対人恐怖症、社交不安障害の治し方

対人恐怖症、社交不安障害の治し方

不安障害

 社交不安障害は、うつ病、アルコール依存症などに次いで多いとされる症状です。特に日本では、対人恐怖症として知られているとてもポピュラーな悩みです。今回は、医師の監修のもと公認心理師が、社交不安障害、対人恐怖症とは何か?どのように克服するかについて記事をまとめてみました。

 

<作成日2016.2.14/最終更新日2024.5.25>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

専門家(公認心理師)の解説
対人恐怖症、社交不安障害を克服する原則

心理療法など

薬物療法

 

 →対人恐怖症、社交不安の原因やチェックについては、下記をご覧ください。

 ▶「対人恐怖症、社交不安障害とは何か?原因とメカニズム

 ▶「対人恐怖症、社交不安障害のチェックと診断~3つの視点から

 

専門家(公認心理師)の解説

 対人関係というのは様々な要素が総合して成り立っているもので、意識を変えれば何とかなるというほど簡単なものではありません。
 解決には、認知のみならず、経験・体験のケア、他者イメージ・自己イメージの修正、安心安全感の回復、過緊張や過剰適応など付随して生じている問題の解決に取り組んでいきます。トラウマケアも積極的に用いられます。
 社交的な性格の方もいれば、内気な性格や社交的ではない方もいます。それぞれの個性です。それ自体は問題ではありません。頑張って社交的になることが治ることではなく、解決の目標となるのは、安心して自分の個性、気質のままで他者と関れるようになることです。

 

 

対人恐怖症、社交不安障害を克服する原則

 対人恐怖症、社交不安を克服するためには安心安全感や自信(自己)の回復がポイントになります。アプローチの仕方として認知療法、暴露療法そしてトラウマケアなどがありますが、原則を知っていることは助けになります。

・不安に対処する大原則

 不安は除こうとすると追いかけてきます。ほどほどに付き合うことが大切です。オーストラリアの医師クレア・ウィークス博士は、不安に対処する原則を

・直面すること(Facing)
・受け容れること(Accepting)
・浮かんで通ること(Floating)※こだわらないということ
・時の経つのに任せること(Letting time pass)

と表現しています。

 

 逃げたり、立ち向かったり、こだわったり、急いだりすることを戒め、適切に直面し、受け入れ、時間に任せることが不安を解決するために大切であるとしています(出典:クレア・ウィークス「不安のメカニズム」(筑摩書房))。

 

 不安を感じるというのは動物にとっては生存のために必要なセンサーです。不安を感じることはおかしなことでも悪いことでもありません。不安を感じるべき時に不安を感じないのは火災警報器のない建物のようなものです。適切な不安と付き合うことはとても大切なことです。また、不安を感じることがおかしい、弱いという考え自体が誤った認知として恐怖症を招くことになるのです。

  

 

心理療法など

・認知の修正

 不安症、恐怖症は悪循環によって引き起こされます。ありのままに捉えることができれば、恒常性維持機能によって正常な状態に戻されていきます。  

 

 しかし、不安を回避してしまうと悪循環は強化されてしまいます。回避を生じさせるのは、認知のゆがみです。例えば、「自分は恥ずかしい人間だ」とか、「人は自分をバカにしている」と認識していれば、当然回避しようとしてしまうでしょう。

 これが誤った認知です。誤った認知を修正しなければ、悪循環を断ち切ることはできません。

 

誤った認知の例

・白黒思考(全か無か)
 ちょっとダメなら全てダメと思ってしまったり、ほどほどに捉えることができない。ある種の完璧主義です。

・過大評価、過小評価
 自分を過小評価しすぎたり、逆に相手を過大評価しすぎたりしてしまうことです。

・部分的焦点づけ
 ちょっとした相手の反応を過大に受け取ってしまう。

・「たまたま」と思えない
 一度の偶然の失敗やミスがあると、次回も必ず失敗すると感じてしまう。

・根拠のない決めつけ
 合理的な根拠なく、物事を決めつけてしまう。

・べき思考
 「~すべき」「~してはいけない」など、過度に義務的、規範的になり柔軟に対処できなくなることです。

・極端な一般化
 「~~な人は、すべて~~だ」といったように、ある事例の特徴を全てにあてはめてしまうことです。

・自分への過度な原因帰属
 仕事の失敗などを全て自分のせいだと過度に考えてしまうことです。

・否定的な予測
 悪い出来事が起こると否定的な考えをもってしまう。

 

 

  認知の修正を行うためには、主として認知行動療法などを用います。ある状況に対してどのように思うのか、を書き出します。それが合理的か、例外はないか、を確認し、より適切な考え方に修正していきます。

 認知の修正のコツは、無理にポジティブにしようとせず「~~な人もいるし、そうではない人もいる」「~~に越したことはない」「~することもできる」とほどほどにすることです。抵抗を少なくし、納得が生じやすくなります。

 カウンセラーによってサポートされる場合もありますし、自身で行うこともできます。最近は、良い本がたくさん出版されています。

 

・エクスポージャー(暴露)

 エクスポージャーとは人間の身体の恒常性維持機能を利用する方法です。恐怖を回避せずに、直面することで、徐々に恐怖に慣れ、脳のセンサーを適切な状態へと修正していくものです。不安な状況をリストアップし、最初は簡単なことから行っていきます。強い恐怖症の場合は急性期に行うと不安が増すこともあるため、回復期に差し掛かった際に段階的に行います。

 
・トラウマケアなど

  あるがままを目指す森田療法や、マインドフルネス、トラウマケア(ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ、ハコミセラピー、トラウマ解放エクササイズ、ブレインジム、TFT、フラワーエッセンス、FAP療法、など)。などがあります。

 →関連する記事はこちらをご覧ください。

 「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因と症状

 「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ

 

 
Point

 社交不安、対人恐怖症の背景には、愛着障害やトラウマの存在が考えられます。そのため、トラウマケアも大変有効な手段となります。

 

・その他

・有酸素運動(運動療法)

 運動療法とは、有酸素運動などを行い、脳や身体の機能を改善、回復させるものです。さまざまな精神障害の改善にも高い効果があることがわかっています。
 運動の効果として明らかになっているのは、まず脳内のニューロンの新生が活発になり認知機能が改善することです。ラットの実験では、ニューロンの新生は3、4倍になることがわかっています。次にシナプスの可塑性や伝達効率が上がるなど、脳内伝達物質の循環も活性化されます。また、運動を通じて自分の身体感覚が戻り、自律神経系、免疫系、内分泌系といった身体の機能が回復すると考えられています。
(例えば、うつ病の治療でも、統計上あらゆる療法の中で最も効果が高い方法は運動療法です。副作用もなく、再発もわずかとされます。) 

 有酸素運動といってもハードな運動は必要ありません。週に2、3日30分程度ウォーキングを行うだけで大丈夫です。日中外に出ることが難しい場合は、夜中に歩く、屋内でのヨガ、ピラティスなども効果的です。最近であればYoutubeなどの動画を見ながら簡単に自分でヨガを行うことができます。

 参考:ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版) など

 

 

薬物療法

 薬物療法は不安が強い場合に用いられます。不安症に限りませんが、解決するためには考え方やライフスタイルのパターンを変えることが大切です。薬物も不安をおさえるために用いるのではなく、パターンの変更をサポートするために用います。

 

・SSRI

 抗うつ剤として登場した薬です。神経伝達物質であるセロトニンが減少している場合に効果があります。※症状が、セロトニンの減少とは関係のない場合は当然ながら十分な効果が見られません。社交不安障害の薬としては、フルボキサミン(デプロメール/ルボックス)とエスシタロプラム(レクサプロ)が日本で保険適応されています。SSRIは比較的副作用が少ないとされています。

参考)「SSRI 日経メディカル」

 

・抗不安薬

 抗不安薬とは不安そのものを抑えることを目的として用いられる薬剤ですが、もっとも代表的なものはベンゾジアゼピン系抗不安薬です。これは神経伝達物質であるGABAの働きを強めることで神経の興奮をおさえるものです。このベンゾジアゼピン系抗不安薬はSSRIと違い依存性や耐性が生じるため、長期間の服用は避けることが必要とされます。様々なものが開発されていますが、アルプラゾラム(ソラナックス/コンスタン)、ブロマゼバム(レキソタン/セニラン)、ロフラゼプ酸(メイラックス)などがよく用いられています。

参考)「抗不安薬 日経メディカル」

 

・β遮断薬

 主として不安に伴う震えや心拍数の増加、発汗などの身体反応をおさえるためのものです。こうした身体の反応はノルアドレナリンが交感神経を刺激して生じますが、そのノルアドレナリンの受け手であるβ受容体をふさいでしまう薬です。脳内のβ受容体にも作用し、不安そのものも抑える効果があるとされます。従って動悸などの交感神経活動をともなった不安に非常に効果的ですが、日本では社会不安障害には保険適応がありません。

参考)「β遮断薬 日経メディカル」

 

 

 →対人恐怖症、社交不安の原因やチェックについては、下記をご覧ください。

 ▶「対人恐怖症、社交不安障害とは何か?原因とメカニズム

 ▶「対人恐怖症、社交不安障害のチェックと診断~3つの視点から

 

 

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(参考・出典)

笠原敏彦「対人恐怖と社会不安障害」(金剛出版)
貝谷久宣「社会不安障害のすべてがわかる本」(講談社)
水島広子「正しく知る不安障害」(技術評論社)
クレア・ウィークス「不安のメカニズム」(筑摩書房)
クリフトフ・アンドレ、パトリック・レジュロン「他人がこわい」(紀伊國屋書店)
大野裕「不安症を治す」(幻冬舎)

山田和夫「やさしくわかる社交不安障害」(ナツメ社)

「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院)

など