双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解

双極性障害(躁鬱病)とは何か?実は”体質の問題”という正しい診断と理解

うつ・気分障害

 かつては、躁うつ病と呼ばれていた双極性障害。診断が難しく、うつ病などと区別が難しいことがあります。適切な治療によって症状の改善が期待できますが、再発しやすいため維持治療も重要です。

 今回は、医師の監修のもと公認心理師が、双極性障害について適切な理解ができるように、色々な視点からまとめてみました。

 

<作成日2016.4.30/最終更新日2026.10.18>

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飯島慶郎医師  

この記事の医療監修

飯島 慶郎 医師(心療内科、など)

心療内科のみならず、臨床心理士、漢方医、総合診療医でもあり、各分野に精通。特に不定愁訴、自律神経失調症治療を専門としています。プロフィールの詳細はこちら

 

この記事の執筆者

三木 一太朗(みきいちたろう) 公認心理師

大阪大学卒 大阪大学大学院修士課程修了

20年以上にわたり心理臨床に携わる。様々な悩み、生きづらさの原因となるトラウマ、愛着障害が専門。『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』など書籍(累計約4万部)、テレビ番組への出演、ドラマの制作協力・監修、ウェブメディア、雑誌への掲載、多数。

プロフィールの詳細はこちら

<記事執筆ポリシー>

 ・公認心理師が長年の臨床経験やクライアントの体験を元に(特に愛着やトラウマ臨床の視点から)記述、解説、ポイント提示を行っています。

 ・管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考にしています。

 ・可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

 

もくじ

・双極性障害(躁鬱病)とは何か~標準的な理解と『躁うつ体質』という臨床知見
・双極性障害のタイプと特徴からチェックする
・双極性障害の症状からチェックする
・他の病気やタイプ間の鑑別のポイントからチェックする
・躁うつ体質の特徴からチェックする

 ・双極性障害は「わがまま」に見えることがある?

・合併しやすい症状からチェックする
・間違われやすい病気からチェックする

 

 →双極性障害(躁鬱病)の治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「双極性障害(躁鬱病)の治し方~正しく対処するための6つのポイント」

 ▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」

 

専門家(公認心理師)の解説

 双極症には、気分や活動性が大きく変動しやすい生物学的・体質的な素因があります(精神科医の神田橋氏はその臨床知見から「躁鬱体質」と呼んでいます)。そこに睡眠や生活リズムの乱れ、ストレス、環境の変化などが重なることで、躁状態やうつ状態が生じたり、再発したりします。そのため、本人の性格の問題として捉えるのではなく、こうした特性と環境との関係から理解することが重要です。また、双極症では、その時々の気分状態によって、自分の状態についての認識や治療への取り組み方が大きく変わることがあります。とくに躁状態では病識が低下しやすく、治療や相談を継続する必要性を本人が感じにくくなることがあります。
 当センターの臨床でも、双極Ⅰ型の方で、相談を始めても1、2回で来られなくなったり、予約を何度も変更・先送りされたりするケースを経験します。予約が混んでいると「何とか早くしてください」と強く希望され、調整して実施したものの、その後すぐに来られなくなる、といったこともあります。こうした行動は、単なる性格や「気まぐれ」としてではなく、その時点の気分状態や病識、活動性の変化との関係から理解する必要があります。
 そのため、急性の躁状態では、通常の内省を中心としたカウンセリングよりも、まず精神科での治療、安全確保、睡眠・生活リズムの安定などが優先されます。一方、症状が安定している時期や双極性うつ病の時期には、心理教育、認知行動療法、対人関係療法などの心理的支援も重要です。
 なお、双極Ⅱ型では躁状態ではなく軽躁状態を経験するため、双極Ⅰ型と同じような経過をとるとは限りません。通常のカウンセリングや心理療法を行うことができるケースが多いです。

 

 

 

「双極性障害(躁うつ病)とは何か~標準的な理解と『躁うつ体質』という臨床知見

 双極性障害(Bipolar disorder)とは、躁病・軽躁病・抑うつなどの気分エピソードを繰り返す病気です。かつては躁うつ病と呼ばれていました。まだ、わかっていないことも多いとされますが、うつ病とは全く異なる病気です。実際に、双極性障害はうつ病とは治療方法も異なります。

 

下記のような違いがあります。

 

1.基本的には「躁うつ体質」という臨床的な捉え方

 双極性障害について、精神科医の神田橋條治氏は長年の臨床経験から「躁うつ体質」という捉え方を提示しています。これは現在のDSMなどの診断基準そのものではなく、双極性障害の人の特徴や環境との関係を理解するための臨床的な見方です。

躁うつ体質とは、

 ・調子に波がある

 ・のびのびした、バラエティに富む人生を欲し、窮屈な環境では調子を崩しやすい

 ・人と馴染もうとする。人懐こさ、人に甘える傾向。外に合わせようとする。雰囲気の柔らかさ、快活さ

 ・関係を生きる

 ・秘めることが苦手で表出に傾きやすい

 ・内省が苦手で言語化が不得手。感性や感情が行動に直結する

 ・言葉にできない自他の心のあやを感知しやすく、対人関係職で成功しやすい(教育、福祉職、サービス業など)

 ・あっさりしていて、執念深くない

 ・一つのことに集中するのが苦手。複数を同時並行で対応することが得意

 などが特徴です。

 神田橋氏は、こうした体質的特徴と環境とのミスマッチが、調子を崩すきっかけになることがあると捉えています。神田橋氏は、対人関係や状況への感受性など、こうした体質的特徴が教育・福祉・サービス業などの対人援助職で長所として働くことがある一方、環境とのミスマッチによって調子を崩す場合があることを指摘しています。休職する教師が多く問題となっていますが、教員など対人関係を多く扱う職業と気分の波との関係を考える際にも、こうした臨床的な視点が参考になる場合があります。

 

2.うつ病との違い~躁状態・軽躁状態があることが重要

 その名の通り、「躁」状態があることが異なります。ただ、表面的に躁状態が付加されているだけということではありません。本質的に両者は異なると考えられています。
 

 双極性障害のうつ状態だけを見て、うつ病と区別することは容易ではありません。重要なのは、これまでに躁状態または軽躁状態があったかどうかです。

 

3.治療は薬物療法が基本~心理社会的治療や環境調整も重要

 双極性障害では、気分安定薬や非定型抗精神病薬などによる薬物療法が治療の基本となります。躁状態、抑うつ状態、維持期によって使用する薬や治療方針が異なります。

 うつ病は、抗うつ剤などを用いますが、双極性障害では気分安定剤(リチウムなど)を中心に用いられます。双極性障害と知らずに抗うつ剤を処方していると、効かないだけではなく、不安定になったり躁転(躁状態になる)するなど悪化することがあります。

 心理教育、認知行動療法、対人関係・社会リズム療法、家族焦点化療法などの心理社会的支援を組み合わせることも重要です。とくに、再発予防や生活の安定、社会機能の回復を考えるうえで、心理社会的支援は重要な役割を持ちます。

 さらに、生活リズムや睡眠を整えること、その人の特徴に合わない環境を調整することも、安定した生活を維持するうえで重要です。

 躁うつ体質とはとらえてもらえずに、抗不安薬などを服用してさらに悪化するという場合もあります。また、精神療法においても内省を行うと悪化する場合がある、といった特徴があります。躁状態が強い時期などには、深い内省を促す心理療法よりも、まず病状を安定させることが優先されます。状態が安定した後の維持期には、心理教育や認知行動療法、家族への働きかけ、対人関係・社会リズム療法などの心理社会的治療が、再発予防や生活の安定に重要です。

 

 

4.発症時期などの違い~比較的若年で生じ、再発率がとても高い

 うつ病が中年に多い病気であるのに対して、双極性障害は若年で発症します。生来の双極性気質を持ち、成長に伴い学校など規律が厳しくなるなど環境が窮屈になるにつれて発症と考えられています。10代で発症するケースもあります。うつ病が男女比で1:2であるのに対して、双極性障害では男女比に差はありません。

 また、双極性障害は再発を繰り返しやすく、症状が落ち着いた後も再発予防のための維持治療が重要です。そのため、症状がなくなったからといって自己判断で薬を中止せず、主治医と相談しながら長期的に経過を見る必要があります。

 

5.躁うつ体質を知る治療者の少なさ、診断の難しさ

 双極性障害は、躁うつ体質といった知識や状況を知る治療者がそもそも少ない、という問題があります。そのため、うつ病や統合失調症、依存症といった表面の症状からほか病気と間違われたり、投薬によってさらにこじれてしまったりすることが少なくありません。間違った治療を受けるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。アメリカでは診断の確定まで平均8年かかるとも言われています。診断の難しさは、適切な治療の妨げとなっています。

 

6.病識を持つことの難しさ

 躁状態などでは、本人は絶好調と感じられているため、自分が病気であるという認識を持ちづらく、治療の妨げとなります。特にⅡ型の場合は性格のせいだととらえられていて、周囲も「気まぐれ」「わがまま」と考えていることが多いです。

 

 

 出典:加藤忠史「双極性障害」(ちくま新書) など

 

 

 

 

双極性障害のタイプと特徴からチェックする

 研究者によって細かなタイプが提唱されていますが、大きくは3つのタイプに別れます。Ⅰ型とⅡ型についても、単に程度の軽さとして捉えるのではなく、別の病気と捉えるほうが適切です。

米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院)などを元にまとめています。

 

双極性Ⅰ型(うつ状態+激しい躁状態)

特徴)

・躁状態が7日間以上続く場合Ⅰ型とされる(り患している期間の1割程度)
・社会機能に支障をきたすような激しい躁状態 

 

・わずかな躁状態(1割程度の期間)と長いうつ状態(り患している期間の3割程度)
・うつ病よりも自殺のリスクは高い(双極性障害の死因の2割は自殺とされます)

・うつでも躁でもない時期もある(り患している期間の5割強は何もない期間)
・加齢とともに躁とうつのサイクルは短くなってくる

 

 

双極性Ⅱ型(うつ状態+軽い躁状態)

特徴)

・躁状態が4日間以上続く場合Ⅱ型とされる
・循環気質(社交的で、親しみやすく、ユーモアがある)

・しつこい、慢性的なうつ状態(り患している期間の半分くらいの期間)

・軽い躁状態は絶好調と感じられる時期もあれば、焦りやイライラとして感じられる時期もある

・うつの時期は、億劫さや過眠、体重増加が見られる
・うつでも躁でもない時期もあるが、Ⅰ型より短い(り患している期間の5割弱は何もない期間)

・自殺のリスクは、双極性Ⅰ型よりもさらに高い
・パニック障害やPTSDなど不安障害との合併も多い

・対人過敏や気疲れが見られる。お節介で過干渉気味になることも

 

 

気分循環症(軽いうつ状態+軽い躁状態)

・少なくとも2年間、基準に満たない軽いうつ状態と軽い躁状態を繰り返す
・何もない時期もあるが、その時期が短く2カ月も持たない
・気分屋として見られる

 

・データで見る「双極性障害」

 DSM-5-TRでは、米国における双極Ⅰ型の12カ月有病率は約0.6%とされています。これは、1年間におよそ170人に1人が該当する割合です。米国以外では0~0.6%と報告されています。また、双極Ⅱ型の12カ月有病率は、米国では0.8%、国際的には0.3%とされています。米国では約125人に1人、国際的には約330人に1人に相当します。なお、DSM-IVの分類による双極Ⅰ型、双極Ⅱ型、その他の双極症を合わせた米国の有病率は1.8%と報告されています。
 日本では、双極症だけを対象とした全国規模の疫学調査が限られており、調査方法によって数値に差があります。国立精神・神経医療研究センターの研修資料では、2002~2006年および2013~2015年に行われた世界精神保健日本調査に基づき、双極Ⅰ型・Ⅱ型の生涯有病率は0.16~0.23%と紹介されています。これは、生涯におよそ430~625人に1人が経験する割合です。

 

 

 

双極性障害の症状からチェックする

米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院)などを元にまとめています。

躁状態の症状

・気分や行動、活力の異常かつ持続的な高揚。怒りやすく、開放的。躁病エピソードは原則1週間以上、軽躁病エピソードは4日間以上

 

そして、Ⅰ型とⅡ型では程度が異なりますが、基本的には下記のようなものが見られます。

・自尊心の肥大

 自信がみなぎるような感覚です。周囲からはうぬぼれと感じられます。

・睡眠欲求の減少

 短眠でも元気で、一晩中動きまわるということもあります。

・多弁

 急速な思考のままにおしゃべりが止まらなくなります。

・観念奔逸(急速な思考)

 観念奔逸とは思考が飛ぶことです。アイデアが次から次へと湧いてきます。思考が早すぎて周囲はついていけないほどになります。

・注意散漫(注意転動性)

 急速な思考のままに、注意が散漫になります。

・活動の増加(目的指向性の活動)

 エネルギッシュになり、さまざまな活動を行います。

・困った結果につながる活動への熱中

 仕事でのトラブル、無謀な投資やギャンブル、浪費、危険行為、奔放な性行動など、現実においても生活や人間関係を壊しかねない行動をとり、痛ましい結果を招いてしまいます。

・その他

 重い躁病エピソードでは、幻覚・妄想などの精神病症状や緊張病を伴うことがあります。

 

 

(双極性の)うつ状態の症状

 以下のうち抑うつ気分、あるいは興味喜びの喪失を含む5つが2週間見られる(なお、双極Ⅰ型障害の診断には抑うつエピソードの既往は必須ではありません)。

 

・抑うつ気分

 Ⅱ型の場合はピリピリとした焦燥感が特徴であるとされます。うつ病でも焦燥感は見られますが、双極性障害の場合はより強く感じられます。

・興味、喜びの喪失

・思考力の低下

・無価値感、罪責感

 急速な思考によってうつ病よりも自己否定が強くなります。うつ状態では下記のような妄想が見られることがあります。貧困妄想(お金がない、破産すると信じてしまう)、心気妄想(自分が重篤な病気にかかったと思う)、罪業妄想(自分は罪深いと考えてしまう)。

・体重の増減

・睡眠障害(不眠や過眠)

 双極性障害の場合は過眠がよく見られます。

・疲労感、気力の減衰

・死についての反復的な思考(自殺念慮、自殺企図)

・その他

 特にⅡ型の場合は症状が移ろいやすく、ふぞろいで、場面によって現れたり現れなかったりといった特徴が見られます。また、うつ状態が慢性化しやすく、治療への取り組みが失われ、依存症に陥ったりといったことが急速に生じます。

 重症では精神病症状を伴うことがあります。

 

混合状態の症状

 うつ状態の時に躁が交じる、躁状態の際にうつが交じるといったように、通常とは異なる状態が見られることがあり、混合状態と呼ばれます。
躁状態なのにうつっぽい、機嫌が悪い(不機嫌躁病)、うつ状態だけど焦り、興奮が強いといった場合です。相反する力に引っ張られるような感じのため、とても苦しい症状です。

 

 

 

他の病気やタイプ間の鑑別のポイントからチェックする

<単極性うつ病などとの鑑別点>

 ▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」

 

・同調的(他人に合わせようとする)である

 病院やクリニック、カウンセリングルームにはじめて訪れて、医師や周囲の環境を忖度し、同調しようとする態度が見られる。

・中学、高校の頃に好調の時期、不調の時期の波があった

 大人に向けて規則が厳しくなったり、部活、受験勉強のストレス、対人関係のトラブルが増えやすい時期です。その時期に発症するケースが多いとされます。

 

・親族にも同様に調子に波がある人がいた。親族にうつ病や、アルコール依存症と診断された方がいる。自殺した人がいる

・自身や親族が、接客業や教員、福祉職などで成功した人がいる

・転職や転居、交友関係で変化に富む

 

・うつ病と比較して、離婚率や、独身率が高いといった特徴もあります

 将来、躁状態が起きる可能性が高い患者のことを「双極スペクトラム」と呼ぶことがあります。

・うつ状態ではまず気分が下がる

 精神科医の神田橋條治氏によると、うつ病のうつ状態は、まず能力が低下し、それから気分が下がる(もっと頑張らないといけないけどできず、気分が滅入る)。一方、双極性障害のうつ状態は、まず気分が下がる(気が滅入って何もできない)、とされます。

 

・対人関係のトラブル、状況の窮屈さによってうつ状態になる

 うつ状態のうつは脳がくたびれることで生じますが、双極性障害のうつ状態は窮屈な環境に置かれることで生じる傾向がある、とされます。発症の前に進級、進学、異動、昇進や対人関係のトラブルなどがないか?を確認してみることです。

・人懐っこさから、問題を訴える結果、処方される薬の種類、量が増える傾向にある

 なぜかいろいろな薬を処方されているようなケースも双極性障害が疑われます。

 

 

<Ⅰ型とⅡ型の鑑別点>

・躁状態の程度(入院が必要なほどかどうか)

・質的には観念奔逸が、まとまった作業ができないほど飛びすぎていないかどうか

・Ⅱ型の場合は、うつ状態でも症状が移ろいやすく、ふぞろいで、場面によって現れたり現れなかったりといった特徴が見られます。また、うつ状態が慢性化しやすく、治療への取り組みが失われ、依存症に陥ったりといったことが急速に生じます

 

 

 

躁うつ体質の特徴からチェックする

 診断はDSM-5-TR等の躁・軽躁・抑うつエピソードをもとに行います。以下は神田橋氏の臨床的な観察として、理解の参考になる特徴です

 

・調子に波がある

・のびのびした、バラエティに富む人生を欲し、窮屈な環境では調子を崩しやすい

・人と馴染もうとする。人懐こさ、人に甘える傾向。外に合わせようとする。雰囲気の柔らかさ、快活さを持つ

・関係を生きる(関係がこじれると調子を崩す)

・秘めることが苦手で表出に傾きやすい

・内省が苦手で言語化が不得手。感性や感情が行動に直結する

・言葉にできない自他の心のあやを感知しやすく、対人関係職で成功しやすい(教育、福祉職、サービス業など)

・あっさりしていて、執念深くない

・一つのことに集中するのが苦手。複数を同時並行(「ながら」)で対応することが得意

 

 

双極性障害は「わがまま」に見えることがある?

 躁状態では、自信が過度に高まる、人の意見を聞かなくなる、怒りっぽくなる、要求が強くなる、次々と行動に移すといった変化が起こることがあります。そのため、周囲から「わがままになった」「人が変わった」と感じられる場合があります。

 しかし、もともとの性格だけで説明するのではなく、普段のその人と比べてどの程度変化しているかを見ることが重要です。一方で、病気だからすべての行動を受け入れなければならないという意味でもありません。本人と周囲双方の安全や生活を守るため、必要な境界を設けることも大切です。

 

 

 

合併しやすい症状からチェックする

・依存症

 双極性障害の3割の人に見られます。ひどい依存症だったのがいつの間にか自分でやめれたり、1年ほどするとまた(アルコールなど)依存を再開して倒れてしまったり、ということ(波)があります。

  ▶「依存症とは何か?その種類・特徴・原因とメカニズム」

 

 

・社交不安障害

  ▶「対人恐怖症、社交不安障害(社交不安症)とは何か?原因とメカニズム」

 

 

・パニック障害

  ▶「パニック症(パニック障害)とは何か?その症状を詳しく解説」

 

 

 

・PTSD

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 

 

 

・過食症

 双極性障害の1~2割の人に見られます。

 ▶「摂食障害とは?拒食・過食の種類と原因~7つのポイント」

 

 

 

 

間違われやすい病気からチェックする

・うつ病

 うつ病は、双極性障害と間違われやすい代表的なものの一つです。しかし、すでに説明したように全く別の障害です。

 
Point

 産後の抑うつの中にも双極症が含まれていることがあり、躁・軽躁歴を確認することが重要です。

 

 

・統合失調症

 統合失調症でも、陽性症状(幻覚、妄想など)、陰性症状(うつ状態など)があり、変動があることは似ています。幻覚・妄想の内容だけで区別せず、気分エピソードとの時間的関係、経過、陰性症状等を含め総合的に鑑別が必要です。

 ▶「統合失調症の診断とチェック~症状など7つの視点から」

 

 

 

・境界性パーソナリティ障害

 不安定な気分やその変化など、双極性障害と非常によく似ています。

  ▶「境界性パーソナリティ障害(症)とは何か?原因と特徴、チェック」

 

 

 

・発達障害

 発達障害でも、要求水準が高まり、自分の能力以上のことをさせられると急に層的になったりすることがあります。ADHDの落ち着きのなさによるものであるなど、双極性障害の躁と似ている場合があります。

  ▶「大人の発達障害・ASD(アスペルガー症候群)かどうかを判断するポイント」

 

 

・甲状腺疾患

 甲状腺機能が低下する場合、うつっぽくなり、甲状腺機能が亢進すると興奮が高まり活動的になることがあります。また、双極性障害でリチウムによる治療を行う場合に、副作用で甲状腺機能が低下することがあります。

  ▶「境界例、難治性うつ病などの意外な原因~副腎疲労、甲状腺など」

 

 

・認知症

 一過性の躁状態が生じることがあります。

 

 

・薬物依存など、薬物によるもの

 禁止薬物によって一時的にハイになるといったことはもちろんですが、抗うつ剤によって躁状態が誘発されることがあります。「物質誘発性気分障害」と呼ばれています。物質誘発性気分障害は、双極性障害との区別は大変難しいものです。

 

・トラウマ・PTSD、愛着障害

 トラウマやPTSDでも、気分の変動、過覚醒、不眠、衝動的な行動、抑うつなどがみられることがあり、表面的には双極性障害と似て見える場合があります。また、両者が併存することもあります。

 重要なのは、気分の変化が躁・軽躁エピソードとして一定期間続いているのか、トラウマを想起させる出来事や対人関係などに反応して変化しているのか、といった経過を丁寧に確認することです。

 ▶「トラウマ(発達性トラウマ)、PTSD/複雑性PTSDとは何か?原因とそのしくみ」

 ▶「「愛着障害(アタッチメント障害)」とは何か?その特徴と症状」

 

 

 →双極性障害(躁鬱病)の治し方については、下記をご覧ください。

 ▶「双極性障害(躁鬱病)の治し方~正しく対処するための6つのポイント」

 ▶「うつ(鬱)病とは?なぜなるのか~原因を正しく理解する10のポイント」

 

 ※サイト内のコンテンツを転載などでご利用の際はお手数ですが出典元として当サイト名の記載、あるいはリンクをお願い致します。

(参考・出典)

樋口輝彦 神庭重信「双極性障害の治療スタンダード」(星和書店)
ラナ・R・キャッスル「双極性障害のすべて」(誠信書房)
岡田尊司「うつと気分障害」(幻冬舎)
加藤忠史「双極性障害」(医学書院)

加藤忠史「双極性障害」(ちくま新書)

内海健「双極Ⅱ型という病 改訂版うつ病新時代」(勉誠出版)
貝谷久宣「よくわかる双極性障害」(主婦の友社)
森山公夫「躁と鬱」(筑摩書房)
青木省三「精神科治療の進め方」(日本評論社)
神田橋條治「第一回 福岡精神医学研究会講演会記録」

米国精神医学会 DSM-5-TR(医学書院)

神田橋條治、白柳直子「神田橋條治の精神科診察室」(IAP出版)

かしまえりこ、神田橋條治「スクールカウンセリングモデル100例」(創元社)

かしまえりこ「神田橋條治 スクールカウンセラーへの助言100」(創元社)

など