悩みの原因や解決方法

境界性パーソナリティ障害の原因とチェック、治療、接し方で大切な14のこと

[「境界性パーソナリティ障害」の原因と治し方「パーソナリティ障害」の原因と治し方悩みの原因や解決方法]


 今回は、境界性パーソナリティ障害について、その原因や治療や接し方で大切なポイントについてまとめてみました。よろしければご覧ください。

 

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境界性パーソナリティ障害

 

はじめに~境界性パーソナリティ障害を正しく理解するために


・境界性パーソナリティ障害とは、パーソナリティ(人格)の問題ではなく、不安定な“状態”です

  境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder)とは、名称に“パーソナリティ”と付いていますが、人格の障害ではありません。「見捨てられ不安」「強い自己否定や罪悪感」が根底にあり、その不安に突き動かされるように、対人関係で情緒不安定な行動を起こしてしまったり、自己破壊的な行動を起こしたりする状態です。 
  ”状態”ですから、従来考えられてきた以上に短期で症状が改善したり、変化したりします。

 


・「厄介な人たち」「わがままな人たち」ではない

  境界性パーソナリティ障害というと、「厄介な人たち」で「わがまま」というイメージがあります。しかし、本人は決して意図的に振り回そうとしているわけではありません。
  見捨てられ不安が強すぎて、感情を自分でもうまくコントロールできないでいるのです。本人も自身の症状を制御できずに巻き込まれているといえます。

 

 

・何とかしてあげたいという不思議な魅力を持つ

  境界性パーソナリティ障害の特徴ともいえますが、はかなげで物悲しげで、どこか守ってあげたい、何とかしてあげたくなる魅力を持っています。
  何とかしてあげようと関わり始めると、深いかかわりを求められ、息切れすると「見捨てようとしている」として激しい怒りをぶつけられたり、こき下ろされたり、ということが生じる場合があります。

 

 

・環境によって状態が変化する

  境界性パーソナリティ障害は環境によって変化します。
 余裕があって、自分が受け入れられていると感じられる環境では、症状は目立ちません。対人関係でも、信頼できる人の前では現れず、不安定な関係では症状は目立ちます。
  実は、私たちもきわめて余裕のない状態に置かれると「境界性パーソナリティ状態」に陥ってしまいます。このことからも、変わらない人格の問題ではないことが分かります。

 

 

・固定的なラベルではなく、その人の状態や根底にあるものを理解する

  もともとは、分類しきれない様々な症状をパーソナリティという概念でまとめたものです。現れ方はケースによっても異なります。パーソナリティ障害という概念は、あくまで悩みへの理解を深めて、自由になるために用いることが大切です。固定したラベルとして診断を下すようなことは解決の役に立ちません。目の前にいるその人その人の状態や、根底にどのような不安や感情があるのかを理解することが必要です。

  最近は、パーソナリティ障害をトラウマや、広義の発達障害、発達特性という観点から捉える考えもあります。 

 

 

・境界性パーソナリティ障害というラベルに疑問を持っている精神科医やカウンセラーも少なくなく、あくまで便宜的な名称である

 別の記事でもまとめていますが(「パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント」)、「パーソナリティ障害」という概念には異論、違和感を表明する専門家も少なくありません。

 川崎医科大の青木省三教授も「私は、パーソナリティ障害という言葉をできる限り用いないようにしている」と著書で記しています。

 精神科医の神田橋條治氏は、「最近のボクは「境界例」というラベルを使わなくなった。これまでの「厄介な人々」を、「発達障害」「軽症の双極性障害」「医原症」あるいはその3つの混合状態と診断するようになった。(中略) これで診療がしやすくなっている。」と述べています。

 同じく精神科医の内海健氏も、境界性パーソナリティ障害(BPD)は解体すべき診断名だ、としています。その理由ついて、あまりにも誤診が多いこと、BPDと診断される患者の実態は「発達障害」や「双極性障害」が多くを占めていると考えられること、なにより、厄介な患者へのスティグマ(負のラベル)として用いられている、という点を挙げています。

 このように、著名な専門家からの異論も少なくありません。ただ、それでも用いられているのは、やはり境界性パーソナリティ障害と呼ばれる症状を持つクライアントに直面することも実際にはあり境界性パーソナリティ障害というラベルが治療者やクライアントにとって役に立つからでもあります。あくまで便宜的概念であることは当事者も知っておくことが必要です。つまり、あらかじめ「境界性パーソナリティ障害」という人はどこにも存在しないということ、困った現象を捉えるための名称であるということです。

 


・境界性パーソナリティ障害は治るものである

  境界性パーソナリティ障害の患者は、1年後には約6割が、6年後に診断すると約7割が診断基準を満たさなくなっていることが分かっています。これまで考えられている以上に早く改善していきます。パーソナリティ障害は治る症状なのです。

 

 

 その他、パーソナリティ障害の留意点については、詳しくは別の記事でまとめておりますのでよろしければご参考ください。
 ⇒「パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント

 

 

 

境界性パーソナリティ障害とは何か?

概要

・「境界性」とは?

  「境界性」とは、精神疾患と神経症の境界という意味です。英語では、「Borderline Personality Disorder(BPD)」とされることから、「ボーダー」「ボーダーライン」などと呼ばれることがあります。
  

  もともと、精神疾患とは診断できないが、かといって神経症とも言えない、対応が難しいグループがいることはわかっていました。そうしたグループは「境界例」「ボーダーライングループ」と呼ばれていました。1950年代になると、アメリカで「境界例」の報告が急増するようになり、日本でも20~30年遅れて報告が増えるようになりました。1980年代に入ると、パーソナリティ障害という概念が確立し、境界例とされていたケースを取り込み、パーソナリティは治療の対象として位置づけられるようになりました。
 「境界性パーソナリティ障害」という概念をうまく活用することは治療や理解の大きな助けになっています。
  

・有病率

  アメリカの調査では、人口の2~5.9%が該当するとされています。女性のほうが重いケースが多いです。若くして発症するほうが重篤なケースが多いとされます。

 

診断基準とチェック

下記の症状で5つ以上当てはまる場合に当てはまる可能性があると仮に診断されます。

 

 1.見捨てられる不安
  見捨てられることを避けようとするなりふり構わず行動する。

 2.不適切な怒り
  激しい怒りをコントロールすることができずに周囲にぶつけてしまう。

 3.感情が不安定
  不安やいらだちなど、情緒が短時間で変わりやすく不安定。

 4.2つ以上の衝動的な行動が見られる
  浪費、性行為、アルコールやその他の物質乱用、無謀運転、無茶食いなど自分を傷つける可能性のある2つ以上の衝動的な行為。

 5.極端で不安定な人間関係
  理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことで特徴づけられる、不安定で激しい人間関係。

 6.自殺企図や自傷行為
  自殺企図や自傷行為などを行い周囲を脅すような自己破壊的な行動。

 7.自己同一性障害
  自分がどんな人間かわからず、自分の感覚や考えに自信がありません。

 8.慢性的な空虚感
  生きている実感がない、虚しいといった感覚があります。

 9.ストレスで生じる妄想的な思い込みや解離症状
  ストレスによって妄想的な思い込みや重い解離症状が生じます。

 

 

境界性パーソナリティ障害のメカニズム

 「見捨てられ不安」が根底にあります。幼いころ、特に親から自立する時期(1~3歳)に安定した愛情や関心をもらえなかったために対人関係や自分についての基本的な信頼感や自信がありません。そのため、様々な反応が生じる対人関係において些細なことが拒否や否定と受け取って「見捨てられる」との強烈な不安が沸き起こり、相手の関心を引くために、周囲からすると問題行動と感じられる様々な行動を起こします。

  ・依存、不安が強く出ると「しがみつき」行動を起こします。
    パニック発作、自傷行為、自殺企図、その他の身体症状など

  ・怒り、攻撃が強く出ると「困らせ」行動を起こします。
    暴言、暴力、嫌がらせ、ストーカー、非行など

 
 「自己愛」が未熟で委縮した状態にあり、一方で「親のイマーゴ(理想像)」が大きすぎるために、親の価値観に支配され、自己否定や罪悪感を感じています。自己愛が成熟しきれていないために、「本当の自分」を感じることができていません。母子分離を果たせていないために、不安定な親の価値観を内面化してそのまま生きているとも言えます。
 親からも、親にとって都合のよい時は「良い子」と認めてもらえていましたが、そうではないときは「悪い子」とされてきたため、「ありのままの自分」というものがよくわかりません。自分は何がほしいのか、何を感じているのかも大変あいまいです。そのために、外からくる様々な反応に対して、枠組みをもって統合して対処することができません。その場その場の対応で極端になったり、感情的になってしまいます。

 こうしたことから、パーソナリティ障害とは、「自己愛の不全」であることがわかります。
  

境界性パーソナリティ障害3

 

 

境界性パーソナリティ障害の特徴

・二分法的認知

  物ごとや他者、自分に対して、「全か無か」「最高か、最悪か」といった極端な認知をしてしまうことです。「スプリッティング」と呼ばれます。周囲の人にも、自分に都合のよく感じるときは「とってもいい人」と評価し、都合が悪い時は「最低な人」とこき下ろしてしまいます。
  自己愛の成長過程に不全感があり、部分でしか判断できない「部分対象関係」という未熟な状態でとどまっていることや、周囲からも自分自身が「良い子」「悪い子」と極端で不安定な評価をされ、ありのままを受け入れてもらえなかったことが原因です。

 

・不安定な感情

  不安定な感情には、二分法的認知といった認知のゆがみによるものだけではなく、「情動のコントロールの不安定さ」と「些細な出来事への敏感さ」「アンビバレンスな感情」もあります。
  情動コントロールについては、情動の制御が不安定ということもありますが、沸き起こる感情が本人も制御できないくらいの強さであることもその理由です。また、過去に受けたトラウマの影響もあり、偏桃体は過活動を起こしていて、些細な出来事でも過去の体験と結びつき過敏に反応してしまいます。
  さらに、境界性パーソナリティの場合、自我の統合が弱いため、例えば好き、嫌い、というような対立する二つの感情が同居してしまうことがあります。親などから理不尽な対応をされ続けたような場合に生じます。一貫した感情のやり取りではなく分裂したダブルバインド的なコミュニケーションによる影響が考えられます。

 

・親へのこだわり

  境界性パーソナリティ障害では、親へのこだわりが見られます。親に対する強いわだかまりと、一方で親を求める気持ちとが同居しています。また、親子で仲良くするべき、という世間の価値観の影響で、親へのわだかまりを抱えていることに罪悪感を持っていることもあります。とても複雑な感情をもっています。親への認識でも二分法的認知の影響で等身大の親の姿を捉えるのではなく、強くこき下ろしたり、過度に理想化したりということがあります。

 

・自己破壊行動

  見捨てられ不安や、自己否定、二分法的認知が基となり、極端に自分の価値を低く捉え、自分をないがしろにする自暴自棄な行動(自傷行為や自殺企図など)を採るようになります。これは自暴自棄な行動によって自己否定やうつ状態から一時的に逃れようとするためです。幼いころから「自分は生きる価値がない」という認識を刷り込まれてきたことも背景にあると考えられます。

  
・空虚感と自己同一性の障害    

  世界や自分を無条件に信じるという基本的な安心感や自己肯定感が欠けているために、常に満たされない空虚な感覚を抱いています。自分自身についても、自分が自分ではないような感覚を感じています。

 

・その他 精神病に似た症状

  もともと、精神病と神経症の境界という状態ということもあり、幻覚、妄想、解離症状など精神病に似た症状が見られることがあります。

 

 

境界性パーソナリティ障害の原因

・気質(遺伝的背景)

 境界性パーソナリティ障害の原因の4割程度は気質の影響と言われています。例えば、過敏な性質や衝動性がもともとある、といったことです。境界性パーソナリティ障害の3分の1に幼いころにADHD傾向が見られるとの指摘もあります。
 遺伝といっても、かならず発症するわけではなく、環境の影響で発症するかどうかが決まります。そのため、遺伝的背景とは〝気質”と捉えると理解しやすいです。
 また、脳の働きをチェックすると衝動性や感情のコントロールが上手くできていないこともわかっています。

 

・養育環境

 ・不認証環境

 「認証」とはあるがままの自分が受け入れられることで、「不認証環境」とはあるがままの自分が受け入れられない環境のことです。親の期待に応えた時にだけ褒められたり、受け入れられたりする環境に置かれると表面的には「良い子」で頑張りますが、自分の存在そのものを受け入れてもらえているという安心感がないので、常に「頑張らなければ、見捨てられる」という不安を引きずり続けることになります。
 明らかな虐待がない普通の家庭に育った方が境界性パーソナリティ障害に陥ることは珍しくないのは、こうした不認証環境が原因であると考えられます。不認証環境は境界性パーソナリティ障害の大きな原因の一つになります。

 

 境界性パーソナリティ障害の患者の母親としては下記のような2つのタイプがあるとされます。
 ・母性的愛情に欠ける、子どもを支配するタイプ
  子どものありのままを認めるというよりは、行動や結果でしか見ない傾向があるタイプです。もともとの性格もありますが、仕事でテキパキと働いてきた人が、仕事の方法をそのまま養育に持ち込んでいるようなケースもあります。子どもは頑張れば認めてもらえる、という環境で育つことになります。
    
 ・情緒的に不安定なタイプ
  気まぐれで、不安定な情緒で子どもを振り回すタイプ。子どもは顔色を窺ったり、不安定な母親を支えようと頑張っていたりします。人間は不安定なものだという基本的な安心感がない環境で育つことになります。

 

 ・愛着障害

  愛着障害は、不認証環境とも関連するものです。愛着障害は、生後半年~1歳半までのかかわりについての不適切さによってもたらされる失調です。
  母子一体で以心伝心のような安定したかかわりがあると、子どもは環境や自分に対して安心感と信頼を持つことができます。しかし、愛着が形成される時期に、母親が不在であったり、かかわりが薄かったり、不安定だったりすると、安心感と信頼を醸成することができず、「不安定型愛着」、「反応性愛着障害」(重度なケース)と呼ばれる状態に陥ります。愛着とは、対人関係、社会活動の土台になるものですが、土台が不安定な状態のために、その後の対人関係に支障をきたすようになります。
  境界性パーソナリティ障害の75%が親とのわだかまりを引きずる「とらわれ・不安型」、89%がトラウマ体験を抱える「未解決型」の不安定型愛着であるとされます。

 →「「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと

 

 ・トラウマ

  パーソナリティ障害とトラウマとの関係はハーマンが指摘したことによってクローズアップされるようになりました。
  トラウマはいわゆる虐待など明らかな外傷体験だけではなく、何気ない振る舞いでも繰り返されることでトラウマになりえると考えられています(「関係性のストレス」)。トラウマ体験を受けると解離によって記憶が思い出せなくなることもあり、エビデンスを得ることが大変難しく、トラウマとパーソナリティ障害との関係は常に結びつくとは証明されていませんが、幼いころの傷つくような体験が根底にあり、成長した後にトリガーとなるストレスを受けることで発症するのではないかと推測されています。

 →「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

・現在の環境(不遇な状況、急激な変化)

  過去の状況だけではなく、現在がストレスフルな環境であったり、急激な変化に見舞われている場合、とくに余裕のない状況は、境界性パーソナリティ障害の原因となります。例えば、ピリピリした職場と大らかな職場とでは当然差が出くることは明らかです。
  不安定型愛着がある方が、ハラスメント、離別などのストレスを受けると発症に至るリスクが高まります。
 

 

・時代背景

  社会的な出来事よりも自分への関心が強くなる自己愛型社会といった時代背景や、かつては複数世代が同居することもありましたが、核家族化や、離婚の増加、シングルマザーの増加など、親子が密室で関わることも増えてきたことなどの時代背景も境界性パーソナリティ障害の要因となります。

 

 

・他のパーソナリティ障害が悪化したものとしての境界性パーソナリティ状態

  境界性パーソナリティ障害とは、パーソナリティのあるタイプという面だけではなく、パーソナリティ障害全般が悪化した状態でもあります。多くの場合、複数のパーソナリティ障害の要素を同時に持つことになります。
 本人がどういったパーソナリティ障害のタイプを背景にしているのかについても知ると、より理解が深まります。
 

 パーソナリティ障害の各タイプについての詳細は下記を参考にしてください。
 ⇒「パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント

 


併発しやすい病気

・うつ病

 約3割がうつ病を併発します。併発の数字は低いですが、軽度~中程度のうつ状態も含めると最も併発しやすい症状です。

 ⇒「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 

・依存症

 約4割がアルコール依存、約2割でその他の依存症を併発していることが分かっています。
 自己破壊の衝動もありますが、依存によって不安を一時的に癒していると考えられます。

 ⇒「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと
 

・不安障害(パニック障害など)

 約7割が不安障害を併発します。
 ⇒「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと」 

 

・PTSD

 約4割にPTSDを併発しています。幼いころの逆境体験が発症に影響すると考えられます。

⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」 

 

・解離性障害  

 境界性パーソナリティ障害では、幻覚や離人感といった解離症状が見られることがあります。
 ⇒「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

 

・摂食障害

 体重をコントロールすることで自分の価値や人生への不安を緩和させようとするもので、自分は価値がないと思っている境界性パーソナリティ障害では併発しやすい病気です。
 ⇒「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

・発達障害

 最近は、パーソナリティ障害の様々な症状をある種の退行として、広義の発達障害の観点からとらえる考え方もあります。
 ⇒「大人の発達障害の本当の原因と特徴~様々な悩みの背景となるもの

 

境界性パーソナリティ障害2

 

 

 

境界性パーソナリティ障害の主な治療方法

 パーソナリティ障害の治療は特効薬や即効的な方法があるわけではなく、患者の状態を見ながら、薬物療法や精神療法を組み合わせて行われています。対応できる医師やカウンセラーはまだまだ限られています。



・対応する医療機関

  対応する相談機関としては、精神科やメンタルクリニック、専門のカウンセリングルームなどが窓口となります。ただ、パーソナリティ障害を専門にしているところは少なく、事前に調べて経験・実績のある医師やカウンセラーを選ぶことが大切です。期待して受診しても素っ気ない対応だったり、「治らない」といわれて落胆したり、ということがしばしば起きます。地域の精神保健福祉センターに相談することも適切な相談機関を探す上では助けになります。


・薬物療法

  パーソナリティ障害に伴う不安や衝動性などについては、依存性の少ない非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピンなど)や気分安定化薬などで落ち着かせていきます。薬はパーソナリティ障害そのものを治療するというより、症状を緩和して、改善への取り組みをしやすくするために用いられます。 
 

・精神療法

  不安定な自己愛などの根本的な部分の改善には、精神療法と組み合わせていく必要があります。支持的カウンセリング、認知行動療法、マインドフルネス、対人関係療法、トラウマケア、弁証法的行動療法(特に、境界性パーソナリティ障害に特に効果があるとされている方法です)などがあります。トラウマを除き、ほどほどの考え方や、見捨てられることはない、というような合理的な認識を身に着けるようになると徐々に症状が軽くなっていきます。
 
 同じ症状の人がグループワークを行うことも効果があります。

 ⇒「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ
 ⇒「“FAP療法”とは何か?トラウマや難しい悩みを解決するための療法

 

 

 

境界性パーソナリティ障害を克服、対応するための14のポイント

1.境界性パーソナリティ障害は一時的な“状態”であり、治るものである

  ある研究によれば、境界性パーソナリティ障害の患者は、1年後には約6割が、6年後に診断すると約7割が診断基準を満たさなくなっていることが分かっています。数字を見れば、想像以上に改善は早いといえますし、ほとんどのケースは治っていくものです。
  また、「晩熟」現象といいますが、歳とともに成熟していき、症状がなくなっていくことがあります。境界性パーソナリティ障害はちゃんと治るものだということを知ることが大切です。(世の中では、治らないという否定的な見解も多く見聞きしますが、とらわれないことが大切です。)

 


2.自分の状態を知る

  自分がどういった感情や思いにとらわれているのかを客観的に知ることは大変有効です。自分の状態を知るためには2つの面を捉えます。

  ・自分はどんな感情や思考にとらわれているのか?

  ・自分はどんな行動をとっているのか?
  
  そのためには、ノートに自分の感情や思考、行動について日記をつけることが有効です。もちろんアプリやパソコンを用いてもでも構いませんが、手を動かすことが感情の発散につながるため、手書きでノートにつづることをお勧めいたします。

 

  1.どのような状況、出来事(きっかけ)があり、
  2.どのような感情がわいてきたのか?
  3.どのような思考(自動思考)が沸いてきたのか?
  4.どのような行動をとった(とろうとした)のか?
  5.3,4について、反論や合理的な思考や行動を書きます。
    境界性パーソナリティ障害の方は、二文法的思考のような極端な思考を持ちがちです。何ごとも、全体化した、ほどほどの認識を持つことが大切です。

 ノートに書くという作業は自傷行為の代替行動としても有効です。

 

 衝動性や否定的な感情を緩和するためにはマインドフルネスを行うことも有効です。
 こちらをご参考ください。
 ⇒「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ

 


3.症状を外部化する~「ネーミング」と「虫退治」の効用

  自分が抱える思考や感情のパターンを「~~病」といったように「ネーミング」を行うことはとても有効です。例えば、ちょっとしたことで、「自分は誰からも愛されていない」と落ち込みやすいのであれば、そうした状態を「どうせ誰も愛してくれない病」とネーミングするのです。ネーミングすると、あいまいな問題がパッケージ化されるとともに、症状と自分とがイコールではなくなり、外部に置いて対象化することができます。

  別の例では、感情的になりやすい状態にある人が、これまでだったら巻き込まれるように感情的になり、本人も周囲も手に負えなくなるところを、その状態をネーミングがすることで「私はいま、〝感情的になっている病”なの」というように症状を自分と切り離し、周囲も一緒に対象化することができます。本人も自分の症状と人格と同一視されることがなく、傷つくことがありません。
  これを専門用語では「外部化(外在化)」といい、カウンセリングでは問題解決の必須プロセスの一つとされるものです。 

 

  同じような方法に「虫退治」というものがあります。これはブリーフセラピーにおいて用いられる方法です。龍谷大学の東豊先生によって考案された方法です。
  例えば、境界性パーソナリティ障害のパートナーがいらっしゃった場合に、感情的になりやすい状態を「イライラ虫が付いた」と命名します。家族も本人も、「イライラ虫がどこかに行くといいね~」と一緒に毎晩祈ります。イライラしても「イライラ虫がついているみたいだね~」と話題にします。「イライラ虫よどこかに行ってしまえ」と本人もイメージします。そうすることで、「本人が感情的になっている」ではなく、「イライラ虫が家族についている」というように、問題と責任が本人の外に出て、家族も一緒に同じ対象に向かって取り組むことができるようになります。本人も自分の存在を守ろうとして抵抗したり、問題状況が維持され続けるという悪循環に陥ることもありません。
  非常に短期間に問題が解決する方法として知られています。

 


4.自分は大丈夫だと知る

  境界性パーソナリティ障害の根底には、自分は生きる価値がない、自分はおかしい、という強い自己否定や罪悪感があります。そのため、自分の欠点を直そう、という方法で取り組んでしまうと「自分は価値がない」という前提を強めることになり、症状が遷延化してしまう恐れがあります。問題行動を逐一治すことよりも、自分は大丈夫だと思うことが何よりも大切です。
  逆説的に見えますが、このことは大変重要なポイントです。すべては成長する過程で背負わされた環境からの影響のせいで、自分は何も悪くないと肯定的に考えることができます(これも外部化です)。

 


5.親へのわだかまりや過度の理想化、罪悪感などを解消する

  境界性パーソナリティ障害の特徴の一つともいえるのが、親へのこだわり、わだかまりです。親からされた理不尽な言動やについての強いわだかまりを持つタイプもいれば、つらい体験を見ないために、親を実際以上に理想的な存在としてとらえてしまっている人もいます。親への罪悪感を抱えて献身的に親に尽くそうとする人もいます。

  特に怒りなどの否定的な感情は一度発散させる必要があります。
発散させずに認知療法や許しといった取り組みを行おうとしてもなかなかうまくいきません。親へのわだかまりや否定的な記憶はトラウマケアなどによって解消することができます。

  そのうえで、否定的な体験からも学ぶことはなかったかと考えたり、相手も等身大の人間として未熟ゆえに起きたことだ、として親への評価を見直していきます。

 


6.世間の常識ではなく、自分のペースが大切

  パーソナリティ障害の方は、わがままどころか、世間の常識や規範といったものを強く意識しています。例えば、世の中の人は働いているのに自分は働いていない、ということが気になることがあるかもしれません。友達は子どもがいるのに私には子どもはおらず悩みで苦しんでいる、というようなことが気になっているかもしれません。しかし、他人は他人、自分は自分です。周囲や世間の常識は関係ありません。大切なのは自分の人生であり、自分のペースです。同じように横並びで進級する子どもと違って、大人になると自分に必要なタイミングで様々なイベントがやってくるものです。若くして亡くなる人もいれば、100歳まで生きる人もいます。働くタイミングも様々です。誰かと競争をしているわけではなく、自分だけのレールの上を走っているような状態です。

  世間の常識はいったんわきに置いて自分のペースを取り戻すことも、境界性パーソナリティ障害の克服では大切なことです。

 


7.良い自分と悪い自分を両方併せ持ったありのままの自分へと成長する

  境界性パーソナリティ障害を克服するとは、悪い自分だけを取り除いて良い状態になることではありません。境界性パーソナリティ障害とは、強い自己否定によって不安をコントロールできないでいる状態です。二分法的認知に代表されるように、自分の悪い部分のみを除こうとすることは解決を遠ざけてしまう結果になります。
  むしろ自分を全体として受け止めてもらったり、自分で自分を受け止められるようになることが大切です。境界性パーソナリティ障害を克服するとは、良い自分も悪い自分も合わせた「本来の自分、ありのままの自分」へと成長することです。
 

 

8.他人は自分とは関係なく動いていると知る

  他人は自分の思うようには動いてはくれません。機嫌が良い時もあれば、気分が乗らないときもあります。体調が良い時もあれば、疲れているときもあります。それらは、自分とは関係ないところで起きていることです。しかし、境界性パーソナリティ障害になると、すべてを自分に原因帰属させて考えてしまいます。「私のこと嫌っているのかな」と捉えたり、自分に結びつけて考えたりします。他人は、自分とは関係なく動いているものです。不機嫌さは単に寝不足なだけかもしれません。
  他人は思い通りになりませんし、自分とはほとんど関係しないものだと知ることはとても大切です。

 

 

9.現在の環境の改善にも注意を払う

  本人の問題にばかり目が奪われがちですが、最も大切なのは現在の環境です。人間は想像以上に環境の影響を強く受けていて、環境にあらがうことはとても難しいものです。
  現在の環境がストレスフルなものではないか、トラウマを再現するような環境ではないか、ということにも目を向けて、もし、環境がふさわしくないのであれば、環境を変えてみることも大切です。

 

 

10.生活習慣を整える

  健康な人でも、睡眠不足になれば気分は落ち込みます。ストレスがたまりすぎても同様です。境界性パーソナリティ障害は、単なるメンタルの問題によってではなく、睡眠時間が少ない、栄養の偏り、運動不足といった生活習慣の乱れが後押しすることがあります。
  生活習慣を整えることは薬物療法やカウンセリングを受けること以上に効果があります。生活習慣についても、自分で日記に記録をつけ、コンディションとの関係を客観的に知ると改善にとても役に立ちます。

 


11.パニック症状や自傷行為などは、専門の対処法を用いる

  境界性パーソナリティ障害では、身体症状や自傷行為が見られることがあります。パニック症状や自傷行為、依存症については、専門の対処法があります。

 こちらをご参考ください。
 ⇒「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと

 ⇒「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

 ⇒「リストカット、自傷行為の本当の心理、原因・理由とその対応

 

 

 

<家族や知人がパーソナリティ障害である場合>

12.周囲は安定した一貫した関心を向け続ける

  周囲が当人にかかわるにあたって大切なのは4つキーワードです。

 「安定」、「一貫性」、「ニュートラル」、「愛情よりも”関心”」
 
  境界性パーソナリティ障害への対応では、できる限りの愛情を注ぎ続けなければいけない、本人もそれを望んでいると思ってしまいます。しかし、それは現実には不可能なことです。常に愛情を注ごうとすると、対応する側も息切れしてしまいます。当人も表面では愛情を求めていながら、その渇望に苦しんでもいます。
  例えば、アルコール依存では、本人はアルコールを強く求めていますが、本当にお酒が好きだから求めるわけではありません。飲酒の渇望は偽の願望といえます。願望通りにアルコールを与えられることは苦しいことでもあるのです。
  境界性パーソナリティ障害における愛情への渇望も見捨てられ不安によって喚起されたある意味、偽の欲求であり、本当は当人もそのようなことは求めていないのかもしれません(表面的には、愛情を強く求めていますが)。

 

   飲酒 ⇒激しい自己嫌悪⇒嫌悪を和らげるための飲酒 

    という悪循環のように、境界性パーソナリティ障害においても、

   愛への渇望 ⇒ それが満たされない失望 ⇒ さらに愛を渇望する

    という悪循環があるようです。

 

  周囲が「何とかしてあげたい」と思う気持ちも、実は境界性パーソナリティ障害に触発された症状であり、何とかしようとすることは、逆に問題を促進してしまいます。何とかしてあげたいと思う気持ちがあるときは、少し立ち止まって距離をとることが必要です。

  大切なことは、愛情の程度は低くてもよいから安定していることです。「愛情」というとどうしても力みや過剰な要求を誘発します。「愛情」よりは、「関心」をもって見守るということが大切です。そして、できるだけ一貫していること、関係性がニュートラルであることです。これまでの関係性からの先入観で接することなく、ありのままの姿を受け止めるようにします。
  自然の事物がそうであるように、求めても強くは働きかけては来ないが、いつも同じように佇んでいるという一貫した状態が一番良いのです。

 


13.枠組みをもってかかわる

  境界性パーソナリティ障害の場合は、枠組みをもってかかわることが重要です。枠組みとは、普段のルールや克服に向けて取り組む内容を決めることです。例えば、メールをもらってもすぐに返せないのであれば、そのことも取り決めておく、といったことです。対応できる時間や範囲もあらかじめ確認しておくことで、無理をしすぎず、また、勘違いから感情的になることを防ぐことができます。自殺企図や体調が悪化するなどした場合は入院することもあるということも本人と話し合っておきます。

  また、境界性パーソナリティ障害の場合、カウンセリングなどのサポートを受ける際も、枠組みのない取り組みは苦手です。漠然と内省を促すカウンセリングは混乱してしまします。治療者は、枠組みを明確にして関わることが必要です。
  枠組みがあること自体が境界性パーソナリティ障害の方にとっては安心材料となります。

 


14.無理に治そうとするより、安全基地になる

  パーソナリティ障害を「治す」というのは、その人の欠点や症状を治すことではありません。自分は大丈夫だ、という安心感、信頼感を取り戻すことです。パーソナリティ障害だけではありませんが、「治す=当人に問題がある」というメッセージにもなります。境界性パーソナリティ障害とは「自分は、治さなければいけない欠点のある人間だ」と思わされている状態といえます。対応の基本は「あなたは大丈夫」という信頼、安心です。

  無理に治そうとするのではなく、「あなたは大丈夫」という態度で見守り、安全基地となってあげることです。そのうえで、本人を苦しめる感情や行動がぬぐいがたい場合は、心理療法、薬物療法など専門家の助けを借ります。
 

 

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参考

林直樹 編「こころの科学vol.185 パーソナリティ障害の現実」
林直樹 編「こころの科学vol.154 境界性パーソナリティ障害」
林直樹「パーソナリティ障害」
林直樹「よくわかる境界性パーソナリティ障害」

ジョエル・パリス「境界性パーソナリティ障害の治療」

市橋秀夫「パーソナリティ障害のことがよくわかる本」
市橋秀夫「境界性パーソナリティ障害は治せる!」
岡田尊司「境界性パーソナリティ障害」
岡田尊司「パーソナリティ障害」
岡田尊司「ササっとわかる「境界性パーソナリティ障害」」
岡田尊司「絆の病」
牛島定信「やさしくわかるパーソナリティ障害」
青木省三「大人の発達障害を診るということ」
神田橋條治「神田橋條治 医学部講義」

内海健「自閉症スペクトラムの精神病理」

 

 

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