境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック

境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック

パーソナリティ障害

 

 今回は、医師の監修のもと公認心理師が、境界性パーソナリティ障害について、その原因や特徴についてまとめてみました。よろしければご覧ください。

 

 

<作成日2016.6.22/最終更新日2026.9.27>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

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この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

・はじめに~境界性パーソナリティ障害(症)を正しく理解する7つのポイント
・境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?

・境界性パーソナリティ障害(症)の診断とチェック

・境界性パーソナリティ障害(症)の特徴

・境界性パーソナリティ障害(症)の原因

 

 

 →境界性パーソナリティ障害の原因の治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「境界性パーソナリティ障害(症)の治し方、接し方のポイント」

 

 →パーソナリティ障害の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方~基本原則と10種類別に解説」

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 「パーソナリティ」とは、生まれ持った気質を土台に、さまざまな経験を通して形成されていくものです。そこに愛着の不安や発達上のつまずきが重なることで、対人関係や自己感覚などに大きな失調が生じることがあります。
特に境界性パーソナリティ障害は、他のパーソナリティ障害と比べても、固定した気質というよりは“状態像(失調している状態)”としての意味合いが強いと考えられます。社会性や対人関係を支える基底(自己愛)が脆弱で、非常に不安定な状態として捉えることができます。
 「境界性パーソナリティ障害」という名称自体のイメージがあまりにも悪く、また解決にも結びつきにくいため、現場では、境界性パーソナリティ障害というような見立てを行うことは少なく、愛着不安など別の概念で捉えることが多いです。

  

 

はじめに~境界性パーソナリティ障害(症)を正しく理解する7つのポイント

1.境界性パーソナリティ障害とは、パーソナリティ(人格)の問題ではなく、不安定な“状態”です

 境界性パーソナリティ障害は、名称に“パーソナリティ”と付いていますが、その人の人格そのものに欠陥があるという意味ではありません。「見捨てられ不安」「強い自己否定や罪悪感」が根底にあり、その不安に突き動かされるように、対人関係で情緒不安定な行動や自己破壊的な行動が現れる状態です。

 ”状態”ですから、従来考えられてきた以上に短期で症状が改善したり、変化したりします。

 

 

2.「厄介な人たち」「わがままな人たち」ではない

 境界性パーソナリティ障害というと、「厄介な人たち」で「わがまま」というイメージがあります。周囲からは「振り回されている」と感じられることがありますが、背景には強い見捨てられ不安や感情調整の難しさがあります。本人自身も、その強い感情や行動に巻き込まれて苦しんでいることが少なくありません。

 見捨てられ不安が強すぎて、感情を自分でもうまくコントロールできないでいるのです。本人も自身の症状を制御できずに巻き込まれているといえます。

 

 

3.「何とかしてあげたい」と(魅力的に)感じさせることがある

 境界性パーソナリティ障害では、強い見捨てられ不安や不安定な自己感覚から、対人関係の中で相手に強い安心や支えを求めることがあります。そのため、周囲の人が「守ってあげたい」「何とかしてあげたい」と強く感じる関係が生じることがあります。
 しかし、関わりが深くなる一方で、相手が少し距離を取っただけでも「見捨てられる」と感じ、強い怒りや失望が生じることがあります。。

 

 

4.環境によって状態が変化する

 境界性パーソナリティ障害は、環境や対人関係によって状態が大きく変化します。余裕があり、自分が受け入れられていると感じられる環境では比較的安定しやすく、見捨てられ不安や緊張が高まる関係では症状が強く現れやすくなります。

 実は、私たちもきわめて余裕のない状態に置かれると「境界性パーソナリティ状態」に陥ってしまいます。このことからも、変わらない”人格”の問題ではないことが分かります。

 

 

5.固定的なラベルではなく、その人の状態や根底にあるものを理解する

 もともとは、分類しきれないさまざまな症状をパーソナリティという概念でまとめたものです。現れ方はケースによっても異なります。パーソナリティ障害という概念は、あくまで悩みへの理解を深めて、自由になるために用いることが大切です。固定したラベルとして診断を下すようなことは解決の役に立ちません。目の前にいるその人その人の状態や、根底にどのような不安や感情があるのかを理解することが必要です。

 近年は、BPDを理解するうえで、愛着、幼少期逆境、トラウマ、感情調整、発達的な経過などを重視する研究や臨床的理解が蓄積しています。

 

 

6.境界性パーソナリティ障害というラベルに疑問を持っている精神科医やカウンセラーも少なくなく、あくまで便宜的な名称である

 別の記事でもまとめていますが(「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」)、「パーソナリティ障害」という概念には異論、違和感を表明する専門家も少なくありません。

 

 川崎医科大の青木省三教授も「私は、パーソナリティ障害という言葉をできる限り用いないようにしている」と著書で記しています(青木省三「大人の発達障害を診るということ」(医学書院))。

 

 精神科医の神田橋條治氏は、「最近のボクは「境界例」というラベルを使わなくなった。これまでの「厄介な人々」を、「発達障害」「軽症の双極性障害」「医原症」あるいはその3つの混合状態と診断するようになった。(中略) これで診療がしやすくなっている。」と述べています(神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」(創元社))。

 

 同じく精神科医の内海健氏も、境界性パーソナリティ障害(BPD)は解体すべき診断名だ、としています。その理由について、あまりにも誤診が多いこと、BPDと診断される患者の実態は「発達障害」や「双極性障害」が多くを占めていると考えられること、なにより、厄介な患者へのスティグマ(負のラベル)として用いられている、という点を挙げています(内海健「自閉症スペクトラムの精神病理」(医学書院))。

 

 このように、著名な専門家からの異論も少なくありません。ただ、それでも用いられているのは、やはり境界性パーソナリティ障害と呼ばれる症状を持つクライアントに直面することも実際にはあり境界性パーソナリティ障害というラベルが治療者やクライアントにとって役に立つからでもあります。あくまで便宜的概念であることは当事者も知っておくことが必要です。つまり、あらかじめ「境界性パーソナリティ障害」という診断名が、その人そのものを表しているわけではありません。診断名は、困っている状態を理解し、治療や支援に役立てるための概念です。

 

 

7.境界性パーソナリティ障害は改善・寛解する

 BPDは、以前考えられていたような固定的で変わらない状態ではありません。長期追跡研究では、多くの人が時間とともに診断基準を満たさなくなり、症状が大きく改善することが確認されています。適切な心理療法や環境調整を通して、見捨てられ不安や感情の不安定さ、対人関係の問題は改善していきます。

 

 

 その他、パーソナリティ障害の留意点については、くわしくは別の記事でまとめておりますのでよろしければ参考にしてください。

 ▶「パーソナリティ障害とはなにか?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 

 

境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?

 

「境界性」とは?

 「境界性」という名称は、歴史的に精神病と神経症の「境界」に位置すると考えられたことに由来します。英語では、「Borderline Personality Disorder(BPD)」とされることから、「ボーダー」「ボーダーライン」などと呼ばれることがあります。
  

 もともと、精神疾患とは診断できないが、かといって神経症とも言えない、対応が難しいグループがいることはわかっていました。そうしたグループは「境界例」「ボーダーライングループ」と呼ばれていました。1950年代になると、アメリカで「境界例」の報告が急増するようになり、日本でも20~30年遅れて報告が増えるようになりました。

 

 1980年代に入ると、パーソナリティ障害という概念が確立し、境界例とされていたケースを取り込み、パーソナリティは治療の対象として位置づけられるようになりました。

 

 「境界性パーソナリティ障害」という概念をうまく活用することは治療や理解の大きな助けになっています。

 

 

境界性パーソナリティ障害の有病率

 DSM-5-TRでは、米国の一般人口におけるボーダーラインパーソナリティ症の有病率は、中央値で1.6%とされています。これは、およそ60人に1人に相当します。ただし、調査によっては5.9%に達するとの報告もあり、診断方法や対象者によって数値に大きな幅があります。また、米国では、プライマリケアを受診する人の約6%、精神科外来患者の約10%、精神科入院患者の約20%にみられるとされています。
 日本では、一般人口を対象に、診断面接によって境界性パーソナリティ障害の有病率を調べた全国規模の疫学調査は行われておらず、正確な割合は明らかになっていません。

 出典:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアルなど

 

境界性パーソナリティ障害のメカニズム~自己愛・対象関係の視点

 「見捨てられ不安」が根底にあります。幼いころ、特に親から自立する時期に安定した愛情や関心をもらえなかったために対人関係や自分についての基本的な信頼感や自信がありません。そのため、さまざまな反応が生じる対人関係においてささいなことが拒否や否定と受け取って「見捨てられる」との強烈な不安が沸き起こり、相手の関心を引くために、周囲からすると問題行動と感じられるさまざまな行動を起こします。

 

 ・依存、不安が強く出ると「しがみつき」行動を起こします。

   パニック発作、自傷行為、自殺企図、その他の身体症状など

 ・怒り、攻撃が強く出ると「困らせ」行動を起こします。

   暴言、暴力、嫌がらせ、ストーカー、非行など

 

 「自己愛」が未熟で委縮した状態にあり、一方で「親のイマーゴ(理想像)」が大きすぎるために、親の価値観に支配され、自己否定や罪悪感を感じています。自己愛が成熟しきれていないために、「本当の自分」を感じることができていません。母子分離をはたせていないために、不安定な親の価値観を内面化してそのまま生きているとも言えます。

 親からも、親にとって都合のよい時は「良い子」と認めてもらえていましたが、そうではないときは「悪い子」とされてきたため、「ありのままの自分」というものがよくわかりません。自分は何がほしいのか、何を感じているのかも大変にあいまいです。そのために、外からくるさまざまな反応に対して、枠組みをもって統合して対処できません。その場その場の対応で極端になったり、感情的になってしまいます。

 

 こうした理論からは、境界性パーソナリティ自己愛や自己感覚の基盤が十分に安定していない状態として理解することができます。

 

 

境界性パーソナリティ障害(症)の診断とチェック

DSM-5-TRでは、以下の9項目のうち5項目以上が認められることが診断基準の一部となっています。

 

 1.見捨てられる不安

  見捨てられることを避けようとするなりふり構わず行動する。

 

 2.不適切な怒り

  激しい怒りをコントロールすることができずに周囲にぶつけてしまう。

 

 3.感情が不安定

  不安やいらだちなど、情緒が短時間で変わりやすく不安定。

 

 4.2つ以上の衝動的な行動が見られる

  浪費、性行為、アルコールやその他の物質乱用、無謀運転、無茶食いなど自分を傷つける可能性のある2つ以上の衝動的な行為。

 

 5.極端で不安定な人間関係

  理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことで特徴づけられる、不安定で激しい人間関係。

 

 6.自殺企図や自傷行為

  自殺企図、自傷行為、自殺についての言動など、生命や身体にかかわる自己破壊的な行動。

 

 7.自己同一性障害

  自分がどんな人間かわからず、自分の感覚や考えに自信がありません。

 

 8.慢性的な空虚感

  生きている実感がない、むなしいといった感覚があります。

 

 9.ストレスで生じる妄想的な思い込みや解離症状

  ストレスによって妄想的な思い込みや重い解離症状が生じます。

 

 

 

境界性パーソナリティ障害(症)の特徴

・二分法的認知

 物ごとや他者、自分を「全か無か」「最高か最悪か」と極端に捉えやすい状態を、スプリッティングと呼びます。相手を理想化して「とてもよい人」と感じていたかと思うと、失望や見捨てられ不安をきっかけに「最低な人」と感じるなど、評価が大きく揺れることがあります。部分対象関係という未熟な状態でとどまっていることが原因です。

 自己愛の成長過程に不全感があり、部分でしか判断できない「部分対象関係」という未熟な状態でとどまっていることや、周囲からも自分自身が「良い子」「悪い子」と極端で不安定な評価をされ、ありのままを受け入れてもらえなかったことが原因です。

 

 

・不安定な感情

 不安定な感情には、二分法的認知といった認知のゆがみによるものだけではなく、「情動のコントロールの不安定さ」と「ささいな出来事への敏感さ」「アンビバレンスな感情」もあります。

 情動コントロールについては、情動の制御が不安定ということもありますが、沸き起こる感情が本人も制御できないくらいの強さであることもその理由です。また、過去に受けたトラウマの影響もあり、ささいな出来事でも過去の体験と結びつき過敏に反応してしまいます。

 さらに、境界性パーソナリティの場合、自我の統合が弱いため、例えば好き、嫌い、というような対立する二つの感情が同居してしまうことがあります。親などから理不尽な対応をされ続けたような場合に生じます。一貫した感情のやり取りではなく分裂したダブルバインド的なコミュニケーションによる影響が考えられます。

 

 

・親へのこだわり

 境界性パーソナリティ障害では、親との関係に強いわだかまりや未解決の感情が残っていることがあります。親に対する強いわだかまりと、一方で親を求める気持ちとが同居しています。また、親子で仲良くするべき、という世間の価値観の影響で、親へのわだかまりを抱えていることに罪悪感を持っていることもあります。とても複雑な感情をもっています。親への認識でも二分法的認知の影響で等身大の親の姿を捉えるのではなく、強くこき下ろしたり、過度に理想化したりということがあります。

 

 

・自己破壊行動

 見捨てられ不安や、自己否定、二分法的認知が基となり、極端に自分の価値を低く捉え、自分をないがしろにする自暴自棄な行動(自傷行為や自殺企図など)を採るようになります。これは自暴自棄な行動によって自己否定やうつ状態から一時的に逃れようとするためです。幼少期から否定や拒絶を繰り返し経験し、「自分には価値がない」という自己認識を形成していることも背景にあります。

  

・空虚感と自己同一性の障害    

 世界や自分を無条件に信じるという基本的な安心感や自己肯定感が欠けているために、常に満たされない空虚な感覚を抱いています。自分自身についても、自分が自分ではないような感覚を感じています。

 

 

・その他 精神病に似た症状

 もともと、精神病と神経症の境界という状態ということもあり、幻覚、妄想、解離症状など精神病に似た症状が見られることがあります。

 

 

 

 

境界性パーソナリティ障害(症)の原因

・気質(遺伝的背景)

 境界性パーソナリティ症には、感情の反応性や衝動性などの気質的・遺伝的な「なりやすさ」も関係しています。家族研究や双生児研究では遺伝的な寄与が確認されていますが、これは生まれつきBPDそのものが決まっているという意味ではありません。気質的な反応性を背景に、成育環境や愛着、対人関係、トラウマなどの経験が重なることで、BPDの状態が形成されていくと考えると理解しやすいでしょう。

 

 

・不認証環境(養育環境)

 「認証」とはあるがままの自分が受け入れられることで、「不認証環境」とはあるがままの自分が受け入れられない環境のことです。親の期待にこたえた時にだけ褒められたり、受け入れられたりする環境に置かれると表面的には「良い子」で頑張りますが、自分の存在そのものを受け入れてもらえているという安心感がないので、常に「頑張らなければ、見捨てられる」という不安を引きずり続けます。

 例えば、子どもの気持ちより成果や行動を重視する、親の期待に沿った時だけ肯定する、養育者自身の感情が不安定で子どもが常に顔色をうかがう、といった環境では、子どもはありのままの自分への安心感を持ちにくくなります。

 明らかな虐待がない普通の家庭に育った方が境界性パーソナリティ障害に陥ることは珍しくないのは、こうした不認証環境が原因であると考えられます。不認証環境は境界性パーソナリティ障害の大きな原因の一つです。

 

・愛着障害

 愛着障害は、不認証環境とも関連するものです。愛着障害は、生後半年~1歳半までのかかわりについての不適切さによってもたらされる失調です。

 母子一体で以心伝心のような安定したかかわりがあると、子どもは環境や自分に対して安心感と信頼を持つことができます。しかし、愛着が形成される時期に、母親が不在であったり、かかわりが薄かったり、不安定だったりすると、安心感と信頼を醸成することができず、「不安定型愛着」、「反応性愛着障害」(重度なケース)と呼ばれる状態に陥ります。愛着とは、対人関係、社会活動の土台になるものですが、土台が不安定な状態のために、その後の対人関係に支障をきたします。

 境界性パーソナリティ障害の75%が親とのわだかまりを引きずる「とらわれ・不安型」、89%がトラウマ体験を抱える「未解決型」の不安定型愛着であるとされます(岡田尊司「絆の病」(ポプラ社))。

 

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」

 

 

・トラウマ

 境界性パーソナリティ症と幼少期の虐待、ネグレクト、心理的虐待などの逆境体験との関連は、多くの研究で繰り返し示されています。特に、情緒的虐待やネグレクトなど、養育者との関係の中で生じる慢性的な傷つきは、自己感覚、感情調整、他者への信頼、見捨てられ不安などの形成に深く関わります。

 トラウマは、単発の大きな出来事だけでなく、否定、拒絶、無視、不安定な対応など、日常の関係の中で繰り返されるストレスによっても形成されます。こうした発達期の関係性の傷つきを理解することは、境界性パーソナリティ症の背景を理解するうえで重要です。

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 

 

・現在の環境(不遇な状況、急激な変化)

 現在の環境も境界性パーソナリティ症の状態に大きく影響します。ハラスメント、離別、孤立、強い対人ストレスなどによって安心感が失われると、見捨てられ不安や感情の不安定さが強まりやすくなります。反対に、安心できる関係や安定した環境が確保されることで、症状が落ち着くこともあります。例えば、ピリピリした職場と大らかな職場とでは当然差が出くることは明らかです。

 不安定型愛着がある方が、ハラスメント、離別などのストレスを受けると発症に至るリスクが高まります。
 

 

 

 →境界性パーソナリティ障害の原因の治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「境界性パーソナリティ障害(症)の治し方、接し方のポイント」

 

 →パーソナリティ障害の原因と特徴、接し方、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「パーソナリティ障害(症)とは何か?その原因と特徴を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の10種類の特徴、症状を公認心理師が解説」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の治し方~主な治療方法とセルフケアのポイント」

 ▶「パーソナリティ障害(症)の接し方、関わり方~基本原則と10種類別に解説」

 

 

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(参考・出典)

林直樹 編「こころの科学vol.185 パーソナリティ障害の現実」(日本評論社)
林直樹 編「こころの科学vol.154 境界性パーソナリティ障害」(日本評論社)
林直樹「パーソナリティ障害」(新興医学出版社)
林直樹「よくわかる境界性パーソナリティ障害」(主婦の友社)

ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」(金剛出版)

市橋秀夫「パーソナリティ障害のことがよくわかる本」(講談社)
市橋秀夫「境界性パーソナリティ障害は治せる!」(大和出版)
岡田尊司「境界性パーソナリティ障害」(幻冬舎)
岡田尊司「パーソナリティ障害」(PHP)
岡田尊司「ササっとわかる「境界性パーソナリティ障害」」(講談社)
岡田尊司「絆の病」(ポプラ社)
牛島定信「やさしくわかるパーソナリティ障害」(ナツメ社)
青木省三「大人の発達障害を診るということ」(医学書院)
神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」(創元社)

内海健「自閉症スペクトラムの精神病理」(医学書院)

DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル

など