統合失調症の診断とチェック~症状など7つの視点から

統合失調症の診断とチェック~症状など7つの視点から

統合失調症

 100人に1人がかかるとされる病「統合失調症」。特殊な病ではなく、本当は誰でもかかる可能性のある身近な存在ですが、普段、生活する中で私たちがその病に関わることはまれです。公式の基準だけでは実際の診断は難しいため、症状や進行など様々な視点からチェックできるようにまとめてみました。

 

<作成日2019.9.22/2023.2.6>

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飯島慶郎医師  

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

 

この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

1.統合失調症の診断基準からチェックする
2.統合失調症の予兆からチェックする
3.統合失調症の初期症状(前駆期、潜在期)からチェックする
4.統合失調症の症状からチェックする
5.統合失調症のタイプからチェックする
6.統合失調症の進行と回復からチェックする
7.統合失調症と類似する障害からチェック(区別)する

 

 →統合失調症の原因、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「統合失調症の原因と背景~11の仮説

 ▶「統合失調症の治し方、家族の接し方~その6つのポイント

 

専門家(公認心理師)の解説

 統合失調症は、人類学者のグレゴリー・ベイトソンのダブルバインド(二重拘束)論などでその心理的、環境的な要因が指摘され、一度は否定されてきましたが、近年はオープン・ダイアローグや当事者研究の登場によって再び心理的、環境的な要因が注目されるようになってきました。実際、私の経験でも、統合失調症用の症状が見られるケースでは、家族との不和や環境のストレスが背景にあることがうかがえることがあります。実際に、入院が必要なほど妄想が悪化しながら、家族の対応が変わることで短期に症状が収束するようなケースもあります。トラウマ臨床からは、トラウマによるフラッシュバックが妄想、幻覚のような形で現れることもあります。統合失調症と診断されていたケースが実は発達性トラウマ(複雑性PTSD)であることも決して稀ではありません。

 診断やチェックの際も、個別のクライアントの家庭や文化的背景をしっかりとらえて、確認していくことが必要です。

 

 

 

1.統合失調症の診断基準からチェックする

1.以下のうち2つの症状が少なくとも1カ月以上続いている場合に疑われます

  2つの症状が現れている時期がずれていてもよいですし、すでに治療が進んで症状が収まった場合は1カ月に満たなくてもかまいません。
 対話制幻聴やコメント型幻聴、奇妙な妄想など、統合失調症に特徴的な症状はそれだけで統合失調症と診断できます。

 診断では、日常の様子を知るために家族からもヒアリングを行うことも大事です。最近は、遺伝子検査や視線の動きで診断しようとする試みもあります。

  1.幻覚
  2.妄想
  3.まとまりのない会話
  4.緊張病性症状
  5.陰性症状(うつ状態、気力低下、意欲、関心、活動性の低下、自閉傾向など)

 

2.社会生活における機能低下が見られること

  機能低下とは、仕事や学業での成績の低下や自己管理ができない、ひきこもりなどです。

 

 

3.症状が6カ月以上続いていること

 1カ月以内で収まった場合は、「短期精神病性障害」
 1カ月以上~6カ月未満の状態は「統合失調症様障害」と暫定的に診断されます。
 6カ月以上症状が続く場合に「統合失調症」と確定診断されます。

  ※短期精神病性障害は途上国に多く、先進国ではまれです。

 

 (除外条件)
  ・気分障害や統合失調感情障害、薬物による症状や身体疾患がないことが条件です。
  ・そうやうつの時だけ症状が見られる場合は、気分障害が想定されます。
  ・妄想や幻覚は、統合失調症ではなくても生じるため、妄想幻覚=統合失調症とは限りません。

 

 (参考)統合失調症は匂いで分かる?プレコックス感

 ベテランの精神科医やカウンセラーは、統合失調症かどうかは、独特の雰囲気(匂い)で直感的にわかるといわれます。そのことをプレコックス感といいます。科学的に明確に証明されているものではありませんが、統合失調症独特の“奇妙さ”というのは、診断の参考にされています。

 

 

2.統合失調症の予兆からチェックする

 統合失調症の患者を調べると、12歳の時点で7~8割の人に注意障害が見られます。12歳の時点での注意障害はリスクサインと考えられています。

 注意障害とは、特定の物事に注意を向けたり、注意を維持したりする機能のことです。統合失調症における注意の障害とは感度が低下するというよりは、注意を選択するフィルタが弱く、情報が過多になりすぎて本来注意すべきものに注意を向けられなくなることが原因とされています。
   

 また、思春期に不思議な感覚に襲われたり、幻覚を見たがすぐにおさまった、といったことがある人は、年齢を重ねてから本格的に発症する、といったこともありえます。

 

 

 

3.統合失調症の初期症状(前駆期、潜在期)からチェックする

 初期症状としては下記のようなことが見られます。

 

・自生体験

 考えが勝手に考え、浮かんできたりする。ぼんやりして集中できなくなる症状です。
 勝手に考えが浮かぶ「自生思考」、過去の記憶が浮かぶ「自生記憶想起」、頭の中で音楽がかかる「自生音楽表象」、空想が浮かぶ「自生空想想起」などがあります。

 

 

・気づきこう進

 感覚が敏感になる。特に聴覚が敏感になり、普段気にならないことにも反応してしまいます。

 

 

・まなざし体験

 誰かに見られているように感じる「注察念慮」、実態を持った存在を感じる「実体的意識性」などがあります。

 

 

・緊張困惑気分・対多緊張

 精神が張り詰め、切羽詰まったような気分が続く。すべてのものが迫ってきたり襲ってきたりする感覚。

 

 

・即時的認知の障害

 その場の理解判断記憶の能力が低下する症状です。話が聞き取れなくなったり、ささいなミスが増えたりします。

 

 

・その他

 うつ、不眠(目が冴えて眠れない)、神経過敏(頭が働き過ぎる)、気分の落ち込み、無気力、食欲不振、頭痛、奇妙な感覚、人間不信、傷つきやすさ、対人関係の回避(ひきこもり)、人間関係の変化、成績低下、表情や雰囲気や身だしなみの変化、食事や睡眠パターンの変化、非現実的な考え計画 などがみられます。

 

 

 

 

4.統合失調症の症状からチェックする

 近年の統合失調症は、認知機能障害が主症状となってきています。強烈な陽性症状は少なくなりつつあります。
 

・認知機能障害

 統合失調症によって生じる症状として認知機能の低下が見られます。注意力、作業記憶、言語的能力、視覚・空間的能力、統合能力、抽象的な思考、問題解決能力、実行機能、運動機能、社会的認知、心の理論などが低下します。

 どの機能がどの程度低下するかは人によって異なります。全く低下が見られない人もいれば、大きく損なわれている人がいます。

 認知症の場合は、脳の機能が低下するためですが、統合失調症の場合は情報のフィルタが働かずに、情報を適切に選択できないことや、外部の刺激への過敏性がその原因とされます。薬の影響で一時的に低下することもあります。背景に発達障害が潜んでいる場合も多いです。

 認知症のように時間とともに進行するわけではありません。記憶力やIQは保たれており、内面では外界をよく理解しています。結果として「ひきこもり」になることがあります。

 ▶「ひきこもり、不登校の本当の原因と脱出のために重要なポイント
      
 認知機能障害はリハビリによって改善することもできます。本人のペースを尊重してリハビリを行う必要があります。

 

 

●陽性症状

 健康な状態では存在しない症状が現れることです。
 幻聴、独り言、妄想、興奮、さい疑心、敵意、自我障害、解体症状、緊張病性症状、などがあります。

 

・自我障害

 「自己と他人との境界の崩壊」は統合失調症の基本障害とされるものです。自分と他人との境界が崩れ、自分の思考が人に筒抜けになっていると感じるものです。自分の秘密が筒抜けになっていると感じられる「自我漏洩症状」、自分の考えが人に伝わっていると感じる「思考伝搬(さとられ体験)」、他人の考えが入ってくると感じる「思考吹入」、他者や外界が自分の中に入ってくるように感じる「侵入症状」、何者かに操られていると感じる「被影響体験(操られ体験)」、などがあります。

 

 

・妄想気分

 統合失調症になると、世界が様変わりしたような、何か良くない、大変なことが起きるような感覚に襲われるようになります。統合失調症の妄想とは、「とても大きな不安」が伴うことと「絶対の確信」を持つことが特徴です。妄想には大きく分けて誇大な内容のものと、被害を受けているとする内容のものとがあります。
 妄想は体系だっているものを「妄想体系」と呼び、体系だっていればいるほど抜け出すことが難しくなります。

 

 代表的な妄想としては以下のものがあります。
  世界が終わってしまうといった感覚に襲われる「世界没落体験」
  誰かに尾行されているとする「追跡妄想」
  偶然にも意味があるように感じられる「妄想知覚」

  突飛な考えを思いつく「妄想着想」
  出来事が自分に関係があると考える「関係妄想」
  自分が被害を受けていると考える「被害妄想」

 

  人から見られていると感じる「注察妄想」
  毒を入れられていると感じる「被毒妄想」
  パートナーが浮気しているという「嫉妬妄想」

  自分の家族は本当の家族ではないとする「家族否認妄想」
  電磁波などで攻撃されているとする「物理的被影響妄想」
  自分は何者かに監視されていると考える「監視妄想」

  自分が大きなことができる、重要な人物であると考える「誇大妄想」
  有名人と恋愛関係にあるとする「恋愛妄想」
  自分は高貴な出自であるとする「血統妄想」

  自分は神だと思う「宗教妄想」
  自分は偉大な発明をしたと信じる「発明妄想」
  神や霊が憑いているとする「憑依妄想」

  財産を失ってしまったとする「貧困妄想」
  自分は大きな病気だとする「心気妄想」
  取り返しのつかないことをしたとする「加害妄想」

  自分には内臓がないなどとする「虚無妄想」

            

・幻覚

 統合失調症で特徴的なのが、幻聴です。
 聞こえてくるのは「人の声」です。直接頭に侵入してくる感じで、言葉のひとつひとつがはっきりしないのに、意味は一挙に理解できます。
 何かしらの超越性を帯びています。とても大きな不安を伴います。

 

 さまざまな症状がありますが、多いのが、批判や悪口が聞こえてくるというものです。まれに褒めるようなケースもあります。「~~しろ」と命令をするのもしばしばあります。自殺を指示してくることもあります。

 

 多数の人の話し声が聞こえる「対話性幻聴」
 実況中継をするように自分の行動を解説する「注釈幻声」
 自分の考えが声となって聞こえる「考想化声」などがあります。

 

 単に声が聞こえるというよりも、神の啓示のような迫真性があり、その影響から逃れるのはわかっていても難しい物があります。幻聴に伴い、独り言や、空笑が見られます。

 

 幻聴とも関連しますが、自分の意志に反して命令されたり、操られたりしていると感じられるものを「作為体験(させられ体験)」といいます。

         
 頻度は少ないですが「幻視」「幻嗅」、身体に痛みや侵入されている感じを感じる「体感幻覚」なども見られることがあります。

 

 幻覚は解離性障害、PTSD、うつ病、認知症など他の精神障害でも生じます。幻覚が見えるとすなわち統合失調症ということではありません。幻視は解離性障害などで多く見られる傾向があります。中井久夫は、PTSDの場合とは違い、統合失調症の幻覚は夢には出ないとしています。

 とても強い不安を伴って幻覚を見るのに、意識が飛ばない(解離しない)ことが統合失調症特徴です。
 解離性障害などでは自ら幻聴を呼び出せますが、統合失調症では呼び出せないとされます。

 

 幻聴が1カ月以上続いている場合、とくに対話性幻聴や注釈幻声が見られる場合、統合失調症診断の大きな手がかりとなります。

▶「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

▶「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因

 

 

 

・解体症状(連合弛緩)

 言葉や思考にまとまりがなくなる症状です。まとまりがないだけではなく、内容の奇妙さや、自分だけの造語(言語新作)を伴い、聞いている方は、わけが分からず、実感を伴って話を受け止めることができません。

 

 

・緊張病性症状

 ドーパミンの神経回路の過活動によって激しい暴発的な興奮や衝動が見られる「精神運動興奮」、全く無反応で応答がない「昏迷」、軽度なものでは「緘黙」「拒絶症」があります。
 かつては、「カタレプシー(強硬症)」や「蝋屈症」と呼ばれるような、蝋人形のように同じ姿勢で固まったしまう症状が見られました。

 固まっていても、周囲の言葉などは知覚して覚えていたりします。現在はまれな症状です。
 昏迷と精神運動興奮は突然入れ替わります。昏迷はドーパミンの過剰分泌に対してブレーカーがダウンするような状態と考えられます。ブレーカーが戻ると、また興奮して、まだ落ちて、ということが繰り返されます。
             
 緊張病性症状は、双極性障害や、うつ病でも見られることがあります。

 

(参考)二重の見当識、二重帳簿

 統合失調症の患者さんは、どんなに激しい妄想などの状態にあっても、実は正気を失っていないことが知られています。誇大な妄想を語りながら、日常生活は現実の身の丈に沿って淡々と続けたり、正気を失っているようでいて周囲を冷静に気遣っていたり、緊張病性症状になっても起きていることを正確に知覚していたり、突然、正常に戻ったりといったことが見られます。

 

 

 

●陰性症状

 健康な状態では存在する機能が低下したり、失われてしまうもので、うつ状態、気力低下、意欲、関心、活動性の低下、自閉傾向などがあります。
 陰性症状とは、陽性症状によるダメージの後遺症ともいえるものです。

 すっきりとなくなる場合もあれば、慢性化することもあります。周囲は病気とは気づかずに怠けを勘違いして、本人に心ない言葉をかけて疎外感や自信喪失を促進することがしばしば起こります。また、気力低下から希死念慮を抱くこともありますから、注意が必要です。

 

病識の欠如

 統合失調症の特徴として、病識の欠如があります。妄想を確信しています。しかしながら、確信にもゆらぎがあり、「もしかしたら・・」という疑念がわく瞬間が訪れます。
 そのため、相手の気持に寄り添いながら、粘り強く関わることが大事です。
 自分が理解されていない、居場所がないと感じると、よりかたくなになる、ということが生じます。
 さらに、自分に何かが起こっていると感じる「病感」はほとんどの人が感じています。

 

 

 

 

5.統合失調症のタイプからチェックする

 統合失調症は、大きく分けて5つのタイプに分けられます。
 治療や研究の発展、軽症化などの流れもあり、病像は変化しています。
 このタイプ分けは実際的ではなくなりつつありますが、統合失調症を理解する上では役に立ちます。

解体型(破瓜型)

 「破瓜」とは思春期の別名で思春期に始まることからそのように呼ばれます。名前の通り、年をとってもいつまでも幼い雰囲気が残ることもその名前の理由となっています。
 陰性症状から始まるために、気づかれにくく、早期に発症しますが徐々に進行して慢性化していきやすく、他のタイプよりも予後が悪いとされます。

 

 「解体型」との名の通り、解体症状が特徴です。感情と思考がまとまらなくなります。繊細すぎる感覚をおさえるために感情が平板化するように見えます。

 妄想型と違い、一貫性のない、まとまりのない妄想、幻聴が慢性的に生じます。独り言、空笑いをしながら一日中ぼんやり過ごしているような姿がよく見られます。

 

 

緊張型(カタトニー)

 緊張型の名前のとおり、緊張病性症状が特徴です。かつては多く見られましたが、近年、特に先進国ではあまり見られません。日本でも非常にまれになりました。核家族化、一人暮らしなど、プライバシーが守られやすい環境によって、緊張病性症状のような爆発が起きにくくなったことが背景にあるのではないかと考えられています。症状は激しいものですが、他のタイプよりも比較的回復は早いとされます。

 

妄想型

 30歳以上で発症することが多く、その名の通り妄想や幻覚がみられ、認知機能の障害も少なく、生活能力やIQも高いことが特徴です。妄想がないときは、健康な人と同じように見えます。妄想が現れると表情が固くなったり、目つきがおかしくなったり、不眠になったり、人を避けたり、場合によっては暴れるなど妄想に対応する結果さまざまな症状が生じます。

 緊張病症状や解体症状が見られないことが原則ですが、一時的にそうした症状が見られることもあります。
 統合失調症の中では改善が最も速いタイプです。

 

 

残遺型

 寛解せずに陰性症状や軽度の陽性症状が残ったものをいいます。

 

 

未分化型・鑑別不能型

 どのケースにも分類できないものです。

 

 

(参考)統合失調症の有名人

 エドヴァルト・ムンク、草間彌生、
 ノーベル賞を取った数学者のジョン・ナッシュ
 お笑い芸人ハウス加賀谷
 など

 

 

 

6.統合失調症の進行と回復からチェックする

 進行の仕方はケースによってさまざまです。一様に進むのではなく、症状に波がある事も多いです。

 

・前駆・前兆期

 統合失調症の4分の3で、本格的な発症の前に予兆が見られることがあります。この期間は平均5年と言われます。陽性症状が現れるのが17~25歳とされており、思春期にはその前兆が現れていることがわかります。
 うつ病や怠けだと思っていたら実は前駆期の症状だったということがあります。疑われる場合は専門医に相談することが予後を良くすることになります。

(1、2年目~に多く見られる症状)

・うつ症状(抑うつ、不安、焦燥、不眠)
・陰性症状(意欲の低下、無気力、自閉)
・頭痛、身体の痛み

・集中力の低下
・仕事や学業でのパフォーマンス低下
・忘れっぽくなる

・友人が減る
・身だしなみに気を使わなくなる
・日常的なことをサボるようになる

・怒りっぽくなる
・論争しがちになる

(3年目~に多く見られる症状)

・不安症状

(4、5年目~に多く見られる症状)

・陽性症状(自生思考、思考干渉、思考保続、思考途絶、関係念慮、現実感喪失、幻聴、錯聴)
 など

 

 

参考:発症時期

 かつては、「早発性痴呆」と呼ばれていたように比較的若年で発症します。好発年齢は思春期から30歳までで、統合失調症の人の70~80%を占めます。平均すると、男性は15~25歳、女性は、25~35歳が発症のピークとされます。女性では、40~45歳に2度目の発症の小さなピークがあり、この時期の発病は男性の2倍となっています。発症が遅いほど回復しやすいとされています。

 

 

・急性期

 急性期は、陽性症状から症状が始まることが多いです。精神的な興奮が激しくなります。幻聴、幻覚、妄想、させられ体験、光や音への過敏さなどが現れます。

 自分が監視されていると思ったり、誰かに命令されていると考えたり、操られていると感じたりします。思考の柔軟性が失われているため社会的な判断が困難になります。そのため思い込みを修正することが難しくなります。

 陰性症状から始まる場合は、感情の起伏が亡くなったり、自分の殻に閉じこもるようになったり、うつ状態になったりします。
 急性期の激しい時期は数週間~数カ月で収まります。
 9割が30歳までに急性期を迎えます。発症の年齢が遅いほど予後は良い傾向にあります。

     
・消耗・休息期 

 エネルギーの高い急性期が過ぎると、エネルギーを貯める消耗期になります。
 この時期は極端に活動性が低くなります。ぼんやりとして寝てばかりで、無気力で受動的になります。
 子どもっぽい振る舞いをすることがあります。

 急性期から消耗期への移行の際は「臨界期」と呼ばれ、頭痛、下痢、はき気、熱、などの心身症が見られることがありますが、悪化ではなく回復のサインと考えられています。
 エネルギーが充電されるに連れて、状態が少しずつ変化していきます。

 消耗期は、3~6カ月程度の場合もあれば、数年に及ぶ場合もあります。
 急性期の後、1,2~数カ月無気力状態になる精神病後うつ状態に陥ることがあります。

 この時期は、悲観的になる傾向にあるので、自殺に注意する必要があります。

 

参考:高い自殺率

 統合失調症患者の50%の人が自殺を企図し、10~15%が20年以内に自殺します。一般の人の5~8倍に及びます。特に男性、若い人や、高学歴者ほど高い傾向があります。発症後10年以内、最初の入院からの退院後半年以内はリスクが高いとされます。
 
 急性期では幻聴の指示などによって、急性期以降では再発の繰り返し、病識がある、抑うつ状態、社会的孤立、薬の効果が十分ではない、服薬を中止している、といったことがリスクとなります。

 

 

・回復期

 回復期は、徐々に自分のやりたいことができるようになる時期です。本を読んだり、人と会うことなどの活動ができるようになります。

 この時期は、体力をつけ、デイケアなどに通いながら、リハビリを行っていきます。
 無理せず焦らず、服薬を続けながら、本人のペースで社会復帰の準備をしていきます。

 

 

・寛解期

 陽性症状や陰性症状の重症度が軽度、あるいは消失した状態が6カ月続いている場合に寛解とされます。
 1年間新たな症状が出なければ、経過観察になることもあります。
 ただ、服薬しないと5年以内に9割が再発するとされているなどから、医師の指示のもと、服薬を一定期間は続ける必要があります。

 どの期間服薬が必要なのかについてはケースによって異なり、まだ明確にはわかっていません。
 寛解になっても、睡眠をよく取り、ストレスやプレッシャーは避けることが大切です。
 再発すると急性期からのやり直しとなってしまいます。再発を繰り返すと回復が難しくなる傾向があります。

 

 

・予後の傾向

・平均的なケース

 統合失調症は、入院した人では1年後に74%が寛解するとされます。
ただ、10年というスパンで見た場合は、

・完全な回復が、約25%
・かなり改善し、ほぼ自立した社会生活が可能が、約25%
・ある程度改善するが、しっかりとした生活の支援が必要が、約25%
・改善が見られず、療養施設で生活するが、約15%
・死亡が、約10%

となっています。

 

・予後が良くないケース

 下記のような場合は予後が良くないとされます。
・発症年齢が早い
・発達上の遅れがあった
・近親者に統合失調症の人がいる
・ゆるやかに発症した場合
・急性期にも陰性症状が目立った
・感情の平板化が見られる場合
・病識がない場合
・はじめて抗精神薬を投与した際にあまり効果がなかった場合

 

 統合失調症の人はさまざまな要因で寿命が短い傾向があります。
 
・妄想や幻覚、認知機能低下に伴う事故
・病気(感染症、心疾患、糖尿病、乳がんなどが人よりも多い)
・生活習慣(ヘビースモーカーの人も多いです。)

など 

 

・「治る」病気

 長期で見ると、予後が良好な人が多く、年齢とともに回復する「治る」病気(晩年軽快)ともされます。
 残遺症状も固定的なものではなく、かなりゆらぎがあり、回復しようとする力と症状とがせめぎあっていると考えられています。そのため慢性化した人でさえも、回復のチャンスというのは常に開かれています。

 

 最近では、統合失調症は、進行性のものではなく、一時的にエネルギーが低下しても、比較的早く回復していくのでは、とも考えられるようになっています。

 

 一過性の統合失調症状態になって回復する人も多いとされていることから、実は、想像以上に多くの数の人が一過性の統合失調症になり短期間で自然治癒しているのでは、とも言われています。

 

 

 

 

7.統合失調症と類似する障害からチェック(区別)する

・うつ病

 抑うつ、活動の低下、不眠、妄想などが見られます。
 解体した言動は見られません。幻聴や奇異な妄想は少ないです。

 ▶「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 

参考)「国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」 うつ病」

 

・双極性障害

 興奮したり、幻覚や妄想、緊張病性症状が見られることがあります。
 ただ、病相があるときにだけ現れ、病相がなくなると消失することが特徴です。
 ▶「双極性障害(躁うつ病)の治療と理解のために大切な4つのポイント

 

参考)「国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」 双極性障害」

 

 

・統合失調感情障害

 統合失調症と気分障害の症状が同時に現れるものです。 

 

 

・短期精神病性障害

 幻覚、妄想、解体症状が現れます。急激に症状が始まり、短期間で収まります。

 ※失調感情障害と非定型精神病、短期精神病性障害、統合失調症様障害などは、症状が進むにつれて、診断結果が変わっていきます。  

 

 

・妄想性障害

 認知機能の障害などはなく、妄想だけが見られるもの。

 

 

・発達障害

  統合失調症は、妄想や幻聴、自我障害といったことが特徴とされます。自分を責める声が聞こえたり、訳の分からない妄想を信じこんだり、自分と他人との境界が曖昧になったり。実は、こうしたことは発達障害など他の障害によっても生じることがわかっています。他者の気持ちや意図を理解することが難しく、対人関係に問題を抱えたりします。ストレスに反応して、一時的に妄想幻覚など統合失調症に似た症状が生じる場合があります。最近は発達障害の影響が見直されてきており、統合失調症と診断される患者の多くは実は発達障害なのではないか、と指摘されています。発達障害との鑑別は想像以上に難しいとされます。

 最近は、統合失調症患者の3~7割で発達障害が見逃されているのでは?とも指摘されています。

 
 統合失調症と発達障害による統合失調症様状態との鑑別のポイントとして以下の様な点が挙げられています。

 ・統合失調症患者はある意味自分の世界があり安定的。発達障害の場合は向上心があり不安定。
 ・親族に発達障害の人間がいるかいないか。

 ・統合失調症は話すことは得意なことが多く、発達障害の場合は書くほうが得意。

 ・統合失調症では幻覚、幻聴が続くが、発達障害ではフラッシュバックや感覚過敏によるもので一時的であったり、過去のことにこだわっているだけや(過去に言われた悪口)、普通の人が聞こえない音に敏感に反応しているだけであることが多いです。声の主も聞くたびに変わることがある。

 ・妄想も、妄想ではなくファンタジーである。妄想の定義は「訂正不能な確信」、基本的に状況に応じて揺らがない。ファンタジーの場合は状況によって揺らいだり、変化する。
 ・発達障害の場合は環境が変わると症状が改善する。
 など

 

 ▶「大人の発達障害の本当の原因と特徴~さまざまな悩みの背景となるもの

 

参考)「国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」 発達障害」

 

 

・知的障害

 知的能力の障害が見られます。発症前から一貫して知的に障害がある場合は統合失調症によるものではありません。

 

 

・パーソナリティ障害

 境界性パーソナリティ障害など、妄想幻覚や錯乱など類似の症状が見られることがあります。最近は、パーソナリティ障害自体が、発達障害や薬の作用によって引き起こされるものといった指摘がされるようになってきています。

 ▶「境界性パーソナリティ障害を正しく理解する7つのポイント~原因と治療

 ▶「パーソナリティ障害の正しい理解と克服のための7つのポイント

 

参考)「国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」 パーソナリティ障害」

 

 

・側頭葉てんかん

 幻覚、妄想、うつ状態が見られます。脳波検査などで確認します。

 

 

・ウイルス性脳炎

 意識障害、錯乱状態、けいれん、幻覚が見られます。発熱や脳波検査、神経学的兆候で区別します。 

 

 

・多発性硬化症

 運動まひ、視力障害、疲労などが生じます。MRIなどによって区別します。

 

 

・ハンチントン舞踏病

 踊っているような不随意運動や知能低下、うつ状態、幻覚・妄想などが見られます。遺伝病なので、近親者の病歴や遺伝子診断で確定することができます。

 

 

・薬物の副作用

 薬物の作用によって幻覚、妄想が見られるケース。

 

 

 

 →統合失調症の原因、治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「統合失調症の原因と背景~11の仮説

 ▶「統合失調症の治し方、家族の接し方~その6つのポイント

 

 

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。 

(参考)

中井久夫「最終講義」(みすず書房)
伊藤順一郎「統合失調症」(講談社)
岡田尊司「統合失調症」(PHP研究所)
功力浩「やさしくわかる統合失調症」(ナツメ社)
福智寿彦「家族が統合失調症と診断されたら読む本」(幻冬舎)
蟻塚亮二「統合失調症とのつきあい方」(大月書店)
山下格「精神医学ハンドブック」(日本評論社)
丹野義彦ほか「臨床心理学」(有斐閣)
中井久夫「世に棲む患者」(筑摩書房)

広沢正孝「「こころの構造」からみた精神病理 広汎性発達障害と統合失調症をめぐって」(岩崎学術出版社)
「統合失調症の広場 統合失調症に治療は必要か No.1 2013春」(日本評論社)
「こころの科学 統合失調症の治療の現在 No.180」(日本評論社)

斎藤環「オープンダイアローグとは何か」(医学書院)

など