恋愛依存症の治し方~6つのポイント

恋愛依存症の治し方~6つのポイント

依存症

 ここ数十年で注目され始めた「恋愛依存症」。近年、依存症、精神障害として治療の対象とされるようになってきました。今回は、 医師の監修のもと公認心理師が、「恋愛依存症」の治し方についてまとめてみました。

 

 

<作成日2017.4.14/最終更新日2024.2.7>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

   

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

専門家(公認心理師)の解説

●恋愛依存症を解決するために必要な6つのこと

1.自分の状況を知る
2.問題は、恋愛ではなく「依存」「自己愛」の問題である
3.健全な関係とは何かを学ぶ。~愛ではなく信頼を求める

4.多くの人やモノとの関係を築く。大切にする
5.表面的な衝動(偽の欲求)ではなく、本心に意識を向ける
6.自己愛を癒す、トラウマを解消する

 

 →依存症全体、恋愛依存症とは何か?と、恋愛依存の診断については、下記をご覧ください。

 ▶「依存症の治し方~6つのポイントと療法

 ▶「依存症になりやすい人とはどんな人か?その原因と背景

 ▶「恋愛依存症とは何か?その原因と特徴

 ▶「恋愛依存症診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による

 

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 人は不全感を癒やすために、自ら自己治療を行うことがあります。それが「依存症」というものです。アルコールや薬物がよく知られていますが、同じくらいかそれ以上に刺激的で、燃えるように不全感を癒やしてくれるものが恋愛です。恋愛依存に関するご相談もものすごく多いです。恋愛依存が厄介なのは、恋愛自体が社会でも普通に行われる好意であるために、おかしさに気が付かないことがあるということです。しかし、普通の恋愛と恋愛依存の違いは明確に存在します。それは、自分の存在の欠損を相手との関係で埋めようとしているか、否か?ということです。普通の恋愛とは、ある程度自分も満たされた中で、互いに愛情を交換し合うということです。さらにもう一つの違いは何かというと、普通の恋愛は「信頼」を基礎に置いているということです。恋愛依存は「恋愛そのもの」に足場を置いているために非常に不安定です。本記事を通じて、ぜひ、恋愛依存とはなにか?について参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

 

恋愛依存症を解決するために必要な6つのこと

1.自分の状況を知る

 まず大切なのは、自分がどのような状態にあるのかを知ることです。「恋愛依存」という状態にあることを知れば、解決に取り組むことができます。

しかし、自分が依存であることを認めることが難しいことも少なくありません。その場合は、自分がどんな恋愛のパターンに陥っているのか?いつもどんな相手に惹かれる傾向にあるのか、を知ることで少しずつ認識が変化していきます。まず、下記のリンクから、恋愛依存症の知識や診断を行ってみてください。
 

 

 →恋愛依存症とは何か?と、恋愛依存の診断については、下記をご覧ください。

 ▶恋愛依存症とは何か?その原因と特徴

 ▶恋愛依存症診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による

 

 

2.問題は、恋愛ではなく「依存」「自己愛」の問題である

 “恋愛”依存ということで、恋愛のカウンセラーや相談所、友人に相談したくなるかも知れません。しかし、問題は「恋愛」ではなく「依存」そして、その背景にある「自己愛(の傷つき)」にあります。また、過去の家族との関係、満たされなかった愛情にあります。

 ギャンブル依存の人がギャンブルの専門家ではなく「依存」の専門家に相談するように、恋愛依存は相談する相手も、恋愛の専門家ではなく「依存」や「自己愛(愛着障害、トラウマ、家族問題)」の専門家です。

 よろしければ、依存症とはどのようなものか?下記の記事を参考にしてください。

 

 →依存症(嗜癖)とは何か?をお知りになりたい方は下記をご覧ください。

 ▶「依存症になりやすい人とはどんな人か?その原因と背景

 

 

 
 
Point

 恋愛依存は「依存症」という問題ですので、恋愛相談をしても問題は解決しません。必ず、依存症の経験のあるカウンセラーなどに相談しましょう。

 

3.健全な関係とは何かを学ぶ~「恋」「愛」ではなく「信頼」を求める

 「恋愛は誰でも行う正常な行為であり、今の自分の状態も過剰ではあるが異常ではない」と考えてしまうかもしれません。また、いつも自動的に依存に陥ってしまうために、健全な関係とはどういったものかがわからないケースも少なくありません。

 簡単に言えば、私たちが求める健全な関係とは、燃えるような「恋」や「愛」ではなく、穏やかな「信頼」です。燃えるような「恋」や「愛」は脳内ホルモンの性質からも比較的短期間に脱感作が起こって終息し、必ず破たんしてしまう運命にあります。一方、「信頼」は穏やかにずっと続き、しかも互いの行動の積み重ねで成熟していきます。もし、「永遠の愛」というものがあるとしたら、それは穏やかな「信頼」にこそあります。

 恋愛を基準に人間関係を捉えるのではなく、「信頼」を基準に捉えていくことが大切です。それが健全な関係の基盤となります。
 さらに、相手と自分とは違う価値観で違う人間であることを前提にして相手を理解、尊重することも大切です。同じように考え感じることを求めない。自分と同じ価値観を強要して破たんするカップル、夫婦はたくさんいます。

 健全な関係とは適度な距離感と、相手のことはすべては理解できないという正しいわきまえの上に、相手の価値観の尊重、敬意、信頼を重ねていくことで成立するものです。

 

 

 →恋愛依存症と普通の恋愛との違いについては、下記をご覧ください。

 ▶恋愛依存症診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による

 

 

4.多くの人やモノとの関係を築く

 健全な関係とは、「多くのものに」緩やかに依存している状態です。反対に、依存症とは、「ごく限られたものに」依存してしまうこと、せざるを得ないことを言います。そのため依存からの回復とは、何にも依存しないことを目指すことではなく、多くのものに依存できる環境づくりになります。

 少しずつで構いませんから、多くの人やモノと関係を築くことを意識することです。そしてたくさんの人に頼ることです。関わりと言っても、ごく挨拶程度や、すれ違う程度でも構いません。20~30分ウォーキングをしながら、人とすれ違ったりしてみると良いです。

 
 
Point

 心の悩みなどに対する有酸素運動がもたらす改善の効果は、かなり固いエビデンスで確認されています。有酸素運動とは、ウォーキングや簡単なスポーツ、ヨガ、ピラティスなどです。週2,3回20~30分少し速歩き程度に散歩をするだけでも改善が見込めます。

 参考:ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版) など

 

 

5.表面的な衝動(偽の欲求)ではなく、本心に意識を向ける

 既に書きましたが、恋愛依存症の方は、本当に恋愛が好きというわけでも、対象となる人が好きなわけでもありません。本音では好きではないことを知っていたりします。しかし、どうしようもない衝動に突き動かされて、好きだと思わされている状態です。私たちは、錯覚された欲望に動かされることはあります。本当は食べたくないはずのものを夜中に食べて後悔したり、ということは誰にでもある経験です。自分の本心はそこにはないことを知り、表面的な衝動は偽物であることを理解することです。何度も失敗をして傷つきますが、それだけでも依存症から抜け出すきっかけになります。

 

 

 

6.自己愛の傷つきを癒す、トラウマを解消する

 依存症の原因は過去に傷ついた自己愛、愛着やトラウマに起因します。 

 心理学者ジョン・グレイも「私たちが異性関係の中で経験するさまざまな説明のつかない精神的混乱は、その原因の90パーセントは実を言えば自分の過去に原因がある」としています。不適切な養育環境。例えば支配的な親や、あまり構ってくれない親。夫婦げんかが絶えない状況であった、といったことはわかりやすいのですが、それほどの状況とは思えなくてもトラウマとなり依存症を引き起こすことは珍しくありません(専門的には「発達性トラウマ」などと呼ばれます)。

 どのようなアプローチをするにしても、自己愛、トラウマの問題を解決することは必須です。
 ただ、親との関係を見直して、良くしよう、解決しようとする必要はありません。なぜなら、他人を変えることはなかなか容易ではないからです。ひょっとしたら変わらないかもしれません。そのような難しい取り組みをする必要はありません。

 大切なのはあなたの中にあるトラウマを癒すことです。トラウマを解決するためには、専門のトラウマケアを受けることをおすすめします。

 

 
Point

 恋愛依存も含め、依存症の背景には必ず愛着不安やトラウマが存在しています。依存傾向がある方は、ぜひ、トラウマや愛着障害などについて学んでください。

 ⇒関連する記事はこちらトラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因と症状」「「愛着障害」とは何か?その特徴と症状

 

 

 

 →依存症全体、恋愛依存症とは何か?と、恋愛依存の診断については、下記をご覧ください。

 ▶「依存症の治し方~6つのポイントと療法

 ▶「依存症になりやすい人とはどんな人か?その原因と背景

 ▶「恋愛依存症とは何か?その原因と特徴

 ▶「恋愛依存症診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による

 

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(参考)

ハワード・M.ハルパーン「ラブ・アディクションと回復のレッスン 心の中の「愛への依存」を癒す」(学陽書房) 
ピア・メロディ「恋愛依存症の心理分析 なぜ、つらい恋にのめり込むのか」(大和書房)
ヘレン・E・フィッシャー「愛はなぜ終わるのか 結婚・不倫・離婚の自然史」(草思社) 
ラリー・ヤング「性と愛の脳科学 新たな愛の物語」(中央公論新社)
斎藤 学「アダルト・チルドレンと家族 心のなかの子どもを癒す」(学陽書房)
小谷野 敦「日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで」 (中公新書)
小谷野 敦「恋愛の超克」(角川書店)
エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」(星和書店)
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)

など