近年、有名人でも闘病経験を告白するようになり知られるようになりましたパニック障害(パニック症)。実は広く認知されるようになったのは最近のことです。克服するためには適切な知識が必要ですが、多くの情報が錯綜しております。今回は、医師の監修のもと公認心理師が、パニック障害(パニック症)とは何か?についてまとめてみました。
<作成日2016.2.19/最終更新日2025.8.18>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
・最新の診断基準(DSM)などでは偏見や誤解を防ぐために、病名が変更され、特にdisorder「障害」を「~症」と表記するようになっています。ただ、一般にはまだ馴染みがなく旧名称でお調べになられるケースが多いために、便宜的に従来の表記を残しています。
もくじ
・専門家(公認心理師)の解説
・内因説から見るパニック障害(パニック症)の原因~警報アラームの異常
・トラウマや葛藤を背景に生じるパニック発作
→パニック障害(パニック症)の症状と治し方については、下記をご覧ください。
▶「パニック症(パニック障害)とは何か?その症状を詳しく解説」
パニック症の原因は、現在も一つに特定されているわけではありません。生物学的・神経生理学的な要因、ストレスや心理社会的要因など、複数の要因が関係すると考えられています。
一方、実際の臨床では、トラウマや慢性的なストレス、対人関係上の葛藤などを背景として、パニック発作が生じているケースもあります。また、PTSDや複雑性PTSDなどに伴ってパニック発作が起こる場合もあります。特に当センターで対応するケースでは「葛藤によるパニック」が注目されています。家族や会社など理不尽な環境にさらされ続けることで、矛盾する信念を両立させる葛藤などから生じるパニックが目立ちます。下記にも詳しく書かせていただいていますが、親族のおかしな文化や問題を当人が抱えていたり、あるいは性的虐待を受けていたようなケースなどでパニックが見られます。従来、「内因性」とされていたケースでも、生育歴などをしっかり聴取することで、実は、「トラウマ由来のもの」ということが明らかになってくる可能性もあります。
そのため、「パニック発作がある=すべて同じパニック症」と考えるのではなく、発作がどのような状況で起きているのか、トラウマやフラッシュバックとの関係がないか、他の精神疾患が併存していないかを丁寧に確認することが重要です。
・内因説から見るパニック障害(パニック症)の原因~警報アラームの異常
・脳内の神経伝達物質のアンバランス
パニック症の病態については、脳や神経系の働きに注目した複数の仮説があります。ここで紹介するのは、その代表的な考え方です。
危機を察知して警報を鳴らす機能として情動の中枢である扁桃体が興奮して、それが青斑核に伝わりノルアドレナリンが放出され、視床下部を通じて自律神経を刺激し、動悸やめまいなどが生じます。
パニック症では、扁桃体や脳幹など恐怖や身体反応に関係する神経回路、ノルアドレナリン、セロトニン、GABAなどの神経伝達物質の働きが関係すると考えられています。ただし、特定の神経伝達物質の「不足」だけでパニック症が起こると説明できるわけではなく、現在も複数の病態仮説が研究されています。
これはパニック障害の仮説の一つです。SSRIなどがパニック症に有効であることから、セロトニン系を含む神経伝達系の関与が考えられていますが、薬が効くこと自体が原因を直接証明するものではありません。
・自律神経の失調
脳内だけではなく、自律神経系全体の失調とする考えもあります。慢性的なストレスが続くと、交感神経・副交感神経を含む自律神経系の調整に影響し、動悸、発汗、息苦しさなどの身体症状が強まりやすくなることがあります。交感神経の過活動(自律神経ストーム)がさまざまな身体症状を生むことがわかっています。自律神経は脳だけではなく、副腎などの器官も関係しています。
・なぜにパニック障害(パニック症)となって現れるのか?ストレスの臓器選択性
ストレスに対する身体反応の出方には個人差があります。ある人では胃腸症状、別の人では頭痛や皮膚症状、また別の人では動悸や息苦しさなどが強く現れることがあります。こうした「ストレス反応の出やすい部位や系統には個人差がある」という臨床的な見方を、ストレスの臓器選択性と呼ぶことがあります。
実際にパニック障害の人はそうでない人の2~4倍、心臓疾患にかかりやすいことがわかっています。
・トラウマや葛藤を背景に生じるパニック発作
トラウマ体験やフラッシュバックに伴って、動悸、過呼吸、発汗、強い恐怖など、パニック発作と同じような症状が生じることがあります。
また、パニック症とPTSDが併存することもあります。このため、パニック発作がみられる場合には、パニック症だけでなく、PTSDなど他の精神疾患との関係も確認する必要があります。
→トラウマについて関連する記事は、下記をご覧ください。
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
・葛藤からくるパニック
その中でよく見られるのが「葛藤からくるパニック」です。特に人間関係において長くストレス状況に置かれていて、関わる人間の気まぐれ、理不尽さ、ハラスメントに振りまわされていたケースに多く見られます。気まぐれな言動に対応するために矛盾する信念や我慢を両立させようとしている場合、その葛藤がパニックを引き起こすのです。
パソコンで矛盾する数式やコマンドを入れると、パソコンが固まって動かなくなったりダウンしたりすることがありますが、まさに同様のことが生じるのです。矛盾する式を並べた連立方程式を解こうとするがごとく、環境の理不尽さ、複雑さを内面化した結果です。
パニックによって病院に搬送されるというケースもあります。検査をしても身体に異常は見られません(心拍数、血圧、血糖値などは急上昇することがあります)。実際は、葛藤からくるパニック症状です。
・単なる認知(考え方)の問題ではない
「葛藤」というと心理的な問題、考え方の問題と軽く受け取られがちです。しかし、葛藤によるパニックとは、単に認知的な問題ということではありません。当事者にとっては、「規範」であり、「経験、体験」であり、「社会(世界)」そのものです。こうした問題は、単に「考え方を変えればよい」というものではありません。認知行動療法が役立つ場合もありますが、背景にトラウマや慢性的な対人ストレスがある場合には、その体験や環境そのものへの支援も必要になることがあります。
・本人も葛藤に気がついていないことも多い
当事者にとっては、「規範」であり、「経験、体験」であり、「社会(世界)」そのものと書きましたが、自分の環境が当たり前ととらえています。そのために本人も自分の抱えているものが葛藤であり、それによってパニックが生じているとは気がついていないことも多いです。本人自身がその環境を「普通」と感じており、ストレスや葛藤との関係に気づいていないことがあります。そのため、発症までの生活歴や人間関係を丁寧に振り返ることで、初めて背景が見えてくる場合があります。
・フラッシュバックでパニック発作が起こることはある?
あります。PTSDなどでは、過去のトラウマ体験を思い出させる音、匂い、場所、人間関係などをきっかけに、強い恐怖や動悸、過呼吸、発汗などの身体反応が急激に生じることがあります。これはフラッシュバックや再体験症状に伴う反応として起こることがあります。
一方、パニック症でも予期しないパニック発作が起こるため、症状だけでは両者を区別できません。発作がトラウマを想起させる刺激と結びついているのか、予期しない発作が独立して繰り返されているのか、PTSDとパニック症が併存しているのかを確認することが重要です。
・従来から、パニック発作はストレスの渦中で生じる傾向があるとされていた。
パニック発作の発症や悪化に、強いストレスや生活上の出来事が関係するケースはあります。特に、長期間のストレス、事故や被害体験、体調不良などが重なった時期に発症する人もいます。
例えば、
・仕事や家庭などで一定期間、過剰なストレスにさらされている場合
・ショッキングな出来事や事故などに遭遇した場合
・体調不良、栄養失調などでストレスを受け止めることができない場合
中には、幼少期からの家族関係やトラウマによる慢性的な緊張が背景にあり、現在の人間関係や仕事上のストレスが重なることで、パニック発作が生じているように見えるケースもあります。
→パニック障害(パニック症)の症状と治し方については、下記をご覧ください。
▶「パニック症(パニック障害)とは何か?その症状を詳しく解説」
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(参考・出典)
日本不安症学会・日本神経精神薬理学会『パニック症の診療ガイドライン』2025
渡辺登「パニック障害」(講談社)
磯部潮「パニック障害と過呼吸」(幻冬舎)
森下克也「薬なし、自分で治すパニック障害」(角川書店)
ベヴ・エイズベット「パニック障害とうまくつきあうルール」(大和書房)
シャーリー・スウィード、シーモア・シェパード・ジャフ「パニック障害からの快復」 (筑摩書房)
中原和彦「「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る」(ビタミン文庫)
野沢真弓「私のパニック障害」(主婦の友社)
長嶋一茂「乗るのが怖い」(幻冬舎)
円広志「僕はもう、一生分泣いた」(日本文芸社)
大場久美子「やっと。やっと!パニック障害から抜け出せそう・・・」(主婦と生活社)
貝谷久宜「パニック障害 治療・ケアに役立つ事例集」(主婦の友社)
みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)
など
















