悩みの原因や解決方法

恋愛依存症の本当の原因と治し方~6つのポイント(上)

[悩みの原因や解決方法「依存症」の原因と治し方]


 ここ数十年で注目され始めた「恋愛依存症」。近年、依存症、精神障害として治療の対象とされるようになってきました。今回は、「恋愛依存症」についてまとめてみました。

 

 ⇒関連する記事はこちら
  「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと」 

 

<作成日2017.4.14/最終更新日2019.9.25>

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この記事の執筆者

みき いちたろう 心理カウンセラー

大阪大学卒 大阪大学大学院修了 日本心理学会会員 など

シンクタンクの調査研究ディレクターを経て、約20年にわたりカウンセリング、心理臨床にたずさわっています。 プロフィールの詳細はこちら

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 管見の限り専門の書籍や客観的なデータを参考に記述しています。

 可能な限り最新の知見の更新に努めています。

 

もくじ

現代における恋愛至上主義
恋愛依存症とは何か?
愛依存症の背景
恋愛依存症のタイプと症状

 

 

(下)につづく

[(下)のもくじ]

 ・共依存と回避依存が生み出す恋愛依存のサイクル
 ・依存と普通の恋愛の違い
 ・恋愛依存症を解決するために必要な6つのこと

 

恋愛依存症

 

 

現代における恋愛至上主義

 現代は恋愛至上主義だ、とは評論家や学者などが指摘していることです。もちろん、人類は昔から恋愛をしますが、その在り方はさまざまです。
特に庶民は、現代人のように個人と個人とが自由に恋愛をしてというスタイルではなかったと考えられます。


 恋愛とは近代の産物だ、日本には明治以降に輸入されたとする説もあれば、もともと日本にも恋愛はあった、とする説もあります。

 

 恋愛至上主義の背景には、個人主義や自己愛型社会(個人の自己愛を満たすことに価値を置く社会)もあると思います。自己愛を満たしてくれる装置として、恋愛はとても手軽で情熱的なものです。


 特に、自己愛の傷つきを抱える人にとってはまさに麻薬のように作用し、依存を生むことになります。
 ただ、麻薬の場合は「違法なもの」として病識を生みますが、恋愛は「素晴らしいもの」という価値観が社会にあるために、なかなかそこから抜け出すことができません。

 恋愛依存症が問題になったのには、こうした時代背景もあります。

 

 

 

恋愛依存症とは何か?

 恋愛依存症(Romance addiction/Love addiction)とは、自己愛の傷つきなど自らの手に負えない苦しみを、相手に尽くしたり支配したりという歪んだ恋愛によって埋めようとする行為です。本人は恋愛に燃えている、と感じていますが、実際には恋愛にではなく過去の傷を癒すために行っている未熟な自己治療です。 


 恋愛依存症という名称が用いられるようになるのは、1975年に「Love and Addiction」という書籍が出版されてからです。
 ただし、現在も明確な定義はありません。

 

・依存症という病の一つ

 恋愛依存症とは、アルコール依存症やギャンブル依存症と何ら変わりのない「依存症」という病です。上記にもあるように現代は恋愛至上主義の文化で、恋愛は素晴らしいという風潮があるために、依存症であることが見えにくくなっています。

 

 依存症は、大きく分けて、物質依存(薬物、アルコールなど)とプロセス依存(ギャンブル依存、ゲーム依存、買い物依存症など)に別れます。どちらも脳内で神経伝達物質が過剰に放出されて、快感への依存がおさえられなくなります。恋愛依存症は、プロセス依存になります。

 

 「恋愛は素晴らしいもの」という風潮も手伝い、本人にはあまり自覚はありません。

 

 依存症であるかどうかを見分けるポイントとしては、一つのモノや関係に過度に依存しているかどうか、本人や周囲の日常生活に支障をきたしているかどうか、その背景に自己愛の傷つきやトラウマがあるかどうか、ということです。

 

参考)「厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 依存症」

 

 


・クロスアディクション

 恋愛依存症の方は、アルコール依存症やギャンブル依存症、薬物依存、過食など他の依存症を併発していることも多い。これは、依存症のメカニズムが共通していることが原因と考えられます。


 共通するメカニズムとは、自己愛の傷つきを癒すための行為がさらなる苦痛を生んで、それを他の依存行為で癒すといった悪循環のことです。


 →「ギャンブル依存症の本当の原因と治療のために必要な4つのポイント」 

 →「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

 →「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

 

・その他精神障害の併発

 恋愛依存症の場合、うつ病や、パーソナリティ障害など他の精神障害や発達障害を併発していることもあります。

 

 →「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 →「パーソナリティ障害の正しい理解と克服のための7つのポイント

 →「大人の発達障害の本当の原因と特徴~さまざまな悩みの背景となるもの

 

 

 

愛依存症の背景

 

・自己愛の傷つき(不安定な愛着、トラウマ)と脳の報酬系メカニズムの変化

 恋愛依存症の背景には「自己愛の傷つき」があります。幼少期の養育環境の影響での不安定な愛着やトラウマが原因です。傷ついた自己愛は大きな痛みをもたらします。その痛みとは不安や恐怖、怒り、自己承認の過度な欲求などです。

 

 人間は社会的動物と呼ばれるように、いろいろな人やモノにほどほどに依存しながら生活を送っています。また、仕事や人間関係から承認、信頼という(長期の)報酬を得ながら自分を保っています。このことを脳のメカニズムでは「報酬系」と呼ばれます。

 

 しかし、自己愛が傷ついた状態では、その傷をいやすために、長期の報酬では間に合わずに、短期の報酬(興奮や快楽)を求めるようになります。
 幼い子どもは欲求を我慢することが苦手です。明日まで待つよりも目の前のものがほしいと考えてしまいます。しかし、しつけや教育を受けて訓練を積む中で、我慢してより長期の報酬を得ることを覚えていきます。


 しかし、依存を繰り返すと、その報酬系のプログラム自体が書き換わってしまい、意志の力では制御できなくなってしまいます。頭では分かっていてもひどい相手に依存してしまう、といったことは脳内ホルモンの作用によってなされているのです。

 

 →「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 →「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、4つの愛着スタイルについて

 

 


・性格気質(遺伝的要因)

 衝動性や感情的になりやすい、失感情症などの性格気質(遺伝的な要素)も背景です。依存症になる人は、イメージに反して意志が強く、頑張り屋であることがあります。自己努力の果てに、頼る先が限られる中での未熟な自己治療として、依存症に陥ってしまうのです。

 

 

・環境や社会的要因

 環境や社会的な要因も背景です。人間関係が少なく孤独を感じている、過度なストレスも恋愛依存を後押しします。さらに、「恋愛は素晴らしいもの」とする現代の風潮や、出会い系サービスなど恋愛対象と出会う手段が増えていることも大きな要因の一つです。
 

 

 

 

 

恋愛依存症のタイプと症状

 心理学者の伊藤明は、著書の中で以下の4つにタイプを分類しています。あくまで便宜的なもので、確定されたものではありません。
 1.共依存(尽くす側) 、2.回避依存(尽くされる側) 、3.ロマンス依存、4.セックス依存

 それぞれはタイプは分かれますが、根本は同じです。自己愛の傷つきがあります。


 愛着障害の研究でも指摘されていますが、不安定な愛着状態に置かれると子どもは3,4歳ごろから親や環境を統制、コントロールしようと試みます。代表的なものとして2つのものがあります。


 1つ目は、「懲罰型」と呼ばれるもので、親に罰を与えたり、拒否することで思い通りにしようとします。
 2つ目は、「懐柔型」と呼ばれるもので、親の相談相手となったり、支えることで、親の気分や行動をコントロールしようとします。
 懲罰型は回避依存になり、懐柔型は共依存になると考えられます。


 
 4つのタイプは、くっきりと分かれるわけではなく、それそれが要素として各人の中に含まれてそれぞれの依存症を形成します。

 


1.共依存

 「共依存」とは、もともとは、アルコール依存症を持つ妻と夫との関係を指す言葉です。アルコール依存で何もできなくなった夫を支えることで、何もできない状態が継続し、依存症に手を貸している状態のことを言います。


 恋愛依存症の場合の共依存も同様に、相手を過度に世話すること、尽くすことに一生懸命で本人の周囲の日常生活に支障をきたしている状態です。相手から求められること=自分の存在価値、となっているため、強迫的に世話をしようとします。

 重なり合う部分も多いですが、特徴を列挙してみました。

 

・強迫的な世話

 恋愛の対象となる相手を助ける、世話をしなければという強い気持ちがあります。それは通常のものではなく、強迫的な衝動によるものです。その裏には強い見捨てられる不安が存在します。世話をすることで相手から愛情をもらい、自分の価値を保とうとします。

 

 

・必要とされることを求める。相手を放っておけない

 相手から必要とされることを求めます。相手から求められること=自分の存在価値となっています。そのために相手から連絡がまめにないと強い怒りを感じたり、相手が問題を抱えていることを喜びます。世話をしながら、相手の問題が解決することを真に望んでいません。解決すると相手が去ってしますと不安を感じています。

 

 

・「救済者」になることを欲する

 相手の救済者となることで常に相手から必要とされる存在になろうとします。アドバイスしたり、何かとお世話をしたくなります。こうした欲求を満たすための相手は問題を抱えた「ややこしい彼(彼女)」であることが必要となります。そのために世話しがいのある相手=振り回される、ということです。

 

 

・自分の幸せよりも相手の幸せを優先する。自分を犠牲にする。無力感、無価値観

 自分というものがなく、常に相手を優先します。過剰に相手の顔色や気持ちをうかがい、先回りしてしまいます。相手の幸せが自分の価値であるとして、自分を犠牲にします。背景には愛される価値がない、という無価値観、無力感があります。

 

 

・非現実的な期待

 完全な愛情を得られる、といったことや、誰かが自分を救済してくれる、という非現実的な期待感があります。私が世話をすることである日相手が改心して、自分を認めて完全な愛を与えてくれる、と考えています。目の前の不都合な事実には目を向けることができません。そのため、相手に振り回されているので別れたほうがいいと周囲がアドバイスをしても聞く耳を持つことができません。

 


 
・無意識に親の姿を恋愛相手に投影している

 共依存の方が、ひどい相手ばかりを求めるのは、実は自分の自己愛を傷つけた親を求めるということがあります。いわゆる「再演」によって自己愛を癒そうとしているということもありますし、“親”を世話することで愛されようとする動きでもあります。

 

 

・支配を求める~対等の関係を築くことができない

 無価値とされる自分に本当の価値を認め自分を救済してくれる王子(お姫)さまが自分を支配することや、逆に相手を世話することで相手をコントロールすることを望んでいます。安定した付き合い、対等な関係には不安を感じてしまいます。
  

 

・見捨てられる不安

 強烈な見捨てられ不安があります。世話をする相手がいて、その相手を世話することが自分の価値ですから、相手がいなくなることや必要とされなくなることには理屈を超えた強烈な不安が襲います。

 

 

・幸福や、親密さへの不安

 恋愛を求めながらも、実は本当に意味で親密になることには不安を感じています。安定した親密さは苦手です。幸せになることも同様で、自分は幸せになる価値がないと考えていますので、幸せな状況は強い不安を呼び起こします。

 

 


2.回避依存

 回避依存とは親密な人間関係をさける過度な傾向を指します。いくつかのタイプがあります。
 ※タイプの名称はわかりやすくつけているもので確定されたものではありません。


・独裁者、搾取者

 罪悪感や恐怖を利用して相手を支配し、搾取するタイプです。暴力や暴言というわかりやすい場合もあれば、暗に「おまえはダメなヤツだ」という無言の圧力をかけてくる場合もあります。自分の考えは正しくて、絶対で、反論すれば、同意するまで責め続けたりします。
 行動を制約したり、金銭的な要求をすることもあります。自己愛性人格障害や反社会性人格障害などがこれに当たります。

 

 

・ナルシスト

 何より自分が好きで、自分の理想を周囲に押し付けようとします。子どもっぽいところがあります。自己愛性人格障害や演技性人格障害などが該当します。

 


 
・逃げ腰症候群

 愛情を求められたり、迫ると嫌がって逃げてしまいます。一人を好み、束縛を嫌がります。本心をはぐらかします。込み入った話、深刻な話題になると避けようとします。いわゆる回避性人格障害や、回避型の不安定型愛着がそれにあたります。

 


3.ロマンス依存

 ロマンス依存とは、刺激的な恋愛ばかりを求めようとしてしまうタイプです。
 ドラマのような恋愛、不倫、略奪愛や怪しげな人との恋愛に魅力を感じてしまう傾向です。熱に浮かされたように恋愛に没頭し急激に醒めることがあります。
 
 共依存との違いは、相手の世話をすることを志向していないという点です。
 また、ロマンス依存の特徴は、恋愛ホルモンだけではなくて、ギャンブル依存などのようにリスクから来る刺激にも依存している点です。
 


 
4.セックス依存

 性衝動がおさえられない。性的快感や刺激に依存している状態です。セックスをしているときだけ愛されている感覚を得ることができたり、自己愛の傷つきからくる苦しみを和らげることができます。


 不安が強い、抑うつ傾向が強い、強迫傾向が強い人がセックス依存に陥りやすいことが知られています。解離性障害を併発していることが多いとも言われています。

 →「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと

 

 また、過去に性的虐待を受けていた方が、「再演」としてセックス依存となることがあります。傷をいやすためや、価値のない自分を罰するためにセックスを行っていると考えられます。

 

 

 

(下)につづく:恋愛依存症を解決するために必要な6つのこと、など

 

 

 

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(参考)

ハワード・M.ハルパーン「ラブ・アディクションと回復のレッスン 心の中の「愛への依存」を癒す」(学陽書房) 
ピア・メロディ「恋愛依存症の心理分析 なぜ、つらい恋にのめり込むのか」(大和書房)
ヘレン・E・フィッシャー「愛はなぜ終わるのか 結婚・不倫・離婚の自然史」(草思社) 
ラリー・ヤング「性と愛の脳科学 新たな愛の物語」(中央公論新社)
斎藤 学「アダルト・チルドレンと家族 心のなかの子どもを癒す」(学陽書房)
小谷野 敦「日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで」 (中公新書)
小谷野 敦「恋愛の超克」(角川書店)
エドワード・J・カンツィアン、マーク・J・アルバニーズ「人はなぜ依存症になるのか」(星和書店)
クレイグ・ナッケン「やめられない心」(講談社)
M・クーハー「溺れる脳」(東京化学同人)
渡辺登「依存症のすべてがわかる本」(講談社)
岡本卓、和田秀樹「依存症の科学」(化学同人)
廣中直行「依存症のすべて」(講談社)
信田さよ子「依存症」(文春新書)
斎藤学「し癖行動と家族」(有斐閣)

など

 

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