恋愛依存症とは何か?その原因と特徴

恋愛依存症とは何か?その原因と特徴

依存症

 ここ数十年で注目されている「恋愛依存症」。恋愛や特定の相手への依存が強くなり、苦しい関係から離れられない、相手の反応によって生活や気分が大きく左右されるなど、本人や周囲にさまざまな問題をもたらすことがあります。

 今回は、医師の監修のもと公認心理師が、「恋愛依存症」についてまとめてみました。

 

 

<作成日2017.4.14/最終更新日2026.9.15>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

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この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

・専門家(公認心理師)の解説
・恋愛依存症とは何か?
・愛依存症の背景
・恋愛依存症のタイプと症状

 

 →依存症全体についてや、恋愛依存症の診断や治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「依存症とはなにか?その種類、特徴、メカニズム」

 ▶「依存症の治し方~6つのポイントと療法」

 ▶「依存症になりやすい人とはどんな人か?その原因と背景」

 ▶「恋愛依存症の診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による」

 ▶「恋愛依存症の治し方~6つのポイント」

 

 

専門家(公認心理師)の解説

人は不全感を癒やすために、自ら自己治療を行うことがあります。当センターでは、依存的な行動の一部を、本人が抱えている不全感や苦痛を和らげるための「自己治療」として理解しています。アルコールや薬物がよく知られていますが、同じくらいかそれ以上に刺激的で、燃えるように不全感を癒やしてくれるものが恋愛です。恋愛依存に関するご相談もものすごく多いです。恋愛依存が厄介なのは、恋愛自体が社会でも普通に行われる好意であるために、おかしさに気が付かないことがあるということです。しかし、普通の恋愛と恋愛依存の違いは明確に存在します。それは、自分の存在の欠損を相手との関係で埋めようとしているか、否か?ということです。普通の恋愛とは、ある程度自分も満たされた中で、互いに愛情を交換し合うということです。さらにもう一つの違いは何かというと、普通の恋愛は「信頼」を基礎に置いているということです。恋愛依存は「恋愛の刺激や興奮」に足場を置いているために非常に不安定です。なお、「恋愛依存症」は現在のDSM-5-TRやICD-11における独立した診断名ではありません。本記事を通じて、ぜひ、恋愛依存とはなにか?について参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

恋愛依存症とは何か?

 恋愛依存症(Love addiction / Love addiction tendencies)とは、恋愛や特定の相手への思いや行動が過度になり、苦しい関係であっても離れられない、相手からの反応がないと強い不安を感じる、恋愛によって仕事や生活、人間関係に支障が出るといった状態を表す言葉です。 恋愛依存症という名称が用いられるようになるのは、1975年に「Love and Addiction」という書籍が出版されてからです。

 ただし、「恋愛依存症」は現在のDSM-5-TRやICD-11に独立した正式な診断名として採用されておらず、研究上も定義はまだ統一されていません。近年は、依存症の枠組みだけでなく、愛着不安や感情調整、対人関係の問題として理解する研究も進んでいます。

 当センターでは、恋愛依存の背景にある自己愛の傷つき、不全感、愛着不安、トラウマなどを重視しています。また、恋愛関係が、こうした苦痛を一時的に和らげる「自己治療」として機能していると捉えています。

 

・「依存症」として理解する見方

 恋愛依存を、他の依存行動と共通する仕組みから理解する見方があります。恋愛への強い没頭、気分を変えるために恋愛を求める、やめようとしても繰り返す、生活上の問題が生じても関係から離れられない、といった特徴には、他の依存行動と共通する部分があります。

 一方、恋愛は人との関係そのものを対象としているため、愛着や自己評価、感情調整など対人関係に特有の側面も重要です。そのため本記事では、依存という側面だけではなく、愛着やトラウマなども含めて恋愛依存を捉えます。

 

 依存には、アルコールや薬物などの物質そのものへの依存(物質依存)と、ギャンブルやゲームなど、特定の行為やプロセスに依存する「プロセス依存(行動への依存)」という捉え方があります。

 恋愛依存についても、恋愛という行為や関係性を繰り返し求めるという点から、プロセス依存の枠組みで理解されることがあります。恋愛に伴う興奮や安心、相手から反応が得られたときの報酬などが、その関係を繰り返し求める一因になると考えられます。※ただし恋愛依存では、こうした依存的な側面だけでなく、愛着、自己評価、感情調整、対人関係なども重要な要因になります。

 

 「恋愛は素晴らしいもの」という風潮も手伝い、本人にはあまり自覚はありません。

 依存症であるかどうかを見分けるポイントとしては、一つのモノや関係に過度に依存しているかどうか、本人や周囲の日常生活に支障をきたしているかどうか、その背景に自己愛の傷つきやトラウマがあるかどうか、といわれます。

 

 

 

・データで見る「恋愛依存症」

恋愛依存については定義や測定方法が研究によって異なるため、日本・海外ともに信頼できる全国有病率は確立していません。研究によって報告される割合にも幅があり、単純に「人口の○%」と示すことは難しいのが現状です。

 

・クロスアディクション

 恋愛依存的な問題を抱える人の中には、アルコール、ギャンブル、買い物、過食など、別の依存的な行動を併せ持ったり、依存の対象が移り変わったりするケースもあります。

 当センターでは、苦痛や不全感を一つの依存的な行動で和らげ、その結果生じた新たな苦痛を別の依存行動で和らげるという悪循環にも注目しています。

 

 ▶「ギャンブル依存症の治し方~原因など適切な知識を知る」 

 ▶「買い物依存症の治し方~原因など適切な知識を知る」

 ▶「依存症とは何か?その種類・特徴・原因とメカニズム」

 ▶「摂食障害とは?拒食・過食の種類と原因~7つのポイント」

 

・その他精神障害の併発

 恋愛依存的な問題を抱えている人に、うつ病、パーソナリティ症、ASDやADHDなどの神経発達症が併存している場合もあります。症状が強い場合には、恋愛依存だけでなく、こうした問題も含めて全体として評価することが大切です。

 ▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」

 ▶「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「大人の発達障害、ASD(アスペルガー症候群)とは何か?公認心理師が詳しく解説」

 

 

 

恋愛依存症の背景

 

・愛着不安や過去の傷つきと、恋愛による報酬

 恋愛依存的な状態の背景には、愛着不安、自己評価の不安定さ、過去の対人関係での傷つきなどが深く関わっています。当センターでは、こうした背景を「自己愛の傷つき」や「不全感」「トラウマ」という視点からも理解しています。傷ついた自己愛は大きな痛みをもたらします。その痛みとは不安や恐怖、怒り、自己承認の過度な欲求などです。

 

 人間は社会的動物と呼ばれるように、いろいろな人やモノにほどほどに依存しながら生活を送っています。また、仕事や人間関係から承認、信頼という(長期の≒フィードバックに長い時間を要する)報酬を得ながら自分を保っています。このことを脳のメカニズムでは「報酬系」と呼ばれます。

 

 しかし、自己愛が傷ついた状態では、その傷をいやすために、長期の報酬では間に合わずに、短期の報酬(興奮や快楽)を求めるようになります。
 幼い子どもは欲求を我慢することが苦手です。明日まで待つよりも目の前のものがほしいと考えてしまいます。しかし、しつけや教育を受けて訓練を積む中で、我慢してより長期の報酬を得ることを覚えていきます。

 しかし、依存を繰り返すと、その報酬系のプログラム自体が書き換わってしまい、意志の力では制御できなくなってしまいます。頭では分かっていてもひどい相手に依存してしまう、といったことは脳内ホルモンの作用によってなされているのです。

 

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」

 

 
Point

 恋愛依存的な状態では、愛着不安や過去の対人関係での傷つき、トラウマなどが重要な背景になります。特に愛着不安との関連は、近年の系統的レビューやメタ解析でも示されています。

 

 

・気質や感情調整の特徴

 衝動性や感情調整の難しさ、自分の感情を捉えて言葉にすることの難しさは、恋愛依存的な状態と関連します。

 一方、恋愛依存に陥る人が単に「意志が弱い」というわけではありません。むしろ、普段は自分で頑張り、人に頼ることが苦手な人が、恋愛関係だけに強く依存するケースも臨床ではみられます。

 

 

・環境や社会的要因

 環境や社会的な要因も背景です。人間関係が少なく孤独を感じている、過度なストレスも恋愛依存を後押しします。さらに、「恋愛は素晴らしいもの」とする現代の風潮や、SNSやアプリ、マッチングサービスなどによって、恋愛相手との出会いや連絡が容易になったことも、恋愛への没頭や関係の持ち方に影響している可能性があります。
 

・現代における恋愛至上主義

 現代は恋愛至上主義だ、とは評論家や学者などが指摘していることです。もちろん、人類は昔から恋愛をしますが、その在り方はさまざまです。特に庶民は、現代人のように個人と個人とが自由に恋愛をしてというスタイルではなかったと考えられます。恋愛とは近代の産物だ、日本には明治以降に輸入されたとする説もあれば、もともと日本にも恋愛はあった、とする説もあります。

 恋愛至上主義の背景には、個人主義や自己愛型社会(個人の自己愛を満たすことに価値を置く社会)もあります。自己愛を満たしてくれる装置として、恋愛はとても手軽で情熱的なものです。 特に、自己愛の傷つきを抱える人にとっては強い興奮や安心をもたらし、恋愛への依存的な傾向を強めることがあります。
 ただ、恋愛は「素晴らしいもの」という価値観が社会にあるために、なかなかそこから抜け出すことができません。

 恋愛依存症が問題になったのには、こうした時代背景もあります。

 

 

 

恋愛依存症のタイプと症状

 心理学者の伊藤明は、著書の中で以下の4つにタイプを分類しています(出典:伊藤明「恋愛依存症 苦しい恋から抜け出せない人たち」(実業之日本社))。以下は医学的に確立された分類ではなく、恋愛依存を理解するために伊藤明氏が著書で示している分類です。

 1.共依存(尽くす側) 

 2.回避依存(尽くされる側) 

 3.ロマンス依存

 4.セックス依存

 それぞれ現れ方は異なりますが、当センターでは、これらのタイプに共通する背景として、自己評価の不安定さ、愛着不安、自己愛の傷つきなどを重視しています。
 4つのタイプは、くっきりと分かれるわけではなく、それそれが要素として各人の中に含まれてそれぞれの依存症を形成します。

 

 →各タイプの特徴の詳細については、下記をご覧ください。

 ▶「恋愛依存症の診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による」

 

1.共依存

 「共依存」は、もともとアルコールなどの依存症を持つ人と、その家族やパートナーとの関係を説明する中で用いられてきた概念です。相手を助けようと過度に世話をすることが、結果として相手の問題行動を支えてしまうような関係を指すことがあります。

 恋愛関係では、相手に尽くしたり世話をしたりすることが自分の存在価値と結びつき、自分の生活や健康を犠牲にしてまで相手を支え続けるような状態を「共依存」と表現することがあります。相手を過度に世話すること、尽くすことに一生懸命で本人の周囲の日常生活に支障をきたしている状態です。相手から求められること=自分の存在価値、となっているため、強迫的に世話をしようとします。

 

2.回避依存

 回避依存とは親密な人間関係をさける過度な傾向を指します。いくつかのタイプがあります。
 ※タイプの名称はわかりやすくつけているもので確定されたものではありません。

・独裁者、搾取者

 罪悪感や恐怖を利用して相手を支配し、搾取するタイプです。暴力や暴言というわかりやすい場合もあれば、暗に「おまえはダメなヤツだ」という無言の圧力をかけてくる場合もあります。自分の考えは正しくて、絶対で、反論すれば、同意するまで責め続けたりします。
 行動を制約したり、金銭的な要求をすることもあります。こうした特徴の一部は、自己愛性パーソナリティ症や反社会性パーソナリティ症などでもみられることがありますが、このような行動だけでパーソナリティ症と判断することはできません。

 

・ナルシスト

 自己中心的な態度や他者への共感の乏しさが目立つ場合があります。なお、ここでいう「ナルシスト」という表現は、自己愛性パーソナリティ症という診断名と同じ意味ではありません。

 
・逃げ腰症候群

 愛情を求められたり、迫ると嫌がって逃げてしまいます。一人を好み、束縛を嫌がります。本心をはぐらかします。込み入った話、深刻な話題になると避けようとします。こうした特徴は、回避型の愛着スタイルなどと重なる部分がありますが、回避性パーソナリティ症とは別の概念です。

 

・愛着不安と依存

 愛着障害の研究でも指摘されていますが、不安定な愛着状態に置かれると子どもは3,4歳ごろから親や環境を統制、コントロールしようと試みます。代表的なものとして2つのものがあります。

 1つ目は、「懲罰型」と呼ばれるもので、親に罰を与えたり、拒否することで思い通りにしようとします。
 2つ目は、「懐柔型」と呼ばれるもので、親の相談相手となったり、支えることで、親の気分や行動をコントロールしようとします。
 こうした幼少期の対人戦略と、成人後の恋愛関係でみられる支配的・回避的な関わりや、過度に相手を世話する関わりとの連続性を考えることはできます。ただし、「懲罰型なら回避依存になる」「懐柔型なら共依存になる」と一対一に対応することが確立しているわけではありません。

 

3.ロマンス依存

 ロマンス依存とは、刺激的な恋愛ばかりを求めようとしてしまうタイプです。
 ドラマのような恋愛、不倫、略奪愛や怪しげな人との恋愛に魅力を感じてしまう傾向です。熱に浮かされたように恋愛に没頭し急激に醒めることがあります。
 
 共依存との違いは、相手の世話をすることを志向していないという点です。
 また、ロマンス依存の特徴は、恋愛そのものの親密さよりも、新しい恋愛の興奮や、追いかける過程、障害のある関係がもたらす刺激などを強く求めることがあります。
 

 
4.セックス依存

 ここでいう「セックス依存」は、性的な行動や刺激を繰り返し求め、それを自分でコントロールすることが難しくなり、生活や対人関係に支障が生じている状態を指しています。

 性衝動がおさえられない。性的快感や刺激に依存している状態です。セックスをしているときだけ愛されている感覚を得ることができたり、自己愛の傷つきからくる苦しみを和らげることができます。

 不安や抑うつ、感情調整の難しさなどが併存しているケースもあります。

 また、性的トラウマのある人の中には、過去の体験と関連する形で性行動を繰り返したり、性行動を強い感情や苦痛を和らげるために用いたりするケースもあります。傷をいやすためや、価値のない自分を罰するためにセックスを行っていると考えられます。強い快楽で心の傷の痛みを一時的に覆い隠すためや、自身の体を軽く扱ったり汚したりすることによって自分を罰するという自傷行為の一種としてセックスを繰り返している場合もあります。ただし、性的虐待を経験するとこうした状態になるという単純な因果関係ではありません。

 

 

 

 →依存症全体についてや、恋愛依存症の診断や治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「依存症とはなにか?その種類、特徴、メカニズム」

 ▶「依存症の治し方~6つのポイントと療法」

 ▶「依存症になりやすい人とはどんな人か?その原因と背景」

 ▶「恋愛依存症の診断【公認心理師監修】~3つの視点(知識)による」

 ▶「恋愛依存症の治し方~6つのポイント」

 

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(参考・出典)

ハワード・M.ハルパーン「ラブ・アディクションと回復のレッスン 心の中の「愛への依存」を癒す」(学陽書房) 
ピア・メロディ「恋愛依存症の心理分析 なぜ、つらい恋にのめり込むのか」(大和書房)
ヘレン・E・フィッシャー「愛はなぜ終わるのか 結婚・不倫・離婚の自然史」(草思社) 
ラリー・ヤング「性と愛の脳科学 新たな愛の物語」(中央公論新社)
斎藤 学「アダルト・チルドレンと家族 心のなかの子どもを癒す」(学陽書房)
小谷野 敦「日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで」 (中公新書)
小谷野 敦「恋愛の超克」(角川書店)
エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」(星和書店)
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)

伊藤明「恋愛依存症 苦しい恋から抜け出せない人たち」(実業之日本社)

など