社交不安症(社交不安障害)は、人から注目されたり評価されたりする場面で強い不安や恐怖を感じ、その状況を避けたり、強い苦痛を感じながら耐えたりする状態です。日本では古くから「対人恐怖症」として論じられてきた症状とも大きく重なります。
本記事では、医師の監修のもと公認心理師が、診断基準、不安や恐れの種類、併存しやすい精神疾患という3つの視点から、社交不安症・対人恐怖症の特徴を解説します。
<作成日2016.2.14/最終更新日2026.10.18>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
・最新の診断基準(DSM)などでは偏見や誤解を防ぐために、病名が変更され、特にdisorder「障害」を「~症」と表記するようになっています。ただ、一般にはまだ馴染みがなく旧名称でお調べになられるケースが多いために、便宜的に従来の表記を残しています。
もくじ
・専門家(公認心理師)の解説
対人恐怖症、社交不安障害(社交不安症)の特徴とチェック
・視点1.対人恐怖症、社交不安障害の診断基準からチェックする
・視点2.不安(恐れ)の種類からチェックする
・視点3.併発しやすい精神障害からチェックする
→対人恐怖症、社交不安の原因や治し方については、下記をご覧ください。
▶「対人恐怖症、社交不安障害(社交不安症)とは何か?原因とメカニズム」
私たちの悩みのほとんどが対人関係のものです。そのため、対人恐怖症、社交不安障害はあらゆる悩みの底に内在しているとも言えます。そのため、他の悩みと併発していたりすることがあります。また、単なる性格傾向との区別も必要になります。対人恐怖症や社交不安症は、「人前で緊張する」といった一つの特徴だけで判断できるものではありません。社交場面でどのような不安や恐怖を感じるか、そのためにどの程度行動を避けているか、仕事・学校・人間関係などにどの程度支障が出ているかを総合的に見ていく必要があります。
以下では、正式な診断基準に加えて、日本で古くから記述されてきたさまざまな対人恐怖の現れ方や、併存しやすい精神疾患という複数の視点から解説します。本記事のチェックは自己診断を目的とするものではなく、自己理解や専門家へ相談する際の参考としてご覧ください。
対人恐怖症、社交不安障害の特徴とチェック
社交不安症では、人から見られる、話す、食事をする、人前で何かをするといった社交場面で強い不安を感じ、避けたり、強い苦痛を感じながら耐えたりします。こうした状態が持続し、仕事・学業・人間関係などに支障が出ているかどうかが重要なポイントです。
視点1.社交不安症(社交不安障害)の診断基準からチェックする
下記のような特徴にあてはまる場合、対人恐怖症や社交不安障害(社交不安症)と考えられます。支障が出ているとまでは言えない場合は、「あがり症」「内気」という単なる性格傾向となります。
1.他者から注目されたり評価されたりする可能性のある1つ以上の社交場面(会話、知らない人に会う、人前で飲食する、人前で発表するなど)に対して、著しい恐怖または不安がある。
2.不安そうに見える、恥をかく、拒絶される、相手を不快にさせるなど、他者から否定的に評価されることを恐れている。
3.その社交状況では常に、恐怖または不安を感じる
4.その社交状況は回避しようとしたり、強い恐怖や不安を感じながら耐え忍ばれる
5.その恐怖や不安は、社交状況の現実の危険と比べて不釣り合いである
6.その恐怖や不安、回避は持続的で、6ヶ月以上続いている
7.仕事など、社会的な活動に支障がある
8.薬物や身体疾患の影響ではなく、またパニック症、醜形恐怖症、自閉スペクトラム症など他の精神疾患だけでは、より適切に説明できない。
出典:米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院) をもとに作成
・何項目当てはまれば社交不安症?
社交不安症は、「8項目のうち○個以上なら診断」というチェックリスト式の病気ではありません。恐怖や不安が6か月以上続いていること、実際の危険に比べて不釣り合いであること、回避や苦痛によって生活に支障が生じていることなどを総合して診断します。また、似た症状はパニック症、うつ病、発達症などでもみられるため、正式な診断は医師が行います。
視点2.不安(恐れ)の種類からチェックする
以下は、日本の対人恐怖研究で記述されてきたさまざまな恐怖の現れ方です。一つ当てはまるだけで社交不安症と診断されるわけではありませんが、こうした恐怖が持続し、回避や生活上の支障につながっている場合には、社交不安症や対人恐怖の問題が関係している可能性があります。(出典:笠原敏彦「対人恐怖と社会不安障害」(金剛出版))
※以下はそれぞれ独立した正式な診断名ではなく、対人恐怖が現れる場面や内容を整理した臨床的な呼称です。
<状況、場面による分類>
・大衆の前に出る状況を恐れる[大衆恐怖]
・目上の人と同席する状況を恐れる[長上恐怖]
・異性と同席する状況を恐れる[異性恐怖]
・他者と交際する状況を恐れる[交際恐怖]
・人前で発言する状況を恐れる[演説恐怖 スピーチ恐怖]
・会議の席で話をする状況を恐れる[会議恐怖]
・人前で朗読する状況を恐れる[朗読恐怖]
・他者と会話する状況を恐れる[談話恐怖]
・他者と電話する状況を恐れる[電話恐怖]
・人前で食事をする状況を恐れる[会食恐怖]
・他者から注視される状況を恐れる[視線恐怖]
・他者と視線を合わせる状況を恐れる[正視恐怖]
・自分が皆をしらけさせる状況を恐れる[思惑恐怖]
<反応による分類>
・人前で顔が赤くなることを恐る[赤面恐怖]
・人前で変な表情になることを恐れる[表情恐怖]
・人前でどもることを恐れる[吃音恐怖]
・人前で手や声が震えることを恐れる[ふるえ恐怖 振戦恐怖 書痙]
・人前で発汗することを恐れる[発汗恐怖]
・人前で身体が硬直することを恐れる[硬直恐怖]
・人前で嘔吐する状況を恐れる[嘔吐恐怖]
・人前で意識を失って倒れることを恐れる[卒倒恐怖]
・人前で頻回に尿意が生じることを恐れる[頻尿恐怖]
・人前で頻回に便意が生じることを恐れる[頻便恐怖]
・公衆便所で排尿できないことを恐れる[尿閉恐怖 排尿恐怖]
・人前でお腹がなることを恐れる[腹鳴恐怖]
視点3.併発しやすい精神障害からチェックする
社交不安症では、うつ病、他の不安症、アルコール・薬物の問題などが併存することがあります。社交不安が長く続いた後に抑うつが生じたり、不安を和らげるためにアルコールを使うようになったりするケースもあります。
そのため、以下のような症状がある場合には、社交不安症だけでなく、併存する精神疾患についても確認することが大切です。
・うつ病
⇒「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」
・パニック障害
⇒「パニック症(パニック障害)とは何か?その症状を詳しく解説」
・全般性不安障害
・アルコール依存症
・強迫性障害
・回避性パーソナリティ症
対人関係での強い不安や回避が共通しますが、より広範で長期的な自己評価や対人関係のパターンとしてみられます。
⇒「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」
・ASDなどの発達特性
対人場面を避ける点では似て見えることがありますが、その背景にある社会的コミュニケーションの特性や発達歴を含めて評価します。両者が併存することもあります。
⇒「大人の発達障害、ASD(アスペルガー症候群)とは何か?公認心理師が詳しく解説」
上記の視点以外に、実際の臨床では、診断基準だけでなく、生育歴、発症のきっかけ、回避の程度、対人関係なども確認します。
愛着の不安定さ、とくに愛着不安や、幼少期の虐待・ネグレクト、いじめなどの逆境体験・対人トラウマは、社交不安と関連する重要な背景であることが多くの研究で示されています。
当センターでは、こうした背景が現在の「人からどう見られるか」という不安や、過緊張、回避、自己評価の低下などとどのようにつながっているかを重視して見立てます。うつ病やパニック症などが併存している場合には、それらも含めて全体として支援方法を考えます。
→対人恐怖症、社交不安の原因や治し方については、下記をご覧ください。
▶「対人恐怖症、社交不安障害(社交不安症)とは何か?原因とメカニズム」
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(参考・出典)
笠原敏彦「対人恐怖と社会不安障害」(金剛出版)
貝谷久宣「社会不安障害のすべてがわかる本」(講談社)
水島広子「正しく知る不安障害」(技術評論社)
クレア・ウィークス「不安のメカニズム」(筑摩書房)
クリフトフ・アンドレ、パトリック・レジュロン「他人がこわい」(紀伊國屋書店)
大野裕「不安症を治す」(幻冬舎)
など
















