ギャンブル依存症を治す、克服するためには、必要な治療を受けるだけではなく、どういった背景から問題が生じているのか?その原因やメカニズムを知る必要があります。知識があることで無用な自己否定や自尊心の低下を防ぐことができたり、踏みとどまれる機会が増えるなどの効果があります。そのため、この記事では、医師の監修のもと公認心理師が、単に治療法、というだけではなく背景などの情報もあわせて提供しています。
<作成日2016.4.22/最終更新日2026.9.28>
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この記事の執筆者三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師 大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了 20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。 |
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この記事の医療監修飯島 慶郎 医師(心療内科、など) 心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら |
<記事執筆ポリシー>
・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。
・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。
・可能な限り最新の知見の更新に努めています。
もくじ
・ギャンブル依存症(ギャンブル行動症)とは何か?
・日本において特に多い「ギャンブル依存症」~社会環境を知る
・ギャンブル依存症のメカニズムを知る
・キャンブル依存症かどうか?簡易にチェックしてみる
・ギャンブル依存症の特徴を知る
・ギャンブル依存症の原因を知る
・ギャンブル依存症を治す(克服する)ために必要なことを知る
→依存症の原因、治し方については、下記をご覧ください。
ギャンブル依存の背景には、孤立や強いストレス、抑うつ・不安、愛着不安やトラウマなどが深く関わっています。また、依存行動を、つらさや孤独、不安、不全感などを一時的に和らげるための「自己治療」として理解する視点があります。当センターでも、ギャンブルによって何を和らげようとしているのかを重要な視点として捉えています。依存行動を、つらさや孤独、不安を一時的に和らげるための「自己治療」として捉える考え方があります。当センターでも、ギャンブルが不全感や苦痛を一時的に和らげる手段になっているケースに注目しています。記事本文にもありますように、日本では、日常生活の中でギャンブルに接触しやすい環境があります。こうしたアクセスのしやすさは、ギャンブル関連問題を考える上で重要な社会的要因の一つです。ギャンブル依存は手強いもので、治すためには原因など適切な知識を知ることがとても重要です。
ギャンブル依存症(ギャンブル行動症)とは何か?
ギャンブル依存症(ギャンブル行動症)とは、ギャンブルをやめたい、減らしたいと思っていても自分でコントロールすることが難しくなり、仕事や家庭、経済面などに問題が生じてもギャンブルを続けてしまう状態をいいます。DSM(米国精神医学会の診断基準)では、「ギャンブル行動症」と表記されます。近年、依存症、精神障害として治療の対象とされるようになってきました。
ギャンブル依存症(ギャンブル行動症)は、意志の弱さだけで起こるものではなく、適切な治療と支援によって回復可能な疾患です。治療では、まずギャンブルへのアクセスや金銭面の被害を減らし、認知行動療法(CBT)などの専門的支援につながることが重要です。GAなどの自助グループや家族への支援も役立ちます。背景にあるトラウマや愛着不安、強い孤立などについても、依存行動そのものへの治療とあわせて支援していきます。
日本において特に多い「ギャンブル依存症」~社会環境を知る
近年、「日本にもカジノを」「カジノ特区を」といった主張を耳にします。そうした主張から日本はギャンブル後進国、ギャンブルには厳しいのでは?とのイメージを持つ人もいらっしゃるかもしれません。実際は、全くの逆です。日本では、パチンコ・パチスロ、公営競技、オンラインを含め、日常生活の中でギャンブルに接触しやすい環境があります。こうしたアクセスのしやすさは、ギャンブル関連問題を考える上で重要な社会的要因の一つです。
実は、韓国や台湾ではパチンコは禁止されパチンコ店は姿を消しました。海外ではカジノも観光地など街中から離れたところにある事も多く、日本のように普段気軽に利用できるわけではありません。日本は極めて特殊な状況です。上限金利の規制で数が少なくなりましたが、かつてはパチンコ店や場外馬券場の近くに消費者金融会社やATMが軒を連ねているなど長年恐ろしい状況が続いていました。
それはギャンブル依存症患者の数に現れています。下記のデータで見る「ギャンブル依存症」をご覧いただくとわかりますが患者の割合は欧米と比べても日本は高い状況です(久里浜医療センター「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査」など)。本人が借金で苦しむだけならまだしも、子どもが駐車場や家に置き去りにされるネグレクトなど家族に被害が及び、関わる人たちの人生も狂わせてしまいます。
本来は、国が対策を講じなければならない深刻な問題です。ただ、パチンコ・スロットは遊技としてとらえられており、また依存症も本人の問題と考えられているため、十分な対策は進んでいません。
・データで見る「ギャンブル依存症」
DSM-5-TRでは、米国の一般人口におけるギャンブル行動症の12カ月有病率は約0.2~0.3%とされています。これは、1年間におよそ330~500人に1人が診断基準を満たす割合です。米国以外を含む国際的な調査では0.1~0.7%と報告されています。また、米国における生涯有病率は約0.4~1.0%で、一生のうちにおよそ100~250人に1人が経験する割合です。男女別の生涯有病率は、女性約0.2%、男性約0.6%で、男性のほうが高いとされています。
日本では、厚生労働省の補助を受けて久里浜医療センターが2023年11月から2024年1月に実施し、2024年に公表した全国住民調査が最新の大規模調査です。18歳以上75歳未満の全国住民を対象とした調査で、過去1年間に「ギャンブル等依存が疑われる人」は、年齢調整後で全体の1.7%でした。これは、およそ59人に1人に相当します。男女別では、男性2.8%、女性0.5%で、男性は約36人に1人、女性は200人に1人でした。年代別では40代が2.4%と最も高く、次いで30代が2.1%でした。
ギャンブル依存症のメカニズムを知る
依存症は、大きく分けて、物質依存(薬物、アルコールなど)とプロセス依存(ギャンブル依存、ゲーム依存、買い物依存症など)に分ける考え方があります。前者は化学物質が脳に作用して依存を深めていくということはわかりますが、実はプロセス依存も同様の作用があることがわかっています。
人間の脳には報酬系と呼ばれる、将来得られる報酬を見積り、動機付けや行動を制御するメカニズムがあります。
子どものころ、報酬系は非常に短期で、お菓子を食べたい、おもちゃで遊びたい、といった衝動をおさえることはできません。大人になるに連れて、教育や経験によって、報酬系はより長いサイクルへと成熟していきます。長期の報酬を目指して努力を重ねることを覚えていきます。
しかし、ギャンブルを繰り返すうちに、報酬への期待や衝動のコントロールに関わる仕組みが強く影響を受け、やめたいと思っていても行動を抑えることが難しくなることがあります。そのため、単純な意志の強さだけで解決しようとするのではなく、治療や支援を利用することが重要です。
依存症はまさに「脳の病気」とも言えます。脳のメカニズムが書き換わってしまうと、もはや本人の意志ではコントロールは不可能です。
→依存症の原因、治し方については、下記をご覧ください。
ギャンブル依存症かどうか?簡易にチェックしてみる
ギャンブル依存症かどうかについては下記の項目によって簡易にチェックできます。DSM(米国精神医学会の診断基準)では、「ギャンブル行動症」と表記されます。
過去12か月に4項目以上がみられることは、DSM-5-TRでギャンブル行動症を診断する際の基準の一部です。実際の診断は、症状の経過や生活への支障、他の精神状態との区別などを含めて医療者が行います。
1.興奮を得たいがために、賭け金を増やしてギャンブルをする必要
2.ギャンブルを中断、中止しているとイライラして落ち着かない
3.ギャンブルをやめようとしてもやめられない
4.頭のなかでギャンブルのことばかり考えている
5.苦痛の気分(例:抑うつ、不安、罪悪感、無気力など)から逃れようとしてギャンブルをする
6.ギャンブルで負けたあと、負けを取り返そうとしてギャンブルをする
7.ギャンブルの問題を隠そうとして、家族や治療者やその他の人々にウソをつく
8.ギャンブルのために、人間関係や仕事、学業などがそこなわれている
9.ギャンブルによる絶望的な経済状況から逃れるために、家族や知人などに借金を依頼する
出典:米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院) をもとに作成
下記からも簡単にチェックすることができます。

ギャンブル依存症の特徴を知る
基本的には、依存症に共通する特徴がありますが、ギャンブル依存症については下記のような特徴があります。
・進行性で自然治癒がない恐ろしい病気
長年、ギャンブル依存症に関わる帚木蓬生医師は、ギャンブル依存症について「悪性腫瘍よりもタチが悪く、治療しない限り進行し、自然治癒もないのが病的ギャンブリングです」と述べています(帚木蓬生「やめられない ギャンブル依存症からの生還」(集英社))。
ギャンブル依存症は、放置すると借金や家族関係、仕事などへの影響が大きくなることがあります。一方、適切な治療や支援につながることで回復は可能です。
・ギャンブル依存で特に大きな問題になりやすい「借金」と「ウソ」
・借金
ギャンブル依存症の悪影響で一番問題となるのは“お金”です。ギャンブル依存症の人は自分のお金がなくなってもやめることができずに、借金に手を出すようになります。リスク認知が大きくゆがんでいますから、次は取り返せる、という意識はより強くなります。また、借金がある場合や、リスクの大きな賭けに意欲を燃やす傾向もあるため、損害はさらに膨らみます。
・ウソ
ギャンブル依存症だけに限りませんが、自分の依存行為を達成するために、どんなウソでもつくようになってしまいます。本来ならばそんな人ではないのに、性格が変わったようにウソをつくようになります。本人の性格のせいというよりは、依存症によって衝動性をおさえられなくなっていることなどによります。
家族や周囲の人も振り回され、結果として信頼を損ない、依存症患者はさらに孤独を深めていきます。
・その他の症状
その他、依存症に見られる症状が生じます。
・否認(病識の欠如)
依存症には病識がない事が多く、自分は依存症ではないと否認しようとします。
・行動障害(問題行動)
経済的な困窮や強い衝動性によって、家族への暴力、窃盗などの問題行動につながるケースもあります。また、ギャンブルを優先することで、育児や家庭生活がおろそかになるなど、家族に深刻な影響が及ぶこともあります。
・症状の多様さ、症状の波
依存症は、典型的なものばかりではなく、症状に波があったり、多様であったりします。あるときはピタリと止めたり、といったことはよく見られます。典型的なイメージばかりで症状を捉えていると、依存症であることを見過ごしてしまう恐れがあります。
・併存する病気
・精神疾患との併存
ギャンブル行動症では、うつ病や不安症、アルコール・薬物の問題、ADHDなどが併存することがあります。こうした問題がギャンブルに先行する場合もあれば、ギャンブルによる生活上の困難から悪化する場合もあります。
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・他の依存症との併存(クロスアディクション)
複数の依存行動が併存したり、ある依存行動が減った後に別の依存行動が問題になることがあります。背景には、ストレス対処や衝動性、感情調整など共通する要因が関係する場合があります。
出典:「田辺等「ギャンブル依存症」(NHK出版)」など
ギャンブル依存症の原因を知る
・居場所や絆の喪失(「社会のパラレルワールド」としてのギャンブル)
孤立や居場所のなさは、ギャンブルにのめり込む背景の一つになることがあります。一方、家族や友人、地域などに安心してつながれる場所があることは、回復を支える重要な要素になります。
現実に居場所がないために、「社会のパラレルワールド」としてのギャンブルにのめり込むということがあります。
・幼いころの養育環境~トラウマや愛着障害、アダルトチルドレン
幼少期の虐待やネグレクト、家庭内の慢性的なストレスなどの逆境体験は、その後のギャンブル問題の重要なリスク因子です。また、不安定な愛着は、感情調整やストレスへの対処を難しくし、ギャンブル行動への脆弱性につながります。
安心できる人間関係を持ちにくかったり、不安や孤独を人との関係の中で調整しにくかったりすると、ギャンブルが気持ちを紛らわせたり、感情を調整したりする手段になりやすくなります。
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・性格気質(“意志が弱い”ために依存になるのではない)
ギャンブル依存は「意志が弱い人がなる」という問題ではありません。性格だけで説明できるものではなく、報酬への反応、衝動性、ストレス、精神状態、社会環境など複数の要因が関係します。依存症は意志が弱いからなる、という偏見がありますが、実際はそうではありません。依存症自体は脳のメカニズムによって習慣化されますので、意志の問題に関係なく陥ってしまいます。
・ギャンブルへの接触
若いころにギャンブルに触れる機会が多かったり、先輩などからの手ほどきがあるなど、ギャンブルへの接触機会が多いことは依存症の背景の一つとなります。
女性の場合は、男性に比べて依存症に陥る年齢は高い傾向があります。
ギャンブル依存症を治す(克服する)ために必要なことを知る
依存症は共通することが多く、ギャンブル依存症への対応でも基本的な事柄は、アルコール依存症など他の依存症と変わりません。
1.問題を認め、早めに支援につながる
ギャンブルの問題を自分だけの意志で解決しようとしても難しい場合があります。借金や家庭・仕事への影響が出ている場合には、「もっと悪くなってから」と待たず、早めに専門の相談機関や医療機関につながることが重要です。治療への迷いが強い場合には、動機づけ面接などを通じて、本人自身が変化の必要性を整理していく方法もあります。
2.イネーブリングに注意する
特に、家族が、ギャンブル依存症患者をしっせきしたり、止めさせようとしながら、結果的に依存症を支えてしまっていることを「イネーブリング」といいます。
借金を繰り返し肩代わりするなど、結果的にギャンブルを続けやすくする援助には注意が必要です。一方で、本人を突き放すことが回復につながるとは限りません。家族自身も専門機関に相談し、金銭管理や関わり方について支援を受けることが大切です。
3.認知行動療法(CBT)など専門的な治療を受ける
ギャンブル行動症では、認知行動療法(CBT)がよく研究されている治療法の一つです。ギャンブルにつながるきっかけや考え方、負けを取り戻そうとする思考、衝動への対処方法などを整理し、再発を防ぐ方法を身につけていきます。
4.トラウマや愛着の問題など、依存の背景にも取り組む
過去のトラウマや愛着不安、強い孤立感などが依存行動の背景にあるときは、ギャンブル行動そのものへの治療とあわせて、それらの問題にも取り組むことが重要です。ギャンブルによって和らげようとしていた苦痛を理解し、別の方法で調整できるようにしていくことが回復につながります。
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▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」
▶「大人(青年期以降)の愛着障害の治し方~必要な5つのポイント」
5.自助グループに参加する
ギャンブル依存症には、薬で治るということはありません。少しずつ失われた社会とのつながりを取り戻していく必要があります。GAなどの自助グループやピアサポートが回復の大きな支えになる人もいます。専門的な治療とあわせて、孤立を防ぎ、回復を続けるための選択肢の一つです。
GA(ギャンブラーズ・アノニマス)というグループがあります。これは、AA(アルクホリック・アノニマス)をモデルに作られたギャンブル依存症患者のための自助グループです。依存症患者同士が、自身の体験を話し、それを聞きます。基本的に批判されることも、上から助言されることもありません。同じ悩みを持つさまざまな人の話しを聞いたり、自分の話をすることで、自分を客観視できたり、社会の中での人のつながりを取り戻すことができます。
ギャマノンという家族向けの団体も存在します。ギャンブル依存症の患者がいることで傷ついた家族同士が参加して健康な生き方を回復していきます。
お住いの地域の近くにグループがないかは、インターネットなどで検索してご確認ください。
参考)→「ギャンブラーズ・アノニマス」
→依存症の原因、治し方については、下記をご覧ください。
※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。
(参考・出典)
帚木蓬生「やめられない ギャンブル依存症からの生還」(集英社)
エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」(星和書店)
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)
久里浜医療センター「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査」
など
















