悩みの原因や解決方法

パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと

[「パニック障害」と何か「社交不安障害」とは何か?「不安障害」とは何か?悩みの原因や解決方法]


 

 近年、有名人でも闘病経験を告白するようになり知られるようになりましたパニック障害。実は広く認知されるようになったのは最近のことです。克服するためには適切な知識が必要ですが、多くの情報が錯綜しております。今回は、パニック障害についてまとめてみました。

 

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パニック障害のイメージ

 

 

理解されにくいパニック障害(Panic disorder

 パニック障害(Panic disorder)とは、突然、めまいや吐き気、過呼吸や激しい動悸などが生じる症状です。古くからある病気で、かつては「不安神経症」などと呼ばれていました。「パニック障害」との呼び名が使われたのは1980年のことです。
 現在においても、一般社会や医療現場などでも理解が十分とはいえないとされます。
 そのため、「気持ちの問題だ」「また発作が起きたのか!」といった心ない言葉をかけられるということが実際にあったようです。

 もちろん、有名人が自身の闘病経験を発表したり、書籍、インターネット等での情報発信などから徐々に知られるようになってきています。医療現場での体制も整い始めています。

 

(参考)過去にパニック障害を罹患された有名人

  漫才コンビ「中川家」の剛さん、大場久美子さん、長嶋一茂さん、円広志さん、作家の宮本輝さん、Kinki Kids の堂本剛さんなど。体験談を出版されている方もいらっしゃいます。

 

 

 

パニック障害とは何か?

単なる恐怖症との違い~内因性の恐怖

 パニック障害が単なる恐怖症と異なる点は、単なる恐怖症はある対象への恐怖、状況への恐怖という「外側への恐怖」であるのに対して、パニック障害は「自分自身の内側からくるものへの恐怖」、内因性の恐怖であるという点です。
 
 パニック障害は、基本的には突然ひとりでに湧いてくる恐怖です。単なる恐怖症は自分が立つこの世界が「まともである」という確信の中で、恐怖となる対象物がある、という感覚ですが、パニック障害の場合は、よって立つ世界や自分そのものがめまいなどで揺れて感じたり、身体が言うことを効かなくなるなど、主観的世界全体が恐怖となる感覚です。

そのため、通常の恐怖症とは異なる難しさがあります。

 


パニック障害のチェック~その多彩な症状

 パニック障害というと、過呼吸が知られていますが、それはあくまで症状の一つで、実際は多彩な症状がおきます。

 診断基準では、下記のうち4つ以上が当てはまり(パニック発作)、一回目の発作から1月の間に、また発作が起きるのではないかという「予期不安」や、発作が起きそうな状況の回避が起きる場合に「パニック障害」と診断されます。

 

 ・動悸、心悸亢進(心拍数の増加)
 ・発汗
 ・身震いまたは震え
 ・息切れ間または息苦しさ
 ・窒息感
 ・胸痛または胸部の不快感
 ・嘔気または腹部の不快感
 ・めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
 ・現実感消失(現実ではない感じ)または離人症状
 ・コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
 ・死ぬことに対する恐怖
 ・異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
 ・冷感または熱感(ほてり)

 

下記の場合はパニック障害ではありません。

 ・身体に異常がある場合
  (低血糖、貧血、高血圧、褐色細胞腫、更年期障害、狭心症、僧帽弁逸脱症、甲状腺機能亢進症、

   不整脈、側頭葉てんかん、メニエール病、カフェイン過敏症など)
 ・他の精神障害で説明できる場合
  (パニック発作自体は統合失調症、うつ病、PTSDや社交不安障害でも生じます。)
 ・薬物などの影響で説明できる場合。
 ・特定の状況で必ず発作が起きる場合。

 


・「予期不安」とは何か?

 発作への恐怖から、また起きるのではという不安を持つのが「予期不安」です。予期不安は、パニック発作に伴って生じる症状でパニック障害の根本的な症状です。予期不安がない場合は、パニック障害とは診断されません。

 

 

・「過換気症候群」と「パニック障害」の違い

 過換気症候群はパニック発作で見られる症状の一つではありますが、基本的には別の病気です。過換気症候群のみの場合はパニック障害とは見なされません。また、過換気症候群とパニック障害ではメカニズムも異なるとされています。過換気症候群はストレスへの反応で生じる「心身症」であるのに対して、パニック障害は脳や神経系の機能不全であることです。

 


・パニック障害に伴う症状~「広場恐怖症」「対人恐怖症」「うつ状態」「アルコール依存症」「自傷行為」など

 パニック障害になると、逃げれない場所、助けを求められない場所を避ける「広場恐怖症」を引き起こします。広場とは、広い場所のことではなく、街中など逃げれない場所のことです。古代において公共の場所をアゴラ(広場)といったことからきています。パニック障害の約8割の方が、広場恐怖症に陥ると言われます。
 
 また、パニック発作で恥をかくことを恐れて人前を避ける、「二次的対人恐怖(社交不安障害)」になる人も、全体の3分の1に及びます。

 さらに、6割の人が「うつ状態」に陥ることがあります。パニック障害が収まっても、うつ状態だけが残るケースも見られます。パニック障害に伴ううつ状態とは、本当のうつ病とは異なります。そのため、見逃されがちです。

 パニック障害に伴う不安を紛らわせるために、「アルコール依存症」に陥ったり、「自傷行為」を行ってしまうことも少なくありません。

⇒「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

⇒「対人恐怖症、社交不安障害とは何か?原因、克服、症状とチェック

⇒「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

⇒「リストカット、自傷行為の本当の心理、原因・理由とその対応

 

 

・パニック障害に伴う身体の症状

 パニック障害に伴って身体でも症状が起きることがあります。「過敏性腸症候群」「偏頭痛」「睡眠障害」が代表的です。特に、パニック発作の4割は睡眠中に生じていることから睡眠が怖くなり、睡眠障害に陥るケースは多いとされます。

 


・パニック障害に伴う性格や行動の変化

 ・依存的になる
  パニック発作で自信を失い、過度に依存的になるケースがあります。

 ・自己中心的になる
  うつ状態を併発している場合に、気分のアップダウンが激しくなり、過度に自分が望むことを要求し、そうではないものを避けるようになり、まわりからは自己中心的とみられる場合があります。  

 ・攻撃的になる(怒り発作)
  いわゆるキレる状態です。些細な事に突然怒りだして、大声を出す怒り発作がおきるケースです。うつ状態を併発している場合に多く、発作の後は自己嫌悪に陥ってしまいます。

 

 

・パニック障害の残遺症状

 パニック障害は、非発作性不定愁訴と呼ばれる残遺症状が残る場合があります。


 ・なんとなく不安
 ・現実感がない感じ
 ・イライラする
 ・感情がわかない
 ・首や肩などが痛い
 ・息苦しい
 ・動悸がする
 ・熱感や寒気がする
 ・目がチカチカする
 など

 回復からかなりの時間(数十年)が経ってから残遺症状が起こる場合もあります。残遺症状が残ることがあることを知らない場合、別の体調不良とされて、適切な対応がなされないことにもなります。

 

パニック障害のイメージ2

 

パニック障害の発症~誘因としてのストレス、気質、体質

・ストレスが誘因となる

 パニック障害は内因性の恐怖症と言われ、最初の発作は前触れ無く突然生じます。ただ、多くの場合その背景としてストレスがあることがわかっています。

  ・仕事や家庭などで一定期間、過剰なストレスにさらされている場合
  ・ショッキングな出来事や事故などに遭遇した場合
  ・体調不良、栄養失調などでストレスを受け止めることが出来ない場合

 

 こうしたことがある場合に、脳の神経伝達物質のバランス、自律神経、など脳や身体のバランスが崩れてパニック発作が生じるのです。うつ病が、ストレスが一段落した後に発症することが多いのに対して、パニック発作はストレスの渦中で生じる傾向があるとされます。 

 

 

・パニック障害は性格が原因ではない

 弱い性格だから、怠け者だからパニック障害になるというのは全くの誤りです。むしろ、バリバリと仕事をするような人が陥ることも多いのです。蓄積されているストレスに気づかずに、自律神経の失調を招くといったケースです。


 弱い性格とは関係ありませんが、臨床での経験などからパニック障害になりやすい体質や気質があることがわかっています。不安を感じやすい体質、ストレスを感じにくい体質、ホルモンのバランスが乱れやすい体質、呼吸器・循環器へのストレスの臓器選択性などがあるとパニック障害になりやすいとされます。

 

 

・ストレスの臓器選択性

 ストレスを受けても万人がパニック障害になるわけではありません。ストレスに対する反応は人によって異なります。そのことを説明したのが、「ストレスの臓器選択性」です。ストレスの臓器選択性とは、ストレスの影響が身体のどこに現れるかについての傾向のことです。どうやら人によって予め決まっているようです。
 蕁麻疹に現れる人、消化器に現れて過敏性腸症候群になる人や胃潰瘍になる人がいるように、臓器選択性が呼吸器、循環器に現れる人が「パニック障害」となります。実際にパニック障害の人はそうでない人の2~4倍、心臓疾患にかかりやすいことがわかっています。

 


・パニック障害の原因とメカニズム~警報アラームの異常

 

脳内の神経伝達物質のアンバランス

 危機を察知して警報を鳴らす機能として情動の中枢である扁桃体が興奮して、それが青斑核に伝わりノルアドレナリンが放出され、視床下部を通じて自律神経を刺激し、動悸やめまいなどが生じます。
 本来は興奮し過ぎないようにセロトニンやGABAという物質が存在し、適度な不安とリラックス感じられるようにバランスをとっています。しかし、セロトニンやGABAが不足している場合は、抑制が効かずに扁桃体の過剰な興奮(キンドリング現象)が生じてパニック発作が生じてしまいます。さらに、大脳辺縁系に伝わり予期不安、前頭葉に伝わると広場恐怖となります。

 これはパニック障害の仮説の一つです。神経伝達物質のアンバランスを仮説としているのは、セロトニンの減少を抑える抗うつ剤が効く場合と効かない場合があるからです。単なる脳内の病気というだけで捉えているとパニック障害全体を見誤ってしまうことになります。

 

自律神経の失調
 脳内だけではなく、自律神経系全体の失調とする考えもあります。自律神経は3ヶ月を越える長い期間ストレスにさらされると正常に機能しなくなり、交感神経の過活動(自律神経ストーム)が様々な身体症状を生むことがわかっています。自律神経は脳だけではなく、副腎などの器官も関係しています。 

 


・パニック障害の二層構造~2つの恐怖
 

 クレア・ウィークス博士は、パニック障害を二層建て(2つの恐怖)で説明しています。 

 一つ目の恐怖は、パニック発作など身体に生じる症状です。
 二つ目の恐怖は、症状に対する認識(恐れ、不安)です。

 二層建てで分けることはとても大切です。克服する際にそれぞれ分けてアプローチをすることができるからです。

 また、一つ目の恐怖だけであれば回復は比較的容易です。しかし、適切な診断が行われず、対応が遅れると、二つ目の恐怖が膨らみ始めます。そして、二つ目の恐怖が一つ目の恐怖を促進するという悪循環に陥ってしまいます。

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パニック障害を克服するために必要な5つのこと

1.適切な窓口で、診断を受ける

 まず何より、ご自身の状態がパニック障害であると適切な診断を受けることです。万一、呼吸器や循環器の病気であれば大変なことです。病院で検査をしてもらい、身体に問題がないことを確かめましょう。

 検査で異常が見つからないず、パニック障害が疑われる場合は「精神科」「精神神経科」「メンタルクリニック」を受診してください。内科など専門外の場合は原因の特定が遅れて、慢性化したり、こじれてしまうケースが珍しくありません。(アメリカでは7割の患者が診断確定までに10ヶ所の医療機関を訪れたとする調査結果もあります。)

 

 最近はインターネット等で情報を得やすくなっています。名前が通っていたり、大きければ良いというものでもありません。パニック障害の経験のある医師がいる病院を訪ねると安心です。

 パニック障害が知られるようになったのは、ここ2,30年のことです。それ以前は、医師もどのように対処してよいかわからず、当事者は理解されずに苦労をされてきました。現在でもまだ十分とはいえないため、適切な窓口や経験のある医師にかかることが大切です。

 

(参考) 心理的な問題についての窓口について

精神科、精神神経科:気分障害、統合失調症、人格障害など、心の病気を専門にするところです。

心療内科:ストレス性潰瘍、気管支喘息、過敏性腸炎など心の問題が背景にある身体の不調を扱うところです。心療内科と掲げていても、実際は精神神経科が扱う問題も扱える先生がいらっしゃる場合もあります。※社交不安障害、パニック障害、過呼吸症候群、摂食障害、うつ病は精神神経科、心療内科どちらでも扱われています。

神経内科:脳梗塞やパーキンソン病など脳の神経細胞に損傷が見られる病気を扱うところです。心の病気は専門外です。

メンタルクリニック:メンタルクリニックは心療内科、神経科、精神科といった分野を扱う医院を指します。否定的なイメージを弱めるために用いられている名称で正式な名称ではありません。訪問する前は自分の症状を専門としているのかについて確認が必要です。

相談室、カウンセリングルーム:心理士やカウンセラーが相談業務を行います。精神科医などとも連携しながら、精神療法を提供します。診断や薬の処方は行っていません。

 

 

2.パニック障害の実態を適切に把握する。

 パニック障害とは何か?について適切な知識を得ることが特に大切です。
適切な知識があればパニック発作を過剰に恐れることなく、環境やスタイルを変えることができるからです。

 特に、下記のことを知ることが大切です。

 ・パニック発作は、自律神経の異常から生じており、身体に問題はない。
 ・パニック発作で死ぬことは絶対にないし、倒れそうで倒れない、気が狂うこともない。
 ・パニック発作は平均で10~15分で、自然と治まる。
 ・身体には異常な状態を正常に戻す働きがある。かならず治る。

 

(参考)パニック障害はどの程度の期間で治るものなのか?

 早い人で3ヶ月、平均でも数ヶ月~1年ほどで良くなっていきます。パニック障害はかならず治る病気です。診断確定までにかなりの時間を要するケースもありますので、適切な窓口で適切な診断を受けて、慢性化を防ぐことが大事です。

 

 

3.自律神経の機能を正常に戻す取り組みをおこなう。

 ・生活リズムを整える。

 忙しく働いてきた方などにとっては、迂遠に見えるかもしれませんが、生活リズムを整えることなくして、パニック障害の克服は成り立ちません。長期間ストレスにさらされることがパニック障害の背景にありますが、長くストレスにさらされるということは生活リズムが崩されているということでもあります。
 若いころは体力や回復力があるためにごまかされていただけです。本来の自分の体質にあった睡眠や食事のリズムに戻していく必要があります。
 


 ・睡眠リズムを整える

 バリバリと働く方ほど、眠気とは我慢するもので短時間の睡眠で頑張ることが大切だと考える傾向にあります。しかし、海外旅行後の時差ボケの辛さにみられるように、睡眠を軽んじることはできません。自律神経の機能を正常化するためには適切な睡眠リズムを確保することが大切です。

 睡眠リズムは、時間の長さ時間帯とが大切です。最低でも一日7時間以上確保しましょう。特に、成長ホルモンが分泌される22時から午前2時の4時間は大切な時間帯ですから、22時には床に就くことが望ましいです。入眠と起床とがずれると次の日の入眠にも影響します。休日も平日も出来る限り一定のタイミングで寝るようにしましょう。

 人間は、明るいところから床についていきなり眠れるようには出来ていません。眠る前の1時間は横になってゴロゴロしたり、読書をしたりするなどして徐々に神経の興奮を収めていく必要があります。快適な睡眠をサポートするために、アロマディフューザーで自然とリラックス出来る環境を作るなど工夫されるのもよいでしょう。

 

 

・食事を改善する

 食事については、多くの情報がありどれが正しいのか判断することは難しいですが、基本的には栄養学などからみて適切な食事を心がけることが大切です。一日3食を決まった時間で摂り、栄養バランスの良い食事を取ってください。特に腸は第二の脳と呼ばれる器官です。冷たいものや消化に悪いものは避けるようにしましょう。
 
 栄養は食事の中で取ることが基本ですが、補助として腸を整えるサプリメントとしてエビオス錠(ビール酵母)や不安低減に効果のあるGABAなどを摂ると良いでしょう。

 パニック障害の治療中は、基本的にアルコール、カフェイン、炭酸飲料、タバコは発作を誘発する恐れがありますので控えてください。コーヒーやチョコレートなどは避けるようにして、お茶もカフェインレスのお茶(麦茶、ほうじ茶、たんぽぽコーヒーなど)に変えるようにしてください。抗うつ剤などを処方されている場合はアルコールは禁忌です。

 


・運動や、自律神経を整えるトレーニングを行う。

 運動、特に有酸素運動は自律神経を整えることに役立ちます。セロトニンが増加したり、神経細胞の新生が促進されます。

 ウォーキングなどで景色を眺めたり、外で呼吸をしたりすることがストレスの解消や、過去の記憶の整理にも繋がります。ウォーキング、ジョギング、水泳など自分が気持ちよく続けられる運動を行いましょう。

 乳酸はパニック発作を誘発する物質ですからあまり激しくは行わず、適度な負荷で一定時間行うことが大切です。しっかりとした運動は少なくとも週二回、散歩程度でしたらできれば毎日の習慣とするようにしましょう。外で発作が出ることが怖い場合は、家族に付き添ってもらっても良いでしょう。

 

 外での運動の時間を取れない場合は、産婦人科医の中原和彦氏が行っている、お手玉やティッシュペーパー呼吸法、膝運動をすることで自律神経を整える方法も有効です。
 ティッシュペーパー呼吸法とは、ハンガーにティッシュを垂らし、水平になるまで息を吹きかけることを10回/セットを一日4セット行い、深い呼吸を促進することで、脳幹(呼吸など)の機能を回復させます。
 膝運動とは、椅子に腰掛け、膝の上げ下ろしを片方ずつ10回、各30回をワンセットで一日5セット以上行い、大脳辺縁系(情動)の機能を回復させるものです。
 お手玉とは、文字通りお手玉を繰り返すことで、大脳新皮質(理性やバランス)の機能を回復させます。お手玉は左右の身体の動きと視線など複数の動作を統合して行う必要があります。そのため、乱れている心身のバランスを整える効果があります。また、作業を通じて、「今ここ」に集中する習慣が身につくとも言われています。

 詳しくは、中原和彦「「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る」をお読みください。

 

 自律訓練法や、マインドフルネスを行うことも効果があります。
 それぞれについても書籍やビデオなどが出ていますので、詳しくはそちらを参考になさってください。

 →関連する記事はこちらをご覧ください。
   「マインドフルネスとは何か?~その定義、特徴、効果、やり方」

 

 

・薬物療法

 パニック障害に限りませんが、根本的に解決するためには考え方やライフスタイルのパターンを変えることが大切です。薬物も不安を無理に抑えるためではなく、解決をサポートするために用います。 

 ・SSRI
  抗うつ剤として登場した薬です。神経伝達物質であるセロトニンが減少している場合に効果があります。※セロトニンの減少とは関係のない場合は当然ながら十分な効果が見られません。代表的な薬であるパキシルはパニック障害の約6割の方に効果が見られるとされます。日本でパニック障害の薬として保険が適用されるものは、パキシルとフェイゾロフがあります。保険適用されない薬が用いられることもあります。※SSRIが効かない場合は、三環系の抗うつ剤などが用いられる場合があります。

 

 ・SNRI
  抗うつ剤として登場した薬です。SSRIとの違いは、セロトニンだけではなくノルアドレナリンにも作用することです。意欲低下や無感動に効果があることから、うつ状態を併発している場合に効果的です。日本でパニック障害の薬として保険が適用されるものとしてミルナシプラン、デュロキセチンがあります。保険適用されない薬が用いられることもあります。 
 
 
 ・抗不安薬
  抗不安薬とは、神経伝達物質であるGABAの働きを強めることで神経の興奮を抑えるものです。SSRIと違い依存性や耐性が生じるため、長期間の服用は避けることが必要とされます。アメリカでは1ヶ月以内という指針があります。ベンゾジアゼピン系抗不安薬、クロナゼパム(ランドセン/リボトリール)、ブロマゼバム(レキソタン/セニラン)が知られています。

 

 ・β遮断薬
  パニック障害の結果生じた震えや心拍数の増加、発汗などの身体反応を抑えるためのものです。身体の反応はノルアドレナリンが交感神経を刺激して生じます。ノルアドレナリンの受け手であるβ受容体を塞いでしまう薬です。パニック発作そのものを抑える効果はありません。

 

 ・漢方薬
  パニック障害には漢方薬も効果があります。即効性はありませんが危険な副作用がないことが特徴です。柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、酸棗仁湯、甘麦大棗湯などがあります。
 

薬物療法の適切な活用方法

 パニック障害には薬物療法が用いられます。重要な治療の柱です。ただ、そのことだけに頼るのは適切ではありません。それは副作用の懸念といったことではなく、パニック障害の構造にあります。薬物で抑えようとしてしまうと、パニック発作が「薬物で抑えなければならないもの=自分では抑えられない重篤なもの」と意識されてしまう恐れがあります。

 また、薬物は脳内の神経伝達物質に作用するものですが、パニック障害は自律神経全体の失調です。自律神経が乱れていることに適切に向き合い、恒常性維持機能を発揮して、適切な状態に戻していくことが求められています。逆に不安を回避することは、不安を増幅させます。薬物療法ばかりに頼ることは結果として、それ自身が回避となり、慢性化を招く場合もあります。
 薬は発作を抑えるためにというよりは、自律神経を整えることをアシストするためや、不安に身体を慣らす際のセーフティネットと理解して、治療全体の中で適切に用いることが大切です。
 
 SSRIなどの薬は効果が出るまで最低2~4週間は必要で一定期間飲む必要があります。どの薬が合うかは予めわかりませんからいくつか試す中でわかります。
 そのため、自分で勝手に量を調整したりすると医師の治療計画が崩れてしまいますので勝手に減薬しないようにしましょう。また、離脱症状もありますから、減らす時も医師の管理のもと行うことが必要です。

 疑問や不安がある場合は医師に相談しましょう。相談を十分に聞いてくれない場合は、担当医を変更するなどして、信頼関係が築ける医師を探すことも必要です。

 

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4.症状に対する認識(恐れ、不安)を修正する。

 クレア・ウィークス博士はパニック障害を「パニック発作など身体に生じる症状」と「症状に対する認識(恐れ、不安)」の二層構造で説明しました。パニック障害の治療では発作を抑えることばかりに意識が向きがちですが「症状に対する認識(恐れ、不安)」を修正することも重要です。


・症状に対する認識(恐れ、不安)の修正

  メカニズムでも解説したように、不安症、恐怖症は悪循環によって引き起こされます。ありのままに捉えることができれば、恒常性維持機能によって正常な状態に戻されていきます。  
  しかし、不安を回避してしまうと悪循環は強化されてしまいます。回避を生じさせるのは、認知の歪みです。例えば、「パニック障害を起こす自分は恥ずかしい人間だ」とか、「人は自分を馬鹿にしている」と認識していれば、当然回避しようとしてしまうでしょう。
  これが誤った認知です。誤った認知を修正しなければ、悪循環を断ち切ることは出来ません。

誤った認知の例

  ・白黒思考(全か無か)
    一度でも発作が起きたら全てダメと思ってしまったり、ほどほどに捉えることが出来ない。

    ある種の完璧主義です。


  ・過大評価、過小評価
    自分を過小評価しすぎたり、逆に相手を過大評価しすぎたりしてしまうことです。
    パニック発作を起こす自分は弱い自分だと捉えてしまう。

  ・部分的焦点づけ
    パニック発作を起こした際の相手の表情などちょっとした相手の反応を過大に

    受け取ってしまう。

  ・「たまたま」と思えない
    例えば、たまたまある場所で発作が起きたら、次回も必ずその場所で失敗すると感じてしまう。


  ・根拠の無い決めつけ
    合理的な根拠なく、物事を決めつけてしまう。
    パニック発作が何か未知の身体の病だ、といったことです。


  ・べき思考
    「~すべき」「~してはいけない」など、過度に義務的、規範的になり柔軟に対処できなく

    なることです。
    仕事は休んではいけない、と思っていたら休養で休んでいる自分は許せなくなってきます。
    また、パニック障害の克服にはライフスタイルの変更が必要ですが、~~するべき と

    考えては柔軟にスタイル変更することができなくなります。

  ・極端な一般化
    「~~な人は、すべて~~だ」といったように、ある事例の特徴を全てにあてはめてしまう

    ことです。

  ・自分への過度な原因帰属
    パニック障害を全て自分のせいだと過度に考えてしまうことです。
    

  ・否定的な予測
    悪い出来事が起こると否定的な考えをもってしまう。
    またパニック発作が起きるのではないか、と考えることです。

 

 

 ・認知行動療法

   認知の修正を行うためには、主として認知行動療法などを用います。

  ある状況に対してどのように思うのか、を書き出します。それが合理的か、例外はないか、を確認し、より適切な考え方に修正していきます。

  認知の修正のコツは、無理にポジティブにしようとせず「~~な人もいるし、そうではない人もいる」「~~に越したことはない」「~することもできる」とほどほどにすると納得しやすいです。
  カウンセラーによってサポートされる場合もありますし、自身で行うことも出来ます。最近は、良い本がたくさん出版されています。

 

 ・エクスポージャー(暴露)
   エクスポージャーとは人間の身体の恒常性維持機能を利用して不安や恐怖を低減していく方法で、パニック障害克服には必須となるものです。
  恐怖を回避せずに、直面することで、徐々に恐怖に慣れ、脳のセンサーを適切な状態へと修正していきます。

   不安な状況をリストアップし、最初は簡単なことから行っていきます。
  例えば、電車に乗れない場合は、まず頭のなかでシミュレーションしてみる。頭のなかで感じる不安に浸ってみる。次に、実際に一駅だけまず乗ってみる。次に二駅、次に三駅と徐々に距離を伸ばしていきます。広場恐怖の場合は、家の近所からはじめて、少し遠くの街やお店などへと足を伸ばしていくのです。一人では不安でしょうから、最初は家族に付き添ってもらうと良いでしょう。

  エクスポージャーとは、不安を感じないかどうか自分を試すのではなく、不安を感じるためにあります。不安というのは回避しなければ必ず収まります。不安を感じたら、そのまま不安にしばらくとどまりましょう。

  成功体験は足し算で考えましょう。もし、一度の失敗があっても、これまで積み重ねられた成功体験が否定されるわけではありません。完璧主義にならずに、徐々に変化していく自分をほめてあげましょう。

 


 ・不安へのセーフティネット

   万一パニック発作が生じた時のために「これがあれば大丈夫」というものがあれば、安心して取り組めます。
 
  ・不安を抑える頓服などを持っておく。
  ・腹式呼吸法を行う。
  ・不安を抑えるツボ(新門、合谷、内関など)を抑える
  ・好きな音楽を聞く
  ・おまじないの言葉(アファメーション)を唱える。
  ・過呼吸のためにビニール袋を持っていく。
  ・電車では出入り口の近くに座る。
  ・車では窓を開ける。
  ・絶対に死ぬことは無いと知り、発作が起きそうになっても怖がらずに受け止める。
   など
   人によって方法は異なりますから、書籍、体験談などから自分に合うものを見つけましょう。

 


 ・内感覚エクスポージャー

  内感覚エクスポージャーとは、わざとパニック発作を起こすことで、発作に対する不安や歪んだ認知を修正するものです。激しく呼吸をしたり、不快感を増幅させたりして、発作を自分でコントロールできる感覚を養います。認知行動療法などがある程度進んでから行います。医師や家族などの付き添いがあるとよいでしょう。

 


 ・その他(トラウマ治療など)
  あるがままを目指す森田療法や、トラウマを除くFAP療法などがあります。特にショックな出来事があったり、長期間理不尽な環境に晒されていた場合に効果があります。

 →関連する記事はこちらをご覧ください。

 「“FAP療法”とは何か?トラウマや難しい悩みを解決するための療法

 

 

5.元に戻るのではなく“本来のスタイル”に変わろうとする。

 うつ病など心に関連する症状全体に言えることですが、薬で抑えようとしたり、元に戻そうと頑張ることは、再発リスクを高めます。
 精神科医の中井久夫先生が、元に戻りたい、という患者さんに対して「また悪くなる状態に戻すわけにはいきません」と言ったという有名なエピソードがあります。
 元に戻るとは、また時間を巻き戻して、同じことが起きる自分に戻ってしまうことです。

 症状が出たということは、方向転換しなさい、というメッセージでもあるのです。新しい自分を探そう、本来のスタイルに変わろうとすることがとても大切です。 

 特に、40代50代になっても20代の頃の意識で毎日遅くまで残業をしてたくさんお酒を飲んで、という方も珍しくありません。
 スーパーマン幻想でストレスに強くバリバリ働くことがデキるビジネスマンだと考えている方もいらっしゃいます。

 パニック障害になったことは、自分弱くなったということでも、ハンデを負ったことでもありません。
 人よりも早く本来の自分のスタイルに変われるチャンスだと捉えて取り組むと、結果的に再発を防ぎ、さらに成熟した自分に出会うことが出来ます。

 

パニック障害の患者に対する周囲や家族の適切な関わり方

 パニック障害はあくまで病気です。気の持ちようだと思われたり、過度に心配されたりすることが患者にとって最も嫌なことです。

 うつ病などでもそうですが、家族や周囲は、過度に心配したりせず安定してどっしりと横にいてくれることが一番落ち着きます。

 対象恒常性、一貫性といいますが、いつも安定していてくれることは安全基地となります。

 パニック発作は命に別状はなく、しばらくすれば落ち着きます。万一、発作が起きても、「もうすぐ収まるからね。死ぬことはないからね」と優しくそばに居てあげてください。騒いだり、慌てたりすることは必要ありません。

 パニック障害が病気であることや相手の状況を理解した上であれば、激励しても問題はありません。適切に励ますことは治療の後押しになります。

 

 

 

 ※サイト内のコンテンツのコピー、転載、複製を禁止します。

(参考)

坪井康次「パニック障害 正しい知識とケア」
渡辺登「パニック障害」
磯部潮「パニック障害と過呼吸」
森下克也「薬なし、自分で治すパニック障害」
ベヴ・エイズベット「パニック障害とうまくつきあうルール」
シャーリー・スウィード、シーモア・シェパード・ジャフ「パニック障害からの快復」
中原和彦「「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る」
野沢真弓「私のパニック障害」
長嶋一茂「乗るのが怖い」
円広志「僕はもう、一生分泣いた」

 

 

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1.まず、当センターの特徴をご確認ください。
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2.次に、ご予約をお取りさせていただきます。お電話、あるいは下記の問い合わせフォームから必要事項をご記入の上、お問い合わせください。

 以上でお申し込みは完了です。

 ※事前相談(無料)では、電話、スカイプにて行っております。事前相談では、アセスメントやご相談のみとなり、カウンセリングやトラウマケアは行いません。
 ※事前相談と初回セッション(FAP療法、有料)を併せてご希望の場合は、弊社カウンセリングルーム(大阪心斎橋)か、電話・スカイプかお選びいただけます。電話、スカイプでもカウンセリングの効果に差はございません。

 

 

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