悩みの原因や解決方法

依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと(3/3)

[悩みの原因や解決方法「依存症」の原因と治し方]


 

 依存症(し癖 Addiction)は、精神障害の一つですが、だらしない性格のせい、といった誤解が多い症状です。
 実際は、その要因はとても複雑で奥深いものです。当人だけではなく家族も巻き込んだ症状とされます。
 アルコール依存症が典型ですが、ネット依存症など、時代の流れや社会状況によってさまざまな形の依存が存在します。前回につづき、依存症についてまとめてみました。

 

⇒関連する記事はこちら

 「ネット、ゲーム依存症の本当の原因と治し方の8つのポイント

 「ギャンブル依存症の本当の原因と治療のために必要な4つのポイント」

 

<作成日2019.9.25>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

依存症の特徴
依存症の克服に必要な6つのこと
依存症の克服、治療のための具体的な手段

 

 

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依存症の特徴

・進行性の病気(死に至る病) 

 進行性とは、放っておくと必ず悪化していくということです。依存症は、自分の身体や家族、人間関係、社会的地位を壊しながら止まることなく進行していき、最後は死に至ります。


 その人の性格や癖、だらしなさといったようなものではなく、致死率の高い恐ろしい「病気」なのです。アルコール依存症では、生還率が2,3割とも言われます。アルコールや薬物以外のものでも、家族や社会的地位を破壊していきます。

 

 

・コントロールの障害

 依存への衝動をおさえることができなくなります。「ほどほど」ということがなくなります。
 精神依存だけではなく身体依存に陥ると、例えばアルコール依存症であれば連続飲酒といった状態に陥ります。

 

 

・否認(病識の欠如)

 否認とは、自分ではいつでも止めることができるとして、自分が依存症であることを認めないことです。患者自身ではなく、パートナーも責任をとがめられることを怖れて認めない、ということが生じます。


 依存によって脳内の「島皮質」の活動が低下するために気づきが損なわれることも背景としてあるようです。依存症全体に見られますが、アルコール依存症ではより顕著に現れるとされます。

 

 本人も周囲も「このくらいの飲み方ならアルコール依存症というほどではない」と思いがちなのです。一つにはいわゆる「アル中」のイメージがあまりにも重篤なケース、呑んだくれ、と言ったイメージだからということもあります。しかし、実際には、依存症は多様で「まさか」と思うような軽度でも依存症であることが少なくありません。

 

 

・性格変化

 真面目で穏やかだった人が、自己中心的になってしまう。粗暴になったり、ウソをつくようになったり、性格がガラリと変わります。人に対する怒りや恨みつらみがものすごく、妄想のように依存症になった恨みつらみを抱くようになります。暴言や暴力などによって人からさげすまれるようになると、さらに被害者意識を強くして、恨みや怒りをますようになります。

 

 

・世代連鎖

 依存症は世代で連鎖していく傾向にあり、依存症の人には親や親戚に同様の人がいたり、その子どもが依存症や過剰適応で生きづらさに苦しんだりということが多く見られます。

 

 

・これも依存症なの?~多様なケース

 依存症には多様なケースが存在しています。
 アルコール依存症だと、ある時は全く飲まなかったり(数カ月も)、飲んでもおとなしかったり、ケースによってさまざまです。典型的なケースのイメージが強すぎて、周囲も「依存症とまではいえないだろう」と考えて放置してしまい、結果として悪化してしまうということが起きます。社会生活に支障が出ていれば、「依存症」と疑って対処を始めることが大切です。

 

 

 

依存症の克服に必要な6つのこと

1.「底つき」体験

 依存症とは過剰な自己コントロールによって生じます。自分の苦痛をなんとかしようとしてもがいている状態です。依存症患者を、家族が世話することも、そのもがきに手を貸すことになります(イネーブリング)。


 「自分は依存症ではない」「自分でなんとかできるから」というのは依存症患者の口癖ですが、自己コントロールはことごとく失敗に終わってしまいます。もがいているうちは依存症から脱することはできません。自分だけでは何もできない、自己コントロールでは無理だと気づくことを「底つき」体験と言います。中空でもがいた状態から、地面に着地し、着地したことによって回復していくのです。


 自助グループで有名なAAの12ステップの中でも

  ・私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
  ・自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
  ・私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。

 とありますが、これは、自分で何とかすることをやめる「底つき」を表現しています。

 

(参考)重篤な状態にならないような最低限のケアは必要

 依存症の方のお世話をすることはイネ―ブリングとなりますが、底をつくことを過剰に求めて、重篤な状態に陥っても放置することは不適切です。さじ加減はとても難しいですが、普段は過剰な心配や世話はせず、でも遠巻きに後遺症や命にかかわる状態にならないようなケアは必要です。

 

 

2.「治る」ではなく「回復」

 基本的には、依存症に陥ると脳の構造が変化するため、依存物質や行為に触れても大丈夫になる、つまり「治る」ことはないとされます。


 例えば、コントロールしながら飲酒をする、ということはできなくなります。
 コントロールしようと思っても、一口飲んでしまうと止まらなくなります。
 断酒の期間が10年でも、一度触れると元に戻ってしまいます。
 依存症の治療では、依存の対象に触れない取り組みを続け、状態を「回復」させることが基本です。

 

 

3.一人では回復できない

 依存症の回復には、専門家の助けだけではなく、自助グループの役割も欠かせません。依存症とは、一人で頑張って苦痛をコントロールするために依存に陥っています。自助グループでの関わりを通じて、自分を客観視し、多くの人に適切に依存していくことで、アルコールや行為への依存から回復していきます。

 

 

4.家族も変わる必要がある

 依存症は家族を巻き込んだ関係性の病でもあります。
 患者本人を悪者にして、医者や自助グループに任せておけばOKということにはなりません。依存症によって家族の役割が崩れてしまっていたり、共依存、イネーブリングが生まれています。そうした家族の状態も回復しなければなりません。


 そのためには家族も自助グループへの参加、専門家や書籍から正しい知識を得るなどして、精神の安定を取り戻し、依存症への関わり方を変えていく必要があります。


 
 家族があれこれ手を回して依存症の患者の世話をしていたことをやめた途端に、依存症が回復に向かう、ということも珍しくありません。

 

 また、依存症の当人が自助グループなどに参加したがらない場合も、家族が通い続けることで変化していくケースもあります。

 

 (参考)症状と人格は分けて対応する~あなたは大丈夫というメッセージを伝える。

 依存症については「病気である」という自覚を持たせることは大事です。一方で、依存症は見捨てられ不安、居場所がないといった自己愛の傷を癒すための未熟な自己治療でもあります。「おまえは病気だ」と家族が言い募っては、余計に居場所がなくなってしまいます。そのため、症状と人格を分けることが大切です。

 

 つまり、「今の症状は個人の嗜好ではなく、病気だ」ということを言う一方で、「症状は病気だけど、あなた(の人格)は本当は大丈夫」「本当は、あなたはちゃんと今の状態がおかしいということがわかっているのでしょ?」というメッセージを言葉や言外に伝えることが大切です。

 

 二重の見当識といいますが、表面的には病識がない場合でも、内心では「今のままではまずい」と感じているものです。ただ、病人扱いされて人格を否定されたり、戻る場所がない状態では依存するモノや行為を手放すことができないでいるのです。だから、病気であることを否定するのです。

 

 

5.見捨てられ不安やトラウマ、ストレスなどを解消する

 依存症の根底にあるのは、見捨てられ不安やトラウマ、過大なストレスなどです。そうしたことを放置したままだと、再発を繰り返すことになります。ストレスが大きいのであれば環境を変えることや考え方(認知)を変える取り組みをしましょう。見捨てられ不安やトラウマの解消にはカウンセラーなど専門家のサポートを受ける必要があります。

 

 

6.行動習慣の形成と維持

 依存症は頭のなかだけで起きているわけではなく、行動習慣が伴っています。そのため、認知を変えるだけではなく、新しい行動習慣も形成していく必要があります。習慣形成には、状況-行動-結果が 正の方向につながり、強化されることが求めらます。


 
 強化のために大切なのは、スモールステップで自発性やペースを尊重し、行動したら即座に周囲からのフィードバックを受けることが大切です。例えば、お酒を買う代わりにお菓子を買う、そうした行動をサポートする人間が称賛する、あるいは小さな報酬を与える、といったものです。

 依存症は報酬系の回路が短期化されてしまっていますから、行動習慣では徐々に長期なものへと伸ばしていきます。

 

 
 

依存症の克服、治療のための具体的な手段

<薬物療法>

 依存症は、有効な薬物療法がないとされます。脳の報酬系の異常によって生じているためです。
 
 ただ、アルコール依存とニコチン依存については、抗酒剤など、依存対象物の摂取を阻害する薬があります(アゴニスト療法)。補助的ですが、治療にはなくてはならないものです。

 

・アルコール依存症

 抗酒薬が知られています。アセトアルデヒドの分解を阻害して、大量のお酒を飲めなくするものです。体質的にお酒が飲めない状態を作りだして、飲酒の量を抑制していきます。飲酒欲求抑制剤、アカンプロサール(商品名:レグテクト)が日本でも最近、承認されました。これは、脳内のバランスを整えて、飲酒の欲求をおさえるものです。ただ、断酒していないと効果がないとされます。

 

・ニコチン依存症

 禁煙補助薬、ニコチンガムやニコパッチなどが知られています。タバコが吸いたくなったら、禁煙補助薬を使用すると、ニコチン受容体に作用して、ニコチン摂取の願望をおさえるものです。

 

・その他の依存症

 渇望抑制薬については開発が進んでいるとされます。
 (ドーパミンとノルアドレナリンをおさえるブプロピオンや、クロニジンなど)
  

 

 

<精神療法>

・認知行動療法

 認知行動療法とは、アーロン・ベックらによって開発された手法で、さまざまな精神障害の治療に用いられています。保険も適用される、医学的根拠もある、現代の精神療法の中心的な手法です。

 認知行動療法は、非合理的な認知(考え方、感じ方)をより適切なものへと修正させていくものです。欲求への対処、やめることについて、断る技術、リスクの予測などさまざまな問題を扱います。

 例えば、ギャンブル依存であれば「次で取り返せる」→「勝つことも負けることもあるから、今日はこれでやめよう」といったようにリスクの捉え方を修正していくようなことをしていきます。

 個人で行うだけでは難しいため、カウンセラーや同じ悩みを持つ者同士のグループで行うことがあります。

 


・マインドフルネス

 東洋の瞑想法を源流としており、アメリカで現代的な方法としてまとめられ、日本にも逆輸入されてきています。大企業でもパフォーマンスを上げる方法として取り入れられたり、うつ病治療などでも効果があるとされています。近年、エビデンスが上がってきている方法です。

 依存症についても、欲求などをについて感じることで欲求の背後にある思考や考え方、感覚を知り、欲求が自分本来のものではない、との気づきが生まれます。
 
 例えば食欲についても、本当に食べたくないものを無性に食べたくなることはあります。本当に食べたいのかを吟味すると、その欲求は偽物だと知り、消えていく、ということが起こります。マインドフルネスは、本当の自分の感覚に気づく事ができるようになっていきます。

 ⇒関連する記事はこちら
  「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ」

 

 

・トラウマケア

 依存症の根本には、「居場所のなさ」や不安、またアダルトチルドレン などが指摘されています。
 原因は過去に遡るわけですが、過去のわだかまり(外傷記憶)などを解消する上ではトラウマケア(ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ、ハコミセラピー、トラウマ解放エクササイズ、ブレインジム、TFT、フラワーエッセンス、ストレス応答系へのアプローチFAP療法、など)。も非常に効果的です。見捨てられる不安など、根底にある恐怖、不安を解消できます。
 ⇒関連する記事はこちら

 「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

・その他

 解決に向けての動悸を高める自己面接法 や メンタルコントラスティング法、コーピングスキルトレーニング 
 

 

 

<自助グループ>

 依存症治療では、自助グループは欠かすことができません。大きな助けとなります。

・自助グループの歴史

 さまざまな依存症の自助グループのひな形となっているのは、アルコール依存症の自助グループ、AA(アルクホリック・アノニマス)です。1935年にアメリカで、アルコール依存症にかかったビル・ウィルソンとボブ・スミスによって立ち上げられたものです。

 

 180カ国以上の国や地域で10万以上のグループが存在するとされます。日本でも、600以上のグループがあり、5700人近いメンバーが利用しているとされます。原則的に入会手続きや会費もなく、匿名(アノニマス)で参加することができます。

 

 

・さまざまな自助グループ

 AAをひな形として、薬物依存症では、NA(ナルコティクス・アノニマス)ダルク、ギャンプル依存症については、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)、摂食障害にはOA(オーバーイーターズアノニマス)があります。

 

 また、日本発祥の自助グループとしては、断酒会があります。1887年にできた「京都反省会」から始まるものです。AAの考え方も取り入れられています。

 

 

・自助グループで行われていること

 自助グループでは、特別な治療を行うわけではありません。参加者が自分の体験談を話して、周囲はそれをただ聞き流すだけです。本人だけではなく、家族も参加することがあります。

 同じ悩みを持つ人と接したり、自分の体験を聞いてもらうことは、孤独で自分だけではどうしようもなく、物質や行為に依存してきたものが、多くの仲間や自然な治癒力といった妥当なものへの依存へと変化していく、という効果があると考えられています。

 

 自助グループは、医療機関である程度の治療が進んでから関わるほうが望ましいとされます。

 まずは、専門の病院に相談をしましょう。内科など一般の病院では医師が依存症にくわしくない場合も多ため、かならず専門の病院を尋ねるようにすることが大切です。 

 

 

参考)「AA(アルクホリック・アノニマス)」

   →「全国断酒連盟」

   →「DA JAPAN 公式サイト」

   →「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)」

   →「OA(オーバーイーターズアノニマス)」

   →「ダルク」

   →「NA(ナルコティクス・アノニマス)」

 

 

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(参考)

エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)
斎藤学「アルコール依存症に関する12章」(有斐閣)

日本摂食障害学会「摂食障害治療ガイドライン」(医学書院)

「季刊ビィ」2015年9月号(アスク・ヒューマン・ケア)

中込和幸「難治性精神障害へのストラテジー」(中山書店)

など

 

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