医師の監修のもと公認心理師が、依存症の治し方のポイントについてまとめてみました。
<作成日2019.9.25/最終更新日2026.9.19>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
依存症の克服に必要な6つのポイント
1.自分だけで何とかしようとせず、早めに支援につながる
2.「治る」よりも「回復」という視点を持つ
3.一人で抱え込まず支援につながる
4.家族も支援を受け、関わり方を見直す
5.依存の背景にあるストレスや心理的な問題にも目を向ける
6.行動習慣の形成と維持
依存症の克服、治療のための具体的な手段
・薬物療法
・精神療法
・自助グループ
→依存症とは何か?やその他の依存症については、下記をご覧ください。
▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント」
依存症は、性格や意思の強弱は基本的に関係はありません(むしろ、まじめで意志が強いからこそ依存症になるというようなこともいえるのです)。依存症は、本人の性格や意思の弱さで生じるものではありません。依存症では、強いストレスや孤立、生きづらさ、愛着不安やトラウマなどが、その背景に深く関わっています。当センターでは、とくに、依存行動によって何を和らげようとしているのか、安心できる居場所や人とのつながりが失われていないかを重視しています。依存行動だけではなく、その背景にある問題にも目を向けることが回復につながると考えています。また、家庭の機能不全、環境が問題ということもとても多いです。背景にあるそうした問題を解決することが必要になります。
依存症の克服に必要な6つのポイント
依存症からの回復では、「意志の力だけで何とかしようとしないこと」が重要です。依存対象や重症度に応じた治療を受け、自助グループや家族・周囲の支援も利用しながら、依存行動につながる習慣や生活環境を整えていきます。また、強いストレスや孤立、トラウマなどが依存行動の背景にあるときは、依存行動そのものへの対処とあわせて、それらの背景にも取り組むことが回復に重要です。依存症は、適切な支援によって回復可能な病気です。
1.自分だけで何とかしようとせず、早めに支援につながる
依存症の背景にはさまざまな要因があります。当センターでは、人に頼ることが苦手で、苦痛を自分だけで何とかしようとする「過剰な自己コントロール」を依存行動の背景を理解する重要な視点としています。自分の苦痛をなんとかしようとしてもがいている状態です。家族の支援そのものが問題なのではありません。ただし、借金を繰り返し肩代わりするなど、結果的に依存行動を続けやすくする関わりは「イネーブリング」と呼ばれ、見直す必要があります。
自分一人のコントロールには限界があると気づく転機を、依存症支援では「底つき」と表現してきたことがあります。ただし、深刻な状態になるまで待つ必要はありません。
「自分は依存症ではない」「自分でなんとかできるから」というのは依存症患者の口癖ですが、自己コントロールはことごとく失敗に終わってしまいます。依存症の回復では、自分一人の力だけでコントロールし続けることには限界があると認め、支援につながることが重要です。こうした転機を「底つき」と表現することがあります。ただし、深刻な状態になるまで「底を打つ」必要があるという意味ではありません。現在では、できるだけ早い段階から適切な治療や支援につなげることが重要だとされます。
自助グループで有名なAAの12ステップの中でも
・私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
・自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
・私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
とありますが、これは、自分で何とかすることをやめる「底つき」を表現しています。
・重篤な状態にならないような最低限のケアは必要
依存症の方のお世話をすることはイネ―ブリングになりますが、「底つき」を求めて重篤な状態に陥っても放置することは不適切です。生命や健康、安全に関わる状態を放置してはいけません。一方、家族がすべてを引き受けるのではなく、専門機関と相談しながら、本人の安全を守る支援と、依存行動を助長しない関わりを分けて考えることが重要です。
また、ケースによっては、必ずしも底つき体験を求めずに、関わり方を工夫することで治療につなげたりということもあるようです。下記にもありますが、クラフト「CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)」といったメソッドについての書籍やセミナーなどを参考にしてみましょう。
2.「治る」よりも「回復」という視点を持つ
依存症の支援では、「完治したからもう何をしても大丈夫」と考えるより、依存行動をコントロールしながら生活を立て直していく「回復」という考え方が重視されます。アルコールや薬物などでは断酒・断薬が重要となることが多い一方、治療目標は依存対象や重症度、本人の状態によって異なります。再び依存行動が起きた場合も、それを「すべて失敗」と考えるのではなく、治療や支援を見直して回復を続けることが大切です。
3.一人で抱え込まず支援につながる
自助グループやピアサポートは、依存症からの回復を支える有力な選択肢の一つです。依存症とは、一人で頑張って苦痛をコントロールするために依存に陥っています。自助グループでの関わりを通じて、自分を客観視し、多くの人に適切に依存していくことでアルコールや行為への依存から回復していきます。
4.家族も支援を受け、関わり方を見直す
依存症は本人だけでなく家族にも大きな影響を及ぼすため、支援の現場では「家族を巻き込む問題」として捉えることがあります。患者本人を悪者にして、医者や自助グループに任せておけばOKということにはなりません。依存症によって家族の役割が崩れてしまっていたり、共依存、イネーブリングが生まれています。そうした家族の状態も回復しなければなりません。
そのためには家族も自助グループへの参加、専門家や書籍から正しい知識を得るなどして、精神の安定を取り戻し、依存症への関わり方を変えていく必要があります。
家族があれこれ手を回して依存症の患者の世話をしていたことをやめた途端に依存症が回復に向かう、ということも珍しくありません。
また、依存症の当人が自助グループなどに参加したがらない場合も、家族が通い続けることで変化していくケースもあります。
・あなたは大丈夫というメッセージを伝える~「CRAFT」なども参考にする。
依存症については「病気である」という自覚を持たせることは大事です。一方で、当センターでは、依存行動を、見捨てられ不安や孤立感、自己評価の傷つき、強いストレスなどを一時的に和らげる「自己治療」として理解する視点を重視しています。「おまえは病気だ」と家族が言いつのっては、余計に居場所がなくなってしまいます。そのため、症状と人格を分けることが大切です。
つまり、「今の症状は個人の嗜好ではなく、病気だ」ということを言う一方で、「症状は病気だけど、あなた(の人格)は本当は大丈夫」「本当は、あなたはちゃんと今の状態がおかしいということがわかっているのでしょ?」というメッセージを言葉や言外に伝えることが大切です。
本人が問題を否定しているように見えても、迷いや不安を抱えていることがあります。そのため、責めたり論破したりするより、本人の迷いを尊重しながら治療への動機を高めていく関わりが重要です。
近年は、クラフト「CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)」という依存症患者について家族の適切な関わり方のメソッドが日本にも紹介されるようになりました。海外では約7割ケースで治療につながるなど成果が出ているそうです。書籍が出版されていたり、セミナーが開催されたりもしています。ぜひ参考になさってください。
吉田精次「アルコール・薬物・ギャンブルで悩む家族のための7つの対処法―CRAFT(クラフト) 」(アスクヒューマンケア)
5.依存の背景にあるストレスや心理的な問題にも目を向ける
依存行動は、つらい感情や強いストレスを一時的に和らげる手段として機能します。とくに、見捨てられ不安や愛着の問題、トラウマ、強いストレスなどが背景にあると、物質や行為によって苦痛を調整しようとすることがあります。そのため、依存行動そのものへの対処だけでなく、その背景にある苦痛やトラウマ、愛着の問題に取り組むことが回復に重要です。
6.行動習慣の形成と維持
依存症は頭のなかだけで起きているわけではなく、行動習慣が伴っています。そのため、認知を変えるだけではなく、新しい行動習慣も形成していく必要があります。習慣形成には、状況-行動-結果が正の方向につながり、強化されることが求めらます。
強化のために大切なのは、スモールステップで自発性やペースを尊重し、行動したら即座に周囲からのフィードバックを受けることが大切です。例えば、お酒を買う代わりにお菓子を買う、そうした行動をサポートする人間が称賛する、あるいは小さな報酬を与える、といったものです。
依存症では、目の前の強い報酬や依存行動につながる刺激に反応しやすくなり、長期的な利益より即時的な報酬を優先しやすくなることがあります。
依存症の克服、治療のための具体的な手段
<薬物療法>
依存症に対する薬物療法は、依存症の種類によって異なります。すべての依存症に共通して有効な薬があるわけではありませんが、アルコール依存症やニコチン依存症などでは、依存行動や離脱症状、再発などへの対応を目的として薬物療法が用いられることがあります。
薬物療法だけで治療するのではなく、心理療法や生活上の支援などと組み合わせて行われることが一般的です。
・アルコール依存症
抗酒薬が知られています。アセトアルデヒドの分解を阻害して、飲酒すると不快な身体反応が起こることで、断酒を支援する薬です。体質的にお酒が飲めない状態を作りだして飲酒の量を抑制していきます。薬物療法の有効性や使用する薬剤は依存症の種類によって大きく異なります。
・ニコチン依存症
禁煙補助薬、ニコチンガムやニコパッチなどが知られています。タバコが吸いたくなったら、禁煙補助薬を使用すると、ニコチン受容体に作用して、ニコチン摂取の願望をおさえるものです。
・その他の依存症
渇望抑制薬については開発が進んでいるとされます。
(ドーパミンとノルアドレナリンをおさえるブプロピオンや、クロニジンなど)
<精神療法>
・認知行動療法
認知行動療法とは、アーロン・ベックらによって開発された手法で、さまざまな精神障害の治療に用いられています。保険も適用され、医学的根拠もある現代の精神療法の中心的な手法です。認知行動療法では、依存行動が起きやすい状況や考え方、感情、行動のパターンを整理し、欲求への対処、リスク場面への対応、再発予防などを身につけていきます。
例えば、ギャンブル依存であれば「次で取り返せる」→「勝つことも負けることもあるから、今日はこれでやめよう」といったようにリスクの捉え方を修正していくようなことをしていきます。
個人で行うだけでは難しいため、カウンセラーや同じ悩みを持つ者同士のグループで行うことがあります。
・マインドフルネス
東洋の瞑想法を源流としており、アメリカで現代的な方法としてまとめられ、日本にも逆輸入されてきています。大企業でもパフォーマンスを上げる方法として取り入れられたり、うつ病治療などでも効果があるとされています。近年、エビデンスが上がってきている方法です。
マインドフルネスでは、欲求が生じてもすぐに行動に移さず、身体感覚や思考、感情として観察する練習を行います。欲求は変化するものであり、それに必ず従う必要はないことを体験的に学んでいきます。
→参考となる記事はこちらをご覧ください。
▶「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ」
・トラウマケア
トラウマや強いストレスが依存行動の背景にあるときは、依存行動への治療とあわせて、そのトラウマやストレスにも取り組むことが重要です。カウンセリングや心理療法では、本人の状態や安全性を確認しながら、トラウマへの心理的支援を進めていきます。
→参考となる記事はこちらをご覧ください。
▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
・その他
解決に向けての動機を高める自己面接法やメンタルコントラスティング法、コーピングスキルトレーニング など
<自助グループ>
依存症からの回復では、自助グループが大きな支えになることがあります。
・自助グループの歴史
さまざまな依存症の自助グループのひな形となっているのは、アルコール依存症の自助グループ、AA(アルクホリック・アノニマス)です。1935年にアメリカで、アルコール依存症にかかったビル・ウィルソンとボブ・スミスによって立ち上げられたものです。
180カ国以上の国や地域で10万以上のグループが存在するとされます。日本でも、600以上のグループがあり、約5000~6000人のメンバーが利用しているとされます。原則的に入会手続きや会費もなく、匿名(アノニマス)で参加することができます。
・さまざまな自助グループ
AAをひな形として、薬物依存症では、NA(ナルコティクス・アノニマス)やダルク、ギャンプル依存症については、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)、摂食障害にはOA(オーバーイーターズアノニマス)があります。また、日本発祥の自助グループとしては、断酒会があります。1887年にできた「京都反省会」から始まるものです。AAの考え方も取り入れられています。
・自助グループで行われていること
自助グループでは、特別な治療を行うわけではありません。参加者が体験を語り、他の参加者は批判や評価をせずに耳を傾けます。本人だけではなく、家族も参加することがあります。同じ悩みを持つ人と接したり、自分の体験を聞いてもらうことは、孤独で自分だけではどうしようもなく、物質や行為に依存してきたものが、多くの仲間や自然な治癒力といった妥当なものへの依存へと変化していく、という効果があると考えられています。
自助グループには治療の初期から参加する場合も、医療や心理支援と並行して参加する場合もあります。本人に合った形で利用することが大切です。まずは、専門の病院に相談をしましょう。
→依存症とは何か?やその他の依存症については、下記をご覧ください。
▶「スマホ依存、ネット依存、ゲーム依存症の治し方~8つのポイント」
※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。
(参考・出典)
エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)
斎藤学「アルコール依存症に関する12章」(有斐閣)
ロバート・メイヤーズ「CRAFT依存症者家族のための対応ハンドブック」(金剛出版)
吉田精次「アルコール・薬物・ギャンブルで悩む家族のための7つの対処法―CRAFT(クラフト) 」(アスクヒューマンケア)
など
















