悩みの原因や解決方法

統合失調症の症状や原因、治療のために大切なポイント(1/3)

[悩みの原因や解決方法「統合失調症」の原因と治し方]


 

 100人に1人がかかるとされる病「統合失調症」。特殊な病ではなく、本当は誰でもかかる可能性のある身近な存在ですが、普段、生活する中で私たちがその病に関わることはまれです。
 その実態は、単に“病気”ということでは収まらない、私たちの大切な側面を知らせてくれる存在でもあります。今回は、統合失調症についてまとめてみました。

 

<作成日2016.5.20/最終更新日2019.9.22>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターなどを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

はじめに~統合失調症を理解する上で大切なこと
統合失調症とは何か?


統合失調症の予兆

統合失調症の初期症状(前駆期、潜在期)


統合失調症の症状

 

 

 

(2/3)にすすむ

[(2/3)のもくじ]

 ・統合失調症のタイプ
 ・統合失調症の診断
 ・統合失調症と類似する障害
 ・統合失調症の原因
 ・統合失調症の進行と回復

 

統合失調症

 

 

はじめに~統合失調症を理解する上で大切なこと


・時代とともに変わる病像~軽症化、そして社会に棲みながら治る病気、付き合う病気へ

 統合失調症(Schizophrenia)の姿は時代とともに変化しています。
 大昔は、痴呆のように正常な認知機能を失い人格が崩壊していく病気として。数十年前までは身体が蝋のように固まったり、興奮したりする緊張病が典型で、いずれも鉄格子の奥に入院させられている姿であったものでした。
 しかし、近年は軽症化が指摘され、かつてのような激しい病像はまれになりました。認知機能の低下が主症状となっています。

 

 そのため、統合失調症の昔ながらのタイプ分けも実際的ではなくなりつつあります。
 有病率の低下から「統合失調症消滅仮説」なるものも登場するような時代です。
 (遺伝的要素も背景にあることから実際にはありえませんが)

 

 治療のあり方も、入院しての治療から外来での治療が中心となってきています。
 社会に棲みながら治る病気、あるいはつき合える病気へと変貌しています。

 

 油断はもちろん禁物であることは言うまでもありませんが、ただ、病像の変化を知らずに、書籍やインターネットのサイトにあるかつての教科書通りのイメージのままに捉えていると、早期発見の遅れ、家族や本人が勝手に諦めてしまったり、時代遅れのイメージによる不適切なサポート、差別につながってしまいます。
 基本的には比較的新しい情報を参考にして、変化しつつある姿を知ることがとても大切です。

 

 

 

統合失調症とは何か?

・その歴史

 古代にも統合失調症とみられる特徴を持つ人たちの記述があることから、おそらく人類の歴史とともに統合失調症は存在していたと考えられています。かつては、預言者や神との仲介をするといった役割を与えられ、神聖な存在として社会の中で尊敬される立場にもありました。


 しかし、近代に入ると、秩序を乱し、職に就かない異常者としてみなされるようになり監禁されるようになりました。病気としてとらえられるようになったのは近代に入ってからのことで、病気としての歴史は長いものではありません。


 一方で、治療に取り組む善意の医師たちもいました。当初は、認知能力の低下などから「早発性痴呆」と呼ばれたり、「破瓜病」「緊張病」と呼ばれたりしていました。


 現代のような捉え方で整理されたのはブロイラーによって「スキゾフレニー」と命名されたことによってからです。日本では「精神分裂病」と訳されていましたが、適切ではないとして、2002年以降は「統合失調症」と呼ばれています。

 

 

・有病率

 人口の約1%がかかる病気であり、私たちにとって実は身近な病です。
 男女間で有病率に差はないとされます。地域によって0.4~1%と差があります。


 貧困は、環境の悪さなどストレスを高めるためか、貧困層での有病率が高いとされます。一方、後進国では、裕福な層に多い、ともいわれます。貧しい層のほうが人とのつながりがあり、ストレスが少ないことが原因と考えられます。移民に多くみられるなど、環境変化や居場所のなさが発症に影響するのではないかとも言われています。

 

 また、好景気になって仕事につきやすくなると有病率が減ると言われており、雇用は統合失調症の発症や治癒に関連が強いようです。

 


・発症時期

 かつては、「早発性痴呆」と呼ばれていたように比較的若年で発症します。
 好発年齢は思春期から30歳までで、統合失調症の人の70~80%を占めます。
 平均すると、男性は15~25歳、女性は、25~35歳が発症のピークとされます。
 女性では、40~45歳に2度目の発症の小さなピークがあり、この時期の発病は男性の2倍となっています。
 発症が遅いほど回復しやすいとされています。

 

 

・高い自殺率

 統合失調症患者の50%の人が自殺を企図し、10~15%が20年以内に自殺します。一般の人の5~8倍に及びます。特に男性、若い人や、高学歴者ほど高い傾向があります。
 発症後10年以内、最初の入院からの退院後半年以内はリスクが高いとされます。
 
 急性期では幻聴の指示などによって、急性期以降では再発の繰り返し、病識がある、抑うつ状態、社会的孤立、薬の効果が十分ではない、服薬を中止している、といったことがリスクとなります。

 

(参考)統合失調症の有名人

 エドヴァルト・ムンク、草間彌生、
 ノーベル賞を取った数学者のジョン・ナッシュ
 お笑い芸人ハウス加賀谷
 など

 

 

 

統合失調症の予兆

 統合失調症の患者を調べると、12歳の時点で7~8割の人に注意障害が見られます。12歳の時点での注意障害はリスクサインと考えられています。


 注意障害とは、特定の物事に注意を向けたり、注意を維持したりする機能のことです。統合失調症における注意の障害とは感度が低下するというよりは、注意を選択するフィルタが弱く、情報が過多になりすぎて本来注意すべきものに注意を向けられなくなることが原因とされています。
   

 また、思春期に不思議な感覚に襲われたり、幻覚を見たがすぐにおさまった、といったことがある人は、年齢を重ねてから本格的に発症する、といったこともありえます。

 

 

 

統合失調症の初期症状(前駆期、潜在期)

 初期症状としては下記のようなことが見られます。

 

・自生体験

 考えが勝手に考え、浮かんできたりする。ぼんやりして集中できなくなる症状です。
 勝手に考えが浮かぶ「自生思考」、過去の記憶が浮かぶ「自生記憶想起」、頭の中で音楽がかかる「自生音楽表象」、空想が浮かぶ「自生空想想起」などがあります。

 

 

・気づきこう進

 感覚が敏感になる。特に聴覚が敏感になり、普段気にならないことにも反応してしまいます。

 

 

・まなざし体験

 誰かに見られているように感じる「注察念慮」、実態を持った存在を感じる「実体的意識性」などがあります。

 

 

・緊張困惑気分・対多緊張

 精神が張り詰め、切羽詰まったような気分が続く。すべてのものが迫ってきたり襲ってきたりする感覚。

 

 

・即時的認知の障害

 その場の理解判断記憶の能力が低下する症状です。話が聞き取れなくなったり、ささいなミスが増えたりします。

 

 

・その他

 うつ、不眠(目が冴えて眠れない)、神経過敏(頭が働き過ぎる)、気分の落ち込み、無気力、食欲不振、頭痛、奇妙な感覚、人間不信、傷つきやすさ、対人関係の回避(ひきこもり)、人間関係の変化、成績低下、表情や雰囲気や身だしなみの変化、食事や睡眠パターンの変化、非現実的な考え計画 などがみられます。

 

 

 

 

 

統合失調症の症状

 近年の統合失調症は、認知機能障害が主症状となってきています。強烈な陽性症状は少なくなりつつあります。
 

・認知機能障害

 統合失調症によって生じる症状として認知機能の低下が見られます。注意力、作業記憶、言語的能力、視覚・空間的能力、統合能力、抽象的な思考、問題解決能力、実行機能、運動機能、社会的認知、心の理論などが低下します。


 どの機能がどの程度低下するかは人によって異なります。全く低下が見られない人もいれば、大きく損なわれている人がいます。


 認知症の場合は、脳の機能が低下するためですが、統合失調症の場合は情報のフィルタが働かずに、情報を適切に選択できないことや、外部の刺激への過敏性がその原因とされます。薬の影響で一時的に低下することもあります。背景に発達障害が潜んでいる場合も多い。


 認知症のように時間とともに進行するわけではありません。記憶力やIQは保たれており、内面では外界をよく理解しています。結果として「ひきこもり」になることがあります。

⇒「ひきこもり、不登校の本当の原因と脱出のために重要なポイント
      
 認知機能障害はリハビリによって改善することもできます。本人のペースを尊重してリハビリを行う必要があります。

 

 

●陽性症状

 健康な状態では存在しない症状が現れることです。
 幻聴、独り言、妄想、興奮、さい疑心、敵意、自我障害、解体症状、緊張病性症状、などがあります。

 

・自我障害

 「自己と他人との境界の崩壊」は統合失調症の基本障害とされるものです。自分と他人との境界が崩れ、自分の思考が人に筒抜けになっていると感じるものです。自分の秘密が筒抜けになっていると感じられる「自我漏洩症状」、自分の考えが人に伝わっていると感じる「思考伝搬(さとられ体験)」、他人の考えが入ってくると感じる「思考吹入」、他者や外界が自分の中に入ってくるように感じる「侵入症状」、何者かに操られていると感じる「被影響体験(操られ体験)」、などがあります。

 

 

・妄想気分

 統合失調症になると、世界が様変わりしたような、何か良くない、大変なことが起きるような感覚に襲われるようになります。統合失調症の妄想とは、「とても大きな不安」が伴うことと「絶対の確信」を持つことが特徴です。妄想には大きく分けて誇大な内容のものと、被害を受けているとする内容のものとがあります。
 妄想は体系だっているものを「妄想体系」と呼び、体系だっていればいるほど抜け出すことが難しくなります。

 

 代表的な妄想としては以下のものがあります。
  世界が終わってしまうといった感覚に襲われる「世界没落体験」
  誰かに尾行されているとする「追跡妄想」
  偶然にも意味があるように感じられる「妄想知覚」


  突飛な考えを思いつく「妄想着想」
  出来事が自分に関係があると考える「関係妄想」
  自分が被害を受けていると考える「被害妄想」

 

  人から見られていると感じる「注察妄想」
  毒を入れられていると感じる「被毒妄想」
  パートナーが浮気しているという「嫉妬妄想」


  自分の家族は本当の家族ではないとする「家族否認妄想」
  電磁波などで攻撃されているとする「物理的被影響妄想」
  自分は何者かに監視されていると考える「監視妄想」


  自分が大きなことができる、重要な人物であると考える「誇大妄想」
  有名人と恋愛関係にあるとする「恋愛妄想」
  自分は高貴な出自であるとする「血統妄想」


  自分は神だと思う「宗教妄想」
  自分は偉大な発明をしたと信じる「発明妄想」
  神や霊が憑いているとする「憑依妄想」


  財産を失ってしまったとする「貧困妄想」
  自分は大きな病気だとする「心気妄想」
  取り返しのつかないことをしたとする「加害妄想」


  自分には内臓がないなどとする「虚無妄想」


            

・幻覚

 統合失調症で特徴的なのが、幻聴です。
 聞こえてくるのは「人の声」です。直接頭に侵入してくる感じで、言葉のひとつひとつがはっきりしないのに、意味は一挙に理解できます。
 何かしらの超越性を帯びています。とても大きな不安を伴います。

 

 さまざまな症状がありますが、多いのが、批判や悪口が聞こえてくるというものです。まれに褒めるようなケースもあります。「~~しろ」と命令をするのもしばしばあります。自殺を指示してくることもあります。

 

 多数の人の話し声が聞こえる「対話性幻聴」
 実況中継をするように自分の行動を解説する「注釈幻声」
 自分の考えが声となって聞こえる「考想化声」などがあります。

 

 単に声が聞こえるというよりも、神の啓示のような迫真性があり、その影響から逃れるのはわかっていても難しい物があります。幻聴に伴い、独り言や、空笑が見られます。

 

 幻聴とも関連しますが、自分の意志に反して命令されたり、操られたりしていると感じられるものを「作為体験(させられ体験)」といいます。


         
 頻度は少ないですが「幻視」「幻嗅」、身体に痛みや侵入されている感じを感じる「体感幻覚」なども見られることがあります。

 

 幻覚は解離性障害、PTSD、うつ病、認知症など他の精神障害でも生じます。幻覚が見えるとすなわち統合失調症ということではありません。幻視は解離性障害などで多く見られる傾向があります。中井久夫は、PTSDの場合とは違い、統合失調症の幻覚は夢には出ないとしています。


 とても強い不安を伴って幻覚を見るのに、意識が飛ばない(解離しない)ことが統合失調症特徴です。
 解離性障害などでは自ら幻聴を呼び出せますが、統合失調症では呼び出せないとされます。

 

 幻聴が1カ月以上続いている場合、とくに対話性幻聴や注釈幻声が見られる場合、統合失調症診断の大きな手がかりとなります。

⇒「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

⇒「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因

 

 

 

 

・解体症状(連合弛緩)

 言葉や思考にまとまりがなくなる症状です。まとまりがないだけではなく、内容の奇妙さや、自分だけの造語(言語新作)を伴い、聞いている方は、わけが分からず、実感を伴って話を受け止めることができません。

 

 

・緊張病性症状

 ドーパミンの神経回路の過活動によって激しい暴発的な興奮や衝動が見られる「精神運動興奮」、全く無反応で応答がない「昏迷」、軽度なものでは「緘黙」「拒絶症」があります。
 かつては、「カタレプシー(強硬症)」や「蝋屈症」と呼ばれるような、蝋人形のように同じ姿勢で固まったしまう症状が見られました。


 固まっていても、周囲の言葉などは知覚して覚えていたりします。現在はまれな症状です。
 昏迷と精神運動興奮は突然入れ替わります。昏迷はドーパミンの過剰分泌に対してブレーカーがダウンするような状態と考えられます。ブレーカーが戻ると、また興奮して、まだ落ちて、ということが繰り返されます。
             
 緊張病性症状は、双極性障害や、うつ病でも見られることがあります。

 

(参考)二重の見当識、二重帳簿

 統合失調症の患者さんは、どんなに激しい妄想などの状態にあっても、実は正気を失っていないことが知られています。誇大な妄想を語りながら、日常生活は現実の身の丈に沿って淡々と続けたり、正気を失っているようでいて周囲を冷静に気遣っていたり、緊張病性症状になっても起きていることを正確に知覚していたり、突然、正常に戻ったりといったことが見られます。

 

 

 

●陰性症状

 健康な状態では存在する機能が低下したり、失われてしまうもので、うつ状態、気力低下、意欲、関心、活動性の低下、自閉傾向などがあります。
 陰性症状とは、陽性症状によるダメージの後遺症ともいえるものです。


 すっきりとなくなる場合もあれば、慢性化することもあります。周囲は病気とは気づかずに怠けを勘違いして、本人に心ない言葉をかけて疎外感や自信喪失を促進することがしばしば起こります。また、気力低下から希死念慮を抱くこともありますから、注意が必要です。

 


病識の欠如

 統合失調症の特徴として、病識の欠如があります。妄想を確信しています。しかしながら、確信にもゆらぎがあり、「もしかしたら・・」という疑念がわく瞬間が訪れます。
 そのため、相手の気持に寄り添いながら、粘り強く関わることが大事です。
 自分が理解されていない、居場所がないと感じると、よりかたくなになる、ということが生じます。
 さらに、自分に何かが起こっていると感じる「病感」はほとんどの人が感じています。

 

 

 

 

(2/3)にすすむ:統合失調症の原因、タイプ など

 

 

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(参考)

中井久夫「最終講義」(みすず書房)
伊藤順一郎「統合失調症」(講談社)
岡田尊司「統合失調症」(PHP研究所)
功力浩「やさしくわかる統合失調症」(ナツメ社)
福智寿彦「家族が統合失調症と診断されたら読む本」(幻冬舎)
蟻塚亮二「統合失調症とのつきあい方」(大月書店)
山下格「精神医学ハンドブック」(日本評論社)
丹野義彦ほか「臨床心理学」(有斐閣)
中井久夫「世に棲む患者」(筑摩書房)

広沢正孝「「こころの構造」からみた精神病理 広汎性発達障害と統合失調症をめぐって」(岩崎学術出版社)
「統合失調症の広場 統合失調症に治療は必要か No.1 2013春」(日本評論社)
「こころの科学 統合失調症の治療の現在 No.180」(日本評論社)

など

 

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