悩みの原因や解決方法

悩みがなかなか治らない、長引く要因と対応~難治性、遷延性について(下)

[悩みの原因や解決方法「うつ・気分障害」の原因と治し方]


 
 前回につづき、悩みがなかなか良くならないときの要因と対応の助けとなるポイント(視点)についてまとめてみました。よろしければご覧ください。

 

 

<作成日2019.9.25>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

具体的にどのようにすれば良いのか?

 

 

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具体的にどのようにすれば良いのか?

・医師やカウンセラーと協力して取り組む

 当事者も治療者と一緒に未知の問題に探索しながら協力して取り組んでいるということを理解することが大切です。間違っても、うまくいかないことで相手や周囲、そして自分を責めないようにしましょう。いくつも仮説を立てながら解決に迫っていく必要がある、ということを知ることが大事です。

 

(参考)治療者も一緒に悩むことも共感につながる

 名医で知られる神田橋條治氏も、著書の中で、なかなか良くならないうつの患者に対してなんとかしようと志向して自殺に至ったことがあると述べています。現在では、良くならない場合は共に悩む二人となり、「困ったなあ」という。それが治療同盟(信頼)を強くし、「良くならない状態をわかってもらえている」という共感につながると考えられています。

 


・家系や生育歴などを見直す

 当事者も自分の生育歴、家系、現在の生活習慣やストレスの要因をご自身でもなどを振り返ってみることです。初回の面談ではすべてを思い出すことは難しい場合があります。あとから思い出したり日常生活を送る中で気づいたことを都度伝えて共有することも大切です。

 


・生活習慣を見直す

 診察やカウンセリングの時間は生活全体からは見ればほんのわずかなものです。生活の習慣を見直すことが大切です。睡眠時間、食事、運動、感じているストレスなど見直しましょう。


 例えば、睡眠時間は入眠のタイミングと時間が大切です。入眠はできれば、成長ホルモンが分泌される22時~2時の間に早めに床に付ければよいです。可能であれば自然と目が覚める時間までしっかりと睡眠をとれればよいです。


 食事についても3食偏りなくしっかりととること、カフェインやアルコールを採りすぎないことです。腸に負担がかかるグルテン(小麦粉)、カゼイン(乳製品)などは可能であれば控えることができるとよいです。コーヒーやチョコレートなども禁忌です。服薬している場合はアルコールは控えなければなりません。
 また、散歩で結構ですから、できれば毎日運動を行いましょう。気持ちが乗らない時でも外出することは大切です。

 

 

・症状を理解する

 自分が診断されている症状や取り組みについて自分自身も理解していることはとても大切です。理解があるいなかで例えば薬の効果も変わるとの調査結果もあります。読みやすい本で結構ですので何冊か目を通してみることも良いでしょう。


 また、どういった症状が起きるのか、どういった変化が起きるのか?についても理解しておくと、誤解なく治療者ともコミュニケーションを取ることができます。

 


・気づき、変化を理解する

 変化がどのようにもたらされるのかについて理解することも大切です。変化とはとても微細なものであったり、当たり前のこととして感じられていたりします。変化を感じ取れるほど改善も進みます。逆に、大きな変化しか変化ではないとしたり、完璧主義的になってしまっていると、かえって症状が悪くなる原因ともなります。

 

・イライラ、怒り、不安、疑りに巻き込まれない

 なかなか良くならないとき、家族や知人や医師などの専門家へのイライラ、怒り、不安を抱いてぬぐえなくなることがあります。例えば、医師やカウンセラーがちょっと目をそらしたり、いつもと同じ行動をしなかった(診察に遅れてきた。時間が短かった、長かった)、少し元気がないといっただけで自分を嫌っている、バカにしているという疑う気持ちを感じてしまうこともあります。

 

 これらは、実は悩みが生み出す症状(境界性パーソナリティ状態)であり、本来の自分の感情ではありません。そのため、少なくとも知識のレベルでは本来の自分のものではないと知り、巻き込まれないようにすることが大切です。巻き込まれてしまうと、本来サポートしてくれるはずの人との関係を悪くして、さらに問題を長引かせてしまう、ということが起こりますので注意しましょう。

 

 

・環境を見直す

 現在の環境が安心安全なものであるかどうかはとても重要です。暴言やネガティブな発言をするような関係者が周囲にいないか。治療についてあまり協力的ではない、といったことはないか。仕事や生活のストレスが過度なものになっていないか。自分が我慢していないか、など点検してみましょう。そのうえで関係者にも理解を促したり、もし必要があれば環境を変えることも検討しましょう。

 


・所要時間を捉えなおす

 実は必要な時間の捉え方が現実とあっていない可能性もあります。平均〇年というデータがあっても、あなたは違うかもしれませんし、だから悪いというわけではありません。平均とは真ん中のことで、半数の方はそれ以上かかるものです。当事者が過度に焦りすぎていることもあります。頭の中で時間のメモリをリセットしてみることが必要です。

 

 

・腰を据えて取り組む

 よくあるのが、一度だけカウンセリングや治療を受けて、その結果のみで効果を判断してしまうということです。薬物療法や心理療法でも、効果が出るのは3カ月から半年かかります。腰を据えて取り組む必要があります。次々と渡り歩くことで本格的な変化を逃してしまっていないかもあらためて見直してみましょう。
 



・解決行動をやめてみる~違うことをしてみる、底をつく

 ブリーフセラピーでは、円環的因果論と言いますが、解決行動が問題を生み出し続ける、という悪循環が指摘されます。
 「do something different」といい、うまくいっていないなら違うことをしてみることも大切です。
 「違うこと」とは、やみくもに異なる医師やセラピーを受けろ、ということではありません。ここでいう違うこととは習慣や行動パターンを変えてみる、ということです。


 特に、周囲や自分自身が自らを“問題児”扱い、“病気”扱いしていないかについてもチェックしてみることです。
 もしそうなら、周囲はその意識を変えてみる必要があります。また、当事者であれば、働きかけたり、環境を変えることです。

 

 さらに、依存症の当事者や家族は、むやみな関与や解決行動をやめることが大切です。「底をつく」といいますが、いったん底をついてみることで、本当の意味で「自分は大丈夫だ」「自分にはいろいろなつながりがある。孤独ではない。」と感じることができます。

 


・周りに合わせすぎず、“自分らしく”生きる

 同じ日本人同士でも人はそれぞれ異なります。あたかも異文化のようです。ある種の人たちはとても繊細だし、とても傷つきやすいものです。特に才能のある人はそうです。普通の人たちとはある意味感性が異なるのに、無理に合わせようと治そう治そうとすること自体が悩みを続けさせることにもなります。例えば双極性障害の方は適度に気分屋として生きると安定するとされます。


 自分の才能や感性に合う人だけを求めてつながり、それ以外の人は敬意を払ってそのままにしておく。無理をしない。無理に合わせようとしなくてもいいのです。普通の人のようになろうと自分を“治そう”とする行為を止めてみることです。治すものなどはもともとないということはしばしばあります。

 

 

・今ここを楽しむ

 「解決しなければ安寧はない」「悩みが解決した後でなければ人生は楽しめない。自分らしく生きられない」というような考えにとらわれていることも解決を遅らせる要因になります。その思いが悩みへの執着を逆に高めて大きくしてしまいます。


 人生において不調や悩みがなくなることのほうが少なく、悩みを起点に考えることは不自由なことです。今を否定して、未来を理想化したり、過去を懐かしむことは大変もったいないことです。なぜなら、現実に存在する人生とは紙芝居のように“今ここ”の連続体だからです。解決途上の“今ここ”でも人生を楽しむことが大切です。望む解決とは未来の先にあるのではなく、逆説的に“今ここ”にあるものです。

 


・人生の方向を見直してみる

 うつ病治療の専門家である野村総一郎教授はユウウツという感情について「新たな生き方を導き」「争いを避け」「周囲の援助を引き起こす」ために進化した感情としています。


 「ユウウツが本当に消えるのは、その人が長く追求してきた目的を完全にあきらめ、自分のエネルギーを別の方向に向けるようになった時である」という海外の研究者の言葉を引用しながら、新たな生き方を導く生物学的なメッセージではないか、としています。


 つまり、表面的には症状と見られているものも、人生の中で重要な意味があることがあります。悩みを治そう治そうとしてうまくいかない場合、人生の方向を見直してみることは有効であるかもしれません。
 

 

・薬について相談する

 長期間、抗うつ剤や抗不安薬などを服用している場合に、なかなか良くならない状態である時、本当に必要なのか?を医師とともに吟味することも有効かもしれません。特に抗不安薬は通常は期間を区切り、長期の服用は避けるべきとされていますが、漫然と処方されているケースもあります。薬が不安定な状態を作り出していることもあります。不安があればセカンドオピニオンを求めることもできます。

 

 

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(参考)

「こころの科学 (2014年11月号) 178号 治療のゆきづまり」(日本評論社)
青木省三、村上伸治「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)

神田橋條治「神田橋條治医学部講義」(創元社)

神庭重信、黒木俊秀「現代うつ病の臨床」(創元社)
樋口 輝彦「難治性うつ病の臨床 -感情障害全般の治療から難治性への対処まで-(新精神科選書 3)」(診療新社)
野村 総一郎/編著「エビデンスに基づく難治性うつ病の治療」(新興医学出版社)
松下 正明/総編集「専門医のための精神科臨床リュミエール 15 難治性精神障害へのストラテジー」(中山書店)

など

 

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