うつ(鬱)病の治し方~公認心理師が解説する16のポイント

うつ(鬱)病の治し方~公認心理師が解説する16のポイント

うつ・気分障害

 近年、うつ病は、専門家でさえも困るほどに定義や対処に混乱が見られます。そのため、うつ病患者が適切な情報を得ることはなかなか大変です。

 今回、医師の監修のもと公認心理師が、うつ病を克服するために大切なことについて、皆様にわかりやすくまとめてみました。よろしければ参考にしてください。

 

 

<作成日2015.12.23/最終更新日2025.8.18>

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この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

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この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

1.混乱するうつ病治療について患者側もある程度の知識をそなえておく必要がある
2.適切なうつ病の診断~治療の流れを知る

3.自分がうつ病なのか?をまず自分でもチェックしてみる
4.自分は、どのタイプのうつ状態(うつ病)かを知る

5.うつ病の原因についても大切なことを押さえておく
6.うつ病の治療方法~運動療法、薬物療法、精神療法と生活改善

7.うつ病は、どのように治っていくのか?
8.抗うつ薬の効果は、重症度や状態によって異なる

9.セカンドオピニオンを求めることが必要なケース

10.軽症~中等度の場合は、経過の観察と精神療法(有酸素運動を行いながら)が主となる

11.どの程度のうつ病でも、土台にあるのは、生活習慣の改善
12.具体的な症状や環境から治療方針を相談する

13.いわゆる「新型うつ」「現代型うつ」への対応
14.「休養」とは、ただ休むことではない

15.適切なタイミングと方法で勇気づけ、回復を後押しする

16.うつを治すとは、元に戻ろうとすることではなく新たな自分へ変わろうとすることである

 

 

 →うつ(鬱)病の原因などについては、下記をご覧ください。

 ▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント

 ▶「双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解

 

 

専門家(公認心理師)の解説

 うつ病やうつ状態の改善に、有酸素運動が高い効果を持つことは多くの研究で示されています。日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」でも、運動療法は治療選択肢の一つとして挙げられています。また、薬物療法と運動療法を比較し、運動療法で良好な結果を示した研究もあります。運動の大きな特徴は、脳だけではなく身体全体に働きかけることです。認知機能、睡眠、代謝、自律神経系など、心身の健康に幅広い効果が期待できます。そのため、当センターでも、可能な状態であれば有酸素運動をうつ状態からの回復において非常に重要な取り組みの一つと考えています。 一方、運動療法だけでも解決しないものもあります。それは、一つにはトラウマによって生じるものです。特にハラスメント(心理的な呪縛)が関わるものはトラウマケアなどの取り組みも必要となります。あるいは、人生の方向性や自分を見失った結果によるうつ病も、カウンセリングなどの助けを借りて立場から自分を解放させ、人生の方向転換を柔軟に行っていく必要があります。 あと、いわゆる更年期、外傷(による炎症に絡むうつ症状)などからくる身体的な要因によるうつ状態についても有酸素運動が有効に働くことが考えられます。 症状が中等度から重度の場合などには、薬物療法も重要な治療選択肢となります。症状を和らげ、生活や運動、心理的な取り組みが可能になるよう支える役割もあります。

 

 

 

1.混乱するうつ病治療について患者側もある程度の知識をそなえておく必要がある

 日本うつ病学会理事長だった野村総一郎教授も「皮肉なことにうつ病への関心の高まりと比例して、それが大衆化し、それに応じて誤解も広がり、その弊害も大きくなっているように思える」「うつ病を研究している専門家の間ですら、うつ病概念への安直な理解、もっとはっきり言えば誤解がまん延しつつある」(野村総一郎「うつ病の真実」(日本評論社))と述べていますが、現在の日本のうつ病治療は混乱している部分があります。

 なぜそのような状況になったかというと、うつ病は、1980~90年代に普及したDSM(米国精神医学会の診断マニュアル)の影響や2000年代から製薬会社などがSSRIという抗うつ剤の普及のために行った「うつ病は心の風邪」というキャンペーンなどでうつ病の概念と診断基準が拡大したことにあります。

 簡単に言うと、症状だけを見て「うつ病」と判断されるようになってしまったのです。そのため、従来は単なる「憂うつ」とされたことまで何でもかんでもうつ病となってしまい、専門家でさえもその定義に困る事態に陥ってしまいました。

 原因を考慮しない治療はありえませんが、症状だけを見て診断されることが多くなった結果、タイプが異なる抑うつ症状まですべてが同じ「うつ病」とされるようになってしまいました。必要もないケースに抗うつ剤が安易に処方されることもあります。

 それぞれの医師やカウンセラーは患者のためを思い、治療に取り組んでいますいますが、うつ病治療を取り巻く環境が適切な対処を妨げているのです。

 

 うつ病を治すためには、適切なケースに適切な治療を行うことが必要です。患者も混乱に巻き込まれないために、ある程度、うつ病治療の実状を知っておく必要があります。

 

 

 

2.適切なうつ病の診断~治療の流れを知る

 いろいろな考え・取り組み方がありますが、うつ病治療は下記のような流れがあります。

 1.まず、自分がうつ病かどうか、うつ病であればその程度、タイプを確認してみる。
 2.うつ病の疑いがあれば、地元の病院で診察を受ける。

 3.軽度の場合は、傾聴や心理教育、休養・生活習慣の改善などを基本とし、状態に応じて運動療法や心理療法、薬物療法などを選択する。

 4.中等度~重度の場合は、医師の診察を受け、症状や状態に応じて薬物療法、精神療法(心理療法)などを組み合わせる。状態が許せば生活リズムを整え、回復に合わせて運動などの活動も取り入れていく。

 
 実際、イギリスではうつ病の治療は、認知行動療法を中心に上記のような進め方が国家レベルでおこなわれています。

 

 

 

3.自分がうつ病なのか?をまず自分でもチェックしてみる

 まずは、抑うつ気分や興味・喜びの低下などの症状がどの程度続いているか、仕事や日常生活にどの程度支障が生じているかを確認します。ただし、症状だけで原因やタイプまで自己判断することは難しいため、症状が強い場合や長く続く場合には医療機関で診断を受けることが大切です。

 

【症状】
 
 下記の症状がある

  ・ほとんど毎日、一日中、何をしても楽しくない、喜びを感じない
  ・ほとんど毎日、一日中、抑うつ気分(絶望感、空虚感)に陥っている

 下記のうち、5つ以上が該当する。 

  ・食欲がない、または食欲が強くなりすぎる
  ・体重が著しく減った。あるいは増加した
  ・眠れない、または眠りすぎる
  ・疲れる、あるいは気力がない
  ・周囲の人も気づくほど、イライラしたり、動作がにぶい
  ・自分は存在価値のない人間、悪い人間だと思う
  ・なかなか考えがまとまらず、集中力や決断力が低下する
  ・繰り返し自殺を考える

 

【継続期間】
 
 下記に当てはまる。
  ・2週間連続でほとんど毎日、一日中続いている
 
 もし以下の場合なら典型的なうつ病ではない可能性があります。
  ・月経の前に始まり、月経後1週間で収まる
  ・産後4週間以内に始まった

 

【程度】

  軽度:仕事や日常生活への支障が少ない

  中等度:本来の能力は発揮できないが、日常生活や仕事はなんとか送ることができる

  重度:仕事、日常生活に著しく支障をきたしている

 

 

 

4.自分は、どのタイプのうつ状態(うつ病)かを知る

 うつ病の原因はタイプによって異なります。自分がどのタイプのうつ病なのかを明らかにすることは適切な治療の近道です。

 会社に行けない、日常生活に支障があるといった重度の場合は迷わず内因性を疑い、病院で相談してください。軽症の場合は、基本的には神経症性うつ病を疑い、まずは休養と運動(有酸素運動など)、場合によっては心理療法を選択してください。

 

 日本うつ病学会のうつ病治療のガイドラインでも「近年わが国ではうつ病患者が急増しているとされるが、その多くは軽症うつ病、もしくはうつ病と診断される基準以下の抑うつ状態の患者であると推測されている」と述べられているように、うつ病と診断されても、実際はそうではないケースが非常に多いです。

 参考)「日本うつ病学会治療ガイドライン2025」

 

 うつ病・うつ状態にはさまざまな現れ方があります。現在の診断体系では、単純に二つのタイプに分類するわけではありません。一方、うつ状態を理解するための臨床的な見方として、従来から「内因性」「神経症性(反応性)」という区別が用いられてきました。現在でも、症状がどのような背景から生じているのかを考えるうえで参考になる場合があります。

 

内因性うつ病

 内因性とは、他の病気や環境、心理的なことが原因ではなく、遺伝的な体質などによって生じるものです。基本的には、思い当たる理由なく生じるのがうつ病ということです。いわゆるうつ病とは内因性うつ病のことを指します。拡大されたうつ病の概念と区別するために、「中核的うつ病」「典型的なうつ病」といった表現をされる場合もあります。

 内因性うつ病は、うつ病になった直接的な原因はわからず(了解不能/断絶)、しいて言えば、「脳(あるいは身体)のくたびれ」で起きると考えられています。脳の神経伝達物質や神経栄養因子など生化学反応の不調や、副腎や甲状腺のホルモンの乱れなどが考えられます。従来、こうした典型的・内因性とされるうつ病は、抗うつ薬などの薬物療法が効果を発揮しやすい病態として捉えられてきました。

 

・内因性うつ病の中核的な症状

 うつ病の症状は、さまざまな症状が見られます。その中でも中核的とされる症状は下記のようなものです。

 

【身体症状】

 睡眠障害:寝つきが悪く、眠りが浅く、いつもより2~3時間早く目覚めて眠れなくなることがある。

  ▶「不眠症・睡眠障害の原因と診断~6つの視点からチェックする
 食欲の変化:食べたい気持ちがわかない。食べてもうれしくない。味がわからない。多くの場合で体重が減る。
 体の怠さ:全身が重く、けだるい
 その他:頭が重い、痛い。息苦しい。口が乾く。はき気がする。便秘。性欲の減退。寝汗、など

 

【精神症状】

 関心・興味の減衰:以前であれば興味があったことに関心が向かなくなる。
 意欲・気力の減退:何をするのもおっくうになる。
 知的活動能力の減退:当たり前にできていたことができなくなる。頭に入らなくなる。
 その他:無力感。劣等感。自責感。罪責感。焦燥感。不安。自分や他者への怒り。悲哀感。寂ばく感、など

 

【日内変動】

 日内変動とは、朝起きた時が最も状態が悪く、昼ごろには何度かましになり、夕方には落ち着いている。
 夜になるに連れて元気が出てきて、意欲も感じられるようになるが、眠りが浅く、また朝になって悪くなる、
 といったパターンが代表的とされます。

 日内変動は、神経症性のうつ病には基本的には見られない症状とされます。

 

 

神経症性うつ病(抑うつ神経症、反応性うつ病、抑うつ反応)

 心理的な要因、環境的な要因、などで生じるものです。神経症性うつ病の原因は、過大なストレスや心理的な問題と考えられます。この場合は、原因は、ストレスや環境、あるいは、内面にある問題(トラウマなど)が原因です。こうした心理社会的な要因が大きい場合には、薬物療法だけでは十分な改善につながらないこともあり、休養や環境調整、生活習慣の改善、心理療法などを通じて背景にある問題に取り組むことが重要になります。

 かつてであれば、「ノイローゼ」とか、「神経衰弱」といわれていた、病気の手前の不調状態、もこれに当たります。

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ

 ▶「適応障害(適応反応症)とは?原因とメカニズムを公認心理師が解説

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状

 

 

その他

 脳卒中など、脳の病気といった直接的な脳の疾患によるもの(身体因)があります。また、糖尿病、がん、心筋梗塞などが抑うつ症状を招くことがあります。

 

 

 
Point

 実際の臨床では、内因性とされるうつ病でも、よくよくその人の経過を見ていくと、長期間の無理や、人生の方向性、自分自身を見失ったことなどが背景にあると捉えられるケースもあります。区分けは難しいのですが、ただし、上記の区別に意味がないか?といえばそうではなく、区分けを知っておくことはうつ病の理解の助けになります。

 

 

 

 

5.うつ病の原因についても大切なことを押さえておく

 うつ病の原因は一様ではありません。タイプごとに原因も異なります。うつの原因についても、踏まえておくべきいくつかのポイントがあります。

 下記に記事をまとめていますので、そちらをご覧ください。

 ▶「うつ病とは何か~原因を正しく理解する9のポイント

 

 

 

6.うつ病の治療方法~運動療法、薬物療法、精神療法と生活改善

 うつ病にはさまざまな治療方法があります。主なものには「運動療法」「薬物療法」「精神療法(心理療法)」があり、その土台として休養、環境調整、生活習慣・生活リズムの改善があります。どの治療を選ぶかは、症状の程度や経過、背景、本人の希望などによって異なります。

 
Point

 なかでも有酸素運動には、うつ症状を改善する効果を示す研究が数多くあり、身体全体の健康にも幅広い効果があることから、積極的に取り入れたい方法です。症状が強い場合には薬物療法などで状態を支えながら、回復に応じて運動や生活習慣の改善を取り入れていくことが考えられます。

 参考:ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版) など

 

 

運動(有酸素運動など)

 運動療法とは、有酸素運動などを行い、脳や身体の機能を改善、回復させるものです。さまざまな精神障害の改善にも高い効果があることがわかっています。
 運動の効果として明らかになっているのは、まず脳内のニューロンの新生が活発になり認知機能が改善することです。ラットの実験では、ニューロンの新生は3、4倍になることがわかっています。次にシナプスの可塑性や伝達効率が上がるなど、脳内伝達物質の循環も活性化されます。また、運動を通じて自分の身体感覚が戻り、自律神経系、免疫系、内分泌系といった身体の機能が回復すると考えられています。

 運動療法は、うつ症状の改善について高い効果を示した研究があり、薬物療法や心理療法と比較した研究でも注目すべき結果が報告されています。また、身体的な健康にもさまざまな利点があります。

 有酸素運動といってもハードな運動は必要ありません。週に2、3日30分程度ウォーキングを行うだけで大丈夫です。外に出ることが難しい場合は、ヨガ、ピラティスなども効果的です。最近であればYoutubeなどの動画を見ながら簡単に自分でヨガを行うことができます。

 

・運動療法の効果~薬物療法との比較で高い効果を示した研究

 運動療法と薬物療法を比較した研究の一つでは、156名のうつ病患者を対象として、運動療法は週三回(準備運動10分、ウォーキングなどを30分、クールダウン5分)行い、10カ月後比較を行いました。その結果、薬物療法では回復が約55%、一部回復が10%弱、再発が40%弱。併用では回復が約60%強、一部回復が10%弱、再発が30%弱。運動療法では回復が約90%弱、一部回復が5%弱、再発が10%弱という結果でした。

 ※ただし、これは一つの研究の結果であり、すべてのうつ病患者で同じ結果になることを意味するものではありません。運動療法全体の効果は、複数の研究をあわせて評価する必要があります。

 一方、抗うつ薬にも有効性は確認されていますが、すべての人に十分な効果が得られるわけではなく、効果の大きさや必要性は重症度や個々の状態によって異なります。認知心理学者の村上宣寛教授は、世の中で当たり前と知られている心理学の知識を上げながら「うつ病の治療には薬物療法が効果的である」ということについて、「まさかこんな事は信じていないでしょうね」と述べている(村上 宣寛「心理学で何がわかるか」(ちくま新書))。このように薬物療法への過大評価を批判する見解もあります。

 

 

薬物療法

 薬物療法は、うつ症状を軽減し、回復を助けるために行われる治療の一つです。特に中等度~重度のうつ病では重要な治療選択肢となります。主に抗うつ薬が使用され、症状や状態に応じて薬剤が選択されます。中等度以上のうつ病(主として内因性)に対しては治療の柱です。抗うつ剤が処方されます。現在は、三環系、四環系と呼ばれる従来の薬に比べて副作用が少ないとされるSSRI(フルボキサミン、パロキセチン、エスシタロプラム、セルトラリンなど)、あるいは、意欲の低下が見られる人にはSNRI(ミルナシプラン、デュロキセチンなど)が用いられます。また、症状に合わせて抗不安薬、睡眠薬なども処方されます。

 

 

 

精神療法(心理療法)

 うつ病の背景となる性格、心理傾向や、環境要因への対応改善、再発予防のために行われるのが精神療法です。心理学習、症状の把握、認知の修正などによる社会への適応、抵抗力を身に着けていきます。また、長期間のストレス、対人関係、ハラスメント、トラウマ、これまでの生き方や頑張り方などがうつ状態の背景にある場合には、その背景を理解し、環境や人との関わり方、生き方を見直していくことも重要になります。

 精神療法(心理療法)は、うつ病の重要な治療選択肢の一つです。認知行動療法や行動活性化などには有効性が示されており、中等度~重度でも状態に応じて薬物療法などと組み合わせて行われます。

 手法としては、認知行動療法や対人関係療法、トラウマ治療(ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ、ハコミセラピー、トラウマ解放エクササイズ、ブレインジム、TFT、フラワーエッセンス、その他トラウマケア、など)、森田療法、家族療法などがあります。

 

▶「マインドフルネスとは何か?~本当の定義、やり方、学び方のまとめ

▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ

 
Point

 生育歴などを見ながら判断していきますが、子ども自体に家庭や学校でストレスを負ってきた、あるいは会社でのモラハラ、パワハラなどでうつ状態が続く場合は、トラウマケアなどを行って回復を図っていきます。

 

その他

上記以外には、「電気けいれん療法」「磁気刺激療法」「光療法」「断眠療法」などさまざまな方法があります。

 

 

 

 

7.うつ病は、どのように治っていくのか?

 典型的なうつ病とはそもそも、特別な理由なく症状が出て、症状の反復がありながら、次第に自然に回復していくものです。進行性の病気ではなく、症状が一定期間現れる病気であるとされます。

 自然に治るものなのですが、その間の苦しみは想像を絶するものがあります。人によって、数カ月から数年かかることがあります。また自殺のリスクもあります。そのため、薬物や、精神療法の助けを借りて、苦しみを緩和して、回復を助けていきます。

 

 

 

8.抗うつ薬の効果は、重症度や状態によって異なる

 従来の日本の精神医学では、典型的・内因性とされるうつ病には抗うつ薬が効果を発揮しやすい一方、心理社会的要因の大きい神経症性うつ病などでは、休養や環境調整、精神療法を重視するという臨床的な考え方がありました。

 現在では、こうした内因性/神経症性という単純な分類で治療を決めるのではなく、症状の程度や特徴、経過、患者の背景などを踏まえて治療を選択します。

 抗うつ薬には有効性が確認されていますが、その効果は一様ではありません。特に軽度うつ病については、抗うつ薬のプラセボに対する優位性が小さいとする研究がある一方、軽度から重度まで一貫して優位性を示した研究もあり、研究結果は一致していません。

 一方、重症度が低いほど抗うつ薬とプラセボとの差が小さくなることを示した研究もあります。例えば、米国の食品検査局(FDA)のデータにもとづいて2008年に公表された論文よると、抗うつ剤(SSRI)とプラセボ(偽薬)とを比較すると、軽症、中等度の患者では、有意差がなく、最重症でのみ優位差があったということです。

 
 2010年に公表された別の論文でも同様の結果で、プラセボに対する抗うつ剤の効果は「皆無か微小」しかない、との論文が発表されました。調査では、内因性かどうかという区別があるかはわかりませんが、いわゆる中核的なうつ病の割合と重なるのではないかと考えられます。

 日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」でも、軽度うつ病に対して、支持的な傾聴や心理教育、生活習慣の改善、適切な休養、日常生活の負担軽減などの基礎的な介入を行いながら、状態に応じて治療を選択することが重視されています。さらに、認知行動療法(CBT)などの精神療法や、集団あるいは指導下での運動療法も治療選択肢として挙げられています。

 ただし、処方された薬については自分で中断したり、減薬したりせず服用しましょう。疑問があれば医師に相談するか、セカンドオピニオンを求めましょう。

 

 参考・出典)「日本うつ病学会治療ガイドライン2025」

 

 

 

9.セカンドオピニオンを求めることが必要なケース

 薬物療法も、最初から合う薬を探すのは難しく、通常いくつか薬を試して適合するものを探していきます。さらに、抗うつ剤は、効果が出るまでは2週間程度タイムラグがあることが知られています。一つの薬で6~8週間試してダメなら薬を変えて様子を見ていくことになります。

 基本的に、同じ役割の薬は同時に1種類のみが望ましいとされます。同時に複数の薬を出すと適合や副作用の影響がわからなくなってしまうからです。

 
 同時に3種類以上出る場合は医師の見立てが明確ではない恐れがあります。また、薬は合うかどうかが大事で種類が多ければ効くというものではありません。改善しないと訴えた場合に漫然と処方が増えるようでしたら、セカンドオピニオンを求めましょう

 

 セカンドオピニオンを求めることが適切なのは下記のような場合です。
 (井原裕「うつの8割に薬は無意味」(朝日選書)より)

 ・初診で3種類以上だす。
 ・処方した薬の説明をしない。
 ・副作用の説明がない
 ・不調を伝えるたびに薬が増える※1。

 ・治療に関して疑問を伝えると機嫌が悪くなる
 ・薬だけで、助言、指導、提案をしない。
 ・症状ばかりを訪ねて生活を知ろうとしない※2。

 

 ※1.SSRIなど抗うつ剤については、効果が出ない場合は効果が出る最大量まで増やしていくのが通常です。そのために、改善しない場合に処方する量が増えることはおかしなことではありません。

 ※2.日本の病院では、一人の患者に長時間対応することはできません。
  そのため診療時間が短いからという理由だけで医師への不信を抱くことは適切ではありません。

 

 

 

10.軽症~中等度の場合は、経過の観察と精神療法(有酸素運動も)が主となる

 前項で紹介した日本うつ病学会のガイドラインでも、軽症うつ病については、「初診時には、薬物療法は開始せず、傾聴、共感など受容的精神療法と心理教育を開始し、治療経過の中で病態理解を深め」とあるように、軽症うつ病については、経過の観察と精神療法が主となります(有酸素運動を行うことももちろん必要です)。軽症の場合は、うつ病ではない可能性も高いとされます。

 

 参考・出典「日本うつ病学会治療ガイドライン2025」

 

 

 

11.どの程度のうつ病でも、土台にあるのは、生活習慣の改善

 うつ病の治療では、薬物療法や心理療法、そして休養ばかりが過度に注目されますが、どのタイプ、どの程度のうつ病でも土台として求められるのは、生活習慣、生活リズムの改善になります。多くの場合、睡眠時間が足りていなかったり、不規則であったりします。飲酒なども悪く影響します。

 薬物療法中の飲酒については、薬との相互作用や症状への影響もあるため、主治医と相談することが必要です。また、必要な睡眠時間を確保し、できるだけ規則的な睡眠・覚醒リズムを整える事が必要です。入眠困難、早朝覚醒なども、睡眠リズムの乱れでおきていることが多いと言われています。

 

 

 

12.具体的な症状や環境から治療方針を相談する

 本記事でも説明させていただいておりますように、一概に「うつ病」といっても、症状の重さや内容によって対応の方法が異なります。また、仕事や家庭などの環境も人それぞれ違います。明らかに重度であれば迷うことなく休養と治療に専念することが必要ですが、グレーゾーンのうつ状態であれば、可能な範囲で日常生活を続けながら、生活改善と精神療法などの治療を受けることが適切と考えられます。 

 具体的な症状から治療方針や職場への伝え方など、医師と相談して決めていくことが必要です。

 

 

 

13.いわゆる「新型うつ」「現代型うつ」への対応

 「新型うつ」「現代型うつ」は正式な診断名ではなく、従来型とは異なる特徴を示すうつ状態を説明するために用いられてきた通俗的な表現です。新型うつについての診断は慎重に行うことが必要です。他の要因で症状が出ているおそれがあるにも関わらず、「うつ病」と診断されるとかえって症状を悪化させてしまうケースがあります。

 また、新型うつの場合は休養が改善のためになるとは限らないとされています。休養の必要性や仕事を続けるかどうかは一律には決められず、症状や職場環境などを踏まえて医師と相談することが必要です。多少つらくても、生活リズムを整えながら、働き続けることが大切な場合もあります。 
 周囲も、本人の病気を理解しつつ、本人は責めず、どっしりと構えて、本人の認識を徐々にポジティブなものへと変容させていくことが適切です。

 

 

 

14.「休養」とは、ただ休むことではない

 正しく伝わっていないうつ病に関する情報の一つが「休養」についてです。

 「休養」というと、ただ何もせず休むことであると思われています。もちろん、症状が強い急性期には、心身への負担を減らし、必要な休養を取ることが重要です。

 しかし、回復期に入ったら、生活リズム特に睡眠リズムを整えることが重要です。おっくうでも、床に伏せず、散歩(有酸素運動)をしたり、日を浴びたりするなど生活リズムを整えることが求められます。(タイミングや方法は個々のケースによります。)

 ワークスタイル、ライフスタイルと新たなものへと変えて、社会へ復帰していくためのリハビリ期間がほんとうの意味での「うつ病治療の休養」になります。 

 

 

 

15.適切なタイミングと方法で勇気づけ、回復を後押しする

 海外のうつ病治療のガイドラインでは、適切なタイミングで励ますことが示されています。特に回復期などは適切なタイミングで勇気づけて、回復を後押しすることは大切とされます。その際に必要なのは、うつ病は本人のせいではない、ということを前提とすることです。新しい人生の生き方に進むために必要なことが生じているだけととらえて周囲も寄り添う事が必要です。

 (「がんばれ」といった本人にさらなる行動を求めたり、責任を感じさせるような不適切な声掛けは回復期でも避ける必要があります。)

 

 

 

16.うつを治すとは、元に戻ろうとすることではなく新たな自分へ変わろうとすることである

 うつ病からの回復は、症状がなくなればそれで終わりとは限りません。長期間の無理や仕事、人間関係、これまでの頑張り方などが発症の背景にある場合には、同じ環境や生き方へそのまま戻れば、再び無理が生じることがあります。

 野村教授は「ユウウツが本当に消えるのは、その人が長く追求してきた目的を完全にあきらめ、自分のエネルギーを別の方向に向けるようになった時である」(野村総一郎「うつ病の真実」(日本評論社))ということばを紹介しましたが、うつ病は再発率の高い病です。単に症状を消すことだけを考えるような治療を行うと、再発しやすいと言われます。もし、うつ状態を、これまでの無理な生き方や環境を見直す契機として捉えることができるのであれば、単に症状が消えただけの回復は目的が達せられたとはいえません。

 一方、生活習慣を改善し、新しい(本来の)スタイルや考え方を身につけるとうつ病の目的は達成されて、再発防止につながると考えられます。

 

 

 

 →うつ病の原因などについては、下記をご覧ください。

 ▶「うつ病(鬱)とは何か~原因を正しく理解する9のポイント

 ▶「双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解

 

 

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。

(参考・出典)

山下格「精神医学ハンドブック」(日本評論社)
笠原嘉「うつ病臨床のエッセンス」(みすず書房)
宮岡等「うつ病医療の危機」(日本評論社)
野村総一郎「うつ病の真実」(日本評論社)
神庭重信ほか「現代うつ病の臨床」(創元社)
岡田尊司「うつと気分障害」(幻冬舎)
井原裕「うつの8割に薬は無意味」(朝日選書)
井原裕「生活習慣病としてのうつ病」(弘文堂)
井原裕「激励禁忌神話の終焉」(日本評論社)
大野裕「うつを治す」(PHP新書)
野村総一郎「やさしくわかるうつ病の症状と治療」(ナツメ社)
野村総一郎「ウルトラ図解 うつ病」(法研)
廣瀬久益「完全復職率9割の医師が教える うつが治る食べ方、考え方、すごし方」(CCCメディアハウス)
玉村勇喜「うつ病を心理カウンセリングで治す本」(ほおずき書籍)

池谷敏郎「体内の「炎症」をおさえると、病気にならない!」(三笠書房)

エドワード ブルモア「「うつ」は炎症で起きる」(草思社)

ジョン J. レイティ「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)

「日本うつ病学会治療ガイドライン2025」

村上 宣寛「心理学で何がわかるか」(ちくま新書)

など