージだからということもあります。しかし、実際には、依存症は多様で「まさか」と思うような軽度でも依存症であることはあります。

 

・性格変化

 真面目で穏やかだった人が、自己中心的になってしまう。粗暴になったり、ウソをつくようになったり、性格がガラリと変わります。人に対する怒りや恨みつらみがものすごく、妄想のように依存症になった恨みつらみを抱くようになります。暴言や暴力などによって人から蔑まれるようになると、さらに被害者意識を強くして、恨みや怒りをますようになります。

 

・世代連鎖

 依存症は世代で連鎖していく傾向にあり、依存症の人には親や親戚に同様の人がいたり、その子どもが依存症や過剰適応で生きづらさに苦しんだりということが多く見られます。

 

・多様なケース

 依存症には多様なケースが存在しています。
 アルコール依存症だと、ある時は全く飲まなかったり(数ヶ月も)、飲んでもおとなしかったり、ケースによって様々です。典型的なケースのイメージが強すぎて、周囲も「依存症とまではいえないだろう」と考えて放置してしまい、結果として悪化してしまうということが起きます。社会生活に支障が出ていれば、「依存症」と疑って対処を始めることが大切です。

 

 

 

依存症の克服

依存症の克服に必要な6つのこと

1.「底つき」体験

 依存症とは過剰な自己コントロールによって生じます。自分の苦痛をなんとかしようとしてもがいている状態です。依存症患者を、家族が世話することも、そのもがきに手を貸すことになります(イネーブリング)。
 「自分は依存症ではない」「自分でなんとかできるから」というのは依存症患者の口癖ですが、自己コントロールはことごとく失敗に終わってしまいます。もがいているうちは依存症から脱することは出来ません。自分だけでは何も出来ない、自己コントロールでは無理だと気づくことを「底つき」体験と言います。中空でもがいた状態から、地面に着地し、着地したことによって回復していくのです。
 自助グループで有名なAAの12ステップの中でも

  ・私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
  ・自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
  ・私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。

 とありますが、これは、自分で何とかすることをやめる「底つき」を表現しています。

 

(参考)重篤な状態にならないような最低限のケアは必要

 依存症の方のお世話をすることはイネ―ブリングとなりますが、底をつくことを過剰に求めて、重篤な状態に陥っても放置することは不適切です。匙加減はとても難しいですが、普段は過剰な心配は世話はせず、でも遠巻きに後遺症や命にかかわる状態にならないようなケアは必要になります。

 


2.「治る」ではなく「回復」

 基本的には、依存症に陥ると脳の構造が変化するため、依存物質や行為に触れても大丈夫になる、つまり「治る」ことはないとされます。
 例えば、コントロールしながら飲酒をする、ということはできなくなります。
 コントロールしようと思っても、一口飲んでしまうと止まらなくなります。
 断酒の期間が10年でも、一度触れると元に戻ってしまいます。
 依存症の治療では、依存の対象に触れない取り組みを続け、状態を「回復」させることが基本です。

 


3.一人では回復できない

 依存症の回復には、専門家の助けだけではなく、自助グループの役割も欠かせません。依存症とは、一人で頑張って苦痛をコントロールするために依存に陥っています。自助グループでの関わりを通じて、自分を客観視し、多くの人に適切に依存していくことで、アルコールや行為への依存から回復していきます。

 

 

4.家族も変わる必要がある

 依存症は家族を巻き込んだ関係性の病でもあります。
 患者本人を悪者にして、医者や自助グループに任せておけばOKということにはなりません。
 依存症によって家族の役割が崩れてしまっていたり、共依存、イネーブリングが生まれています。
 そうした家族の状態も回復しなければなりません。
 そのためには家族も自助グループへの参加、専門家や書籍から正しい知識を得るなどして、精神の安定を取り戻し、依存症への関わり方を変えていく必要があります。
 
 家族があれこれ手を回して依存症の患者の世話をしていたことをやめた途端に、依存症が回復に向かう、ということも珍しくありません。
 また、依存症の当人が自助グループなどに参加したがらない場合も、家族が通い続けることで変化していくケースもあります。

 

 (参考)症状と人格は分けて対応する~あなたは大丈夫というメッセージを伝える。

 依存症については「病気である」という自覚を持たせることは大事です。一方で、依存症は見捨てられ不安、居場所がないといった自己愛の傷を癒すための未熟な自己治療でもあります。「お前は病気だ」と家族が言い募っては、余計に居場所がなくなってしまいます。そのため、症状と人格を分けることが大切です。つまり、「今の症状は個人の嗜好ではなく、病気だ」ということを言う一方で、「症状は病気だけど、あなた(の人格)は本当は大丈夫」「本当は、あなたはちゃんと今の状態がおかしいということがわかっているのでしょ?」というメッセージを言葉や言外に伝えることが大切です。二重の見当識といいますが、表面的には病識がない場合ても、内心では「今のままではまずい」と感じているものです。ただ、病人扱いされて人格を否定されたり、戻る場所がない状態では依存するモノや行為を手放すことができないでいるのです。だから、病気であることを否定するのです。

 

 

5.見捨てられ不安やトラウマ、ストレスなどを解消する

 依存症の根底にあるのは、見捨てられ不安やトラウマ、過大なストレスなどです。
 そうしたことを放置したままだと、再発を繰り返すことになります。
 ストレスが大きいのであれば環境を変えることや考え方(認知)を変える取り組みをしましょう。
 見捨てられ不安やトラウマの解消にはカウンセラーなど専門家のサポートを受ける必要があります。

 


6.行動習慣の形成と維持

 依存症は頭のなかだけで起きているわけではなく、行動習慣が伴っています。

 そのため、認知を変えるだけではなく、新しい行動習慣も形成していく必要があります。
 習慣形成には、状況-行動-結果が 正の方向に繋がり、強化されることが求めらます。
 
 強化のために大切なのは、スモールステップで自発性やペースを尊重し、行動したら即座に周囲からのフィードバックを受けることが大切です。

 例えば、お酒を買う代わりにお菓子を買う、そうした行動をサポートする人間が賞賛する、あるいは小さな報酬を与える、といったものです。

 依存症は報酬系の回路が短期化されてしまっていますから、行動習慣では徐々に長期なものへと伸ばしていきます。


 

克服、治療のための具体的な手段

<薬物療法>

 依存症は、有効な薬物療法がないとされます。脳の報酬系の異常によって生じているためです。
 
 ただ、アルコール依存とニコチン依存については、抗酒剤など、依存対象物の摂取を阻害する薬があります(アゴニスト療法)。補助的ですが、治療にはなくてはならないものです。

 

・アルコール依存症

 抗酒薬が知られています。アセトアルデヒドの分解を阻害して、大量のお酒を飲めなくするものです。体質的にお酒が飲めない状態を作りだして、飲酒の量を抑制していきます。飲酒欲求抑制剤、アカンプロサール(商品名:レグテクト)が日本でも最近、承認されました。これは、脳内のバランスを整えて、飲酒の欲求を抑えるものです。ただ、断酒していないと効果がないとされます。

 

・ニコチン依存症

 禁煙補助薬、ニコチンガムやニコパッチなどが知られています。タバコが吸いたくなったら、禁煙補助薬を使用すると、ニコチン受容体に作用して、ニコチン摂取の願望を抑えるものです。

 

・その他の依存症

 渇望抑制薬については開発が進んでいるとされます。
 (ドーパミンとノルアドレナリンを抑えるブプロピオンや、クロニジンなど)
  

 

<精神療法>

・認知行動療法

 認知行動療法とは、アーロン・ベックらによって開発された手法で、様々な精神障害の治療に用いられています。保険も適用される、医学的根拠もある、現代の精神療法の中心的な手法です。

 認知行動療法は、非合理的な認知(考え方、感じ方)をより適切なものへと修正させていくものです。欲求への対処、やめることについて、断る技術、リスクの予測など様々な問題を扱います。

 例えば、ギャンブル依存であれば「次で取り返せる」→「勝つことも負けることもあるから、今日はこれでやめよう」といったようにリスクの捉え方を修正していくようなことをしていきます。

 個人で行うだけでは難しいため、カウンセラーや同じ悩みを持つ者同士のグループで行うことがあります。


・マインドフルネス

 東洋の瞑想法を源流としており、アメリカで現代的な方法としてまとめられ、日本にも逆輸入されてきています。大企業でもパフォーマンスを上げる方法として取り入れられたり、うつ病治療などでも効果があるとされています。近年、エビデンスが上がってきている方法です。

 依存症についても、欲求などをについて感じることで欲求の背後にある思考や考え方、感覚を知り、欲求が自分本来のものではない、との気づきが生まれます。
 
 例えば食欲についても、本当に食べたくないものを無性に食べたくなることはあります。本当に食べたいのかを吟味すると、その欲求は偽物だと知り、消えていく、ということが起こります。マインドフルネスは、本当の自分の感覚に気づく事ができるようになっていきます。

 ⇒関連する記事はこちら
  「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ」

 

・トラウマ療法(FAP療法)

 依存症の根本には、「居場所のなさ」や不安、またアダルトチルドレン などが指摘されています。
 原因は過去に遡るわけですが、過去のわだかまり(外傷記憶)などを解消する上ではトラウマ療法も非常に効果的です。見捨てられる不安など、根底にある恐怖、不安を解消することが出来ます。
 ⇒関連する記事はこちら

 「“FAP療法”とは何か?トラウマや難しい悩みを解決するための療法」 

 

・その他

 解決に向けての動悸を高める自己面接法 や メンタルコントラスティング法、コーピングスキルトレーニング 
 

・自助グループ

 依存症治療では、自助グループは欠かすことが出来ません。大きな助けとなります。

 様々な依存症の自助グループの雛形となっているのは、アルコール依存症の自助グループ、AA(アルクホリック・アノニマス)です。1935年にアメリカで、アルコール依存症に罹ったビル・ウィルソンとボブ・スミスによって立ち上げられたものです。

 180カ国以上の国や地域で10万以上のグループが存在するとされます。日本でも、600以上のグループがあり、5700人近いメンバーが利用しているとされます。原則的に入会手続きや会費もなく、匿名(アノニマス)で参加することが出来ます。

 

 AAを雛形として、薬物依存症では、NA(ナルコティクス・アノニマス)ダルク、ギャンプル依存症については、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)、摂食障害にはOA(オーバーイーターズアノニマス)があります。

 

 また、日本発祥の自助グループとしては、断酒会があります。1887年にできた「京都反省会」から始まるものです。AAの考え方も取り入れられています。


 
 自助グループでは、特別な治療を行うわけではありません。参加者が自分の体験談を話して、周囲はそれをただ聞き流すだけです。本人だけではなく、家族も参加することがあります。

 同じ悩みを持つ人と接したり、自分の体験を聞いてもらうことは、孤独で自分だけではどうしようもなく、物質や行為に依存してきたものが、多くの仲間や自然な治癒力といった妥当なものへの依存へと変化していく、という効果があると考えられています。

 自助グループは、医療機関である程度の治療が進んでから関わるほうが望ましいとされます。

 

 まずは、専門の病院に相談をしましょう。内科など一般の病院では医師が依存症に詳しくない場合も多いです。かならず専門の病院を尋ねるようにすることが大切です。 

 

 


 ※サイト内のコンテンツのコピー、転載、複製を禁止します。 

(参考)

エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」
クレイグ・ナッケン「やめられない心」
M・クーハー「溺れる脳」
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」
廣中直行「依存症のすべて」
信田さよ子「依存症」
斎藤学「嗜癖行動と家族」
斎藤学「アルコール依存症に関する12章」

日本摂食障害学会「摂食障害治療ガイドライン」

「季刊ビィ」2015年9月号

中込和幸「難治性精神障害へのストラテジー」

 

 

・悩みの原因や治し方についてさらに知るために無料メルマガを購読する

 

 

●お気軽にご相談、お問い合わせください。

 当センターは、トラウマケア専門のカウンセリングセンターです。当センターでは、カウンセリングをご検討されている方向けに「事前相談(無料)」を行っています(40分まで)。

 事前相談では、カウンセラーがお話を伺いし、専門知識に基づき、原因や解決策についての見立てや解決の見通しなどをお伝えさせていただきます。カウンセリングを検討するにあたり、ご不安なこと、お知りになりたいことを事前にご確認いただけます。お悩みの解決に取り組みたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

<事前相談やセッションをご希望される方は、下記の手順でお問い合わせください>

1.まず、当センターの特徴をご確認ください。
  ⇒当センター(B.C.C.)の特徴の概要についてはこちら
2.次に、ご予約をお取りさせていただきます。お電話、あるいは下記の問い合わせフォームから必要事項をご記入の上、お問い合わせください。

 以上でお申し込みは完了です。

 ※事前相談(無料)では、電話、スカイプにて行っております。事前相談では、アセスメントやご相談のみとなり、カウンセリングやトラウマケアは行いません。
 ※事前相談と初回セッション(FAP療法、有料)を併せてご希望の場合は、弊社カウンセリングルーム(大阪心斎橋)か、電話・スカイプかお選びいただけます。電話、スカイプでもカウンセリングの効果に差はございません。

 

 

●Facebookでもご購読いただけます。

 

 

・この記事をシェアする。


mautic is open source marketing automation